第8回ILEC 幸せさがし文化展
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俳句の部
連合大賞(1名)
日向ぼこ妻の隣の心地よさ のらちゃん 東京都
ILEC大賞(1名)
父の日に来て気遣いは母に向く 中澤仁捷 神奈川県
シニア特別賞(1名)
サングラスかけて総身をかくしけり 宏汀(86歳) 東京都
ジュニア特別賞(1名)
顔出してもう時間だよ桜さん 遠藤萌花(11歳) 福島県
秀作(5名) 作品一覧
介護といふ戦ひもあり福寿草 阿部史恵 静岡県
ネクタイを春に選んでもらいけり 森田欣也 愛媛県
春風や猫と暮らしてみたくなり 沢野あすか 宮城県
児のことば母が訳して春隣 輝美 山口県
雲の峰壁なき沖に立ち上る 海啓 退職者連合(元海員組合愛媛支部OB)
佳作(10名) 作品一覧
春うらら乳歯二本の大あくび マイケル釈尊 神奈川県
さよならは言わずに握手冬銀河 高橋まりえ 北海道
ぬつと現れ覆面の草刈女 中浴智美 和歌山県
いやな事ひとつもなくて万緑の中 紅月 東京都
すぐそこに山ある暮らし春の水 まっちゃん 北海道
ひょいと来て新米置いて父帰る 粟井双仙 埼玉県
春の野や子供が歌を唄い出す 愛ちゃん 徳島県
一人増え二人増えしてひなたぼこ 大阪のアン 大阪府
かまくらの中に兄弟詰まってる 居間正三 群馬県
麦踏んで己がリズムに乗りにけり 北村純一 神奈川県
入選(15名) 作品一覧
来客に赤子が泣くや夏座敷 きょんちゃん 福岡県
豆飯や豆はイギリス産という 赤松桔梗 福岡県
孫が来るそろそろ扇風機を出すか ぽんた 愛知県
さくらんぼわが子がいればこんな頰 瀬戸ピリカ 神奈川県
永き日や定時勤務のありがたさ 南出孝次 自治労(三重県本部松阪市職員組合)
まだ君を見つけられない星月夜 黄くま 大分県
野良風も一段落や葱坊主 髙梨孝 情報労連(情報労連組合員家族)
老妻のまぜてほどよき菜飯かな 山﨑秀雄 埼玉県
妻と行く新婚の地に桜舞う 鳩通信社 退職者連合(元神戸製鋼労組西神支部OB)
鏡餅単身赴任の父に似て 角森みゆき 島根県
柿若葉幸福感が降つてくる 小松武治 東京都
下萌の庭にひとまず引越し荷 池田昭正 退職者連合
(NTT労組退職者の会佐賀県支部協議会)
早朝に花見の場所で家族まつ 曽我吉乃 大阪府
夕やけの空もほろ酔いなのかしら 谷口ありさ 神奈川県
新緑の下で初めて出す名刺 田中克則 和歌山県
特別審査員賞(3名) 作品一覧
老いてこそ派手を許して春日傘 藤原泰江 退職者連合
(NTT労組退職者の会広島県支部協議会)
入学の一人は村の宝もの 藤林正則 北海道
万物が息を潜める雪の朝 銀の筆 岐阜県

俳句の部

小島 健

俳人協会理事
「河」同人

 第10回目の記念の連合・I L E C「幸せさがし文化展」俳句の部に、たくさんのご熱心なご応募をいただき、深謝申し上げます。
 応募の皆さまの、日本の美しい自然を詠んだ作品、人間の温かい情を深く詠んだ作品、ユーモア精神豊かな笑いの句や鋭い感性・感覚を備えた作品などに出合え、光栄の至りでした。
 
日向ぼこ妻の隣の心地よさ
父の日に来て気遣いは母に向く
サングラスかけて総身をかくしけり
顔出してもう時間だよ桜さん

 上記は大賞、特別賞の作品です。その深い人間性に、乾杯!
 一句目は、妻への無限の愛と信頼が嬉しい作品ですね。ご馳走様!どうぞいつまでも仲良くお幸せに!
 二句目は、父母への愛情が少しペーソスを加えながらも、明るく優しく笑顔で詠まれています。
 三句目のユーモア、万歳!サングラスの一部分をもって、全身を隠したというのです。さて?うまく隠れましたかな?
 四句目はジュニア特別賞。「桜さんってば、そんなに寝てないで! 出番の時間よ!」。春到来と桜を待つかわいい季節感覚に、大きな拍手!
 他の多くの秀作、入選作品にも深く頷き、感動をたくさんいただき、励まされました。ありがとうございました!

鈴木章和

「翡翠(かわせみ)」主宰

選を終えて
 俳句がくれるもの、それは作者と読者を充たす時間。今の、あるいはかつての、忘れがたい一瞬のきらめきをとどめている十七音字の時間。それは幸福、大切な財産です。
 俳句の魅力をもっともよく語るものは、作品そのものに他ならないのですが、その俳句の差し出す世界は完成されたものではなくて、作品に詠まれた意味を生きることによって、常に新しく生み出されてゆかなければならないものだと私は思っています。芭蕉や蕪村、また一茶の俳句ばかりでなく、今回のたくさん寄せられたみなさんの作品も、今の自分が読みこみ、現在を生きるわたしたちの生活やくらし方に読み込まれてゆくことなのだと思うのです。

顔出してもう時間だよ桜さん 遠藤萌花
父の日に来て気遣いは母に向く 中澤仁捷

 「古典」と呼ばれる作品も、今回とても胸を高ぶらせた、みなさんの秀作も、読者も作者と一緒の世界にあって、同じ気持ちを分かちあっているのです。

サングラスかけて総身をかくしけり 宏汀
日向ぼこ妻の隣の心地よさ のらちゃん
 
 読み終えてまた読み返したくなる。今回の選考もそんな基準で、みなさんの作品を何度も味わって選んだのでした。「読む」ことは作者の人生と少しだけ伴走すること。それは何とも爽やかなひとときでした。




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