はじめに
みなさん、こんにちは。ただいまご紹介いただきました、連合埼玉で事務局長を仰せつかっております平尾と申します。今日はよろしくお願いいたします。3年ぶりのリアルでの開催ということで、コロナ禍においては、みなさんも非常に大きな影響を受けているのかと思います。そういった中でこのようなかたちで、みなさんとリアルでの講義という機会をいただきましたので、ぜひリアルの講義の良さを大事にしながら講義を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
さて、連合寄付講座「働くということと労働組合」の9回目の講義「地域で雇用と生活を守る」ということで、我々連合埼玉の地域の活動を少しご紹介したいと思います。
最初に簡単に自己紹介をさせていただきます。約35年前、1988年に、沖電気工業のソフトウエア部門が独立した会社であるOKIソフトウエアに就職しました。私自身は金融システム部門に所属しまして、とりわけみなさんもお使いになったことがある、いわゆるATMのシステム開発からシステムエンジニアなどを現場でやっておりました。最近ですとコンビニATMなんかも置いていますが、ちょうどお金の取り出し口の右下くらいですかね、OKIと文字が入っている機械がありましたら、私の出身企業のATMですのでぜひ大事に使っていただければと思います。みなさん今ノートパソコンで授業を受けていますけれど、35年前当時は、机にパソコンもなかった時代、携帯電話もバッテリーだけで何キロもあるようなショルダーフォンが出たばっかりの時代に、情報処理産業に就職しました。なぜこんな話をするかというと、働いていたころの情報処理産業、今IT産業といわれていますけれど、長時間労働が日常茶飯事でした。今だから言いますけれども、200時間の残業とか、徹夜が5連徹とか、本当に当時は人間扱いされていないようなそんな現場だったと今さらながらに思います。というのは、当時のソフトウエア開発は、要はハードウェアを動かす付属品でしかなかったんですね。開発環境も本当にチープというか、なかなかない時代での開発ということもあって、非常に苦労をした経験があります。そういった背景もあって、ちょうど30歳のときに労働組合で少しでも自分たちの長時間労働を改善したいとか、あるいは職場環境を改善したい、そんな思いで、1994年から組合の役員をしております。
これまでのこの講座の中で、労働組合というワードは何度も出てきておりますけれども、私がいつも労働組合って何?って聞かれたときに必ずお答えしているのは、自分たちの会社や自分たちの職場を、自分たちの手でいい会社、いい職場にしよう、それが労働組合です、とお話ししております。やっぱり現場が原点だと感じているところです。労働組合役員として仕事をしながら勤めてきた中で、先ほどにあったような経歴で、専従の組合役員になって今こうして話をしております。
現在の連合埼玉では何をしているのかと言いますと、職場にいたころは会社や職場そのものを改善していこうということですけれども、連合埼玉は埼玉県に働く労働者、もしくは埼玉県に生活する労働者のために、少しでも働く人たちのために取り組んでいる、そんな組織だとご理解いただければと思います。
講義内容
本日の講義内容は、大きく6点あります。1つは労働組合における就業支援活動について紹介します。2つめは、安心して働くためにということで労働基準法などについて少し触れたいと思います。そして3つめに、みなさんの中にも奨学金を借りている方もいらっしゃると思いますので、その点について少し取り組みをしていますので紹介をしたいと思います。それから4つめはブラックバイト。みなさんの中にもバイトをされている方もいるかと思いますけれども、ブラックバイトのパターンについて少し紹介したいと思います。そして5つめが地域NPOとのかかわりで、私たちが地域で取り組んでいる活動について、とりわけNPOとの関係についてご紹介したいと思います。そして最後に新型コロナウイルスの影響による取り組みで、我々の職場もコロナ禍ですごい影響を受けているんですけれど、その辺の取り組みをご紹介したいと思います。
パワーポイントの右下にキャラクターがでております。ユニオニオンと言います。これは、労働組合の英語表記のユニオンと玉ねぎのオニオンを合わせた名前です。労働組合のユニオンは、いくつもの葉が重なり合ってできている玉ねぎ、オニオンが語源とされておりますので、そういったこともあってユニオニオンという名前です。ぜひごひいきにしていただければと思います。
労働組合における就業支援活動~既卒3年以内の方対象「就職面接会」~
それでは1つめの労働組合による就業支援活動として、私たちが若い方に対してどのような活動をしているかをまずご紹介したいと思います。そのひとつが既卒3年以内の方を対象にした就職面接会です。今年度は、2022年6月15日に実施しております。また、2年前の2020年度から、34歳以下の若年層も対象としております。この取り組みについては連合埼玉単独ではなくて、厚生労働省埼玉労働局と共催で行っている事業になります。
2010年に雇用対策法にもとづく青少年雇用機会確保指針が改正され、事業主が取り組むべき措置として、学校等卒業後3年間、新卒として応募できるようにすることが盛り込まれました。つまり2010年に改正されるまでは、大学を卒業して6月までは新卒だったのですけれど、わずか3か月後の7月以降は新卒扱いではなかった、7月以降はいわゆる社会人を経験した方と同じ扱いをされていたということです。それが2010年に指針が改正されて、学校を出てから3年間は新卒と同じ扱いをすることに変わりました。なぜこのように変わったかというと、2008年にリーマンショックがあったんですね。それ以降派遣切りとか雇用問題が非常に発生しました。そのころ当然新卒の採用も非常に絞られてなかなか仕事につけない、就職できない方も多く出た。そういったことを背景に国が既卒3年までは新卒扱いにしようと政策をとったことが背景になります。
この就職面接会について私たち連合は、できれば連合加盟組合のある企業に入社してほしい、あるいは加盟組織を通じて企業にこの面接会にぜひ求人を出してほしい、という取り組みを2011年から続けております。みなさんこれから就職活動をされると思いますが、就職先に労働組合があるか、または労働組合が連合加盟かどうかなど、ぜひ確認していただけるとありがたいなと思います。このスライドは、今年2022年度の就職面接会のポスターになります。こういった形で毎年労働局とハローワークが中心となって取り組みをしています。この共催の中に我々、正式名称が日本労働組合総連合会埼玉県連合会という非常に長い名前で、通称連合埼玉と呼んでおりますが、我々も共催で取り組みをしております。
この表は、2015年から2022年までに実施した就職面接会の実績数値です。まず参加企業数を見ていただくと2019年度までは、概ね100社程度です。これは応募した企業ではありません。もっと多くの企業がエントリするんですが、会場の関係で大体100社までということもあって、抽選で選ばれた約100社の参加企業が出ております。ただ2020年以降、コロナ禍で半数の人数に絞られて、これも会場の関係で52社、44社と少なくなっております。昨年からコロナ禍でも行動制限がなくなった背景もあって、かつ会場のキャパシティとの関係で79社の参加企業で実施しております。ちなみに参加企業数のかっこ内にある会社数が、連合埼玉から加盟組織を通じて依頼して参加していただいた数になります。昨年は9社と多くの企業に連合埼玉経由で出ていただきました。2段目の求人数は、それぞれの参加企業から求められた求人数です。人数は、2015年から見ると2019年にかけてかなり増えていきました。ちょうど人材不足で、2019年頃までは非常に高まっていた時代です。2020年になってコロナ禍でかなり求人数は減少していった背景がございます。今年からコロナ禍でもかなり経済活動が活発化していく中で、1,400名。いわゆるafterコロナといいますか、出口戦略としてそれぞれの企業が採用を活性化、活発化しているのが数字からも見てとれます。この数字の中でもうひとつ触れなければいけないのは、2020年からは34歳以下の若者も対象にした人数だということです。それまでは既卒3年のみでした。今、国をあげて就職氷河期時代に就職できなかった方々を対象にした就職支援活動を行っております。だいたい年齢が35歳から55歳の方々を就職氷河期世代と呼んでおりますけれど、そういった方々に対しては取り組みをしている中で、34歳から既卒3年の間のゾーンが手薄ということもあって、34歳以下の若者に対象を広げて、取り組みを始めたのが2020年になります。参加者数は、2019年まで空前の人手不足ということもあって、既卒3年の方もどんどん減って行ったのがこの数字のあらわれです。ただコロナ禍になって求人が抑えられると今度は参加者数が増えて行ったというのも数字となって出ております。アスタリスクの1とか2とつけているのは、既卒3年の方の数字で、実際の総数は34歳以下の若者も含めると2020年は211人、2021年には190人、昨年は179人という数字になっております。最後に採用者数ですけれど、上の段が全体の採用者数、かっこの中が連合埼玉からお願いした企業の採用者数で、2022年度は2名の採用、全体で17名になります。左下に書いていますけれど2015年から2022年度の累積者数は127名で、採用数としては参加者数の割にはそう多くない数字かと思いますが、この数字は企業が採用しなかっただけではなくて、学生さんが辞退した数字も反映していますので、最終的に双方がマッチングした数字として127名になっております。そういった状況の中で、今現在でいえば非常に人手不足感がでてきているのが見えてきているところでもあります。
そして、やはり求職者の事情というのは非常に様々だということです。実際新卒で採用はされたんだけれども自分の就職先は思っていたのと違うと辞めてしまった方もいらっしゃいますし、中には過重労働という方もいらっしゃいました。まさにもしかするとブラック職場という状況だったかもしれませんけれども、例えば長時間労働が多かったとか、休日に休みが取れないだとか、もしくは有給休暇がとりづらいというような状況の中で身体をこわして、これ以上働くのは無理だという方もいらっしゃったようです。新卒のときにアルバイトでいいやと就職活動をあまり真剣に行わなかった方もいらっしゃいますし、真剣に取り組んだのだけれどもいまだに就職ができない方もいらっしゃったということです。近年は、新卒の既卒3年の方も積極的な姿勢を感じます。以前は受付をしてしばらく座ったまま動かない方も結構いらっしゃったんですけれど、既卒3年と34歳以下の若者が一緒になったときに、就職に対する危機意識といったところが34歳以下の方は非常に強くて積極的に動く空気の中で、既卒3年の方も非常に積極的にブースに面接を受けに動くということもありました。
続いて今年2022年に行った就職面接会の企業側のアンケート結果です。79社すべてにアンケートを行った結果になります。まず1つめのクエスチョンは、新卒者の採用にあたって重視することはなんですかという問い。複数回答可で一番多かったのが「人柄・人間性」で79社中60社、約76%が「人柄・人間性」と答えています。次に「積極性・チャレンジ精神」が42社、「向上心・探求心」が30社と続いています。続いて2番目が、書類選考で不採用とする着眼点で、一番多かったのは「志望動機・自己PR」で37社です。そして二番目が「書類の不備・空欄が多い」で34社です。実はここ数年ずっと一番は「書類の不備・空欄が多い」でした。今回初めて「志望動機・自己PR」が一番になって、そのあとに「書類の不備・空欄が多い」になっています。あとは字の汚さとか誤字脱字とか訂正の跡がある等々が続いておりますけれども、学歴とか成績を重視する会社が非常に少ないこともご紹介しておきたいと思います。ただ「その他」が16社あるんですね。「その他」の中で「書類のみで不採用としない」と、何社かあげられていたのも特徴的だなと感じております。特に最近コロナ禍もあって、WEBでの書類申請、それからオンラインでの面談とか、リアルではないかたちでの就職面接があったと思いますけれど、そういったところからすると書類だけで不採用としないという点も、コロナ禍での企業側の課題としてあげられているのではないかと感じています。そして3番目、面接試験で不採用とする着眼点は、「やる気、意欲が感じられない」がもうずっと一番です。裏を返すとやる気、意欲がない人は面接で不採用とすることが非常に多いということです。その次が「礼儀・マナー・態度」「挨拶ができない」「志望動機があいまい」等々が続きます。「その他」では、目を見て話ができるかとか、周りの人と一緒に仕事ができるかということもあがっておりました。この結果を見て、みなさんお気づきのこととは思うんですけれど、1番の質問と3番の質問は表裏一体です。どちらもいわゆる人間性だとかあるいはコミュニケーション能力等、意欲もそうです、志もそうですけれども、表裏一体で非常に注目される点だと思います。一方この真ん中のクエスチョン2については、できて当たり前、できないとマイナスがつくというような位置づけのものと考えてください。ですので、そういった書類を書く時とかにはぜひご注意いただきたいと思いますし、それぞれの、みなさんが進路を決めて就職先を決めるときには、ぜひ志のところも大事にしていただければと思います。
労働組合における就業支援活動~東日本大震災県内避難者支援「ホームヘルパー2級養成講座」~
もう一つの就業支援活動、東日本大震災の県内避難者に対する支援についてお話ししたいと思います。2011年3月11日の東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の事故によって福島県の多くのみなさんが埼玉県に避難してきております。2022年10月現在でも埼玉県に2,487人がまだ避難されています。そのうち福島県から避難されている方は2,354人。埼玉県に避難されている約2,500人のうち約2,400人が福島県の方になります。ただ、もう10年以上経っていますので、避難というよりは埼玉県に長期間お住まいになっていて、今後避難者という扱いではなくて、きちんと地域の中で暮らしていけるように支援していくことが必要だと感じております。
東日本大震災の発生当時、我々様々な支援活動を行いました。当然物資も提供しました。埼玉県加須市にある旧騎西高校に、福島県双葉町の方たちが町ごと避難してきたということは、全国でニュースでも報じられて有名になっております。そこを含めて我々避難所をまわって、それぞれの避難場所で、ニーズを聞きながら物資を届けました。だいたい県内10か所くらい、この旧騎西高校は非常に人が多かったですけれど、あとは50人とかあるいは2、3人のところもありました。そういったところに何が必要ですかと聞きながら必要な物資を提供しました。3月11日から避難してきた方はほとんど冬服なんです。我々はちょうど5月頃避難所をまわったんですけれど、みなさん夏物の服がほしいということでしたので、すべての避難所に夏服を用意しました。当然非常に数が多いものですから高いものは買えませんので、しまむらというショッピングセンターに行って、大量に夏服の上下セットを提供しました。当時毎日避難所まわりをして、必要なものを聞いてそれをお届けした。そういったお金はどこからかというと、我々連合埼玉の組合員のみなさんからのカンパを利用させていただきました。だいたい1年間過ぎた頃に、避難者を支援している議員さんに、これからどんな支援をしたらよいかと聞いたところ、確かに避難者のみなさんはまだまだ物資が足りないので物資がほしいんですけれど、今本当に避難者のみなさんに必要なのは仕事なんです、雇用ですというお話をその議員さんからいただきました。さすがに連合埼玉で採用するのは難しいので、なにか働く場所を提供することができないかと検討した結果、ホームヘルパー2級養成講座の実施につながりました。この講座を連合埼玉で開催して、避難者の方に受講していただいて資格をとっていただこうと考えました。今もそうですけれど、介護現場で働く方々は非常に人材不足です。大変厳しい、今コロナ禍で厳しいところもあるんですけれど、まずそのための手に職を持つことができて、さらに就職に結びつくだろうと。なおかつ避難されている方ですので、埼玉県で資格をとったとしても福島に戻って資格を活用することができるということで、この講座を実施しました。この取り組みのための資金をどうしたのかというと、実は埼玉県には狭山茶という有名なお茶がございます。所沢とか狭山とか入間で栽培されているんですけれど、その狭山茶、実は震災当時、放射性物質であるセシウムが検出されました。当然最終的には埼玉県が全数検査をしてセシウムが出ないことを確認してから出荷しているんですけれど、しかしながら風評被害という、狭山茶の生産者にとっては非常に厳しいことで、検査してOKなのに販売してもなかなかお茶が売れないということで困っておりました。そこで連合埼玉として狭山茶を販売して、その売り上げの30%をお茶屋さんから私たちに寄付をしていただき、そのお金をホームヘルパー2級養成講座の取り組みの費用にあてました。組合員のみなさんや関連する企業、それから近隣の地方連合会にご協力いただいて狭山茶を1,000万円売りました。その3割となる300万円を元手にホームヘルパー2級養成講座を実施したということでございます。中には、そのホームヘルパー2級養成講座で資格をとった方々が、避難先の地域貢献ということで、埼玉県杉戸町に障がいのある子どもたちのデイケアサービスの施設を作り、すでにスタートをしたということでございます。当然我々雇用の場を作ることはできませんでしたけれど、資格取得などを通じて就労支援を行う取り組みができたということでございます。その当時我々が取り組んできたホームヘルパー2級養成講座が、仕事につなげる支援ができたということで新聞にも取り上げられたということも知っていただければと思います。
安心して働くために
それではここから、安心して働くためにということで労働法関係について少しご紹介したいと思います。まずこの映像は兵庫県神戸市にある、日本で初めて8時間労働制が生まれた場所になります。当時ここには川崎造船所があって、1919年10月1日に川崎造船所が8時間労働制を導入したことから、この記念碑が神戸に立っております。もしみなさんが神戸に足を運んだ際にはご興味があったら見ていただければと思います。
では、安心して働くためにということで労働基準法の話をします。みなさんは労働基準法をご存じかと思います。おそらく中学校とか高校で、授業の中で聞いたことがあるかと思います。労働基準法は、簡単にいうとこの法律で定める労働条件を下回る働き方はしてはいけないし、させてはいけないという法律です。労働基準法ができたのは1947年、もう70年以上経っています。ちょうど5年前、国会で働き方改革関連法が成立しております。その関連法にしたがって労働基準法が70年ぶりに改正されて、長時間労働の是正ですとか、有給休暇を企業が指定して取得させることができるとか、また同一労働同一賃金などが決められました。そしてこの法律では基準を上回る働き方は企業と労働組合との間、経営者と労働者の間で決めることができると定められています。労使の中で労働基準法以上の働き方を決めるのは当然自由になりますが、労働基準法の第1条、労働条件の原則では、労働者が人たるに値する生活を営むために、とあり、ポイントのひとつだと思います。この大元は憲法25条の生存権の保障にもとづいております。また第1条2項の労働関係の当事者は、これは企業だけではありません、働く人もいます、さらにその向上を図ることに努めなければならない、すなわち労働条件を低下させてはならない、向上させなければいけないとなっております。そして第2条、労働条件の決定が定められていますが、労働条件は労働者と使用者が対等な立場において決定すべきもので、決して会社が一方的に決めることではない、ともされています。そして第2条の2項には会社と労働者が一緒に決めていくわけですから、企業だけが守るのではなくて労働者もしっかりと守らなければならないという責務が双方にあるとなっています。労働基準法の詳しい話をすると当然時間が多くかかりますので、今日みなさんのお手元に労働法ハンドブックをお配りさせていただいております。最低賃金等、昨年の数字になっていますので若干古いところもありますけれど、ぜひ内容については、一度目を通していただければと思います。例えばパート労働者が有給休暇をとれないと思っている方もいらっしゃったりするのですが、労働時間や1週間の勤務日数に応じて有給休暇は当然アルバイトでもとれるということです。割増賃金の話だとかも書かれておりますので、アルバイトをされている方などはぜひ参考にしていただければと思います。
次に最低賃金の話をいたします。最低賃金法の第1条、目的の条文に、賃金の最低額を保障することにより労働者の生活の安定、あるいは労働力の質的向上および事業の公正な競争の確保に資するとともに最終的には国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする、と書いてあります。また9条、10条には最低賃金は各地域で決定されるとなっています。この地域とは各都道府県を指しますけれども、各都道府県で最低賃金を決めてこれ以下の賃金で働かせてはだめだよ、働いてはいけないという法律になっております。この最低賃金、高校生のアルバイトや外国人労働者にも適用されます。埼玉県では埼玉地方最低賃金審議会で最低賃金を決めております。したがって各県によって異なるのでぜひ知っておいていただければと思います。こちらのスライドは、関東の各都県の最低賃金を記載しております。最新の数字になっております。昨年10月1日から埼玉県の最低賃金は987円になりました。昨年から31円アップして引き上げ率3.24%です。今年は物価高、今も続いておりますけれども、3%を超えるような物価上昇もあって最低賃金の3%引き上げになっております。ですから今埼玉県内で987円未満の時給で働いているとすれば、それは最低賃金法違反になりますので、これは事業者が見直さなければならないということになります。もし東京都内でアルバイトしている人がいれば、東京都の最低賃金は1,072円ですので、したがって東京都でアルバイトをする場合はこの1,072円を下回る金額で働くこと、これも最低賃金法違反になります。アルバイトをされている方はぜひこういった数字を確認していただければと思います。
もうひとつ、特定最低賃金というものがあります。これも埼玉県の中で、ある一定の業種、例えば非鉄金属製造業とか電気機械器具製造業、あるいは自動車小売などの特定の業種に対して基幹的労働者の最低賃金を地域別最低賃金よりもさらに高い最低賃金として設定しているものでございます。こちらも、それぞれの産業の労働組合が一緒になって、審議会に参加して審議を行っております。ここにいるみなさんには、この金額、この職種で働いている方はそんなにいないかと思いますので、特定最低賃金というのがあるということを、ひとつ知っておいていただければと思います。
若者を苦しめる奨学金問題の解決を!
続いて若者を苦しめる奨学金問題の解決ということでお話しします。こちらに記載しているのは奨学金の負担実態を表した図になります。左側の家族で支えている絵は、各家庭が年間に負担している教育費の実態です。年間の平均で75.1万円の教育費を負担していることになります。また学費は国公立大学で53万円、私立大学で108万円の負担がのしかかっています。右のほうは就職して奨学金を返済している実態で、奨学金の借入額の平均が324万3,000円、毎月の返済額が16,880円、平均の返済年数は14.7年といった実態になっているということです。今の状況からいくと学生の二人に一人は奨学金を借りているのではないかともいわれています。
本来大学に進学してもっと学びたいと思いながら、親の収入の少なさで、将来の進学の夢を踏みにじるといったことは到底あってはならないと思います。仮に高校を卒業して、就職しようと思った場合でも、じゃあ今の高校卒業後に求人ってどのくらいあるのでしょうか、という話も一方であると思います。今現在ではかなり高卒の求人状況が変わっているのですけれども、過去30年振り返ると、一番高校卒業の就職が良かったのはみなさんが生まれる前の平成4年です。数字にして全国で150万人の高卒の求人があったといわれています。一方で一番低かったのが平成23年。平成4年の10分の1の19万人まで高校卒業後の仕事先が減ったという状況になっています。ただ近年は、令和2年3年と少しずつ持ち直してきていると思いますけれども、それでも令和2年では高卒は48万人ですとか、ちょっとコロナがピークのときは33万人くらいに落ち込んで、今年は42万人くらい。令和5年で、そのくらいが高卒の求人数になっています。ただ今の現実は、ちょうど平成10年を皮切りに大卒と高卒が入れ替わりました。昔は高卒の方が多かったのですけれど、今大卒で就職される方が多くなっています。ひとつは先ほど言ったように高卒の仕事先がなかったというのがその当時の背景で、どうしても就職先がなくて専門学校とか大学に行くという選択肢しかなかった背景があったのかと思います。今は逆にもう高校卒業して上の学校をめざしてから仕事に就くという方が非常に多くなったということで、そういったこともあって奨学金を借りる方も増えていると聞いております。一方で奨学金を借りなければならないもうひとつの要因は、親の収入が減っているということもありますし、親に負担をかけたくないという思いのあるお子さんもあって奨学金を借りることもあると聞いております。先ほどの絵にもあったように、大学を卒業したときに平均300万円の返済金を持って社会に出ますから、正社員で働いていればまだいいんですけれども、パートや嘱託、派遣などの雇用形態で、それも年収300万円以下で、300万円以上の借金を背負った状態で社会に出なければいけないというのが今日本の社会となっています。返済に10年もかかるわけです。毎月の返済額が約17,000円。それを学卒の初任給20~21万円くらいの中で返済していかなければならない。そういった状況からすると、非常に厳しいのが実態かと思います。そういったことが非常に学生を苦しめている、学生さんが就職して苦しんでいるという実態がございます。
ちょうど2015年度に、こういった実態を踏まえて連合と一緒に活動している労働者福祉協議会が中心となって、連合も一緒に取り組んで、奨学金問題の解決のための署名活動を実施しました。2015年から2016年にかけてやったんですけれど、全国で約304万筆の署名を集めて国会に対して請願をかけました。その結果2017年度から法律が変わりました。今の日本の奨学金について簡単に言うと奨学金という名の教育ローンです。借りたら返さなければいけません。ただ、諸外国の奨学金はほとんど給付型です。返済しなくてもいいことになっています。これが2017年の法律改正によって日本学生支援機構の目的と義務の中に学資の支給つまり給付型奨学金が追加されております。ただ給付型奨学金というのは非常に条件が厳しかった。最初導入したころ厳しくて、大体全国で1学年2万人くらい、月額2~4万円くらいが支給された。ひとつの学校で1人か2人給付を受けている、そういったようなのがスタートでした。そのあと継続した活動を行って、2019年にさらに拡充が行われて2020年4月から世帯別年収に伴う支給額が異なりますけれども、給付型奨学金の金額が増額となっております。引き続き我々としては給付型の奨学金を拡充するとともに、せめて、無利子の奨学金の流れを作って無理のない返済に改善したり、そもそも教育費の負担を軽減していきたいと思っております。こちらのスライドは、奨学金制度の詳細で文部科学省のホームページに掲載されておりますので、ぜひご確認いただければと思います。
ブラックバイトのパターン
続いてブラックバイトのパターンについてお話しいたします。ここにいるみなさんもアルバイトをされている方も多いのではないかと思います。中には新型コロナウイルス感染症が拡大したころ、あるいは緊急事態宣言とか蔓延防止等重点措置などが発令して行動制限がでているときはバイトなんかもうできなくなったのではないかと思います。今そういったバイトをされている方の中には、もしかすると今回のブラックバイトのケースに当たる方もいるかと思いますので、その点聞いていただければと思います。
まず、職場への過剰な組み込み、あるいは緊急の呼び出し、または長時間労働、深夜勤務、シフトの強要、複数店舗・遠距離のヘルプとか、責任感で辞めさせない、ノルマ・罰金・商品の自腹購入。どうでしょうか、聞いたような言葉がありますか。例えば夜中に明日入ってくれないかと突然電話がある、もしくはLINEが入る、もしくは深夜の勤務に入ってくれないかとか、本来シフトで入っていた人が体調を崩してシフトが組めなくなったので入ってもらえないかということ、最初から交代勤務者がいないのにそういった依頼をすることもあろうかと思います。経営側としてちゃんと十分な人、アルバイトを雇って、まわしているんであればまだいいんでしょうけれど、続けて勤務することを前提としてやるようなことをブラックバイトと呼ぶパターンの一つかと思います。
長時間労働もそうですし、特に責任感で辞めさせない、辞めたいと言っても「もし君が今辞めたらアルバイトしているほかの仲間はどうなるの、君の分ほかの人たちに負担がかかるよ」とか、プレッシャーをかける、責任を追及することで結局辞められないということもあります。
商品の自腹購入、クリスマスシーズンのケーキ販売なんかはもしかすると経験がある方もいらっしゃるかもしれません。こういったノルマ、売れ残れば自分で買わなくてはいけない、そういうことが実際にはあるのだと思います。最近最低賃金がより急激に上がってきていますので、かなり救われている部分はあるんじゃないかとは思いますけれども、法律違反にはなりませんが最低賃金ぎりぎりでまかなってしまう、上げようという意識がない、なるべく安く働かせてというところもあるかと思います。未払い賃金、サービス残業、なんか善意で働いている残業ではないです、不払い残業ですね。お金を払わない残業ということでサービス残業ともいわれていますけれども、そういったところ。あとは仕事の道具を自腹購入とか、あるいは不十分な研修で即戦力化とか。ある牛丼チェーンのアルバイトで採用された方が、ほとんど研修のないまま店に立たされて牛丼の作り方がわからない、自分のスマホで調べて作っちゃったみたいな、そんな話もあったと聞いております。
職場の論理に従属させる人格的支配、いわゆるパワハラですね。そういったことです。不当な内容の労働契約書による支配などもあります。例えば契約書にどんな内容が書かれていたとしても、みなさんがハンコを押したとしても、法律で認められないようなものはすべて無効になるわけですけれども、アルバイトのみなさんは気づかずにお店の方から、君はハンコを押したじゃないかと迫ってくるわけです。いざ辞めようとすると、君が辞めることによってこの店がどれだけ損害が出るか分かっているかと損害賠償金、違約金を払えみたいな、そんなこともブラックバイトのパターンと言われております。そういったことは経験されないほうがいいんですけれども、そういった経験があるようでしたら、お困りの方は、労働相談ダイヤル、のちほどご紹介しますのでぜひそちらに連絡をいただければと思います。
地域・NPOとの関わり
地域・NPOとの関わりについてご紹介します。我々連合埼玉は、ネットワークSAITAMA21運動という、出会い・つながり・支えあいをキーワードにした活動を行っております。大きな取り組みの柱としてはここに記載の、共生の地域社会づくりへの積極的参画ですとか、勤労者の生涯サポート活動、市民社会との連帯と協働ということでやっております。
共生の地域社会づくりへの積極的な参画ですけれども、特に埼玉県は他県から転入する方が非常に多い県です。したがって今急速に高齢化社会が進んでいます。埼玉県では75歳以上の高齢者人口が全国一のスピードで増加中です。少子高齢化社会における子育ての問題、介護の問題、様々な課題を抱えております。介護、子育て、多くの問題、これは、地方行政、市町村の課題ですけれども、国が法律を決めますので、しっかりと実施をするのは市町村です。我々はその地域に根付いたかたちで地域の社会づくりに積極的に参加をしております。
勤労者の生涯サポート活動もやっております。みなさんには60歳の定年はまだまだ先の長い話ですけれども、高齢化社会が続いている中で、60歳以降を見据えた準備ということです。平成29年のサポートアンケートでは60歳以降で何も準備をしていないという方が37.2%あったんですね。最近になって29.7%と、準備をする方が少し増えてきた。健康や体力づくり、あるいは知識技能の習得等についても以前よりも学ぶ方が増えてきている、そういった取り組みをしております。
もうひとつは市民社会との連帯と協働になります。労働組合とか我々と一緒にやっております労働者福祉協議会(労福協)、それから労働者のための労働金庫、あるいはこくみん共済coop<全労済>、そしてこの埼玉大学にありますけれど生協、いずれも働く仲間の支えが原点の組織になります。そういった組織・団体のみなさんと一緒になって地域の市民社会に貢献する共生の地域社会づくりに向けてこのネット21運動で取り組んでおります。
ネットワークSAITAMA21運動とはどういったことをしているのかというと、具体的には大きく3つのプログラムを用意しています。我々働く者の暮らしと地域の社会、市民活動を応援する3つのプログラムと特別事業です。1つはライフサポートプログラム、2つめはボランティアサポートプログラム、3つめはNPOサポートプログラム、そして特別事業として東日本大震災の被災者・避難者支援活動を実施しております。
1つめ、ライフサポートプログラムでは、勤労者の生活と暮らしに役立つ暮らし応援セミナー(出前講座)を開催したり、あるいは生活困窮者支援活動、フードバンク、こども食堂などの支援を行っております。出前セミナーで具体的にどういうことをやっているのかというと、2019年度は年間27セミナーで相続、年金、資産運用とここに書かれているセミナーを実施しました。このセミナーを通じてそれぞれの地域社会での困りごととかを支える地域社会づくりの支援をしております。ただコロナ禍になって、なかなかこういった会場でのセミナーが開けなかったこともあって、2020年度は4セミナー、少しずつ持ち直してきている2021年度は6セミナーという状況になっています。
2つめはボランティアサポートプログラムになります。こちらはボランティア活動を地域でやりたいと思う人とボランティア活動をしてもらいたいNPOのみなさんを結びつける取り組みをしております。そのためにシニア人財バンク制度を設けましてそちらに登録していただく、その登録した人とボランティア活動の橋渡しをやっているというのがひとつです。もう一つは自然環境のボランティア促進活動事業で、夏休み親子・ファミリー自然体験in尾瀬とか、山の学校inときがわなどをやっておりました。が、これも残念ながらコロナ禍の影響でこの2年間見送りとなっております。
3番目はNPOサポートプログラム。NPO団体には、活動はされているものの資金がなくてパソコンとかもなかなか買えないという団体もあるものですから、2007年から、毎年パソコンを平均10台ずつ寄贈しております。通算で147台を寄贈しました。この間147台寄贈したこともあって、100を超えるNPO団体のみなさんを訪問したり意見交換などを実施してNPOとのつながりを持っております。NPOの応援ということで、少額物品のプログラムもやっていまして1団体4万円以内ですけれども、毎年助成していまして、今までで28団体、約100万円近い助成をしております。もうひとつNPOサポートプログラム、NPO団体と地域で繋がろうということで2004年からおじさん変身講座という、ちょっと変わった名前をつけております。仕事を終えて、地域に溶け込もうとするときにその当時男性が非常に多かったものですから、男性退職者が多いということで地域デビューを込めておじさん変身しましょう、というタイトルで付けたのがスタートです。ただ現在は、地域で繋がるNPOと労働組合ということで、団体同士でマッチングするような地域セミナーみたいなことをやっております。こちらの写真はネット21運動で繋がるNPOと労働組合のシンポジウムです。これ右上は連合埼玉の近藤会長が代表で話をしております。あと下は、地域セミナーで、こういった会場で、グループワークをしながらそれぞれの地域のNPOのみなさんと労働組合をつなげていることもやっております。
特別事業としては東日本大震災被災者・避難者支援活動になります。夏休み親子自然体験の山の学校inときがわですとか、子育て支援ママランチ会、バーベキューファミリー交流会inサイボクハムということで、先ほどお話しした東日本大震災の福島からの避難者のみなさんにお声をかけて、そういった交流の場を持っておりました。こちらも、コロナ禍で人を集めることができない状況もあって、この2年間実施を見送っている実態で、その前はこういったかたちでバーベキュー、ママランチ会などやったりしております。
この運動、当然お金がなくてはできませんので、この費用を、ふれあいコミュニティファンドというファンド化して実施しております。大きな資金源は2つです。1つはネット21ボランティアカードになります。それから団体と個人からの寄付で実施しております。ネット21ボランティアカード、今日参考にみなさんにお配りしております。本来ですと500円をいただいてそのお金を資金源としているんですけれど、今日お配りしているのは今年の3月31日までのものであと2か月ちょっとしか使えないので、ぜひみなさんにはお試しで使っていただければと思います。こういったカードを買っていただいて、その一部をこのネット21のボランティアの運営費に活用させていただいているということです。このカードは、寄付の役割もありますし、福利厚生サービスの役割もあって、例えば台紙に書かれているお店の10%引きが受けられるとか、あるいはりそなさんという福利厚生サービスがあって、全国各地で使えるホテルとかレジャー施設ですとか、あと様々な映画のチケット、イオンシネマさんとかそういったものが割引で受けられるサービスになっております。スマホで登録していただくと使えるので、登録していただくという取り組み方針にしております。2022年度の寄付金は268万6,376円です。そのほか団体の寄付として、協賛企業から年額36,000円をいただくのと加えて、利用頻度にあわせていただいたりもしています。最終的には2021年度は770,340円いただいております。そのほか労働組合の組合員さんからの寄付ももらっています。最後、決議機関については、当然透明性もございますので、任意団体として運営規定とか会計規定に沿って、健全な活動をしております。より透明性のある、社会から信頼できる組織として運営しております。
新型コロナウイルスの影響による取り組み
最後に新型コロナウイルス感染症の影響の取り組みを少し紹介したいと思います。この新型コロナウイルス感染症の影響については、地域社会や職場の方には大変大きな影響を与えておりましたし、今もまだ継続しておりますけれども、みなさんの学生生活も非常に影響を受けたのではないかと思います。我々はこういった影響を受けたみなさんに対して特に医療物資の支援と食料支援、フード支援、あと県への要請活動を実施させていただきました。
まず私たちの職場に与えた影響ですけれども、ひとつは雇用への影響です。人の移動に制限がかかって、三密を避けて、経済活動が停滞すると特に飲食業、観光業、旅行業が大きな影響を受けております。例えば航空業界もそうですし、旅行代理店もそうですね。バス、観光バスもさらに影響を受けました。働き方の変化としては、感染防止の観点から非接触だとか分散とか、ネットワークがキーワードになりましたけれども、特にテレワーク、在宅勤務が急速に普及して新たな働き方へ変化しました。仕事の偏りではエッセンシャルワーカー、特に医療従事者とか宅配業者等が大きく仕事が増えて非常に偏った状況になっております。
医療物資の支援としては、マスクなどを提供しました。フード支援は、フードバンク埼玉にカップ麺の備えをしましたし、埼玉大学のみなさんには、ちょうど2年前に鐘塚公園で行われたフードパントリーを実施しました。そのときは非常にみなさんにご協力いただきましてありがとうございました。
県への要請活動は、こういった感染症の影響によって雇用の影響とか働く仲間の職場の要望、地域社会にかかる要望などを県の大野知事に対して要請をかけてお願いしたということでございます。
おわりに
最後にみなさん、アルバイトとか色々困ったことがありましたら、なんでも労働相談ダイヤル「0120-154-052(行こうよ連合に)」と覚えていただければと思います。
それでは以上で私の講義を終わります。ご清聴ありがとうございました。