齊藤 由紀子
NHK学園
川柳講座専任講師
連合大賞 母の日に花一輪の反抗期
お母さん、泣かされましたね。普段は「うるせえ」という顔で返事もしない反抗期の息子。ちっとも優しくなんかないのに母の日に無言で渡された一輪の花に、子どもの優しさに触れて本当に嬉しかったと思いました。一瞬に句から状景が浮かんで心を掴まれた句でした。
ILEC大賞 古里のバスは「待って!」にバックする
都会のバスは決して「どうぞ」と止ってくれません。停留所以外で人を乗せてはいけないのですから仕方ありません。でも古里のバスは本数も少ないし、多分殆ど顔見知りかもという想像も働きました。「」も!もこれがあるから一句が成立していますし、「バックする」に古里のバスの優しさが伝わります。
シニア特別賞 瀬戸のはる菜の花いろのお接待
お遍路さんを持てなすお接待。その行為そのものの優しさを、菜の花いろと詠んだセンスの良さに引かれた句でした。菜の花の黄色の持っている温かさと、人々の優しさがふわっと見えてくる句でした。
ジュニア特別賞 百点でママの優しさひとりじめ
思わずクスッとさせられた句です。テストの点数に一喜一憂するママの顔が浮かんできます。でも今日は、百点です。ママも嬉しい、いつもよりずっと優しいニコニコ顔で、今日は平和な一日です。
島田 駱舟
NHK学園
川柳講座専任講師
たくさんの「やさしい」に囲まれ、爽やかに作品を選ぶ作業ができました。やさしさと言えば母親に勝るものはありませんが、川柳家はいろいろなものにやさしさを発見しています。〝そのようなやさしさがあったのか〟と知って嬉しくなった作品もあります。あまりやさしさと縁のないものに発見したやさしさこそ、本当のやさしさではないかとも考えさせられました。
母の日に花一輪の反抗期 ほころん
やさしさと対極にある反抗期の子供を主役にして、「まさか」というシーンにホロリとしました。とてもニクい発想でした。
古里のバスは「待って!」にバックする 松下弘美
現実かどうかは別にして、あって欲しい光景です。運転士の笑顔まで浮かび、暖かな地域の絆がしっかり伝わってきます。
瀬戸のはる菜の花いろのお接待 るそん亭
厳しい冬を抜けて見る菜の花の黄色は心を弾ませます。お遍路さんの疲れを癒すお接待のイメージと、ベストマッチします。
百点でママの優しさひとりじめ 宮口真緒
嬉しいのはむしろママかも分かりません。日頃の親子のやりとりや他の家族との関係をいろいろ想像させる内容です。
やさしさは自然に出てくるものが感動を呼ぶようです。作品を選びながら、やさしさの本質がぼんやり見えた気がしました。