埼玉大学「連合寄付講座」

2009年度後期「働くということを考える」講義要録

第7回(11/25)

ワーク・ライフ・バランス
【労働時間管理をふくめ】について考える②

―連合の時短・男女平等政策―

ゲストスピーカー:山口 洋子(連合副事務局長)

1.はじめに

 本日のテーマであるワーク・ライフ・バランス(WLB)は、ここ数年かなり定着をしてきていて、皆さんもよく耳にすると思います。しかし、取り沙汰されているわりには、本当の意味でのWLBは進んでいません。それを進めていかなければということで、連合は、労働時間短縮政策、そして男女平等政策という2つの大きな視点で取り組んでいます。取り組みを長く続けながらもなかなか進まないという、この悩ましいWLBとは何なのかということについて、今日はお話をしたいと思います。
 皆さんにも、この重要なWLBというものが、なぜ日本で進んでいかないのかということを考えていただければと思います。

2.ワーク・ライフ・バランス推進の背景

(1)少子化対策から働き方の見直しへ 
  日本におけるWLBは、そもそもスタートの時点においては少子化対策としての取り組みでした。少子化問題が国にとっての喫緊の課題である。要するに、子どもが少なくなり続ければ、国の存続にかかわるということがわかっていますから、子どもをいかに多く増やせるかという視点でWLBは議論されてきました。1992年には育児休業法が制定され、これによって出生数が増えるのではないかと期待されましたが、功を奏さず、1999年の育児・介護休業法、2002~05年の改正育児休業法、2005年の次世代育成支援対策推進法と、次から次へと法律が改正されてきました。
  政府内でも2007年に、5つの会議・分科会でWLBの議論がなされました。このような会議に連合のメンバーも参加したときに、「WLBは、私たち労働組合・働くものの立場から真剣に考えなければならないことであり、それは少子化対策として子どもの出生数を増やすだけというものでは実現しない」という提起をしました。WLBがアンバランスになっているのは、もっとほかの要因があることを主張しました。その結果もあって、広くWLBというものが取り沙汰されるようになりました。
  そして、2007年12月に、政府、経営者団体、労働組合の政労使の三者で、「ワーク・ライフ・バランス憲章」というものを発表しました。それぞれが三者の責任において推進しますということで、当時の福田首相、日本経団連の御手洗会長、連合の髙木会長が署名をしました。そして、「憲章」だけにとどめず、同時に行動指針というものを策定しました。このなかで、ワーク・ライフ・コンフリクト(ワーク・ライフ・バランスが実現できていない状態)に関して14項目にわたる現状の実態数値を決め、WLBをすすめることによって5年後10年後にはどのくらい高まったかみていこうということで、誰が見てもわかる数値目標を設定しました。
  このように、WLBというのは少子化対策としてだけではなくて、働き方を見直さなければ実現しません。私たちはそれを働き方改革といっていますが、これが重要だということです。

(2)「ワーク・ライフ・バランス憲章」合意の背景
  「ワーク・ライフ・バランス憲章」が合意に達した背景の一つには、ワーク・ライフ・コンフリクトということがありました。WLBの取り組みについては、個々の企業の取り組みに依存していました。その結果、企業規模間で大きな差が出てしまいました。WLB中心の先進的な企業の多くは大企業です。たとえばパナソニック、資生堂、当時であれば日本IBMであるとか、そういう大手企業の中で進んでいました。しかし、日本の企業の9割を占める中小企業は、取り組みが遅い、あるいは取り組んでいないということです。
  また、企業規模間だけでなく、働き方の二極化という面においてもワーク・ライフ・コンフリクトがあらわれています。正規社員と非正規社員は、雇用形態が違うだけでなく、雇用、賃金、労働時間といったことも二極化しています。非正規グループは、不安定雇用、不安定所得、低賃金で、正規社員にくらべ労働時間は多少短くなっています。こういう人たちにとっては、仕事と生活の調和というものは二の次であり、まずは安定した仕事を持てなければ、将来設計ができないわけです。これの解決なくしては、WLBもそれこそ絵に描いた餅のようなもので、多くの非正規労働者の人たちには馴染みがないものになってしまうということです。
  そして、仕事と生活の間で問題を抱える人の増加ということであります。特に非正規社員に多く見られますが、仕事と生活の狭間でコンフリクトな状況にあるために、自分が思い描く生活を実現できない人たちが多くなっています。こういったところをみていくと、少子化だけの問題ではなくて、働き方の改革をしなければ、WLBの推進ができないということです。また、企業に依存しているだけでは解決できず、社会全体の課題としていく必要があります。
  企業にとっても、働き方を見直すということが、生産性向上につながるわけです。不況の現在であってもWLBに取り組むことによって、企業にとってプラスになるということを土台にして、「ワーク・ライフ・バランス憲章」の合意に達したわけです。

3.仕事と生活に関する現状

(1)「希望」と「現実」の乖離
  データをみると、20~29歳の男女は、仕事を優先と考えるよりも、仕事も自分の時間も家族との団らんもというように、複数の活動を優先させたいと思っています。しかし、実際は41%の方が仕事優先になってしまっていて、複数の活動を優先するという人は3割を切っています。30~60歳の男性も、仕事よりも、家族との関係などの複数の活動を優先したいとしている人が多くいますが、半数以上が仕事を優先せざるを得ない状況になっています。
  このように、多くの労働者が、仕事だけではなくて、友達との関係あるいは家族との関係、それから自分の趣味を大切にした生活をしたいと考えています。にもかかわらず、実現はしていないという状況です。「ワーク・ライフ・バランス憲章」では、私たちが思い描くライフスタイルを実現できるのが、当たり前の社会ではないかということを言っています。
  また、そのようなライフスタイルの実現以前に、明日の生活をまず心配しなければならない非正規労働者がかなり増えてきています。女性の場合は、半数近くが非正規労働者です。こうした動きは現在も進んでおり、女性だけでなく男性のなかでも増加しています。

(2)妻と夫の1日当たりの家事・育児時間
①各国との比較
  アメリカ、フランス、韓国は、WLBの優等生国ではありません。それでも、アメリカの場合、夫が子どもの世話をすることについては、ハイレベルです。アメリカでは、子どもは家族のものというだけではなく、社会的に重要視しているところがあります。そのような社会環境が影響しているのかもしれません。
  フランスは、日本の女性の働き方と少し似ているところがあります。管理職になる女性がすごく少ないです。それから、専業主婦的な女性が多いです。しかし、家事や子育てについては妻だけが負担するということはないわけです。また、韓国は非常に日本と似ています。結論からいうと、WLBが進んでいない国ということで常に日本と競っているという感じです。ただし、今は、完全に日本が負けていますが。
 このような優等生でない国と比較しても、日本の夫の家事・子どもの世話における時間の少なさということがデータからわかります。

②今後の希望
  そういった状況のなかで、今後はどうなのかというと、今よりも多少、家事・子育ての時間を増やしたいと思っています。たとえば、別のデータで育児休業の取得状況をみたものがあります。育児休業というのは、父親が取得する率が大変低いです。ただ、とりたくなくて低いということではなく、育児休業をとってみたい、できるならばとりたい、という父親が多くいるということがデータの結果からわかります。
  ただ、56.8%に人たちが今のままでよいといっています。その理由については探っていないのですが、私が現場等を見ていて感じるのは、「今のままでよい」というよりは、「今のままで仕方がない」と思っている人が多いのではないかということです。今の生活の状態であれば、家事や子育てをする時間は増やせないのだという諦めの気持ちが、この数字にあらわれているのかもしれません。
  2010年6月30日に、改正・介護・育児休業法が施行される予定です。これは、産後2週間は、父親も育児休業をとれるように事業主は措置をしなければいけないとか、父親も育児休暇を取るのであれば、今の1年間の育児休暇を2カ月間延長できるとしています。これは父親と母親が6カ月間の折半でも構いません。このように、法律を整備することによって、中小の企業にも、WLBの取り組みをせざるを得ないというような環境をつくることを、連合ではすすめているところです。

4.連合「年間総実労働時間1800時間の実現に向けた時短方針」

(1)労働時間の現状
  WLBの推進について、男女平等の視点から説明してきましたが、さらに重要なのは、連合の労働時間短縮政策です。連合「年間総実労働時間1800時間の実現に向けた時短方針」というスライドがありますが、そこで連合が言及しているものを説明したいと思います。
  まず、労働時間の延長です。労働時間は重要な労働条件の一つですが、労働時間は、労働基準法のなかで、週40時間ということが規定されています。したがって、これは法律で決められていることなので、何時間働いてもいいというわけではありません。
  しかし、実態は週40時間をオーバーしています。具体的には、男性労働者の5人に1人が、週60時間働いています。1日にすると12時間働いていることになります。これが、臨時にということではなくて、恒常的にこれくらい働いています。なぜ法律で週40時間働いてはいけないと言っているのに、こんなにオーバーした働き方になっているのかというと、法律の中に、限度時間を超える一定時間まで時間外労働をさせることができる特別条項があって、そこから端を発して長時間労働ということになってしまっているからです。実際に働いている時間を総実労働時間といい、

 (所定内労働時間)+(時間外労働時間)-(年次有給休暇時間等)=年間総実労働時間

 として計算されます。この年間総実労働時間が、1989年には2120時間でした。この時間は、働きすぎだと国際的に批判されました。特に製造業が国際競争の中で一人勝ちをしてきたのは、労働時間規制でルール違反をして、クオリティーの高い、低価格の製品を作ってきた結果だとし、アンフェアだと批判されたわけです。
  そのような批判を受けて、1987年に労働基準法における法定労働時間を週40時間に改正しました。さらに、1992年には、労働時間が短縮されるまでの法律ということで、時短促進法という時限立法を制定しました。このような法律に合わせた取り組みの結果、1999年には、1949時間まで短縮しました。ただ、その後バブルの崩壊であるとか、様々な環境の変化があり、ふたたび時間外労働の増加傾向がおこりました。くわえて、年次有給休暇の取得日数も大幅に減少しました。

(2)年次有給休暇の現状
  年次有給休暇は、労働基準法の中に定められています。勤続年数によって段階がありますが、たとえば、年間20日間は自分の意思で休むことができるという一つの権利です。ただし、自分が休みたい日に、どうしも会社側の都合によって休めない場合があります。その時は、事業主が有給休暇の時季変更権を行使して、他の日に変えることになることがあります。これは、労働基準法で認められていることなのですが、休む日にちを変えるだけであり、有休をとってはいけないとは言えないわけです。
  このように、有給休暇は働く者の権利として守られているのですが、2008年の取得率平均は46.6%でした。半分も取得していないことになります。日本の場合は、労働者が権利主張をしない限り、取らせなくてもいいということが慣行となっています。それに対して、ヨーロッパの場合は、事業主が取らせなければいけないということになっています。この辺が問題だということで、今、連合では法律を変えていきたいと思っているところです。

(3)不払い残業の問題
  このように年次有給休暇の取得率が極めて低く、労働時間もせっかく減少してきたのに、2005年には2019時間と増加に転じ、1999年から50時間も増えてしまいました。さらに、2008年は2031時間となっています。
  しかし、目に見える数字が増えたこと以上に問題なのは、この2031時間は正式にカウントされている時間なのか、このほかにサービス残業があるのではないかということです。私は、サービス残業という表現を許せません。サービスというのは、タダというものではなくて、もっと重要な格式の高いものであるはずなのに、それをタダ残業みたいなことばの使い方をされています。要は、不払い残業というようなことが横行しているということです。
  不払い残業の背景には、リストラによる人員削減で、残った人に全部仕事が集中してしまうということがあります。くわえて、正社員を削減したかわりに非正規を採用すると、契約内容が短時間勤務ですから、その人たちに長時間労働をさせることはできない、そうすると、残っている正社員に負担がかかってしまうということです。

5.長時間労働の問題

(1)長時間労働の背景
  不払い残業の問題も含む長時間労働には、さまざまな背景があります。一つには、消費者志向の経済活動が招くサービス残業の増加です。よりよいサービスを求める消費者に対応することを考えると、たとえば宅急便は時間指定で配達してくれています。そうしないと、顧客ニーズに応えられないということです。そのようなきめ細かいサービスをするには、それなりの働く側の対応が求められる、ということも長時間労働の背景としてあります。

(2)長時間労働で何が問題なのか
  学生からの質問で、労働時間の限度は労働基準法という法律で定められていて、年次有給休暇も自分の権利としてとれるのに、どうして長時間労働という問題が存在するのかとよく聞かれます。これは、私も理解できないことです。
  自分の経験からいえば、松屋という百貨店に入社して、新入社員からある一定のところまでは、所定内労働時間が守られていました。当時、女性は、1日2時間以上は残業してはいけないということになっていました。女子保護規制というのが労働基準法にあった時代ですから、残業したくてもできない時代が10年くらいありました。
  その後、マネージャーという立場になり、管理職になりました。労働基準法第41条で、管理職や専門的な業務については、週40時間の労働時間や残業などの規制が適用除外されることになっています。マネジメントの立場からいうと、自分の部下の労働時間を管理しなければいけないわけです。そのため、早く帰らせた分、その残った仕事を自分が代わりにやるということになり、一気に私自身の労働時間が延びたというような状況がありました。
  マネージャーになってから2年後くらいにバイヤーという専門職になりました。バイヤーというのは、自分で商品を仕入れたり、これを売るために装飾をしたり、かなり裁量的な働き方が可能でした。その成果は厳しく見られるのですが、やりがいのあるところでした。この頃は、ほとんど休みなしの状況で働いていました。でも、やりがいを感じているので、脳のほうがポジティブになっていて、「もっと働きたい、もっと働きたい」という状態でした。ただ、この間、友人との付き合いなどは一切できませんでした。WLBの面からみると、やりがいを持って仕事はしていましたが、一方では失うものも大きかったといえます。

(3)メンタル不全による過労自殺
  先ほども長時間労働の背景として説明しましたが、やりがいを感じて長時間労働になっているというよりも、顧客ニーズに応えるために長時間労働にならざるをえないというケースが多く、心身の負荷が高まっています。
  今は、企業の中でメンタル不全に罹っている人が多くいるというのが実態です。様々な理由がありますが、その多くは、長時間労働が要因というケースが非常に多いです。それから、今、社会環境が変わっているなかで、職場が非常にギスギスしているなど様々な要因があります。
  警視庁が毎年出すレポートの中で、年間3万人以上の自殺者がいるということが報告されています。1995年以降の自殺者の高まりをみると、女性に比べ、男性が非常に多くなっています。私もメンタルヘルスの調査にたずさわってきましたが、自殺をしたいという気持ちにとらわれる人は男性より女性の方が多いのです。しかし、結果として男性の方が、確実に自殺できる方法を選んでしまっています。仕事との関連を見ると、どちらかというと男性の方が責任ある仕事を任されていて、落ち込みやすいというのがあるのかもしれません。
  それから、過労死ということもあります。過労死は、国際的に「karoshi」として通用します。それだけ特異で、日本にしかあり得ない状況になっていることのあらわれです。自分の権利で休めるし、法定労働時間がすぎたら帰宅できるのが当然と思っている欧米では、過労死などはあり得ないわけです。ところが日本では、自らの限界に達するまで仕事に打ち込み、過労自殺、過労死というものが多く出ているわけです。

(4)「仕事」と「生活」のバランス⇔「仕事」と「命」のバランス
  今まではWLB というと、仕事と生活のバランスでしたが、ここにくると仕事と命のバランスにまで関わってしまうのだということを皆さんに知っていただきたいと思います。
  もともと、命がけで働こう、死ぬほど働こうと思って、過労自殺や過労死に至ったわけでは決してありません。日頃から、やらなければならない仕事が思い浮かぶ、休暇をとったら解雇されるのではないか、出世できないのではないかという様々なことが頭をよぎっていて、眠れなくなってしまいます。ただでさえ長時間労働で睡眠時間が短いのに、その時間さえも眠ることができない。人間にとって眠るということは、健康上非常に大切なことですから、眠れない場合には、命にまでかかわってしまうこともあるわけです。今日一日がんばったら明日は休もう、と思いながら仕事をし、いろいろなことが積もり積もって、このような事態を招くと考えられます。

(5)職場のトラブル
  また、職場のトラブルということもあります。労働時間の問題もあるのですが、職場の中が非常にギスギスしてくるという状況があります。あるいは企業の約9割を占める中小企業については、すべてではありませんが、なかなか法律を順守した経営ができないところがあります-。そういう中で、個別労働紛争問題が着実に増えてきています。その問題に対して早期に対応するということで、労働審判制度ができました。
  具体的に個別紛争の内容としては、大きなところでは解雇や労働条件の引き下げです。明日からもう職場に来なくていいよと言われたとか、賃金をいきなり30%カットされたとか、今までならば労働契約上守られてきたことが守られていないといったことがあります。
  個別労働紛争でも、明らかにルール違反ということであれば、労働組合としては阻止することができます。しかし、個人が何に価値を置いて働いているかによって、労働組合が立ち入れない問題というものがあります。そういうなかでは、長時間労働が高まってきた場合も対応できないということになってしまいます。そのために連合では、具体的にどういうことに取り組むのかという方針を出しました。

6.連合における労働時間短縮のための取り組み

 たとえば、年間労働時間を150時間以内に収めることを、様々な数値的な目標を具体的に出しています。ただし、長時間労働が蔓延しているからといって、そこに人員を多く配置して解決できるかというと、労働組合としても十分な人員配置を要求できない場合があります。なぜかというと、人件費の原資が不足しているために人員が少なくなっている場合もあるからです。こうしたなかで雇用を増やすということは、今雇用されている人たちの給料を引き下げざるを得ないということにつながります。したがって、十分な人員配置に取り組むことができない場合もあるわけです。
 ですから、数値的な目標を一方では掲げてはいますが、それだけではなく、さまざまな取り組みをしなければ、労働時間短縮の問題の解決はできないということで、7つの項目について次のような具体的な指針を出しました。

①時短意識の向上と職場風土の改善
  私たちは、時短意識の向上と職場風土の改善が必要と考えています。時間が足りなければ残業すればいいというように安易に考えないで、決められた時間のなかで、パフォーマンスをあげていくという意識をどうしたら持てるのかという取り組みです。

②適正な労働時間管理の徹底と過重労働対策の強化
  管理者には、部下の実際の労働時間が見えていないということがあります。そのため、退出をカードでチェックするような具体的な方法で、退社時間を把握するなどして、管理を徹底していきます。これは、過重労働対策を強化することでもあります。

③年間所定労働時間の短縮、④時間外労働の削減
  残業が蔓延しているのは、仕事量と人員のアンバランスが原因となっている場合もあります。したがって、労働組合は、仕事に対して適正な人員が配置されているかきちんと検証するとともに、無駄な仕事はカットして、必要な利益を生み出すようにしていこうということを提言していきます。
  それから、36協定の適正な締結・運用の点検です。時間外労働、あるいは休日労働は36協定により可能ですが、協定どおりに働いていたかチェックをする必要があります。今までこれを十分にしてこなかったのは、労働組合としての大きな反省です。
  さらに、時間外割増率の引き上げです。労働基準法の改正によって、若干の割増率を引き上げることができました。ただ、割増率の引き上げは、法律でなくても労使協定の中で決められることもあります。連合では、労使で決める割増率を、法律よりも上回ったものにしていくことをめざしています。企業側にしても、割増率が低いと、新しく人を採用するよりも、残業させる方が得ということになってしまいます。そこのところを変えるためにも、割増率の引き上げは必要なことと考えています。

⑤年次有給休暇の完全取得、取得率の向上、⑥パートタイム労働者の課題
  年休は、労働者の権利として自主的にとらせるというよりも、事業主の付与義務とした方がいいのではないかというところで議論中です。そして、パートにおいては、総実労働時間についても考えなければいけません。

⑦労働時間等設置改善法の活用
  時限立法の「時短促進法」に代わって、恒久法として、「労働時間等設置改善法」が制定されました。しかし、これは全く使われていないと状況です。これをきちんと活用していこうということです。

 以上のように、連合では、誰もが仕事と生活の調和が取れがた働き方・暮らし方ができる労働時間をめざして、時短・男女平等政策について取り組んでいます。直近の報告をしますと、労働時間は若干短くなっています。ただし、この時短は、現在の景気低迷が仕事を減少させたことによるものです。
  それでも、連合では、今の状況を1つのチャンスとしてみています。ここで、時短の取り組みをしていかないと、景気が回復してしまえば、今まで通り長時間労働をさせるということになりかねません。今こそしっかり取り組むべきだという思いでいることをご報告して、私からの話は終わらせていただきます。ありがとうございました。


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