第8回ILEC 幸せさがし文化展
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俳句の部
連合大賞(1名)
この胸を敲いた妻も木の葉髪 マッサン 兵庫県
ILEC大賞(1名)
オルゴールのやうな風の日卒業す 藤﨑 由希子 福岡県
シニア特別賞(1名)
うららかやちょっと斜めにベレー帽 髙橋 きくい(91才) 埼玉県
ジュニア特別賞(1名)
グローブのすき間から見る夏の雲 吉田 恭(14才) 北海道
秀作(5名) 作品一覧
青年に席譲られて昭和の日 大坂 道代 神奈川県
夫も子も猫も大の字うららけし まっちゃん 北海道
ぐぐぐいと竿撓らせて桜鱒 藤丸 美生 山形県
そのままの君でいいんだ夏野菜 瀬戸ピリカ 神奈川県
夏休み父さんもっと休んでよ 拓郎 兵庫県
佳作(10名) 作品一覧
春耕の一鍬づつの土匂ふ 藤岡 定子 東京都
アルバムの黴拭き取れば若き父 甲田 誠 退職者連合(NTT労組退職者の会 山梨県域分会)
古民家の梁のうねりや吊し雛 鹿沼湖 栃木県
新しきマフラー巻いてディ・サービス 角森 玲子 島根県
青空に働いてゐるサングラス 竹澤 聡 神奈川県
子牛春泣いて売られて子等も泣く いちご 神奈川県
まつたりと己が道ゆく田螺蜷 橋爪 あゆみ 埼玉県
教卓の前に向日葵咲いている 松下 詩織 埼玉県
春耕の作付順を練りながら 茂木 利夫 群馬県
新妻へ舫ひ綱投ぐ若布刈舟 木村露草 神奈川県
入選(15名) 作品一覧
引けやひけ綱の雄々しく運動会 辻 孝明 大阪府
薔薇散りてなほ湧き上がる匂ひかな 永井 礼一郎 兵庫県
どの名にも願ひ込められ入学児 南沢 果林 和歌山県
白髪をやさしく撫でし若葉風 高橋 富士子 群馬県
片陰に水を分け合う老夫婦 福島 朋子 群馬県
おかえりと迎えてくれる僕の百合 瀬田 ひかり 埼玉県
百歳のお手玉捌き風光る 冨樫 正義 山形県
また来いと手を振る父と盆の月 木村 弘美 千葉県
がやがやと子どもみこしの雨宿り 野口 成人 滋賀県
緑蔭を育ててゐたる大樹かな 渋谷 史恵 宮城県
母と漕ぐスワンボートに若葉風 古河 章男 東京都
耕して土の母性を呼び醒ます 佐々木 久仁子 退職者連合
(NTT労組退職者の会 奈良県支部協議会)
搾乳の乳首あたたか冬に入る 熊本 芳郎 山口県
たんぽぽの綿毛の音符風の道 鈴木 千佳子 東京都
ありがとう患者の声や光る風 山越 歩実 埼玉県
特別審査員賞(3名) 作品一覧
新緑や細りゆく父の脚撫でる 湯川 美保 運輸労連(運輸労連本部)
「母の日や」子等に洗われ泡のママ すみれ 神奈川県
初登校春風に背を押されたり 下満 あかり 鹿児島県

俳句の部

小島 健

NHK学園
俳句講座専任講師

 俳句の部に、たくさんのご熱心なご応募ありがとうございました。皆さまの豊かな自然詠、温かく深い人間詠、笑いに満ちた楽しい作、感性の優れた作品に、乾杯!全作品から大きな感動と勇気をいただき、まさに選者冥加でした。ありがとうございました!

 この胸を敲いた妻も木の葉髪 
 うららかやちょっと斜めにベレー帽

 上記は大賞、特別賞の一部です。この温かい人間性にニッコリ!
一句目は今や人生の同志でもある妻への愛情です。さて、作者の胸を敲いたのは、果たしてどんな場面だったのでしょうか? どうか、いつまでも奥様を大切になさり、そして、仲良くお幸せに!
 二句目はちょっと斜めのベレー帽がとても粋! いいですねえ。

 夏休み父さんもっと休んでよ
 青年に席譲られて昭和の日

 上句は秀作の一作品です。前句のジュニアの優しい心に、じいん……。思わずこの子を強く抱きしめたくなるじゃありませんか。
 後句の作者はきっと昭和生まれだね? この青年もいいなあ!

 現在、俳句をユネスコ世界無形文化遺産に登録しようとの運動が進んでいます。俳句は世界で最も短い詩であり、日本の誇りです。その俳句を通じて、日本の、日本人の、美しさを世界に発信しようではありませんか。皆さまのご健吟を心よりお祈り申し上げます。

 

鈴木 章和

NHK学園
俳句講座専任講師

 幸せさがし文化展・俳句に応募くださったみなさんありがとうございます。
 俳句を作るにはなんの資格もいりません。ただ俳句を詠んでみたいという気持ちさえあれば、幼少年者から百歳を超える大人まで、年齢的な垣根や障害なんてありません。今回の第11回の選考も、老若男女を問わない、俳句好きのみなさんの力作、宝の山の中からさらにダイヤモンドの原石を探すような思いで選び出した粒ぞろいの作品です。中でも

 オルゴールのやうな風の日卒業す 福岡 藤﨑由希子

 グローブのすき間から見る夏の雲 北海道 吉田恭

 この大賞・特別賞の作品と出会ったとき、ドキッとして、目が止まりました。「卒業」はたいてい春の半ば。別れがあり、新しい出会いの予感に浮きたつころです。その気持を、風のオルゴールのようなんて、素晴らしい表現です。また、あわやホームランかという大フライを捕球しようと、かざしたグローブのすき間に見えた、夏の光とまっ白い入道雲の一瞬の光景は、永遠の夏を垣間見たようでした。

 この胸を敲いた妻も木の葉髪 兵庫 マッサン

 うららかやちょっと斜めにベレー帽 埼玉 髙橋きくい

 この二作品は、心の中にズシンとした思いを受けとったようでした。さらっと深い世界を感じさせる作品です。俳句の五・七・五に限定された形は、古いようで新しく、狭いようで広い、表現のとても自由な形なのです。そして今回の入選作はダイヤモンドそのものでした。




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