埼玉大学「連合寄付講座」

2015年度後期「働くということと労働組合」講義要録

第4回(10/20)

非正規労働者の処遇改善をすすめる

ライフ労働組合執行委員長 田岡 庸次郎

1.本日の講義内容

 私の所属している組織、ライフ労働組合はいわゆる企業別労働組合ですが、企業別労働組合というのは、そこに所属する組合員は、その企業で働いている人に限られているという組織です。皆さんライフに限らずスーパーマーケットに1回以上は買物に行かれたことがあるのではないのかなと思いますが、売場を思い浮かべていただくと、女性のパートタイマーさんが、品出しやレジ打ちをしている姿を想像できるかと思います。ご想像の通り、ライフでは従業員の80%以上がパートタイマーであり、今日のテーマ『非正規労働者の処遇改善をすすめる』は、非正規労働者にもいろいろありますが、パートタイマーの処遇改善をどのように進めてきたのかを中心に話を進めていきたいと思います。

2.会社と労働組合の概要

(1)会社の概要
 株式会社ライフコーポレーションは創業54年、大阪の豊中で1号店を出店しました。営業収益は今年の2月で約5,394億円。本年度は6,200億円ほどの売り上げを見込んでおります。スーパーマーケットにも様々な種類があり、当社は食品スーパーです。売上構成比の70%以上を食品が占めるお店を食品スーパーと言いますが、あまり知られてはいませんが単独の企業では日本最大規模のスーパーとなっています。従業員数は38,649名、この中には学生アルバイトも含んでいます。店舗数は255店舗(首都圏111、近畿144)です。

(2) 労働組合の概要
 会社ができたのは1961年、労働組合はその10年後の1971年に誕生しています。執行委員の任期は1年で、毎年選挙で選出されます。組合費から給料を支給され、組合の仕事だけをやる専従者は14名、会社の仕事をしながら組合活動をする非専従者は12名となっています。組合員数は17,872名です。2012年9月当時、約1万名のパートタイマーが労働組合に加入されました。それまでは、ほぼ正社員限定の労働組合でした。
 ライフはユニオンショップということで、入社すると全員が労働組合に加入します。しかし組合員資格にも制限がありまして、例えば60歳がライフの定年となっていて60歳以上は再雇用ですので、労働組合の組合員も60歳までとなっています。また会社の経営側の役職、部長以上に就きますと組合員からは外れます。その他、週に短時間(16時間未満)、1日の労働時間が2~3時間という勤務の方は組合員ではありません。

(3)パートタイマーの雇用区分の違い
 パートタイマーであるロング、ミドル、エムエスの違いは労働時間にあります。ロングは週に30~35時間、ミドルは週に20~25時間、エムエスは月間80時間以内です。組合員範囲外の雇用区分であるショートという区分は週16時間未満ですが、ショートのSとミドルのM、その間の働き方をエムエスと区分けしていて、労働組合の組合員としてはロング、ミドル、エムエスの方々までとなっています。
 雇用区分による違いは、労働時間の他に、賃金、休日、転勤範囲、配置転換があります。配置転換と言うのは、例えば私は果物・野菜を扱う農産部で勤務していましたが、魚屋の水産、お肉の畜産、あるいは本社のチラシを作成する販売促進や、仕入れ担当の商品部など他の部署へ異動になることです。正社員の場合は会社の命令により部署を変わる可能性がありますが、嘱託や契約社員、パートタイマーは、雇用契約に応じて、本人の同意をいただかなければ配置転換できないこととなっています。それ以外、職務内容、役職任命などの違いがあります。組合員17,872名の内いわゆる非正規労働者が13,265名、74.2%になっていて、労働組合活動そのものが非正規労働者中心となりつつあります。

3.パートタイマーとは

 何をもって非正規労働者というのか、定義があるのかというと、様々な統計でその時々に定義付けすることはありますが、公式の定義はなく、一般的には正社員ではない雇用区分を指すのであろうと認識しています。
 ライフにおいても、特に会社側の捉え方は、正社員以外を非正規と捉えており、何が正社員かというと、先ほど、雇用区分ごとの働き方の違い、労働時間や勤務時間、転勤の有無などがありましたが、会社の思惑通りに働いてもらえる、会社の都合にあわせて働ける労働者を正社員と呼称し、生活に軸足を置いている、働く時間や休日を固定していたり、転勤するエリアが限られたりしている雇用区分を非正規と捉えています。
 パートタイマーについては、厚生労働省が定義付けをしていていますが、それは『1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者』となっているものの、その呼称は企業により異なり、ライフでは、ロング、ミドル、エムエス、組合員範囲外のショート、これらをパートタイマーと区分しています。
 人員構成で、ライフにおける非正規は嘱託、契約社員、パートタイマー、アルバイトを指しますが、非正規に占めるパートタイマーの割合が97.7%ということもあり、本日のテーマは『非正規労働者の処遇改善』となっていますが、今背景をお話ししたとおり、パートタイマーの処遇改善をどのように進めてきたのかについて、この後説明をしていきたいと思います。

4.パートタイマーと労働組合

 労働組合は何をしているかというと、1つに処遇改善があります。処遇改善というのは賃金、ボーナス、労働時間を短くする、休日休暇、つまり休日を増やし有給休暇を増やしていく、などがあります。しかしもう1つ、労働組合はそもそも組合員を増やしていくというのが大前提となっています。先ほど労働組合の概要の説明で触れましたが、1971年、今から44年前に労働組合が結成され、当初は店舗で働いている人のほとんどが正社員だったということもあり、正社員のみで労働組合を作りました。
 その後、働き方が正社員に近い、嘱託、契約社員、それからパートタイマーのロングの最上位等級の方々数百名に今から30年前に組合に加入してもらい、一緒に活動してきましたが、その人数の割合は少なく、2012年に約1万名のパートタイマーが加入するまでは、ほぼ正社員の処遇改善、これに力を費やしてきました。2012年にはおよそ1万人のパートタイムの方々に労働組合に加入していただきましたが、逆に言うと2012年の11月まで40年間はほぼ正社員だけで活動してきましたし、正社員の賃金や労働時間の改善、正社員だけの処遇改善をしてきてしまった、これはまさに「してきてしまった」という表現が正しいかと思いますが、そういう組織でした。それがなぜパートタイマーの皆さんを労働組合に加入いただくようになったかというと、理由が4つあります。

(1)“量”の拡大
 1つ目は量の拡大、パートタイマーの人数が増えたということがありますが、これは女性の働く場という視点でみると、1960年代に入って全国各地にスーパーが出店し始めますが、それまで結婚、妊娠、出産、育児を理由に家庭に入った女性が、その後再び仕事をするにも、工場勤務や内職といった仕事くらいしかなかったところ、近所で自分にとって都合のいい時間だけ働けるスーパーは、働き手にとって都合の良い存在だったといえます。また、企業側からみると、加工作業、陳列作業、レジ打ちなどを、低賃金、つまり安い労働コストで、働いてもらえる存在ということで、双方の都合が合致し、どんどん増えてきたという状況があります。
 2011年当時、全体の84%がパートタイマーで従業員の過半数以上を占める存在となっており、店舗、各部門の運営を支えているのは数的に見てパートタイマーとなっていました。ですからそもそも労働組合というものが、労働者の処遇を改善していく組織ということであれば、その大半を占めるパートタイマーにこそ労働組合の組合員となり、パートタイマーの賃金、労働時間、休日・休暇や福利厚生など処遇を改善していく必要がある、という認識をもっていました。
 また、量が拡大したことを異なる側面からみると、正社員中心の労働組合はもはや過半数代表ではなかった、という側面があります。その時点で労働組合の構成は、全従業員比率で見た時に約12%しかなく、各種協定、例えば労働基準法上、時間外労働つまり残業について、労働組合と協定(労働基準法第36条から取って「サブロク協定」といいます)を結ぶ必要がありますが、法律で「労働者の過半数を代表する労働組合と協定を図る」ということになっており、労働組合側の都合としても、約1万名のパートタイマーに組合に入っていただく必要がありました。

(2)“質”の変化
 2つめの要因としては、働くことの質が変わってきたということです。毎年春の時期に、会社側と労働条件面、処遇の改善に向けて交渉する、春季生活闘争(いわゆる春闘)をライフ労働組合でも取り組んでいますが、昨年の春季生活闘争は、特にパートタイマーの処遇改善に力を入れて取り組み、その様子についてNHKから取材を受け、「クローズアップ現代」で放映されました。
 昨年の春季生活闘争では、パートタイマー、契約社員の定期昇給制度の導入を要求しました。一般に、定期昇給制度とは、決まった時期に賃金が上がっていく制度で、正社員には多くの企業で導入されている制度と思います。ライフでもパートタイマーや契約社員には定期昇給制度が無かったことから、要求することになりました。
 昇給は等級が上がることにより実現しますが、パートタイマーが入社した場合、等級は0からスタートし、上限5級まででした。等級が上がるには、評価、あるいは面接、筆記試験などをクリアしなければなりませんが、3級から4級、4級から5級になるには、パートタイマーは店舗ごとの採用にもかかわらず、わざわざ本社まで行って面接を受けなければならず、それが実際に難しいなどの理由もあり、なかなか時給が上がらないといったことがありました。ですから場合によっては10年以上3級のまま、全く時給が変わらない人も多数いました。2012年9月に労働組合に加入するまでは、0~3級のパートタイマーは組合員ではなかったため、賃金制度の改定について労働組合として要求することもできなかったためです。しかし労働組合加入後、昨年春には、毎年、少しでも評価によって賃金が上がる仕組み、定期昇給の要求を実現できました。
 NHKが取材に入ったのは東京・葛飾区にある奥戸海道店で、インストアベーカリー、パン屋で勤務するパートタイマー、ロングの稲葉さんに密着したものですが、定期昇給を要求した理由として、店長のコメントにもありますが、正社員の肩代わりをしている、ということがあります。
 この部門、今は、パートタイマーだけで部門運営しているのですが、2年前までは正社員が配属されていて、会社側が、稲葉さんなら正社員がこなしていた作業ができるであろうということで、正社員を引っこ抜き、正社員がこなしていた業務をほとんどそのまま、仕入れ、製造の管理に加え、他のパートタイマーの勤務シフトを決めるという労務管理までを稲葉さんがすることなっていた、という状況でした。
 それにも関わらず、稲葉さんはロングの5級ではありましたが、時給もそれ以上には上がらず、正社員には支給されていたチーフ(部門を統括する)の手当、月1万5千円もなく、ボーナスの水準も正社員の5分の1の水準でした。おかしいと思いませんか。僕はおかしいと思いますが、こういった背景から労働組合は処遇改善を要求していくということになりました。
 働き方が、固定、定型作業をしていた時から大きく変わって、職務範囲を正社員とほぼ同じような働き方を求めるなら、それに見合った水準の賃金に上げる仕組みを導入するべきだ、という交渉をしましたし、交渉するためにも、多くのパートタイマーに労働組合に加入いただいた、と言うことです。

(3)上部団体方針
 理由がもう2つありますが、3つ目は上部団体の方針です。私たちライフ労働組合は、同じ産業の労働組合である、イオンやイトーヨーカドー、ヤオコー、サミットなどのスーパーマーケット、また髙島屋や三越伊勢丹などの百貨店、その他マツモトキヨシなどのドラッグストア、ホームセンターのニトリなど、他社の企業別労働組合と協力し、産業別労働組合のUAゼンセンを通じて連携した活動をしています。その上部団体の方針としても、パートタイマーを中心とする非正規労働者の処遇改善の前提として、まずは労働組合に入ってもらおうとしていた、ということがあります。

(4)労働組合は“誰”のものか・・・
 そしてあともう1つ、パートタイマーに加入いただこうと考えた理由は、(1)の量の拡大とも関連しますが、そもそも、労働組合は誰のものなのかを考えた時、最初に結成した時には会社で働く人はほぼ正社員だったので、正社員限定の活動、正社員の賃金、正社員の労働時間、正社員の働く環境の改善などを行うのが当然でしたが、働く仲間の構成が変わってきて、スーパーの売上や利益を生む生産行為をしているのは正社員だけではなく、多くのパートタイマーであり、企業として生んだ利益である成果の配分は当然、パートタイマーにも配分するべきであり、成果の配分交渉をする前提として、まずもって労働組合に加入いただく必要があるということがありました。ですから、当時約1万名いたパートタイマーのお一人おひとりに労働組合の活動内容や、意義などを説明し、理解、納得の上加入いただきました。
 実は、パートタイマーに労働組合に加入してもらおうということは、私個人が勝手に決めて物事を進めていくのではなく、執行委員長になった直後から執行部全員で議論を進めていました。2年後の2010年、当時執行部は22名の執行委員で構成されていて22名全員が正社員でしたが、議論を進める中、執行委員会で執行部としてパートタイマーの組合加入を進めるのかどうか採決を取ったところ、反対多数で否決されてしまったのです。
 それまで十分に議論を重ねてきて、パートタイマーの労働組合加入が満場一致で進むものだと自分では確信していましたし、それが慢心と言えばそうなのかもしれないのですが、当時の、特に非専従の執行委員から反対されてしまいました。
 反対した執行委員に意見を聞いたところ、パートタイマーが労働組合に加入すると、パートタイマーの処遇の改善ばかりが進むようになり、正社員の処遇の改善ができないのではないか。あるいは、パートタイマーの時給やボーナスなどの賃金を上げる時に、正社員の人件費を削って、自分たちの賃金が下がるのではないかといった、何とも勝手な言い分で、既得権とは恐ろしいなぁ・・・と痛感しました。その後1年かけて、イオンや西友など、先行してパートタイマーの労働組合加入をしているところのその後の活動をお聞きし、実はパートタイマーが働きやすく、納得感が高まる環境を作ると、正社員にとっても環境が改善するということを執行委員に説明して、理解、納得してもらい、翌2011年に改めてパートタイマーの労働組合加入を進めることを満場一致で可決して、その後1年かけてパートタイマーに労働組合へ加入してもらう活動を展開したということがありました。

(5)パートタイマーの処遇改善
 労働組合に加入していただいたことで取り組めるようになったパートタイマーの処遇改善についてお話しします。そもそもライフで働くパートタイマーは処遇の改善において何を望んでいるのかを、直接お聞きしたり、アンケートを通じて意見集約したりしています。昨年の2014年6月にとったアンケートでは、そもそもライフに勤めていることをどう思っているのか、忠誠心、またはロイヤリティと言ったりもしますが、それについて調査をすると、正社員に対しても同様の設問を行いましたが、正社員以上に仕事へのやりがいを感じていただいたり、職場に魅力を感じていただいています。逆にライフの正社員は大丈夫でしょうか。正社員の7.2%が仕事へのやりがいを感じておらず、職場にも魅力を持たないと答えているのには危機感を覚えます。
 それは横に置いて、パートタイマーの皆さん、やりがいは感じている。一方、不満というか、どこに課題を感じているかについては、賃金、雇用、公正な評価、等々について課題認識を持っていることがわかりました。3年前の2012年9月に労働組合に加入してもらって以降、ほぼ同様の意見を直接、要望として受けており、賃金制度改定要求の準備を進め、昨年春、NHKの「クローズアップ現代」にも取り上げられたとおり、賃金制度の改定を会社に求めました。
 これも少し余談になってしまうのですが、パートタイマーの賃金の引き上げを求めているのですが、ライフで働くパートで一番多い方はミドル層で、週20~25時間で、税制面あるいは社会保険面の都合上、年収103万円、あるいは130万円で年収調整されている方々になります。
 年収調整している方々は、時給を引き上げたり、手当も付与したり、ボーナスを上げても年収はそのまま。では、なぜ時給の引き上げを求めているのか。よくよく聞くと、仕事を覚えて、習熟したことを認めて欲しいということがあります。アメリカの著名な心理学者であったマズローの欲求の5段階説の4段階である承認の欲求であり、良い評価をもらえてその分賃金が上がる。賃金が上がるのは認めてもらった証になる。そういうこともあるだろうということを執行部で共有して、パートタイマーの賃金交渉に臨みました。
 会社側も正社員と全く同じような定期昇給ができない、先ほど言ったように税制上の理由もあって時給を上げても年収調整されてしまって労働時間を短くしなければならない、パートさんもあまり労働時間を短くすることは望んでいませんから、単純な定期昇給はできないが、やりがいを持って長く勤めて欲しい、人材が辞めてしまうことのないようにしたいということで、1年間会社と協議した結果、会社の理解も得て、金額としては小さいですが、今年の春に制度を変更することができました。
 時給の上がり幅に納得しきれていない部分もありますが、まず制度を導入しなければさらなる改善もできないということで、今制度でこの春に合意しましたし、今年の春にこの制度について会社と合意したことをマスコミに取り上げてもらって、朝日新聞の1面に掲載していただきました。
 いま、社会的に、非正規の処遇改善が注目されていますし、一方でこのように取り上げられることがまだまだ少ないからだと思います。パートタイマーはスーパーマーケットに限らず、サービス業や他の様々な産業でも、意外にも製造業などでも多いですが労働組合に入れていない。だから労働組合も交渉できていない。結局、珍しいのでこうしてマスコミに取り上げられているという状況があります。今日も、学生の間に労働組合の意義を感じ取っていただき、皆さんが社会人になったときに労働組合の価値を上げていただければと思います。
 賃金面の改定以外には、先ほどのアンケート結果にもあった通り、賃金の次には雇用、特に60歳以降の安定した雇用を望んでいる声がありました。ライフでは60歳が定年で、それ以降の雇用継続を望む場合は再雇用となり、いったん退職し、再就職する形で60歳までと同じ職場、同じ労働時間、同じ業務なのに、再雇用時に結ぶ新たな契約において、それまでの資格給というプラスアルファの金額はカットされ、パートタイマーの時給水準は人によっては募集時給まで下がっていました。
 これも昨年の春に、再雇用ではなくて、65歳までの定年延長、同じ処遇、できれば60歳を超えても賃金が上がる仕組みが導入できないかと要求し、これも去年の春から1年間会社と協議してきて、今年の5月に、残念ながら再雇用制度のままではありますが、60歳直前で平均的な評価を取っている方については65歳まで賃金水準は60歳の時のまま働ける制度に改定しました。
 その他、慶弔休暇、例えば、ご家族に不幸があった時に特別な有給休暇として忌引休暇が付与されますが、正社員の日数に比べて少なかった。これも、喜びごと悲しみごとに雇用区分の違いはない、という考え方の下に要求し、一昨年、正社員と同日数にしました。また、福利厚生の拡充の一例としては、従業員が買い物すると5%返金する制度を持っていますが、生活水準の向上を目的に返金率を10%にするように要求し、年4回10%返金月を作ったなど、改善を図ってきました。
 最後に、今抱えている課題であり、問題認識していることですが、まず一つ目に、今日触れられなかった、非正規社員である、嘱託、契約社員の処遇改善で、例えば定期昇給がない。これは今年の春に要求していまして、制度について現在協議中で、来年の春には新制度ができる見込みです。

(6)正社員との均衡処遇
 これはパートタイマーなど非正規の方を労働組合に入れている組織の共通の課題かと思いますが、働き方、働かせ方と、処遇、特に賃金面の均衡処遇を指しますが、バランスを図って皆が納得感をもって働ける環境を作ることをめざしています。
 具体的にどういうところに課題を抱えているのかというと、例えば、扶養(家族)手当の付与です。正社員には生活水準の維持、向上という側面から家族を抱えて、世帯主である正社員には、扶養手当として配偶者や子どもの数に応じて、配偶者に2万円、子どもが二人いれば1万8千円、計3万8千円を毎月正社員には支給している。一方、嘱託、契約社員、パートタイマーの中には世帯主で、家族の生活を支えている方も多数いますが、家族手当を支給できていない。おかしいと思いませんか?
 あるいは退職金です。これが正社員にしかなくて、生涯年収で見ると大きな格差が生じている。大卒正社員が60歳定年まで働くと勤続38年になりますが、パートタイマーの中にも、30年以上、ライフで働いてくださっている方が少なからずいらっしゃいます。その永年勤め上げた貢献度に対して、その貢献度に比例する退職金が必要だと認識していて、それにも取り組んでいきたいと考えています。
 執行部体制、組織体制の課題が何かと言うと、執行部26名で、一昨年度から4名のパートタイマーが執行部に入って活動していただいているのですが、組合員全体の構成から言えばもっとパートタイマーに労働組合の活動に参画してもらう必要があります。さらに、今、会社を休職して労働組合の活動をしている専従者は14名いますが、全員休職前は私も含めて正社員ですので、パートタイマーから専従者を担っていただいて、政策づくりに直接携わってもらう必要があると考えていますし、今の大きな課題だと思っています。

(7)スーパーマーケットあるいは流通業界で働く非正規労働者の処遇改善
 私たちの上部団体であるUAゼンセンでは現在151万名の構成人員になっていて、その内過半数の85万名がパートタイマーです。連合も格差是正と言っていて、その一つの非正規労働者、パートタイマーの処遇改善を掲げていますが、まだまだ、正社員の処遇改善の議論が中心で、だからこそ私たちのように、従業員であり、組合員の構成人員のうち70~80%をパートタイマーが占める組織が声を上げて、業界全体のあるいは、日本社会の中でのパートタイマー、そして非正規労働者全体の処遇改善を進めていかなければならないと思っています。

5.終わりの言葉

 結びになりますが、皆さんのご家族ですとか、もしかすると皆さん自身がアルバイトという非正規の立場で働いておられる方もいらっしゃると思いますが、賃金が働きに見合っていないといったことがあった時に、その処遇を改善していくにはまず労働組合を作ったり、加入したりしていくことが前提になっていくのかなと思っています。労働環境面で困っている方がいらっしゃれば、連合の「何でも相談ダイヤル」(フリーダイヤル0120-154-052)で相談を受け付けていますので、悩んでいるなら一度電話してみたら、とお勧めいただけたらありがたいと思います。
 以上、大変雑駁な話で恐縮ですが、私からの講演を終了させていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。


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