埼玉大学「連合寄付講座」

2009年度後期「働くということを考える」講義要録

第10回(12/16)

国際労働運動における連合の取り組み

ゲストスピーカー:中嶋 滋(ILO理事)

1.現状と見通し

(1)「危機」は克服されたのか

 今日は、グローバリゼーションがすすむなか、金融経済危機を追うようにして起きた雇用危機に対して、国際労働組合組織やILO(国際労働機関)がどのような対応をしているかを中心にお話をしたいと思っています。
  まず、雇用危機といわれる現状と、今後の見通しについて考えてみたいと思います。ご存じのように、今、国と国の壁がどんどん低くなっていて、ヒト・モノ・カネが非常に速いスピードで動いています。我々はそのような時代に生きているわけです。
  2008年9月に、リーマンブラザーズの破たんに端を発したグローバルな金融・経済危機がおこりました。「100年に1度の危機だ」と言われ、1929年の大恐慌と比較して論じられています。しかし、1929年の大恐慌では、全世界にその影響が波及するのに約3年かかっています。ところが、今回の金融危機については、瞬時のうちに全世界を襲うに至りました。現在のグローバル化された社会の相互依存性、緊密な関係性の深さをうかがい知ることができると思います。皆さんが直面している厳しい就職状況も、決して日本国内だけの問題ではないことはご存じのとおりです。
  ところが、最近、経済指標を示しながら、危機は克服されつつあるという見解が目立ち始めています。IMF(国際通貨基金)は、2010年における世界経済の成長率を3%後半と予測しています。ブラジル、中国、インドなどいわゆる新興経済国の経済が、世界経済をけん引して、3%後半の成長を確保できるという主張です。
  しかし、失業については、まだまだ深刻な状況です。日本は5.1%、アメリカは10%台の失業率となっています。ただし、危機の当初の予測に比べれば、はるかに良い状況になってきています。つまり、危機はそういった面からも克服されつつあるのではないかという論議が目立っているわけです。このような「克服されつつある」という論議は、G8あるいはG20の主要な経済国が、協調的な景気支援策をとっていて、危機の深化は避けられているという証拠でもあるというわけです。
  本当に、危機は克服されつつあるのかどうかということについて、一緒に検討していきたいと思います。

(2)深刻な「雇用危機」は続く

 ILO研究所が調査をしたところ、2008年10月以降、51カ国で2000万人を超える人が職を失ったということです。また、一時帰休、労働時間の短縮、補助金の支給を受けての職業訓練などの部分的な失業もあることを考えると、現在トータルで500万人くらいの人が、いつ職を失ってもおかしくない状況のもとに置かれているといえます。
  これは、失業率であらわされることですが、改善するにしても悪化するにしても、非常に緩いペースであらわれているという状況があります。IMF(国際通貨基金)の総裁も「雇用の回復をなしにして、真の経済回復はない」ということを言っています。雇用危機が続けば、経済回復は脆弱なものにならざるを得ないといえると思います。
  こういった形で、なかなか回復しているとは言い難い雇用危機があり、それがグローバル化された社会のもとで全世界に共通の現象でおこっています。ですから、それを克服していくためには、世界的な協調による対応が求められるということになります。

(3)雇用危機に関する協調の課題

 ILOでは、雇用危機の回復に関して重視する3点を提起しています。
  第1点は、実体経済のアクターの参画、すなわち、政労使の3者の協議が必要であるということ。具体的な雇用危機の克服策というのは、この三者のソーシャル・ダイアログ(社会的対話)の中から結論を見出して、それを実施していくという観点が必要であること。
  第2点は、景気刺激政策パッケージに関して、すべて通用するone-size-fits-allではなく、その状況に応じた的確な対応策がとられねばならないこと。
  第3点は、経済の回復と雇用の回復は同時ではなく、雇用の回復は経済回復のあと、遅れてあらわれ始めるということもきちんと対応策の中に組み込んでおかなければならないということです。
  第3点でも提起されていますが、景気の回復と雇用の回復には相関関係がありますが、雇用のほうが景気回復よりも遅れてあらわれるということが、ILOやOECDの調査からも明らかにされています。それから、同じ景気の回復を辿るにしても、雇用支援策が有効に働いて、雇用が強化される場合とそうでない場合は、大きな差が出てくるという傾向もあります。このことを、きちんと把握しておく必要があるのではないかと思います。

(4)求められる政策は

 次に雇用の見通しについてですが、51カ国のうちのOECD加盟国の平均値をみると、経済成長の回復も弱くて、雇用の改善も弱い状況であれば、6年以上もしくはそれ以上長い深刻な労働市場の困難な状況が続く恐れがあります。それから、景気後退への対応と景気刺激と経済成長の政策が、雇用改善に焦点をあてて実施されるならば、労働市場の困難は緩和されて、3年以内に雇用状況がよくなる可能性もあります。
  こうしたことから求められる政策を考えてみると、日本の場合、今、有効求人倍率が0.44ですが、これは、求職者100人に対して、44の職しか用意されていないということで、そういう状況下では非常に高い失業率となるわけです。また、用意されている仕事も賃金・労働条件が決していいとは限りません。そうなると、ワーキングプアといわれている層がかなり増加していく危険性があります。それを避けるためには、生産的でディーセントな仕事の創出・拡大に雇用政策の焦点を当て続けることが重要です。
  グローバルな面からみても、非常に失業率が高くなり、ワーキングプアが増えてしまうということで、脆弱な労働者が大量に生み出されています。それらの人々に対する社会保護をきちんとしていかないと、悪循環を生みだし、社会的な不安定さが増してしまいます。このため、社会保護の拡充を政策の中にきちんと組み込んでいくことが必要です。

2.改革の主体

(1)労働組合を取りまく状況

 次に、ILOは、今のような状況をどういう形で変えていこうとしているのか、労働における国際的課題について話をしてみたいと思います。
  まず労働を取り巻く状況をみてみますと、企業は海外に生産現場を移してしまうということをよく聞きます。現に日本の企業でも、生産拠点を、中国をはじめとする途上国に移している企業はたくさんあります。その場合、国際的な協同なしに、雇用、賃金・労働条件の改善に取り組むことはできないということです。
  そういうことを考えるときに、ILO、OECD、その他の国際機関や政府間会合(G8、G20、APEC、ASEANなど)で討議される政策というのも、雇用のあり方、賃金・労働条件に非常に大きな影響を与えます。ですから、それらに雇用状況を悪化させたり賃金・労働条件を引き下げる政策をとらせない働きかけをする必要性が生まれてきます。
  OECDは、2009年9月に、日本経済に対する調査結果を、勧告を伴って発表をしました。そのなかで、非正規労働者の労働条件を引き上げるために、正規労働者の解雇をしやすくするような制度改革をしていくべきだという勧告を出したわけです。これは私に言わせてもらえば、正規労働者の水準が下がれば、非正規労働者の人たちの水準も一層下がるというのが、今までの実態として表れていることです。ここを下げれば、ここを上げることができるというのは、まさに机上の空論といえるのですが、OECDから、そういう政策を取るべし、という勧告が出されていることも事実です。新自由主義の規制緩和路線は未だに影響力を持っています。

(2)ITUCの活動

 国際労働組合運動の組織ですが、2006年にITUC(国際労働組合総連合)が結成されました。現在、157ケ国から、312の組織が結集しています。この組織が、唯一のインターナショナルなセンターであるとされています。ITUCの重要課題は、全ての人々にディーセント・ワークの実現、とりわけ良質な雇用の確保に力を入れることを課題としています。もちろんグリーン・ジョブを中心とした環境問題や、ジェンダー平等にも取り組んでいます。
  ITUCが実質上「唯一のセンター」といわれる所以は、ILOの労働側の理事14人と副理事19人は、すべてITUCの推薦による人でして、圧倒的影響力を示していることによっています。ILOの理事は、全部で56人、労働側14人、使用者側14人、政府側28人が選出されます。ちなみに、日本は政労使とも正理事を務める数少ない国の一つです。
  また、中国の労働組合である中華全国総工会はITUCに加盟していませんが、その代表がILOの副理事の一人に就任しています。2年前の選挙ではITUCの推薦名簿に載ることになったので、ILOの副理事に当選することができましたが、2005年の選挙のときは推薦名簿に載らなかったので、中国は落選しました。そういったことからもITUCが実質上唯一のセンターと言えると思います。

(3)主な領域・課題

 グローバル化が進む中で、ITUC、OECD-TUAC(経済協力開発機構 労働組合諮問委員会)、GUF(国際産業別労働組合組織)で構成される共同戦線が作られ、政府間会合への政策提言をおこなっていきます。それぞれの活動領域をみると、OECD-TUACは、経済政策や雇用政策への対応と、OECD多国籍企業ガイドラインの適用実施などの課題に主に取り組んでいます。GUFは、産業別政策とGFA(グローバル枠組み協定)の締結に力を注いでいます。ILOは国際労働基準の設定と適用を主な役割とし、ディーセント・ワークの実現を重要課題として取り組んでいます。 
  連合はITUCと、その地域組織であるITUC-APに加盟しています。それと同時に日本はOECDのメンバーですから、OECD-TUACにも加盟して、様々な政策提言活動に参加しています。GUF は10組織あります。金属、建設・林業であるとか、教育、科学エネルギーなど産業別の国際組織があります。
  これらを合わせて、Global Unionsという形で共同の取り組みを進めていますが、ILOの労働側グループの活動は、この労働組合の活動と緊密な連携をとりながら、進められています。

(4)中核的労働基準

①中核的労働基準とは
  ITUCの中心的な課題は、ディーセント・ワークの実現ということです。このディーセント・ワークとは何かというと、ILOの文章を見ますと、「適切な水準の社会保障、賃金・労働条件が確保された社会的意義のある生産的労働」となっています。日本語で、一言で言えば、「働きがいのある人間的な仕事」となると思います。
  この具体的な中身は、「ジェンダー平等の原則」を基礎に、4つの戦略目標を達成することです。それを通じてディーセント・ワークの実現をめざしているわけです。目標の1番目が「中核的労働基準の尊重・遵守」です。2番目が「良質な雇用の確保」、3番目が「社会保護の拡充」、4番目が「社会対話の促進」、つまり政労使三者の社会対話を強化するということです。
  1番目の中核的労働基準とは何かということですが、これはILOの条約・国際労働基準であらわされているものです。ILOの結成は1919年で、第一次世界大戦直後に結成された組織ですが、それ以来188の条約と、198の勧告が採択されています。条約というのは、総会での2回の討議を経て3分の2以上の賛成を得て、採択をされるということになっています。非常に厳格な手続きに基づいて生みだされる基準ですから、非常に権威あるものです。
  その188の条約の中でも最も重要なものが、中核的労働基準といわれているもので、4つの分野の8つの条約を指します。第1の分野が結社の自由・団結権、団体交渉の保護で87号と98号条約、第2分野が強制労働の禁止で29号と105号条約、第3分野が児童労働の廃絶で138号と182号条約、第4分野が平等と反差別で100号と111号条約となっています。ILOに加盟する183カ国のうち、すでに129カ国が8条約全部を批准しています。しかし、アジア・太平洋地域では残念ながら5カ国しか批准していません。

②日本の批准状況
  日本は105条約、111条約を批准していません。105号条約は、公務員の法制が改善されると大きな前進がみられて批准ができるのではないかといわれています。また、111号条約は人権擁護法が成立すれば、批准する可能性があるということです。
  105号条約については、憲法で労働三権が保障されていますが、公務員に対してはそのうちの争議権(ストライキ権)が一律全面禁止されています。もしこれを破ると、懲役刑以上の刑が科せられる可能性ある法制になっています。つまり労働規律を守らせるために、刑罰をもって臨むという手法です。
  これは、国際労働基準から見ますと非常に野蛮なやり方で、条約上の基準でいうと、強制労働を許すということになります。ILO条約では、政治的自由を制限してそれを破った場合、制裁として刑罰を科す、あるいはストライキ権を制限してそれを破った場合、刑罰に科すということは、いずれの場合でも、懲役は強制労働にほかならないということが明文上で定められています。日本ではこのような規定があるものですから、批准ができていないということになります。
  111号条約は、雇用・職業上の一切の差別を禁止するというものです。日本は、差別がおこなわれた場合に、法制面できちんとした救済が規定されていません。そして、実際は非常に多くの差別がおこなわれているため、法制上でも、実態上でも批准することは難しいとされています。少なくとも法制上における規定をクリアしないと批准はできないということで、人権の救済擁護の法制化がまたれるところです。

3.雇用危機への対応

(1)G8、G20等への対応

 ここで、最近おこなわれたG8およびG20会合における報告をしたいと思います。
  2009年3月から4月に下旬にかけて、G8 とG20の労働大臣会合として、労働・社会サミットが開かれました。それに向けた提言の中身は、「積極的労働市場」「社会的セーフティ・ネット」「景気回復」「賃金デフレのリスクとの闘い」「グリーン・ジョブの発展」「ILO、IMF(国際通貨基金)、世銀、WTO(世界貿易機関)、OECDの改革と機能強化」「効果的・説明責任のある経済ガバナンス構築」などです。そして、このことは、「人々を第一とする。危機の人的側面にともに立ち向かう」と題した議長総括に大きく反映されました。
  このことは、ロンドン・サミットの首脳声明にも反映されています。ILOによるグローバル・ジョブズ・パクト討議が期待され、景気回復について、金融刺激策だけではなくて、雇用に焦点をあてた総合的な政策の実施が必要であるという非常に大きな声明となりました。
  この時に、首脳間で金融機関への公的資金のさらなる注入を巡り論争がありました。当時の麻生総理が、ロンドン・サミットから帰ってきて、「日本は経済対策としてIMFへさらなる拠出をすると主張したが、一部の国がそれに反論をして残念だ」と発言しました。ドイツのメンケル首相は、「もはや金融機関に資金を投入するというだけではなくて、雇用水準を見据えた社会政策を充実させていかないと、本当の意味での危機を回復することはできない」と主張しました。その後の結果を見ますと、ドイツのほうが劇的な景気回復をしていたのではないかと思います。
  また、9月に開かれたG20ピッツバーグ・サミットでは、6つの課題を提起しました。さらに、サミットは金融サミットではなくて、雇用サミットとして特化して議論をしていくという主張をしました。この主張を受けて、ILO事務局長を正式に討議する場に招待して、09年の6月に採択されたグローバル・ジョブズ・パクトの内容を議論の中に反映させるという態度をとりました。そこでは、結果的にグローバル・ジョブズ・パクトが評価され、G20 全体で意識をしていこうということが確認されました。その時に大きな役割を果たしたのが、ブラジルのルーラ大統領です。

(2)グローバル・ジョブズ・パクトを中心にした取り組み

①グローバル・ジョブズ・パクトとは
  グローバル・ジョブズ・パクトの採択を中心にした取り組みですが、2008年11月に国連事務総長、ILO事務局長を招聘して、いかにこの危機を受け止めて、それ克服するか、政策を立てるかの議論を始めました。そして、翌年の3月におこなわれる理事会との間に、世界各地で、政労使3者による危機克服に向けたハイレベル会議が開催されました。アジアはマニラで開かれ、私も参加しました。そういう会議を開いて、3月の理事会でそれを集約して議論をしました。その時、ノーベル経済学者のスティグリッツ教授を議長とする専門委員会で準備された報告をもとに、グローバル・ジョブズ・パクトが討議されたということです。
  そして、6月の総会でグローバル・ジョブズ・パクトの採択がされました。今、2011年のILO総会に向けて、グローバル・ジョブズ・パクトの基準を設定するという議題を挙げていくことが考えられています。
  では、このグローバル・ジョブズ・パクトとは何かということですが、ディーセント・ワークや、公平・公正なグローバル化を達成していくために、さらにこの危機を克服するために政労使が取り組むべき基本原則を話し合って、その国が取り組むべき最も効果的で適切な規制の確立を図っていこうということであります。この場合、各国にあった方策というものを、政労使三者の対話を通じて作り出していくことが基本に据えられなければいけないと強調されています。

②アメリカの取り組みの紹介
  関連して、アメリカの取り組みについて紹介しておきます。市場原理主義や、行き過ぎた投機的経済を批判して成立したオバマ政権は、ブッシュ政権でとられた政策の転換をしようとしています。特に注目されているのが、PLA(Project Labor Agreement)の締結です。これは、政府が2500万ドル以上の連邦予算を使った公共事業において、労使関係の安定、適正な労働安全衛生・公正な雇用機会の確保を決めている法令・規則について、企業とその下請け企業すべてに労働協定を締結させることを通じて遵守させることを連邦政府の政策としているということです。
  それから、つい最近では、100名を超えるビジネス界、労働界、政府・コミュニティーから専門家が招かれ、ジョブ・サミットが開催されました。そのなかで、失業率が10%を超える深刻な状況を受け、雇用危機をどういう形で乗り越えるのかという意見交換をしました。それをもとにして、新しい戦略を生みだす試みがすすめられているところです。

(3)日本の現実は?

①ディーセント・ワーク実現との関連でみると
  最後に、日本の現実はどうなのかということで、特にディーセント・ワーク、雇用の課題に絞って少し問題提起をしたいと思います。
  ILOでは、ディーセント・ワークを非常に重視し、危機回復の要石であるとしています。また、これの実現を通して、危機をもたらした以前に戻るという回復ではなくて、以前を超える、より公正な社会をつくらなければいけないということをいっています。
  このディーセント・ワークは、ジェンダー平等という原則が据えられていないといけません。しかし、ジェンダー平等そのものに関しても、戦略的な4つの目標である、「中核的労働基準の尊重遵守」「良質な雇用の確保」「社会保護の拡充」「社会対話の促進」については、どの面からみてもまだまだ多くの課題を抱えているということです。

②男女差別・男女格差の問題
  つい最近でも、ILO100号条約を日本は批准していながら、長年、昇進差別を含めて男女の格差が著しいものがあったということで、訴えてきた女性たちがいました。この人たちは、格差や差別が事実あるとされ、最高裁で勝利しました。しかし、具体的にどういう措置はとられたと思いますか。裁判費用と弁護士費用および差別をされて傷ついたことに対する賠償金は、会社側が支払うことになりましたが、賃金格差に関しては、すでに時効だから払わなくてもいいというものでした。このような判決に対して、批准している100号条約の同一価値労働・同一賃金をきちんとおこなっていないということであるから、是正するようにILOから勧告を出してほしいということでした。そして、彼女たちの労働組合はILO憲章24条に規定されている違反申し立てをしたのです。

③社会保障の問題
  日本の雇用実態を見ると、今、不安定雇用の労働者が増加しています。ILO181号条約は、派遣労働者の利益を守るという条約です。日本はこれをいち早く批准をしているのですが、機能していないということで、多くの派遣労働者で組織している全国ユニオンが、ILO憲章24条にもとづいて違反申し立てをしました。ILO理事会は受理を決定し、政労使各1名をもって構成する審査委員会を設定しました。
  それから、日本は、失業者のうち77%が雇用保険の給付を受けていません。これを逆に見ると、失業者のうちわずか23%しか雇用保険の給付を受けていないということです。フランス・ドイツは、80%以上の人が給付を受けていて、給付を受けていないのは、10数%です。アメリカ、カナダ、イギリスのいわゆるアングロサクソン系の国は、個人責任が強調されて、社会保障システムが非常に遅れていると見られています。実際そういうところもありますが、雇用保険の適用というところを見ると、日本はこれらの国々よりも悪い数字になっています。
  このような統計結果に日本政府も慌てて、雇用保険の改正がなされました。今までの雇用保険は、1年以上雇用を継続している場合に限って、労働者も使用者も雇用保険に加入して、失業した場合は給付を受けるということになっていました。それを1年ではなくて、6カ月以上継続して雇用される人は雇用保険に加入する、という形に改正しました。ところが、実態はほとんど変わっていません。つまり、日雇い労働者や、契約期間6カ月以下の短期雇用の労働者が非常に多いということが、法律を改正しても実態は変わらないというということにあらわれているということです。

④状況の克服:グローバル・ジョブズ・パクトの実施に向けて
  こういうことを、どういった形で克服するのかということが、私たち労働組合の重要な課題となります。
  その対応策として、先ほど説明したグローバル・ジョブズ・パクトの実施があります。これは、世界の労働組合と提携して、共同して取り組む必要性がありますが、まずは、日本でできることはきちんと日本で取り組んでいくということが大切です。その場合、企業は海外に進出している場合、日本国内だけでなく、海外の工場で働いている労働者たちに対してもディーセント・ワークがきちんと確保されるようにする。そして、このことを労働組合としてもすすめていかなければいけないと思っています。
  時間になりましたので、私からの問題提起は終わります。今日の話で、少しは皆さんが労働組合に関心を持っていただいて、世界のために何ができるかなという気持ちを少しでも持っていただければありがたく思います。

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