大木俊秀
全日本川柳協会常務理事
2年に一度開催されている連合の文化展も10回を迎えました。第4回から川柳部門が仲間入りしたわけですが、初回の応募数は86句でした。そして回を重ねるごとにその応募句数は増え、今年は2000句以上となりレベルも毎回上がってきていると感じます。長年川柳に関わってきた私も川柳が多くの方々に親しまれ身近な文芸になってきたのだなと大変嬉しく思っています。
さて、今回の課題は「手」と「歩く」です。「手」からは温かさ、温もりを感じる句、「歩く」については健康に結びつけた句、夫婦、人生の歩みを詠んだ句が多く寄せられました。
ジュニア部門の特別賞に輝いた「手のゆびもとてもなかよし大家族」9歳らしい視点で家族を詠んでいます。ほのぼのと温かい句です。その他、「軟膏を母の手に塗る春炬燵」「負けてきた子の背番号を撫でてやる」「皺くちゃの手から貰ったお年玉」「つなげた手少し仲よくなれたかな」等、素直に気持ちを表現した「手」の作品が印象的でした。「歩く」では「畦道をモデルのように歩く嫁」が新鮮で爽やか、思わずニコリとさせられました。
五七五という基本の定型リズムに乗せ、笑い、風刺、本音を込め人間を詠むのが川柳。いつも申し上げておりますように、句は一読明解であることが大切です。そしてなるほどという共感や、しみじみ、ほのぼのといった感情が自然に伝わる作品を目指したいものです。
大木俊秀先生におかれましては2017年7月1日逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
齊藤 由紀子
全日本川柳協会常任幹事
●連合大賞:無事定年妻の手綱のまま走り
無事に定年を迎えることが出来たのは、妻のお陰という感謝の句と読みました。サラリーマン生活の軌道を外すことなく終わらせることが出来たのも、妻の手綱があったからこそと定年を迎えての実感だったのでしょう。
●ILEC大賞:共白髪妻との歩調合わぬまま
思わずクスッとさせられました。男性は幾つになっても妻の中の女を理解できないという方も多いようです。結局は男と女、どうしても謎の部分は残ります。それを歩調が合わぬと表現した作者の本音の面白さでした。
●シニア特別賞:いわし雲追いつ追われつ散歩する
お歳を拝見してびっくりしました。96歳です。雲と追いつ追われつの散歩に、大手を振って元気に歩く姿が浮かんで、まさに長寿万歳です。お元気で散歩を楽しんで下さい。
●ジュニア特別賞:手のゆびもとてもなかよし大家族
作者は9歳の女の子、大家族ですからきっと三世代いえ四世代かも!?またはきょうだいが多いのかな。一人10本の手の指が賑やかに寄って騒いで楽しく暮らしている絵が見えてきました。
秀作・佳作の作品も今という時代を切り取ったもの、実感として分かる分かるという句です。初投稿者の多かった今回の幸せさがし文化展でした。次回もお待ちしています。