埼玉大学「連合寄付講座」

2009年度後期「働くということを考える」講義要録

第3回(10/21)

雇用危機について考える
―②連合の雇用政策―

ゲストスピーカー:花井 圭子(連合雇用法制対策局長)

1.はじめに

 今、雇用問題で何がおこっているのか、連合としてどういう対策を考えて、政府が実行をしようとしているのかお伝えしたいと思います。
  はじめに、簡単に自己紹介させていただきます。私が就職をした1979年頃は、男女雇用均等法はありませんでした。その頃、アパートを借りて、奨学金とアルバイトで学生生活を送っていました。そして、就職の時期に大変困ったことがおきました。当時は4年制の女子大生でアパート住まいあるいは下宿していると、多くの企業の採用試験は受けさせてもらえなかったのです。そういうことを知らなかったので、呆然としてしまい、あわてて就職先を探し、ようやくある建設会社に就職するわけです。
  就職してみて驚いたことは、その会社には、賃金表がないということです。一人ひとりの賃金が、社長の好みで違ってくるわけです。福利厚生もありませんし、残業代も出ませんでした。それで、「これはおかしい」ということで、6人のうち私を含めて4人で労働組合を作ろうということを相談しました。
  結局、組合は作れないままで終わるのですが、その時に、友達から、「総評というところにアルバイトで来ないか」と誘われました。総評でのアルバイトの方が、正社員だった建築会社よりも給料が高く、ボーナスも出るということもあって、総評に入りました。その後、正規社員となり、それからずっとナショナル・センターである総評、今は連合にいるということです。ナショナル・センターが何か、ということが見えないと思いますので、そのことも含めて皆さんにお伝えしたいと思います。

2.日本の雇用情勢について

(1)2008年秋以降の経済・雇用状況
  皆さんは今就職で大変悩んでいるかと思いますが、私自身も、職がないというのはこういうことかなと思ったことがあります。一度100円しかお金がない時があって、失業したらどうしようかと、アパート代が払えなくなる恐怖感を今でも覚えています。このため、今回の雇止めとなった派遣労働者の人たちを見ていて、非常に辛いものがありました。また、同時に怒りもわいてきました。
  2008年秋以降、景気が非常に悪化し、当然雇用情勢も悪化してきたわけです。為替、株価の変動等で、大手製造業は相次いで生産減少に追い込まれました。また、雇用も非正規労働者の割合が増えていましたが、派遣労働者が雇止めされていきました。このことの象徴が日比谷公園の派遣村だと思います。
  連合も正月休みを返上して、派遣村に行き、労働相談を請け負いました。私が相談を受けた人は、30代から40代の人たちだったのですが、いきなりクビを切られて、頼る家族もないということでした。印象的だったのは、帰る場所がないと言われたことです。ご両親は、すでに亡くなっている。もう一人の方は、私と同じ福島県出身だったのですが、おばあさんしかおらず、自分が生活保護を受けるとなると、おばあさんに連絡がいくことになるため、それだけは嫌なので、「働きたい」と言われました。今回のことは、今まで見えなかった日本の影の部分を明らかにしたのではないかと思います。

(2)雇用失業情勢の概況
  今、日本の15歳以上の人口は、約1億1050万人です。そのうち労働力人口は約6657万人で、そのなかで働いている人たちは約6298万人います。さらに、そのなかでの雇用労働者は、約5465万人です。就業には、自営業で働くなどいろいろな働き方がありますが、雇われて働いている人が、全体の就業者数の86.3%を占めているということになります。そのため、日本は雇用社会といわれています。ですから、雇用対策や失業対策は、非常に国民生活に影響するのだということが、この数字からわかると思います。
  男女別でみると、男性は約3138万人、女性は約2327万人が雇用労働者として働いています。そして、2009年8月の雇用失業情勢をみると、完全失業率が5.5%で、前月より0.2ポイント低下しました。その前の月は5.7%です。これは1953年(昭和28年)の統計開始以来過去最高ということで、最高な数字が2カ月続いているということです。先ほど雇用者数は約5465万人といいましたが、そのうち解雇、雇止め等いろいろなことがありますが、約74万人減っているということです。
  次に、2009年8月の有効求人倍率は0.42倍で、これは1963年以降過去最低です。これは、10人のうち4人しか仕事がないということを表しています。男女計でみていくと、失業率は5.5%です。それを年齢ごとにみると、15~24歳が9.3%、25~34歳だと7.1%となっていて、この層がものすごく高い失業率になっています。派遣村に来られた人も30代~40代にかけての人が多かったですし、それから工場などでクビを切られたという人は、20代後半~30代後半という人が多かったわけです。さらに、女性の15~24歳は8.4%という数字も出ています。
このような状況の中で、若者に職がないということがようやく認識されまして、今若者の対策が急速に行われようとしています。

3.連合の雇用情勢認識

 2008年10月23日、連合で中央執行委員会が開かれました。このときに、ちょうどリーマン・ブラザーズが倒産し、世界的な金融危機になるのではないかという時でした。その歴史の転換点にあたって、「希望の国日本へ舵を切れ」という文書を確認しました。
  このなかで、まず、世界は同時金融危機の様相を呈しているということ、暴走する市場原理主義が、実体経済を超えるマネーがさらに富を求めて暴走するようになったと認識しました。そして、「カジノ資本主義や、競争主義を掲げてきた経済が破たんし、そして、アメリカでも『チェンジ』を掲げて変わろうとしている。日本はどうするのだろうか。日本も舵を切るべきではないか。希望の国日本の構築へ向けて、今こそパラダイムシフトを」ということを訴えました。
  今、歴史的な転換点を迎えていて、今こそ、これまでの価値観を転換すべきである。むき出しの競争社会では、人は生きていけない。「連帯と相互の支え合い」という協力原理が活かされる社会、ぬくもりのある思いやり社会とするため、幅広い国民的な合意を形成していく社会をめざす必要があるのだという主張を、連合は掲げたわけです。
  連合の社会的責任と社会的使命ということで、「労働を中心とした福祉型社会」の実現に向け、その運動の牽引者としての役割を果たしていくということを、文書として発表したということです。金融危機に端を発した、経済危機、雇用危機の状況を、私たちはこのように捉えて、日本を大きく転換させていこうということを訴えたわけです。

4.連合の雇用・労働政策

 こういう状況を背景にし、連合ではいくつかの政策を打ち出しました。連合は、経済運営、税制、公共交通、教育、社会保障など政策に関わるあらゆる分野の課題について、見直し作業を2年に1回おこなっています。その中で、今回は雇用・労働政策をご紹介したいと思います。

(1)背景と考え方
①雇用の定義
  2009年における非正規労働者の割合は33.5%で、今は34%を超えています。これまでは20%前後で推移していたのですが、1990年代後半の規制緩和によって、一気に非正規労働者が増えました。雇用流動化を軸にして、規制緩和がすすみ、その結果どうなったかということは、すでに派遣村のような動きにあらわれていたと思います。
  そこで連合では、雇用の定義について、「雇用の基本は、期間の定めのない直接雇用である」ことを原則としました。有期契約というのは、契約の期日が来れば終わってしまうわけです。そのあと更新される保障はありませんし、次に仕事がすぐに見つかるかわかりません。非常に不安定な状況におかれているということです。今、非正規労働者が、結婚ができない、家庭が築けない、子どもが産めないと言われています。雇用が不安定な状況の中では、当然そういうことになるだろうと思います。
  ですから、私たちは60歳が定年であるならば、60歳まで続けて働けるというのがいいのではないかと考えています。その間、自分で技能を高めて、転職するということも選択肢としてあると思います。ただ、基本は、期間の定めのない直接雇用です。
  では、直接雇用とは何かというと、派遣労働者は、派遣会社に登録します。その場合、登録型と常用型の2種類があります。ただし、働くのは雇用された会社ではなくて、別の会社に派遣されるわけです。たとえば、連合という会社があったとしたら、派遣会社の従業員が連合に派遣されるわけですが、連合で雇用できるわけではありません。雇用されているのは、あくまでも派遣会社ということになります。ですから、指揮命令権は派遣会社で、連合にはありません。これを間接雇用といいます。
  これも非常に不安定であり、派遣会社が入ることにより、中間マージンが発生することになります。有料職業紹介のマージン率は10.5%です。しかし、今問題となっている派遣会社というのは、3割~4割もマージンとして取っていると言われています。人によっては5割をとっていたというところもありました。また、派遣先から別の会社に派遣されるという二重派遣ということも問題となりました。
  なぜ、派遣が必要なのか、企業のコスト削減のためです。本来ならば人材が必要な会社が直接募集採用すればいいのではないかと言われています。間接雇用は非常に不安定だし、低賃金というように労働条件が悪くなりやすいのです。もちろんこのような対応の派遣会社ばかりではありませんが、そういうところが非常に多くあります。
  このようなことで、雇用のあり方としては、「直接雇用」と「期限の定めがない雇用」が、安心して生活をしていけるのではないか。これが雇用社会としての基本ではないかということです。連合は、雇用の原則を「雇用憲章」という形で宣言することを考えています。

②労働条件と労働災害
  今日本の年間の総実労働時間は、全労働者平均で1800時間を切ったのですが、一般労働者は2031時間(2008年)と依然2000時間を超えています。また、年次有給休暇の取得率は46.8%です。これは、北欧に行くと考えられないことだと驚かれます。年休というのは、権利としてあるので、100%消化するのが当たり前ということです。それに対して、日本は半分もとっていません。
  法律では、半年働いて8割以上の出勤があれば、10日間の年休が与えられます。それ以上増えても構わないのですが、逆に年間10日もとっていないというような状況です。それから問題なのは、若い人たちの労働時間が非常に長いということです。正規で働いている人で、とりわけ働き盛りの30代の男女の労働時間が長いということが非常に問題となっています。また、名ばかり管理職ということも問題となりました。
  そういうことを背景にして、労働現場における重大災害が増加傾向にあります。重大災害というのは、1つの事故で5人以上が死亡することをいいます。たとえば、コンビナートが爆発したとか、化学工場が爆発したなどです。このことの原因の1つとして、正社員が減ったことに伴い熟練労働者が減って、危険を察知する人が少なくなってきたことが指摘されています。
  何年か前に大分の鉄鋼会社に行ったときに、そこの組合員が言っていたのですが、直感があるのだそうです。機械の音がおかしいとか、風の出方が変だとか、ベテランの人にはこういった予知能力が備わっているということした。で、そういう人たちが少なくなってきているから、未然に事故を防ぐことできなくなり、安全面で非常に怖いと言っていました。
  やはり、危機が察知できなくなって、大きな事故が増えている。あるいは非正規が増え、正社員が長年かけて培ってきた技能が継承されない。これは経営側としても、大変重大な問題として捉えられています。日本はこれまでものづくりを看板として、経済を発展させてきました。そのものづくりが継承されない、これも災害と同じように、企業にとってはとても深刻な問題となっています。

③外国人の受け入れ
  それから、「留学生30万人計画」や内閣府「高度人材受入推進会議」の設置等、外国人労働者や外国人移住者の受入れの提言が相次いでいます。看護・介護分野を中心にフィリピンとかインドネシアから外国人労働者を受け入れる動きがあります。
  また、「留学生30万人計画」とは何かというと、少子化のなかで大学に学生が集まらなくなっています。大学も競争が激しくなっているので、留学生30万人を受け入れたらどうかという意見が突然出てきたわけです。私は一度、この審議会を傍聴しました。その時に、大学の先生が「とてもではないが、これ以上は留学生の面倒をみる体制を整えられません」という発言をしていました。大学側でも、言葉の問題、住居の問題など対応しなければならない多くの問題があるわけです。
  国内の労働政策をどうするかということを抜きにして、こういうことを一方で考えていることは、大きな矛盾だといえます。

(2)要求の項目
  以上のことを把握したうえで、連合は13項目を政策として打ち出しました。ここでは、皆さんに直接関連するものを説明していきます。

①雇用の安定と180万人の雇用創出をすすめるとともに、セーフティネットの充実を図る
  雇用社会では、雇用を安定させることは基本です。しかし、資本主義社会である限り、必ず同じままの状況で働けるとは限らないわけです。ですから、職種転換ができるような環境が必要です。そのためには、新たな雇用の創出が求められます。たとえば、環境分野において先進的な技術を開発するとか、今後成長が見込める分野に、従来型の産業を転換させていく。今の産業を前提としていたら、失業者をなかなか救出できません。
  まずは、今の雇用を安定させる。それでも失業した場合は、雇用創出による労働移動をおこなう。これには職業訓練も入ります。そして、セーフティネットです。失業しても失業保険が給付されない、病気になっても健康保険に入っていないため病院に行けない、ということがないように、セーフティネットをはっておかなければいけないということを強く打ち出しました。
  その具体策の一つは、雇用保険制度等の充実です。雇用保険は、これまで非正規は入りにくい制度となっていました。これを何とかするために、2008年の審議会では、非正規労働者ができるだけ失業給付を受けられるようなさまざまな改善策を検討しました。
  それから、ぜひとも実現しなければいけないのは、雇用保険と生活保護との空白を埋めるため、再就職が困難な長期失業者に対する公的扶助制度として、「就労・生活支援給付」(仮称)を創設することです。これまでは、短期で働いていた人たちは雇用保険に入ることができず、そのため失業保険をもらえませんでした。そうすると、今のように次の仕事がなかなか見つからないと、生活保護を受けるしかないわけです。
  そこで、雇用保険と生活保護の間に何か制度を作ろうということを、連合では考えてきました。ヨーロッパでは、すでにこのような制度は導入されています。失業しても職業訓練を受けて、その間は一定の生活費が支給される。そして、もう1回労働市場に出て行けるチャンスがある、という仕組みを今回要請したということです。
  問題は、これは3年しか期限がないことです。政府は、3年たてば経済は回復するので、この3年間を乗り切ればなんとかなるのではないかということで、3年間限定の政策になっています。これに対して、私たちは恒久化すべきだと強く言っているところです。

②パートタイム、有期契約、労働者派遣、請負等、多様な雇用・就業形態の労働者の雇用の安定と公正な処遇を確保する
  連合では、パートタイム労働者の均等待遇を法制化すべきだと強く訴えています。それから、1カ月、半年というような有期雇用契約の在り方は、フランスやドイツのようにある程度規制すべきではないかと要求をしています。

③雇用労働環境の変化等に対応するワークルールの整備、確立をはかる
  労働契約法が2007年11月に成立しましたが、その見直しをおこなうとともに、雇用形態、年齢、性別等の差別を禁止する法律を制定すべきではないかと訴えています。
  そして、事業譲渡、合併等、あらゆる事業再編における労働者保護を図ることを訴えています。今現在、企業合併がものすごく進んでいます。その時に、そこにいた労働者の労働条件が、そっくり新しい会社に引き継がれるか全くわかりません。そのときのワークルールというものを、きちんと決めておくということです。
  それから、労働時間短縮やワーク・ライフ・バランス確保に向けた施策の推進ということです。まず、時間外労働の法定割増率を時間外50%、休日労働100%、深夜労働50%に引き上げることを求めています。労働基準法が改正され、時間外の基準が50%に初めて引き上げられましたが、これは60時間を超えた場合の割増率です。60時間までは25%です。ですから週40時間働いて、1か月を4週間とすると160時間、さらに60時間働かなければ50%にはならないということです。なので、私たちは1時間からでも50%にすべきと言っています。これは、諸外国との足並みをそろえるという意味においても必要なことです。

④若年者、女性、高齢者、障がい者の雇用対策を強化する
  今、若者の雇用が大変な状況になっています。今年も新卒の有効求人倍率が0.76でした。新卒10人のうち、6~7名しか就職できないといわれています。そのため、アルバイトとして働かざるを得ない可能性が高いわけです。そこで、その対策として、ジョブカフェやヤングワークプラザなどによる支援もそうですが、今までの進路指導などを強化し、そういう状況を生み出さないようにしていくことも訴えています。
  さらに、女性の就業支援策や、高齢者の雇用問題への提言もしています。高齢者については、60歳で定年退職をむかえ、65歳までの年金支給迄どうするかという問題もあります。
  あわせて、障がい者の雇用対策です。これまでに、障がいの有無や、種類及び程度にかかわらず、障がい者が差別されることなく働ける社会をめざしてきました。これには障がい者の雇用を増やしていくということが大変重要な課題となっています。
  ちなみに、国連で「障がい者権利条約」が採択され、発効しています。日本はその条約を批准するにあたっては、まず国内法を変えなくてはなりません。日本は「障害者基本法」があり、そこでは差別を禁止していますが、実効性が全くありません。
  つい最近起こった事件で、奈良の市役所で全盲の女性が、市の保育士の採用試験を受けようとしたら、試験さえも受けさせてもらえないということがありました。このことは大問題となりました。障がい者に対する雇用政策を、日本でも今後進めていかななければならないという状況が出てきています。障がい者が差別されることなく働ける社会を築くべきだということを今強く働きかけているわけです。このため、第一に、国連の「障がい者権利条約」の早期批准に向けた国内法を整備する。第二に、「雇用における障がい差別禁止法」(仮称)というものを制定する。このような新しい課題も出てきています。
  障がい者に関する制度はもちろん、年齢差別禁止法などもふくめて、EUでは差別全体を禁止する法律ができてきていますが、日本ではまだそこまでいっていません。いずれは、包括的な差別禁止法を制定すべきだという話が出てくるのではないかと考えています。

⑤すべての働く者に対する職業能力開発を強化する
  今回、失業者が再就職するための訓練をする場所が少ないことが改めて認識されました。今、公的職業訓練などを行っている独立行政法人の雇用・能力開発機構が廃止の対象とされ、機能を縮小して他の独立行政法人に移管されることになっています。今まで、職業訓練機関の整備が遅れていたという反省に立てば、能開機構の廃止、機能縮小という方針は大きな疑問といわざるを得ません。

⑥外国人労働者の雇用を改善し、研修・技能実習制度の根本的な見直しを行う
  外国人労働者の研修・技能実習制度は、大変ひどい実情になっています。送り出し機関、受け入れ機関に中間業者が入って、お互いが中間マージンをとっていたり、劣悪な研修・労働条件や賃金未払い、失踪、人権侵害等、入管法違反や労基法違反の運営が行われています。制度を抜本的に見直すべきことを主張しています。

 これらの他にも、「男女平等の実現」、「アスベストの問題」、「最低賃金の水準改善」、「中小企業問題」、「労使紛争の解決」なども、雇用・労働政策として連合では打ち出しています。

5.政策実現に向けた取り組み

 次に、以上のような政策に対して、連合としてどのように実現しようとしているのかを説明します。連合では、今回の雇用危機が起きた時、当時の厚生労働大臣に「非正規労働者等の緊急雇用対策に関する要請」を真っ先に提出しました。内容は主に、「派遣労働者等の契約停止に伴う就労・住宅・生活支援策の拡充」「雇用・就業形態の多様化に対応した雇用保険制度への改革」、「採用内定取り消し問題への迅速な対応」です。その結果、不十分なものがありましたが、多くの項目が実現しました。
  それから、日本経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体、連合と、おたがいの立場で雇用危機を乗り切ろうということで、政労使の合意をおこなったということです。
  そして、新しく発足した鳩山政権に対しては、早急な雇用対策として、180万人雇用創出プランの実現に向けた「日本版グリーン・ニューディール政策」の推進を要請しました。また、派遣法の見直しにも取り組んでいます。
  このように内閣に要請をしたり、集会を開いたり、チラシを配ったりしながら、政府に対して雇用対策の実現を迫っています。

6.政府の雇用対策

 政府は、安心実現のための緊急総合対策ということで、相当な予算をかけています。2008年10月30日に生活対策への補正予算、12月19日生活防衛のための緊急対策ということで、2009年4月からの予算の補正がおこなわれました。そしてさらに、2009年4月10日に、何兆円というお金をつぎ込んで、企業から失業者を出さないように、雇用調整助成金を拡充させたり、非正規労働者の雇用保険への加入要件を緩和したりしています。
  雇用保険制度のなかに、失業等給付と、雇用安定事業と能力開発事業の二事業というものがあります。そのうち、二事業を充実させようということになっています。たとえば、仕事がなくなって、工場が暇になってしまったときに、労働者を解雇するかわりに教育訓練などをやったりすると、それに対してお金が政府から出るという制度です。今、約230万人がその制度の対象となっています。ですから、この人たちが全部失業してしまったら、失業率は9%になるといわれています。今は、この雇用調整助成金で、失業率の上昇を押さえているというのが実態です。
  また、雇用調整助成金制度には、教育訓練以外に、事業活動の縮小による休業、出向、あるいは残業削減をした場合にも、助成金が支給されます。
  そして、緊急人材育成支援事業ということで、雇用保険を受給できない人に、訓練中の生活費を給付するという新しい制度があります。ただし、この給付が受けられるのは、年収が200万円以下であること、かつ、世帯全体の年収が300万円以下であること、保有する金融資産が800万円以下であることなどとなっています。
  それから、ジョブカードという制度があります。何かありましたら、ハローワークがさまざまな制度の窓口なので、諦めずハローワークを活用してほしいと思います。

7.労働相談の状況等

 今、連合への相談件数は、2006年は877件だったのが、2009年は8月までに2272件と非常に増えています。電話をかけてくる人たちのほとんどが、利用できる機関の存在を知らず、どこに行ったらいいかわからない。自分の権利が分からないため、退職金はおろか、賃金さえも貰わずに放りだされ、途方に暮れています。ですから、こういう仕組みを知るということは、生きていく武器になるわけです。
  労働法、雇用保険、社会保険の知識をもつことは、働くうえで非常に大切です。身近な仕組みをぜひ勉強されて、少しでも知識を身につけておくことが重要だと思います。そして、もし何かあったら、ハローワークに行く、あるいは連合の相談ダイヤルに電話をして下さい。一人で悩まないでいただきたいと思います。
  このことをメッセージとしてお伝えして、私からのお話は終わりにしたいと思います。どうも長い間ご清聴ありがとうございました。

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