第8回ILEC 幸せさがし文化展
絵画の部写真の部書道の部俳句の部|川柳の部
川柳の部題詠:「祈る」「結ぶ」
連合大賞(1名)
田を植えるそれは祈りの姿とも 橋爪 あゆみ 埼玉県
ILEC大賞(1名)
赤い糸ちょうちょ結びにしてしまう 門脇 かずお 鳥取県
シニア特別賞(1名)
見知らない人をネットが結びつけ 岸野 洋介 岡山県
ジュニア特別賞(1名)
朝日さす祈り祈られ今日受験 高橋 ゆい 電機連合(ホシデン労組家族)
秀作(5名)  作品一覧
汗・涙流した後は祈るだけ 古希克己 東京都
祈るしかできない事がもどかしい 万吉 自動車総連(全国スバル販売労組)
手を結ぶ一人じゃ生きていけぬ世に 清水風流 電機連合(富士通エフサス労組)
おむすびもやはり寡黙な父子世帯 渡会雅 千葉県
大吉を枝に結んで待つ知らせ 古曽部 弓 北海道
佳作(10名) 作品一覧
祈るとは信じることと知らされる みぢんこ 香川県
湯は出ても噴くなと祈る活火山 さくら 千葉県
孫までは口を出せない祈るだけ 磯部 彰 岐阜県
八月の天祈っても祈っても 中村まどか 三重県
祈っても祈りきれない世の平和 船岡五郎 東京都
最後には歯で解く母の固結び 一颯 神奈川県
帯結び言葉使いも撫子に りーちゃん 神奈川県
宅急便この結び目は母の癖 泉州のみずなす 大阪府
町工場世界と結ぶモノ造り さつまハヤト 鹿児島県
結ばれて吾れに過ぎたる女房どの ボケおじん 新潟県
入選(15名) 作品一覧
スタートで祈りゴールで祈られる 星野 典比古 栃木県
無力さを知って自然に手を合わせ 中野 弘樹 埼玉県
被災地に笑い戻れと手を合わす 明拓 奈良県
祈るしかできない母の反戦歌 光風雫 福井県
母になり祈りが深く長くなる 加藤 ゆみ子 神奈川県
やり切ったあとは幸運祈るだけ こまつしょう 青森県
最新の医療機器にも貼るお札 はる 東京都
憎しみで祈り忘れたテロリスト 小松 武治 東京都
ネクタイを結ぶ父親参観日 川脇 萌 大阪府
炊出しのむすびに絆深め合い 石神 美智子 退職者連合(NTT労組退職者の会
千葉県支部協議会)
君の手でほどいてほしい蝶結び 金子鋭一 岐阜県
結局は普通の人と結ばれて ビビサン 愛知県
凶の出たみくじ結んで手を合わす 冨永 幸枝 埼玉県
クイ打って結ぶ道路の先が見え 浅井 辿 退職者連合(NTT労組退職者の会
神奈川県支部協議会)
ヨーイドン真一文字に結ぶ口 ごまさん 東京都
特別審査員賞(3名) 作品一覧
ゆる結びだから続いた夫婦仲 高木 一男 大分県
胸痛むニュース流れぬ日を祈る 風信子 東京都
釣銭を祈りに代えてカンパする るそん亭 大阪府

川柳の部

大木俊秀

全日本川柳協会常務理事

選を終えて

 「連合」の文化展も回を重ねて今年は第9回。川柳に限って申し上げれば、課題の「祈る」と「結ぶ」に、それぞれ一千句を超えるご応募をいただいた。数の伸びもさることながら、句の内容の充実ぶりにも目を見張るものがあって、選句に骨が 折れた。
笑い、風刺、本音が川柳の大切な要素であることに変りはないが、最近はこれに、ほのぼの、しみじみといった情緒を感じさせる作品が尊重されてきているように、私には思える。納得、共感、新鮮という前提は当然のことである。
 これまでにも機会あるごとに書かせていただいたように、第一に大事なのは、その句が何を詠み何を伝えたいのかが、一読してわかることだ。第二が、五七五の定型リズムを基調とした句であること。第三に、リズムと関わることであるが句全体の流れがスムーズであること。そして四つ目に、手垢のついていないこと、フレッシュな作品であることを望みたい。こうした観点から上位入選作品を読み返して、今後の句作りの参考にしていただければ幸せである。
 秀句目白押しの中で特に感銘を受けたのが連合大賞受賞句の、「田を植えるそれは祈りの姿とも」であった。その情景が目に浮かんでくるような句を、といつも申し上げているが、これはまさにそのお手本句。末尾の「とも」に、作者の実力がうかがわれた。

小金沢 綏子

川柳きやり吟社社人

句は心、リズムは人の息遣い

 課題の「結ぶ」と「祈る」は、身近な題材であり、日常的で着想が広がりやすく、作句しやすかったのでしょう。会心の作品が多く出品され、かなりの厳選になりました。

●連合大賞:橋爪 あゆみ 「田を植えるそれは祈りの姿とも」
 文明化は生活を豊かにしましたが、人とのつながりを希薄にしたようにも思えます。田植え機よりも人の手により田植えを「祈る」姿と見た作者の感性は素晴らしく、光り輝いています。これからの活躍に期待の持てる作品です。

●ILEC大賞:門脇 かずお「赤い糸ちょうちょ結びにしてしまう」
 「赤い糸」は、目に見えない縁(えにし)によって結ばれるべき運命にある二人を指しています。作者は、嬉しくて弾む胸の内を「ちょうちょ結びに」と象徴的に表現しています。心理状態をよく掴んでおり、笑いを誘います。

●シニア特別賞:岸野 洋介「見知らない人をネットが結びつけ」
 子どもたちはもう独立して、侘しい日常生活を過ごしているのかもしれません。そんな日常の中で、インターネットは容易に人々と結びつくことができる良さもありますが、逆に誰とも知らない人とつながる怖さもあります。現代社会への風刺が効いていて柳味を添えています。

●ジュニア特別賞:高橋 ゆい「朝日さす祈り祈られ今日受験」
 受験生らしい若さ溢れる新鮮な作品です。爽やかな笑顔とやる気が伝わってきて、「祈り祈られ」の繰り返しがなお効果を上げています。リズミカルで楽しい作風に仕上がっています。


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