第11回ILEC 幸せさがし文化展
絵画の部写真の部書道の部俳句の部|川柳の部
川柳の部題詠:「やさしい」
連合大賞(1名)
母の日に花一輪の反抗期 ほころん 埼玉県
ILEC大賞(1名)
古里のバスは「待って!」にバックする 松下弘美 埼玉県
シニア特別賞(1名)
瀬戸のはる菜の花いろのお接待 るそん亭(85才) 大阪府
ジュニア特別賞(1名)
百点でママの優しさひとりじめ 宮口 真緒(12才) 自治労(三重県職員組合家族)
秀作(5名) 作品一覧
減塩をやさしい味といい替える 佐藤 純子 宮城県
やさしさはあるがハチ公にはなれぬ 門脇 かずお 鳥取県
どんぐりと母は似ているなんとなく 角森 みゆき 島根県
席譲るいずれ私もされる側 石川 昇 東京都
「おだいじに」優しい声の精算機 兼岩 幸男 三重県
佳作(10名) 作品一覧
ヒロシマがやさしく平和リードする てる味 広島県
叱ってる母の涙は温かい 海風 日教組(三重県教職員組合)
連れ添うて四十年の感謝状 琵琶ちゃん 滋賀県
薬より優しい母のちちんぷい 夏井やるき 秋田県
やさしさを探して男女すれ違う 砂里 愛知県
今日のミスあとで生きると励まされ 打浪 紘一 大阪府
もたれてもひと駅くらい貸してみる 磨歌緒 埼玉県
行間にやさしさ滲む見舞状 岡田 孝道 埼玉県
バカねえと笑って許す妻がいる 忠坊 千葉県
引き出しにやさしさ持っている無骨 のひろ 大阪府
入選(15名) 作品一覧
優しさをもらい心に貯金する 渡辺 勇三 奈良県
単身はコンビニだけが温かい ひいろ 大阪府
一徹が辞めた機械のクセ書いて 孝志 奈良県
それとなく息子が顔を見せに来る 山茶花 福井県
かぜ薬妻のやさしさ足して飲む 花ひらく 埼玉県
忖度もやさしい意味のはずなのに やすもり JP労組(美作支部津山西分会)
ありがたい無言の友の手の温み 勝世 神奈川県
ちゃんと見てちゃんと叱れる寄り添える hasshy 栃木県
居るだけで良しと言う娘に救われる 蒲柳 埼玉県
「よかったら」何も聞かずに肩を貸す 寿々 佐賀県
きびしさがやさしいと知るミスもある 肥栗蛾 三重県
よく笑う母さんいつも春なんだ 洞口 健吾 岐阜県
AIに優しさの意を問うてみる 北斗星 北海道
医者と妻やさしさ増して不安増す 京の亀吉 自動車総連(三菱自動車労組)
卵焼き母のやさしい匂い巻く 横溝 麻志穂 宮城県
特別審査員賞(3名) 作品一覧
妻からのエールのようなお弁当 大海の真珠 千葉県
小さな子恥ずかしそうに席譲る 横尾 伸子 大阪府
言葉より一度のハグで涙消え 増田 木綿子 三重県

川柳の部

齊藤 由紀子

NHK学園
川柳講座専任講師

連合大賞 母の日に花一輪の反抗期
 お母さん、泣かされましたね。普段は「うるせえ」という顔で返事もしない反抗期の息子。ちっとも優しくなんかないのに母の日に無言で渡された一輪の花に、子どもの優しさに触れて本当に嬉しかったと思いました。一瞬に句から状景が浮かんで心を掴まれた句でした。

ILEC大賞 古里のバスは「待って!」にバックする
 都会のバスは決して「どうぞ」と止ってくれません。停留所以外で人を乗せてはいけないのですから仕方ありません。でも古里のバスは本数も少ないし、多分殆ど顔見知りかもという想像も働きました。「」も!もこれがあるから一句が成立していますし、「バックする」に古里のバスの優しさが伝わります。

シニア特別賞 瀬戸のはる菜の花いろのお接待
 お遍路さんを持てなすお接待。その行為そのものの優しさを、菜の花いろと詠んだセンスの良さに引かれた句でした。菜の花の黄色の持っている温かさと、人々の優しさがふわっと見えてくる句でした。

ジュニア特別賞 百点でママの優しさひとりじめ
 思わずクスッとさせられた句です。テストの点数に一喜一憂するママの顔が浮かんできます。でも今日は、百点です。ママも嬉しい、いつもよりずっと優しいニコニコ顔で、今日は平和な一日です。

島田 駱舟

NHK学園
川柳講座専任講師

 たくさんの「やさしい」に囲まれ、爽やかに作品を選ぶ作業ができました。やさしさと言えば母親に勝るものはありませんが、川柳家はいろいろなものにやさしさを発見しています。〝そのようなやさしさがあったのか〟と知って嬉しくなった作品もあります。あまりやさしさと縁のないものに発見したやさしさこそ、本当のやさしさではないかとも考えさせられました。
  母の日に花一輪の反抗期 ほころん
 やさしさと対極にある反抗期の子供を主役にして、「まさか」というシーンにホロリとしました。とてもニクい発想でした。
  古里のバスは「待って!」にバックする 松下弘美
 現実かどうかは別にして、あって欲しい光景です。運転士の笑顔まで浮かび、暖かな地域の絆がしっかり伝わってきます。
  瀬戸のはる菜の花いろのお接待 るそん亭
 厳しい冬を抜けて見る菜の花の黄色は心を弾ませます。お遍路さんの疲れを癒すお接待のイメージと、ベストマッチします。
  百点でママの優しさひとりじめ 宮口真緒
 嬉しいのはむしろママかも分かりません。日頃の親子のやりとりや他の家族との関係をいろいろ想像させる内容です。
 やさしさは自然に出てくるものが感動を呼ぶようです。作品を選びながら、やさしさの本質がぼんやり見えた気がしました。




戻る