第8回ILEC 幸せさがし文化展
絵画の部写真の部書道の部俳句の部|川柳の部
川柳の部題詠:「手」「歩く」
連合大賞(1名)
無事定年妻の手綱のまま走り 住野次郎 兵庫県
ILEC大賞(1名)
共白髪妻との歩調合わぬまま サケノミ・クス 東京都
シニア特別賞(1名)
いわし雲追いつ追われつ散歩する 今泉いま(96歳) 退職者連合
(NTT退職者の会青森県支部協議会家族)
ジュニア特別賞(1名)
手のゆびもとてもなかよし大家族 中川珠莉(9歳) 電機連合(東芝情報システム労組家族)
秀作(5名) 作品一覧
カマで刈る手間も教える米作り 阿波天坊 徳島県
言葉より手のぬくもりに励まされ PON5 滋賀県
おやじの手ぼくのグローブ負けてるね 上村悦子 山口県
どちら向き歩いているのですか国 幅茂 愛知県
哲学の径もスマホを見て歩き 石澤幸弘 鹿児島県
佳作(10名) 作品一覧
父の愛次の一手は口にせぬ 阿部文彦 神奈川県
グーグルの世界遺産を目で歩く えんぴつ 埼玉県
ピアノ音に弾き手浮かべる散歩道 まかしょ 埼玉県
軟膏を母の手に塗る春炬燵 ゴーリキ 大阪府
いい友は算盤の手を弾かない 園田浩 熊本県
駅からは早足になる帰り道 みやちゃん 日教組(北海道教職員組合)
つなげた手少し仲良くなれたかな 五十嵐夏希 自治労(霧島市職労)
いつまでも歴史に残すタッチの差 ねこやなぎ 埼玉県
畦道をモデルのように歩く嫁 中原政人 千葉県
桜色ときめく今を歩いてる ハマヒルガオ 茨城県
入選(15名) 作品一覧
だんだんと同じ歩調になる夫婦 妹尾安子 神奈川県
合格の春に踏み出す軽い足 ゆうゆう 大阪府
荒れ球も母のミットは零さない 坂牧のぶ美 東京都
負けてきた子の背番号撫でてやる 松村華菜 熊本県
奥の手は千手観音ほどもあり 阿江美穂 兵庫県
しみじみと手を握ること無く夫婦 泉州男 大阪府
手はふたつ自立する手とつなぐ手と よもやま話 奈良県
母さんのあれた手が好き肩たたき 植村白鵬 大分県
大切な人としっかり手をつなぐ 岩堀洋子 神奈川県
皺くちゃの手から貰ったお年玉 角森多久哉 島根県
富士晴れて太平洋へ手をかざす 中村一栄 東京都
本気度を伝えたいので手を握る 小松武治 東京都
老犬を抱えて歩く春の道 ほり・たく 福島県
お互いに介護のつもり手をつなぐ 好日郎 神奈川県
赤ちゃんのこぶしを解けば春こぼれ 向日葵 福岡県
特別審査員賞(3名) 作品一覧
懸命に歩けばちゃんとある答え 海実 山形県
夏祭り君の歩幅で歩く恋 桑原達也 大阪府
手柄など無いが歩いた道がある 浅井常義 退職者連合
(NTT労組退職者の会静岡県支部協議会)

川柳の部

大木俊秀

全日本川柳協会常務理事

 2年に一度開催されている連合の文化展も10回を迎えました。第4回から川柳部門が仲間入りしたわけですが、初回の応募数は86句でした。そして回を重ねるごとにその応募句数は増え、今年は2000句以上となりレベルも毎回上がってきていると感じます。長年川柳に関わってきた私も川柳が多くの方々に親しまれ身近な文芸になってきたのだなと大変嬉しく思っています。
 さて、今回の課題は「手」と「歩く」です。「手」からは温かさ、温もりを感じる句、「歩く」については健康に結びつけた句、夫婦、人生の歩みを詠んだ句が多く寄せられました。
 ジュニア部門の特別賞に輝いた「手のゆびもとてもなかよし大家族」9歳らしい視点で家族を詠んでいます。ほのぼのと温かい句です。その他、「軟膏を母の手に塗る春炬燵」「負けてきた子の背番号を撫でてやる」「皺くちゃの手から貰ったお年玉」「つなげた手少し仲よくなれたかな」等、素直に気持ちを表現した「手」の作品が印象的でした。「歩く」では「畦道をモデルのように歩く嫁」が新鮮で爽やか、思わずニコリとさせられました。
 五七五という基本の定型リズムに乗せ、笑い、風刺、本音を込め人間を詠むのが川柳。いつも申し上げておりますように、句は一読明解であることが大切です。そしてなるほどという共感や、しみじみ、ほのぼのといった感情が自然に伝わる作品を目指したいものです。

大木俊秀先生におかれましては2017年7月1日逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

齊藤 由紀子

全日本川柳協会常任幹事

●連合大賞:無事定年妻の手綱のまま走り
 無事に定年を迎えることが出来たのは、妻のお陰という感謝の句と読みました。サラリーマン生活の軌道を外すことなく終わらせることが出来たのも、妻の手綱があったからこそと定年を迎えての実感だったのでしょう。

●ILEC大賞:共白髪妻との歩調合わぬまま
 思わずクスッとさせられました。男性は幾つになっても妻の中の女を理解できないという方も多いようです。結局は男と女、どうしても謎の部分は残ります。それを歩調が合わぬと表現した作者の本音の面白さでした。

●シニア特別賞:いわし雲追いつ追われつ散歩する
 お歳を拝見してびっくりしました。96歳です。雲と追いつ追われつの散歩に、大手を振って元気に歩く姿が浮かんで、まさに長寿万歳です。お元気で散歩を楽しんで下さい。

●ジュニア特別賞:手のゆびもとてもなかよし大家族
 作者は9歳の女の子、大家族ですからきっと三世代いえ四世代かも!?またはきょうだいが多いのかな。一人10本の手の指が賑やかに寄って騒いで楽しく暮らしている絵が見えてきました。
 秀作・佳作の作品も今という時代を切り取ったもの、実感として分かる分かるという句です。初投稿者の多かった今回の幸せさがし文化展でした。次回もお待ちしています。




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