小島 健
NHK学園
俳句講座専任講師
俳句の部に、たくさんのご熱心なご応募ありがとうございました。皆さまの豊かな自然詠、温かく深い人間詠、笑いに満ちた楽しい作、感性の優れた作品に、乾杯!全作品から大きな感動と勇気をいただき、まさに選者冥加でした。ありがとうございました!
この胸を敲いた妻も木の葉髪
うららかやちょっと斜めにベレー帽
上記は大賞、特別賞の一部です。この温かい人間性にニッコリ!
一句目は今や人生の同志でもある妻への愛情です。さて、作者の胸を敲いたのは、果たしてどんな場面だったのでしょうか? どうか、いつまでも奥様を大切になさり、そして、仲良くお幸せに!
二句目はちょっと斜めのベレー帽がとても粋! いいですねえ。
夏休み父さんもっと休んでよ
青年に席譲られて昭和の日
上句は秀作の一作品です。前句のジュニアの優しい心に、じいん……。思わずこの子を強く抱きしめたくなるじゃありませんか。
後句の作者はきっと昭和生まれだね? この青年もいいなあ!
現在、俳句をユネスコ世界無形文化遺産に登録しようとの運動が進んでいます。俳句は世界で最も短い詩であり、日本の誇りです。その俳句を通じて、日本の、日本人の、美しさを世界に発信しようではありませんか。皆さまのご健吟を心よりお祈り申し上げます。
鈴木 章和
NHK学園
俳句講座専任講師
幸せさがし文化展・俳句に応募くださったみなさんありがとうございます。
俳句を作るにはなんの資格もいりません。ただ俳句を詠んでみたいという気持ちさえあれば、幼少年者から百歳を超える大人まで、年齢的な垣根や障害なんてありません。今回の第11回の選考も、老若男女を問わない、俳句好きのみなさんの力作、宝の山の中からさらにダイヤモンドの原石を探すような思いで選び出した粒ぞろいの作品です。中でも
オルゴールのやうな風の日卒業す 福岡 藤﨑由希子
グローブのすき間から見る夏の雲 北海道 吉田恭
この大賞・特別賞の作品と出会ったとき、ドキッとして、目が止まりました。「卒業」はたいてい春の半ば。別れがあり、新しい出会いの予感に浮きたつころです。その気持を、風のオルゴールのようなんて、素晴らしい表現です。また、あわやホームランかという大フライを捕球しようと、かざしたグローブのすき間に見えた、夏の光とまっ白い入道雲の一瞬の光景は、永遠の夏を垣間見たようでした。
この胸を敲いた妻も木の葉髪 兵庫 マッサン
うららかやちょっと斜めにベレー帽 埼玉 髙橋きくい
この二作品は、心の中にズシンとした思いを受けとったようでした。さらっと深い世界を感じさせる作品です。俳句の五・七・五に限定された形は、古いようで新しく、狭いようで広い、表現のとても自由な形なのです。そして今回の入選作はダイヤモンドそのものでした。