埼玉大学「連合寄付講座」

2011年度後期「働くということと労働組合」講義要録

第15回(2012年1月30日)

【修了講義】
働くということと労働組合

ゲストスピーカー
連合会長 古賀 伸明

はじめに

 連合寄付講座は、今日が最終日となります。これまで14回の講義をとおして、皆さんには、働くということと労働組合、さらには、働くということと社会、といったことを考える時間を持っていただいたと思っています。
 最終日の講義では、今、連合がどういうことを考えているのか、また、働くということはどういうことなのか、その辺りを私見も含めて、お話しさせていただきます。ぜひ皆さんも、様々な角度から、いろいろな質問や意見を出してください。
 これからの社会を自分たち自身がどう作っていくのか、そんな前向きな議論に心から期待したいということをはじめに申し上げておきます。

1.連合が求める政策の理念と「めざす社会像」
 今を考えるときに、私たちがどうしても振り返っておかなければならないのが、2008年秋、アメリカの金融危機に端を発した世界同時不況です。あの世界同時不況は、決して景気循環の一局面ではありません。むしろ、市場経済原理主義や、金融資本主義という価値観のなかで、市場が暴走した結果なのではないかと我々は思っています。

(1)価値観転換への5つの政策理念
 そこで、もう一度我々の運動の政策理念を整理する議論をはじめ、価値観を転換し、5つの理念を改めて提起しました。
 1つ目は「連帯」です。社会は、人と人のつながりや助け合い、支え合いによって成り立っています。そのことをもう一度我々は、肝に銘じていきたいと思っています。
 2つ目は「公正」、そして、3つ目は「規律」です。不公平なことで一部の人たちがお金を儲けるようなことがあってはならないし、規律ということも言葉で発するだけでなく、人間社会隅々に規律が守られているかということです。こういったことの検証・検討が必要だと思います。
 4つ目は「育成」です。育成とは、能力開発や、教育といったことだけでなく、はぐくみ育て合う社会とか、はぐくみ育て合う産業、あるいは組織、集団という、広義の意味においての「育成」と感じていただければと思います。
 5つ目は「包摂」です。誰かを排除する社会ではなくて、全ての人を包摂する社会を作るべきだと考え、このことを政策理念の1つとしました。

(2)厚みのある中間層を基盤とした社会の構築
 そして、目指す社会とはどんな社会だろうと議論を開始し「働くことを軸とする安心社会」をまとめあげました。
 国民の多くは働く人であり、やはり分厚い中間層が日本の基盤であり、安定であり、発展の1つの大きなエネルギーであるということだと思います。日本は、就業者の8割が雇用労働者で占められている雇用社会です。そのなかで、雇用の安定は、社会の安定であり、発展に必要不可欠なものです。しかも、そこには分厚い中間層が形成され、そこに安定と発展の基盤があるという意味です。
 この分厚い中間層を実現させるためにやるべきこととして、次の3つを挙げておきます。

[1]重層的なセーフティネットの構築
 雇用は、雇用されることで賃金が支払われ、生活を営んでいくことを考えれば、セーフティネットの原点ともいえます。そして、雇用には、雇用保険や失業手当といった雇用を支えるセーフティネットがあります。
 しかし、今、雇用保険に加入できない非正規労働者や、受給期間を超える長期失業者が増加しています。この人たちは、生活保護を受けざるを得ず、現在、生活保護受給者が206万人を超えたという報道を皆さんもご存じかと思います。
 私たちは、これでは社会のシステムとしてセーフティネットが不足しているということで、10年前から雇用保険・失業手当と生活保護の真ん中に、第二のセーフティネットを張るべきということを訴えてきました。第二のセーフティネットというのは、雇用から外れた場合、次のステージに挑戦できるような人材育成や能力開発をし、その間の生活費も相応分を国が負担するというものです。その第二のセーフティネットとして、求職者支援法が昨年10月から施行されました。今後さらに、雇用保険の適用範囲の拡大や、機能の強化等、積極的な雇用政策と社会保障政策の連携、あるいは産業政策との連携が求められると思います。
 今、日本では、雇用も社会保障の一環であるという見方が必要な状況になっています。

[2]底上げと所得再分配機能の強化
 格差の拡大をはじめとする様々な弊害のなかでは、労働条件を底上げしていくことが必要です。そして、税金や社会保障制度で、所得再分配機能を強化しなければなりません。

[3]国際的な枠組みの構築
 グローバリゼーションが激化するなか、自分の国だけで制度を作ったり、自分の国だけで国民を守ったりすることに限界がきているのが実態です。また、一国の変化が、ものすごいスピードで全世界に影響していきます。2008年のリーマン・ショックは、アメリカから一瞬の間に世界に広がりました。今ですと欧州のソブリン・リスクの問題があります。
 そういう意味では、労働運動も国際的な枠組みが必要となります。今、ディーセントワークの実現をキーワードとした国際労働運動の展開を通じて、公正で、人間らしい働きがいのある仕事ができる世界を目指しているわけです。
 世界の経済の枠組みを議論する場もG7からG8となり、リーマン・ショック以降は、G20に変遷してきました。これまでは、どちらかというと、先進国が中心となり、政策を決め、世界全体を引っ張っていました。しかし、G20では、新興国も含めた議論の場が設定されるようになりました。
 G8でもG20でも、国家間で議論があると必ず労働組合も国際労働運動の一環として会議をして、各国の首脳に我々の考えを伝えています。特に、G20カンヌ・サミットでは、laborのLをとった「L20」が明確に位置付けられました。
 また、初めてのことですが、G20の会場の近くで、L20とB20、すなわち、労働組合の代表者と、経営者の代表者が会議を持ちました。そして、その場には、議長国であるフランスと次回の議長国であるメキシコの雇用労働大臣が同席して、後半は議論にも参加しました。
 さらに、国連のパン・ギムン事務総長が、L20の会合に出席し、我々と意見交換をしました。国連の事務総長が、今まで労働組合の会合に出席することはありませんでした。会合の席でパン・ギムン事務総長は「経済成長が、人が幸せになること、雇用が増えることに本当につながっているのだろうか?皆さんは、働く人たちの代表であるから、ぜひその実態をお聞きしたい。また、人々が幸せになる社会を目指して、皆さんに活動をしてほしい。」ということをおっしゃっていました。
 これらカンヌ・サミットでの出来事は、世界の経済運営が、本当に人の幸せにつながっているのか、皆が疑問を感じていることの表れだと思います。

2.「働くことを軸とする安心社会」

(1)なぜ今、改めて目指すべき社会像の提起か
 連合は、2009年に結成20周年を迎えました。そこで、20年間の運動を振り返って、新しい運動を必要があれば提起しようということで議論を開始しました。そして、約1年かけて、2010年12月に「働くことを軸にする安心社会」という、私たちが目指す社会像を確認し、提唱したわけです。

(2)「働くことを軸とする安心社会」のかたち
 連合は、雇用労働者の集団ですが、働くということは、雇用労働だけではありません。地域で活動している人、子育てに励んでいる人、さらには、家事労働をしている人も含まれます。このように、広義の意味で働くことを捉えながら、社会的、経済的に自立した人が、支え合って、次の新しいステージを作っていく、こんな社会を私たちは「働くことを軸とする安心社会」と名付けました。
 もうひとつ加えれば、長い人生のなかでは、思いがけず病気になることや、事故に遭うこともあります。さらに、自分では一生懸命働いているのに、大きな社会のうねりや、大きな産業構造の変化の中で、今の仕事や職場を失うことがあります。そういった時に、社会がきちんと受け止めて、次のステージへ挑戦できるようなセーフティネットが張られている社会を、私たちは「働くことを軸とする安心社会」と名付けたわけです。

ー5つの橋ー
 「働くことを軸とする安心社会」では、5つの橋をかけることも重要な柱となっています。
 1つ目は、教育と働くことの橋です。教育を受け、働くことに通じていく橋です。
 2つ目は、家庭と働くことの橋です。働くことも重要ですが、家庭も地域コミュニティーも重要です。しかも、男性が家事・育児をすることによって、女性も社会進出できるということも含めた家庭と働くことを結ぶ橋です。
 3つ目は、働くことと働くことの橋です。長い人生のなかでは、働くことの形をかえることもあります。たとえば、子育てしながら働くということになれば、短時間勤務や、正規ではなく、非正規、契約社員での働き方を希望する場合もあります。そういった働く意思によって形を変えていく場合の橋です。
 4つ目は、失業と働くことの橋です。ここは、セーフティネットを幾重にもはる必要があると思います。
 5つ目は、定年退職と働くことの橋です。定年退職で働くことが終わったのではないことも含めて、定年退職した後と働くことを結ぶ橋です。
 このように5つの橋をかけることが、我々がいう「働くことを軸とする安心社会」のかたちとなっているわけです。

(3)「働くことを軸とする安心社会」を支える基盤
 これはまず、政府がしっかりしなければなりません。もちろん、地方分権が前提です。そして、政府にしっかりしてもらうけれど、公務員が全ての公共サービスを提供するのではなく、NPO、NGO、あるいはボランティア団体や、我々のような労働者の福祉事業がベストミックスしながら、公共サービスを作っていくことを考えています。
 さらに、公共サービスや制度を支えるために、私たち皆がそこに参画し、応分の負担をする、こういったことも重要な基盤となるわけです。

(4)労働運動に求められる役割と責任
 私たち労働組合は「働くことを軸とする安心社会」を実現するために、組合員・メンバーシップだけの利益や幸せを考えるのではなく、社会全体をよくするための活動にどう取り組むかが重要だとしています。
 国際労働機関(ILO)の行動基準は、ディーセントワークです。これとともに、1944年に採択されたフィラデルフィア宣言もILOの行動指針となっています。フィラデルフィア宣言で特に有名なのは「労働は商品ではない」と、「一部の貧困は全体の繁栄にとって危険である」です。驚いたことに、詩人の宮澤賢治も「世界中が幸せにならなければ個人の幸せはあり得ない。」と、フィラデルフィア宣言が採択されるずっと以前に書いています。
 我々労働運動は、同じような文脈として、一部の貧困は全体の繁栄にとって危険であるということを、肝に銘じておかなければならないと思っています。また、当然のことですが、そのことにプラスして、仲間を増やしていく、我々の言葉で言えば、組織拡大も、もう一方で求められる労働運動の役割と責任であろうと思います。

(5)「働くことを軸とする安心社会」に向けての取り組み
 連合では、2011年初めに「働くことを軸とする安心社会」を日本全体が目指す社会像にするための活動をスタートさせましたが、東日本大震災が発生し、その復興を優先するため、取り組みを一時棚上げしました。したがって、2012年こそ「働くことを軸とする安心社会」の理念の共有化と合意形成を図る具体的行動をしていく年と位置付け、さまざまな取り組みを再開させました。
 そのひとつとして、1月24日、東京でタウンミーティングを行いました。漫画家のやくみつるさん、経済評論家の勝間和代さん、『お母さん業界新聞』という新聞の編集長の藤本裕子さん、それから契約社員で働いている女性を招き、パネルディスカッションを1時間半くらい行いました。
 次回は、福岡で開催することになっています。前半戦では、こういう活動を一生懸命行っていきたいと思っています。そして、我々の考えとそれぞれの皆さんの考えをドッキングさせ、私たちの目指す社会像をブラッシュアップしていきたいと思います。
 そういう意味では、学生の皆さんにも議論する時間を作っていただければありがたいと思っているところです。

3.連合運動の基軸
 「働くことを軸とする安心社会」を基盤としながら、現在の連合運動の基軸を3つに分けてお話ししたいと思います。

(1)復興・再生に全力
[1]大震災からの学び

 昨年10月に第12回定期大会を開催し「復興再生に全力を尽くし、働くことを軸とする安心社会につなげよう」というスローガンを掲げました。今日も被災地では復旧、復興の活動が行われています。これを私たちは片時も忘れてはならないと思います。また、距離が離れていても、できることがありますし、それを探していくことを皆さん方に訴えたいと思います。
 私は、この震災で、2つのことを学んだと思っています。1つは、自然の圧倒的な力の前で、人類というのはいかに無力かということです。ですから、自然を克服したり、コントロールすることはやめて、自然と共生する国土や国、地域を作っていかなければならないということです。
 2つ目は、連合が求める政策理念の1番目にあげた「連帯」の大切さです。人と人のつながり、支えあい、分かちあいということが、様々な困難を乗り越えていく力になるのだということを、大震災によって、日本のみならず、世界中の人々が改めて再確認したのではないでしょうか。分断された今の社会を見つめ直した時に、コミュニティーというものをどう再生していくのか、回復していくのか、我々に問われているのだろうと思います。

[2]被災地の復興・再生
 被災地の復興・再生に向けて、労働組合も様々な取り組みを行ってきました。当初は救援物資の提供、カンパ、ボランティアの派遣を行いました。ボランティアの派遣は、3月末から半年間、延べ3万5千人を送り出しました。絶え間なく一定の数のボランティアが来るというのは、現地の人からも、政府からも、極めて高く評価されました。
 一方、政策・制度が非常に重要であり、失業保険の支給期間の延長や適用範囲の拡大、雇用を守るための雇用調整助成金の拠出等を政府に要請し、実現させるということにも取り組んできました。

[3]日本全体の再生
 今後は、新しい雇用をどう生み出していくかということになっていきます。東日本の被災地域は、まさに日本の先行モデル地域です。超高齢化社会が全体より進み、農業・漁業においては、世界有数の漁場であり農業地域です。そして、内陸部にいきますと、先端技術を持つ工場が備わっています。
 たとえば、少子超高齢化社会の中での、医療介護の問題では、地域で支え合いながら、いわゆる地域包括ケアというものを作り出していかなければなりません。あるいは、被災地域は、自然エネルギーにトライする絶好の地域でもあります。そして、今、第1次産業は疲弊しているということで、1次、2次、3次を結びつけた6次産業という新しい産業を起こすことが求められています。
 したがって、被災地域の復旧・復興については、産業政策、雇用政策、社会保障政策を連動させた街づくりが可能だということです。また、それらをどのように進め、日本全体に結び付けていくか、日本の大きな課題でもあります。

(2)新たな社会・経済モデルの構築
[1]新自由主義と新たな市場経済モデルの模索

 私たちは、新自由主義政策、あるいは金融資本主義の暴走ということを体験しました。新自由主義は、1980年代にアメリカ、イギリスですすみ、1990年代から2000年にかけて世界を席巻しました。しかし、その政策そのものが、本当に人を幸せにしたのかということを世界中の人たちが考え出しました。
 たとえば、日本においても、いわゆる小泉改革は新自由主義政策です。2002年の骨太方針では、社会保障の増加分とはいえ、毎年2,200億円圧縮して、1兆数千億円を5年間でコスト削減するという政策を出しました。その結果、政治そのものを変えなければならないということになったわけです。今の政策で本当に我々は幸せになれるのだろうか、地域は活性化されるのだろうかという思いの人たちの一票一票が、政権交代を起こしたわけです。
 ただ、政権交代後の民主党政権に、国民は歯がゆさを感じています。さらに、それは民主党政権にとどまらず、日本の政治に対する失望、既成政党への失望につながっています。しかし、60年間1つの政党が支配した大きな負の遺産というのはあるわけです。これからの政策決定システムや、統治機能を変革していくほんの入り口に今、立ったところ、という中期的な位置づけも必要だと思います。
 だから、私たちは、今の政治に失望したといって諦めることはできないわけです。新しい社会をつくるために、私たち一人ひとりが参画していくことが求められていて、その1つに、政治というメカニズムもあるという認識が大切だと思っています。その中で我々は「働くことを軸とする安心社会」を我々が目指す社会像として、展開していきたいと考えているところです。
 日本は間違いなく成熟社会に入っています。成熟社会というのは、低成長で、人々の欲求や欲望が多様化していく社会です。そんな社会のなかで、私たちはどのような働き方をしていくのか、どのような暮らしをしていくのか、もっといえば、どのような生き方をしていくのか、政治も、経済・産業界も、そして我々自身もまたその解を見出せないという状態に今、陥っているのではないかいと思います。
 この解は、この先もずっと見出せないかもしれません。完全な社会・生き方・暮らしというのがないのと一緒です。ただ、我々は、それを見出していこうとする努力の歩みを止めることはできないということは確実に言えます。

[2]共通の価値観の醸成
 この頃、二項対立の考え方で議論をすることが多いと感じています。たとえば「脱原発か原発推進か」、「TPPか農業か」、さらには「財政再建か財政主導での経済成長か」というように、どちらか1つを選ばなければいけないことを投げかけて、意見の対立をマスコミも含めて煽るという傾向があるのではないかと思います。
 こういった傾向は、過去の延長線から物事を考えているから出てくるのであり、決していいことではありません。異なる価値観を持つ様々な人がいるのは当然のことです。0か1か、こちらかあちらか、ということではなくて、私たち自身が新しいコンセプトを作っていくことで、今までにないアプローチや、今までにない角度からの議論ができないかということを常に考えていく必要があるのではないでしょうか。
 新しいアプローチ・新しい思考で、新たなコンセプトを作る、新しい概念をつくるのが、今を生きる我々・・・むしろ、皆さん方世代の役割と責任ではないかと思います。

(3)労働運動の社会化
[1]メンバーシップでの自己完結型の限界

 今、労働運動は、企業内部の組合員の利益を自己完結的に確保することができない時代になっています。したがって、労働運動は、社会全体をよくしていく運動を展開しなければなりません。そのことを私は運動の社会化と呼んでいます。要するに、労働運動が社会運動の基軸になれないかということに取り組んでいるということです。
 「合成の誤謬」という経済用語があります。これは、自分の組織、集団、企業だけがよければいいということで、それぞれが策を講じるけれども、全体から見れば全く負の方向に向かってしまっていることをいいます。
 わかりやすくいえば、A企業が自分たちの利益を出さなければならないから、どんどん人を解雇して、給料をどんどん下げるとします。B企業も、C企業も、D企業もそのようにしていきます。そうすると、それぞれの企業は、生き残れたかもしれません。しかし、社会には失業者があふれ、低賃金になった消費者は、モノを買わなくなり、社会全体は非常に疲弊したものになってしまいます。
 いい企業、いい職場というのは、社会そのものがよくなければ存在しません。そういう社会全体をよくしていく運動を、労働運動の社会化と呼んでいるわけです。

[2]集団的労使関係の拡大
 そのなかでは、仲間を増やし、健全な労使関係を日本の隅々に張りめぐらせていくことが大切です。そのためには、組織化も進めなければなりません。仮に組織化できない場合も、集団的労使関係が保てるような法整備をしなければなりません。そういうことに発展していくのだと思います。

[3]社会運動の軸
 我々が、社会運動の軸になるには、我々のメンバーシップの構成だけではなくて、もっと大きなネットワークを組んでいく必要があるかもしれません。1月24日のシンポジウムで、パネラーの藤本さんから「私たちも“お母さん労連”みたいな労働組合を作れませんか?」と質問されました。これは、極めてユニークな発想だと思います。きっと、『お母さん業界新聞』編集長の藤本さんも組織を作って、いろいろなことを解決したいという意味から“お母さん労連”という発想になったのだと思います。もし、“お母さん労連”を結成し、お母さんたちの悩みやさまざまなことを解決しようとしたら、交渉相手は政府になります。ですから、我々としては、“お母さん労連”での皆さん方の意見を聞かせてもらい、政策・制度を作り、政府に要求をしていったらどうかということを論議しました。
 私は、この議論をとおして、市民活動や、NPOで活動する人たち、退職した人、失業している人等々が集まったネットワークを、連合が作っていくことが非常に重要ではないかということを強く感じました。そして、そのことについて今、検討をスタートさせました。
 ただ、組織には権利と義務があり、組織の形態等によって権利と義務がそれぞれ違ってきます。会費の問題も含めてどうしていくか等、ネットワークを広げていくうえで解決していかなければならない課題はいろいろあります。
 それでもやはり、連合という680万人の大きな組織にいろんな人が一緒になって、社会運動を起こしていくということを真剣に考えていかなければならない、このことを私は、今回開催されたタウンミーティングや、パネルディスカッションでつくづく思ったわけです。

おわりに
 我々は今、どのような時代を生きているのか、そして、連合が目指す社会とはどのような社会なのか、あるいは、連合が目指す社会にしていくためには、こういうことが必要なのではないかという私の思いの一端を、お話しさせていただきました。
 ご清聴大変ありがとうございました。

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