小島 健
俳人協会理事
「河」同人
第10回目の記念の連合・I L E C「幸せさがし文化展」俳句の部に、たくさんのご熱心なご応募をいただき、深謝申し上げます。
応募の皆さまの、日本の美しい自然を詠んだ作品、人間の温かい情を深く詠んだ作品、ユーモア精神豊かな笑いの句や鋭い感性・感覚を備えた作品などに出合え、光栄の至りでした。
日向ぼこ妻の隣の心地よさ
父の日に来て気遣いは母に向く
サングラスかけて総身をかくしけり
顔出してもう時間だよ桜さん
上記は大賞、特別賞の作品です。その深い人間性に、乾杯!
一句目は、妻への無限の愛と信頼が嬉しい作品ですね。ご馳走様!どうぞいつまでも仲良くお幸せに!
二句目は、父母への愛情が少しペーソスを加えながらも、明るく優しく笑顔で詠まれています。
三句目のユーモア、万歳!サングラスの一部分をもって、全身を隠したというのです。さて?うまく隠れましたかな?
四句目はジュニア特別賞。「桜さんってば、そんなに寝てないで! 出番の時間よ!」。春到来と桜を待つかわいい季節感覚に、大きな拍手!
他の多くの秀作、入選作品にも深く頷き、感動をたくさんいただき、励まされました。ありがとうございました!
鈴木章和
「翡翠(かわせみ)」主宰
選を終えて
俳句がくれるもの、それは作者と読者を充たす時間。今の、あるいはかつての、忘れがたい一瞬のきらめきをとどめている十七音字の時間。それは幸福、大切な財産です。
俳句の魅力をもっともよく語るものは、作品そのものに他ならないのですが、その俳句の差し出す世界は完成されたものではなくて、作品に詠まれた意味を生きることによって、常に新しく生み出されてゆかなければならないものだと私は思っています。芭蕉や蕪村、また一茶の俳句ばかりでなく、今回のたくさん寄せられたみなさんの作品も、今の自分が読みこみ、現在を生きるわたしたちの生活やくらし方に読み込まれてゆくことなのだと思うのです。
顔出してもう時間だよ桜さん 遠藤萌花
父の日に来て気遣いは母に向く 中澤仁捷
「古典」と呼ばれる作品も、今回とても胸を高ぶらせた、みなさんの秀作も、読者も作者と一緒の世界にあって、同じ気持ちを分かちあっているのです。
サングラスかけて総身をかくしけり 宏汀
日向ぼこ妻の隣の心地よさ のらちゃん
読み終えてまた読み返したくなる。今回の選考もそんな基準で、みなさんの作品を何度も味わって選んだのでした。「読む」ことは作者の人生と少しだけ伴走すること。それは何とも爽やかなひとときでした。