埼玉大学「連合寄付講座」

2012年度後期「働くということと労働組合」講義要録

第15回(2/4)

【修了講義】働くということと労働組合
-これから働く若い人にむけて-

連合 事務局長 南雲 弘行

はじめに

 福澤諭吉の心訓のなかに、「世の中で一番楽しく立派なことは、一生涯を貫く仕事を持つということです。」「世の中で一番さびしいことは、する仕事のないことです。」との言葉があります。
 連合では、「働くことは尊い行為」と位置付け、「働くことを軸とする安心社会」を提起し、国民各層・各界の方々と意見交換をしているところです。
 ここ数年、大学を出ても就職先がないということで、若年者雇用が課題になってきています。一方、2013年4月から、厚生年金の支給開始年齢が、段階的に61歳から65歳に上がるため、高齢者雇用の問題もでてきます。
 連合としては、高齢者を雇用すれば、若者の雇用が減るのではなく、それぞれに役割があると思っています。若い人たちは、これから社会、企業を支えていく担い手であり、高齢者の方々は、これまで経験した技術技能を若い人たちに教えていくことができます。それが、企業の発展につながるので、若者と高齢者の雇用は両立できると、私どもは経営者団体と意見交換をしています。
 労働は、生活を営む手段ということも事実ですが、それ以上に働くことは、知識や技術を習得し、人間としての価値を高め、企業を通じて社会にも貢献する極めて崇高な行為であり、誇りであります。
 そして、「働くこと」は、努力や成果を通じて人に褒められたり、人に必要とされたり、人に信頼される、人間として最も幸せな行為であると私は感じています。働くことについて皆さん方はどう考えていますか。自分の仕事が好きだという人もいれば、収入を得るためという人もいるだろうし、自分を高めるためと答える人もいるでしょう。
 今日は、「働くこと」について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

1.労働に関する法律の歴史と仕組み

 1800年代後半、明治維新とともに近代日本がスタートし、製造業を中心に多くの労働者を生みだしました。私たちの大先輩である「賃金労働者」がここに誕生します。
 時代が進み、昭和になり、日本が戦争に負けてアメリカが駐留した以降、労働に関する様々な法律ができました。
 憲法にも労働に関係する条文があります。条文の一例をあげれば、憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」、憲法27条「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」、憲法28条「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」といったものです。
 そして、「労働組合法」「労働関係調整法」「労働基準法」の労働三法が制定されました。
 労働組合法では、労働者の団結権と団体交渉権、争議権が定められています。つまり、労働組合を作る権利、それから企業と団体交渉をする権利、そして自分たちの労働条件についての要求を認めさせるため団結してストライキをする権利が認められています。
 労働関係調整法は、労働争議の予防や解決法を定めるものです。私が所属していた電力会社には、スト規制法(電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律)が昭和28(1953年)年8月7日に制定されていますので、電力を止めるといったスト行為はできません。スト規制法で規制されない企業では、ストライキをすることができますが、現在では、ストライキをすることで国民に迷惑をかけることになり、要求を通すためにストライキをするということに対して世間の批判が高くなっており、以前のように鉄道会社が電車を止めたりすることは少なくなってきました。
 電力会社ではストライキはできないのですが、スト以外のこと、たとえば、出勤拒否や、経営側との連絡を取り合わないといった争議行為はすることができます。このようなことも含め定めているのが、労働関係調整法です。
 労働基準法は、法律で定める賃金や労働条件の最低の基準を示したものです。たとえば、第32条で、労働時間については、一日について8時間を超えてはならないとありますが、これはあくまでも最低の時間です。つまり、働く時間は、7時間でも、6時間でもいいわけです。第2条には、労働組合と経営側で、対等に協議して労働条件を決めていいことが書かれていいます。その他にも、賃金・労働時間その他の労働条件について、国籍、信条又は社会的身分を理由として差別的に取り扱ってはならないことや、賃金について、女性であることを理由に、男性と差別的な取り扱いをしてはならないといったことも労働基準法の中に書かれています。

2.労働者とは

 一般的に、賃金等の収入によって生活する人を「労働者」と称しますが、憲法上では、労働者ではなく、「勤労者」となっています。しかし、私は一般的な「労働者」という言い方が一番相応しいのではないかと考えています。
 労働組合法の第3条では、「労働者とは、職業の選択を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と規定されています。また、労働基準法の第9条では、「労働者とは、職業の選択を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と規定をされています。このことも、ぜひ覚えておいてほしいと思います。

3.日本型雇用システムの歴史と変化

(1)日本型雇用システムの歴史と特徴
 戦後60年以上が過ぎ、激動する時代を乗り越えて、日本は経済大国となりました。ここまで経済発展を遂げた理由の一つには、「日本型雇用システム」が挙げられると思います。「終身雇用制」「年功序列制」などの制度が歯車のように噛み合い、企業と経済の発展、そして労働者の暮らし向上に大きく貢献してきたと言えます。
 終身雇用制は、新卒者の定期採用制と、定年制が特徴と言えます。年功序列制は、勤続年数に比例して賃金が上がり、昇格・昇進していく制度です。年功序列賃金の特徴的なものが、定期昇給制や、年齢別加給といったもので、毎年一定額が加えられていきます。従業員には、処遇への安心感と安定した生活設計が立てられるメリットがあります。
 そして、この年功序列制が、日本の労働・経済・企業を支えてきたと思っています。

(2)日本型雇用システムの変化
 今日本は、グローバル化とともに競争社会になってきています。自民党小泉政権のときに市場万能主義が台頭し、人事処遇にも成果主義が入ってきました。グローバル化に対応する企業の生き残り策として、人件費の削減が叫ばれています。それと共に、技術の高度化、製品への付加価値、企業の吸収・合併、生産の海外化というのが、企業の生き残り策として言われています。
 人件費削減の方法として、新規採用の減、希望退職、役職定年、整理解雇、非正社員化というのがあります。整理解雇をするには、「人員整理の必要性」「解雇をしないための努力をしたか」「解雇者選定の合理性」「手続きの妥当性」の4要件が必要です。
 最近、企業や一部の学者から、日本は整理解雇の要件が厳しすぎるので、解雇規制を緩和しろという意見が出てきています。しかし、私は整理解雇4要件は、働く側にとっては必要不可欠だと思っています。
 1995年に、当時の日経連(現日本経団連)が、「新時代の日本的経営」を発表し、雇用形態を、長期勤続型、専門能力活用型、柔軟型の3つに切り分けました。つまり、正規労働者から賃金の安い柔軟型・非正規労働者へ転換し、総額人件費の抑制を狙いとした考え方を打ち出してきたわけです。このことによって、労働者派遣法(1985年に派遣労働者の権利を守ることを目的として制定された)は当初派遣業種を大幅に制限していましたが、1996年、99年にあいついで改正され、派遣業種が原則自由化されました。
 3年前の自公政権のときにも、さらに規制が緩和され、非正規労働者が増えてきたと言えます。そのことにより、平均給与総額も減少していると言えます。国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、男女合わせた平均給与は、1997年の467.3万円をピークに2009年には405.9万円まで減少しています。

(3)労働者への影響
 「新時代の日本的経営」が出た後、役員を除く雇用労働者数は、1985年の4,000万人から、2012年は5,154万人と増えていますが、正社員の数は3,340万人に減っています。一方、非正規社員は1,813万人で、1985年に16.4%だったのが、2012年には35.2%まで増えてきています。3人に1人が非正規社員ということです。非正規社員の数は増え続けています。
 そして、非正規社員の増加に伴って低所得者が増加し、雇用労働者の所得格差が広がっていったと言えます。現在、年収200万円以下の労働者数は1,100万人、年収300万円以下の労働者数は1,700万人で、全雇用労働者の3割以上を占めています。
 年収200万円を1カ月に換算すると16~17万円くらいです。その中から家賃、光熱費、税金を払うと、後は食事をするためのお金しか残らないということになります。連合では、このような非正規社員を含めた方々の賃金を上げることで、消費が拡大し、デフレから脱却できると言っているところです。

4.使用者と労働者の関係

 戦後、労働者の権利は、法の整備に伴い使用者と対等な立場が約束されるなど、著しく向上しました。しかし、全ての職場において、労働者の権利が守られているとは言えないのが現実です。労働組合のない会社では、現在でも労働者の権利が守られていないところも存在しています。
 2007年、厚生労働省が全国2万の事業所を監督指導した結果、1,400事業所(6.8%)が最低賃金に違反し、4,000人以上が最低賃金未満で働き、違反事業所の7割の経営者が「最低賃金額」さえ知りませんでした。つまり、最低賃金制度自体を、経営側が知らないということです。
 最低賃金に関しては、最低賃金法という法律があります。そして、その法に基づき、国が賃金の最低限度額を決め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。
 最低賃金には、地域別最低賃金と産業別最低賃金があります。
 地域別最低賃金は、47都道府県すべてに最低賃金審議会というのがあって、その中で毎年決めていきます。産業や職種に関わりなく、全ての労働者に適用される最低賃金で、47都道府県別に年に1回改定されます。2012年10月現在の全国平均は749円です。連合は、民主党政権になったときに、当時の政府と、早いうちに全国平均1,000円の最低賃金とすることを約束しましたが、まだまだそこに到達していません。ただ、1,000円になっても、1日8時間で1ヶ月20日働いた場合、1年間2,000時間働くことになりますが、200万円弱にしかなりません。1年間2,000時間働くということは大変なことですが、それでも200万円弱の年収なのです。
 この最低賃金は、地域によって産業も違いますし、いろいろな状況も違いますから、一概に高い低いで言ってはいけないのかもしれませんが、生活できる賃金とはどういったものかということが、今後の最低賃金における課題だと思っています。

5.労働組合の果たす役割と責任

 皆さんは、労働組合についてどういったイメージを持っていますか。暗くて、ダサくてオヤジしかやっていない、それともなんだかよく分からないといった感じでしょうか。
 戦後、労働組合は、使用者との間で激しく対立をしてきました。大きなストライキも起きました。そのため、労働組合に対して、敵対するものというイメージを強く持っている経営者もまだいます。労働組合をつくることは、法律で認められているにもかかわらず、労働組合などはない方がいい、という人たちも大勢います。
 そこで、連合では、「ユニオニオン」というかわいいキャラクターを作りました。このネーミングは、ユニオンとオニオンをかけたものです。今このぬいぐるみを使いながら、労働組合のイメージを親しみやすいものに変えようとしています。

(1)会社規模と労働者数
 従業員1,000人以上の大企業の労働者数は1,135万人で、労働組合の組織率は45%です。従業員101~1,000人未満の企業では、1,389万人、組織率は13.3%。100人以下の企業の労働者数は、最も多い2,584万人ですが、組織率は1%しかありません。
 このような状況の中で、今連合は組織拡大に力をいれています。皆さんが就職をするところに労働組合があれば、働く条件を最低基準以上にし、この会社で頑張って働きたいと思うでしょう。一人では力は小さいけれども、仲間が集まることにより、労使交渉を通じて、自分たちの働く条件を決めることができます。このことを集団的労使関係と言いますが、連合ではこの集団的労使関係を日本の隅々まで作っていきたいと考えています。
 しかし、現状は大変厳しいものがあります。日本の雇用労働者は、5,500万人いますが、連合の組合員数は680万人です。その他、いくつかナショナルセンターと呼ばれているところを合わせても労働組合の組織率は、全体の約18%にしかなりません。

(2)労組組織率と労働協約適用率の国際比較
 労働組合組織率18%に対して、労使合意のもと取り決められたワークルールである労働協約の適用率は20%です。日本では、労働組合が組織されているところに、労働協約が適用されているといえると思います。
 しかし、フランスは7.7%しか労働組合組織率がありませんが、労働協約適用率は92.9%です。つまり、労働組合がなくてもほとんどの職場に労働協約が適用されているということです。これは、国によって事情が異なるためですが、日本の場合は、原則として、労働組合がなければ、労働協約は適用されません。ですから、組織率をあげていかなければならないと連合では言っています。
 私たちは、2020年までには組織人員を1,000万人にしたいと思っています。そのために、今、着々と準備を進め、これから体制もお金も整えていこうと努力をしているところです。
 皆さん方が就職先を決める場合、労働組合があるかないかということも、ぜひ検討材料に加えていただきたいと思います。

(3)労働組合をつくる権利
 経営者に、憲法に「労働組合をつくる権利がある」と定めていることを知っているかと聞いたところ、1973年は「知っている」が39.3%でしたが、2008年には21.8%と、だんだん少なくなってきています。こういう状況をひとつ打破していきたいということもあって、「1000万人連合」に向けた取り組みをしているわけです。
 皆さんもニュースで見たと思いますが、アルジェリアで事件にあって、日本人が10人亡くなりました。そのうちの何人かは派遣社員で、正規社員ではありませんでした。日輝という会社に、派遣会社から派遣をされ、その仕事先がアルジェリアだったわけです。今回、日輝の施設で派遣社員が亡くなったわけですが、その人たちが日輝の正社員と同じ保障が受けられるのか、派遣元の派遣会社の規定によっては、同じ保障が受けられないかもしれません。
 今日本では、派遣も含めた非正規労働者の安全が保障されない働き方が多くなってきています。それが先ほど言った、経団連の言う新しい働き方・働かせ方ということで、私たちからすれば働き方ですが、企業からすると働かせ方です。その働き方を、労働組合の立場として守り、労働組合をつくり、組織率を拡大することは、日本の社会の中では非常に重要だということを申し上げておきたいと思います。

6.「労働組合」の目的と役割

 戦後、高度成長を経て、日本の労使関係が果たしてきた役割を三つ申し上げておきます。
 一つ目は、生産性の向上と技術革新への柔軟な対応。二つ目は生活水準の高まりによる社会の安定形成。三つ目は多様な話し合いによる理解と協力です。今日は、一つ目について少しお話をします。
 「生産性三原則」という言葉がありますが、今はどちらかというと、経営者はこのことを忘れています。生産三原則とは、「雇用の維持拡大」、「労使の協力と協議」、「成果の公正配分」です。このなかで現在一番行われていないのが、「成果の公正配分」だと思っています。このことを私たちは今強く言いたいわけです。2013年度の『連合白書』においても、生産性三原則を掲げ、春季生活闘争でも、公正な成果配分を求めていくことになっています。
 具体的には、全ての労働組合は、賃金カーブ(賃金を縦軸に、年齢を横軸にしたグラフで表されるカーブ。日本では、年齢または勤続年数が増えるにつれて賃金も上がっていき、ほぼ右肩上がりのカーブが描かれる。年功カーブともいう。)を確保したうえで、賃上げ・労働条件の改善のためにその他に、1%を目安として配分を求める取り組みをすることとしています。中小企業などでは、賃金カーブの算定が困難なところがまだまだ多くありますので、連合としてほぼ1%を5,000円と計算して要求をしていくことになります。また、企業規模、年齢、男女等に生じる格差ということも踏まえて、それぞれの産業の中で決めていくことになります。
 この連合白書を受けて、日本経団連が『経営労働政策委員会報告』で、(勤続年数に応じ自動的に上がるように決められている)定期昇給制度は聖域でない、(物価上昇や業績の配分などにより賃金を引き上げる)べ―スアップはとんでもない、などと主張しています。連合はそれに対して反論をしています。今日は時間がないので説明できませんが、連合のホームページに掲載しているのでぜひ見てみてください。

7.職場は労働者のためにある

 世界中の国々との競争が激化すると、経営者の多くは、「会社が生き残るため」「競争に勝つため」などの理由で、「賃金を引き下げる」「労働者を減らす」「正社員をパート化する」など、コストの低下に拍車をかけてきました。しかし、一番その会社を支え頑張っているのは、一人ひとりの労働者であり、労働者あってこそ会社があることを理解すれば、経営者の皆さんはお客様を大切にする前に、まず労働者を大切にすべきだと思います。
 多くの経営者に多大な影響を与えている、松下電機産業(現パナソニック)の創業者である松下幸之助は、会社と労働者の関係を次のように表しています。
 〈松下は、どのような会社ですかと問われれば、『人を作る会社です。あわせて家電をつくっています』と答える。経営者としての大きな任務は、社員に夢を持たせることであり、できないのなら経営者として失格である。〉

8.挑戦するあなたへ

(1)働くことの機能を考える
 なぜ、私たちは毎日毎日働き続けるのでしょうか。働くということには、いくつもの機能があります。
 まず、収入を得ることによって生活を維持すること、生きていくための手段として機能を担っていると思います。また仕事を通じて知識や技術を習得し、やりがいを持ち人生を充実させること、自己実現を充足させる機能を担っています。それから、仕事を通じて得られる社会的地位や信用・信頼等の存在価値を証明すること、人との交流や集団行動を通じて自己確立を図る機能も担っています。

(2)私たち自身が働くことに誇りを持つ
 1919年、世界の労働者の労働条件と生活水準改善を目的として設立された国際労働機関(ILO)は、1944年ペンシルベニア州フィラデルフィアで宣言を採択しました。このフィラデルフィア宣言の冒頭には「労働は、商品ではない」と記されています。
 「労働は、物やロボットのように使い捨てるものではなく、血の通った人間の尊い行為である」ことを声高らかに宣言したものですが、それから60年以上経過した現在でも、残念ながら労働者は公正・公平な処遇を受けていません。
 しかし、全国で5千万人を超える雇用労働者が額に汗して働いているからこそ、企業はもとより経済や社会が健全に機能しているというのが事実であり、そのためには、まず私たち労働者自身が、「働く」という行為に、もっと誇りと自信をもたなければならないと思います。「働くこと」を尊い誇りうる行為として、自らの声で「労働の尊厳」を主張し続けていきたいと思っているわけです。

(3)「職場」にこそ幸せがある
 お金や物を得ることも、一つの幸せだと思います。しかし、「お金があれば全てに満足するか」と問われれば、答えに窮すると思います。
 三重県が、県民に対して「あなたはどの程度幸せですか」という幸福度調査をしました。その結果から.幸福度の高さは、年齢、性別、結婚の有無、雇用形態等の属性から差が生じていました。より幸福度の高い社会としていくために、いろいろな法制度等の整備が重要なのではないかなと思います。
 また、青年の意識調査では「暮らしていける収入があれば、のんびり暮らしていきたい」という質問に対して、「とてもそう思う」と回答した人は、日本では42.9%、韓国21.6%、中国17.8%、アメリカ13.8%になっています。今の日本の状況がよくわかる数字だと思います。((財)日本青年研究所「高校生の意欲に関する調査」2007年)

(4)好きになることから始める
 人が自分の仕事を選択するには、いろいろな理由があると思います。「資格を持っている」や「その仕事が好き」など明快な答えがある人もいれば、「生活のため」や「なんとなく・とりあえず」「その会社しか採用がなかった」などの人もいると思います。
 しかし、私が一番重要だと思うのは、どんな会社を選ぶにしろ、「自分が決める」ということだと思います。他人から勧められて就職しても、本当にその企業で働き続ける気持ちにならないと、誇りをもって、よい仕事ができないと、一人の先輩として言いたいと思います。
 私自身、東京電力に入る時に、今思い出すと「なんとなく」という気持ちだったという気がしています。
 私は、会社に入ってすぐ、現場で怪我をしました。そのため、職場で内勤しかできず、現場で技術を覚える事ができませんでした。そういうことが3~4年続きました。それで本来するはずだった仕事ができずに同期からも遅れ始め、同期のメンバーとは違うことで自分にできることはないかと考えました。その時に、労働組合があって、その青年活動に入り、労働運動を定年までやることになりました。会社に入る時は、「なんとなく」という思いがしましたけれども、会社に入ってからは、自分で決めて、この道を歩み、よかったと今は思っています。
 その中で、すでに亡くなってしまいましたが、私の大先輩が「同質の協力は和にしかならない。異質の協力は積になる。」という言葉を私に言ってくれたことがあります。同じ会社、同じ部屋にいる人だけでは、“足す”にしかならない、しかし、皆さん方大学というところで、他に学部があって、何千人といる、そういう人たちと付き合えば、それは、積になる、“掛け算”になっていくということです。より多くの人と意見交換をする、付き合う、そのことによって、可能性は無限に広がっていくということを私に教えてくれたのだろうと思っております。その方は早くに亡くなられて残念だったのですけれども、その言葉は私の教訓として大切にしています。ぜひ皆さんにも、この言葉をお贈りしておきたいと思います。

 終わりに、アメリカの心理学者、ウィリアム・ジェームズの言葉をお伝えします。
〈心が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。運命が変われば、人生が変わる。〉

 皆さん方、まだまだ大変な時代ではありますが、これからいろいろなことを勉強されて社会に出て、一緒にこの日本をよくしていくことをぜひお願いしたいと思います。
 本日はご清聴いただきまして本当にありがとうございました。


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