1.はじめに
こんにちは。連合の大塚と申します。私は1977年に労働組合に就職をして、今日に至っています。労働組合に就職したというと、皆さんは驚かれるかもしれません。私自身、自分の子どもが小中学生の時に自分の仕事を説明するのに、非常に苦労しました。今は子どもも大きくなりましたので、それなりに理解しているとは思います。
今日は、「労働組合は、若者と、どう向き合おうとしているのか」ということについてお話をしたいと思います。
皆さんのうちほとんどの人は、就職をして、そこに労働組合があれば入る、あるいは入れられる、労働組合についてはその程度しか認識がないのではないかと思います。また、労働組合というとストライキをうったり、あるいは使用者と交渉をしたり、ということは、ご存知かもしれません。たぶん、今の段階では、労働組合が社会にとって必要かどうか、という問いの前提となる情報さえも持っていないのだろうと思います。労働組合について、学校で教わることはほとんどなく、せいぜい歴史的な事項として取り扱われるくらいです。今の時代の労働組合が、どのようなことを行い、どのような役割を持っているのかについては、ほとんど知られていないのです。
したがって、これから就職し、働く側になる人たちに対して、労働組合を知ってもらおうということが、本日の講義テーマの一つの結論です。今日は、労働組合がどんなことをやっているのか、細かいことも含めて話をしていきます。
2.労働組合の実態と組織の役割
2-1.雇用構造の変化と労働組合の組織状況
最初に、今、労働組合への加入状況について説明します。労働組合の組織率(雇用労働者総数に占める労働組合員の割合)をみると、32年前の1976年から、一貫して右肩下がりで経過してきています。雇用労働者総数は、1976年から現在まで数が増えていますが、労働組合に入っている人は、若干右肩下がりとなっています。
厚生労働省「2007年労働組合基礎調査」によれば、雇用労働者数は5,565万人です。そのうち連合には675万人が加盟しています。しかし、調査開始以降、最も組合員数の多かった94年と比べて、100万人以上の組合員が減少しています。労働組合に入っているのは5,565万人のうち1,008万人で、組合組織率は18.1%、10人のうち2人も労働組合に入っていないという状況です。このことが、労働組合が世間に知られていない理由でもあるわけです。
女性の労働者数は2,226万人で、94年に比べて253万人増えています。女性労働者で組合に入っているのは285万人で、12.2%しか労働組合に入っていないという実態です。ただ、この中ではパート労働者が非常に増えています。現在、パート労働者の組織率は4.8%と、数字的には少ないですが、これだけは右肩上がりで伸びています。
企業規模別に見ると、非常に明確な違いがあります。1000人以上企業での労働組合の組織率は47.5%と、いわゆる大企業では約半分に労働組合が存在しています。一方で、99人以下企業での組織率は1.1%、100人のうち1人です。しかし、この99人以下規模の労働者は2,573万人であり、日本全体の労働者数5,565万人のうち、約半分がいわゆる中小・零細企業で働く労働者です。その中での組織率が1.1%というのは、組合の立場から見ると非常にきつい数字です。こうしたところで、組織化をすすめるために組合を理解し、組合に入っていただくことが課題になっています。
産業ごとの組織率の状況では、労働組合の組織化が一番進んでいるのは、電気・ガス・熱供給・水道といったエネルギー関係の産業で59.4%です。東京電力、中部電力というような業種です。その次に組織率が高いのが金融・保険業です。特に損保会社、生保会社、銀行等です。それから、複合サービス事業といい、保険も運送もやっている郵政や農協なども組織率が高くなっています。以前は高い組織率だった公務、すなわち国家公務員、地方公務員の組織率は50%を割って、44%となっています。
「2007年就業構造基本調査」から現在の雇用状況を見ると、フルタイム労働者の正規職員が20年間で一貫して減少傾向にある一方で、非正規労働者が増えています。20年前の1987年は、働いている人の約75%、4分の3が正規職員でしたが、2007年の正規職員は59.9%まで下がってきていて、15.5%がパート労働者、7.1%がアルバイト、2.8%が派遣労働者、3.9%が契約社員(雇用期間の定めのある人、つまり2ヶ月契約あるいは1年契約などの有期契約の人)です。
2-2.加入形態
皆さんが労働組合に入りたいという場合、3つの加入形態があります。一つは、ユニオンショップです。民間の大企業の労働組合は、ほとんどがユニオンショップです。これは「会社に入社する=組合に加入する」「会社を辞める=労働組合を辞める」ということです。労働組合を脱退すれば、会社も辞めるか、別の労働組合に加入しなければならない。このように絶対化した加入形態が、ユニオンショップです。
これに対してオープンショップというものがあります。これは、労働組合に入ろうと入るまいとその人の選択の自由であり、労働組合に入っていなくても、そこの社員・職員であり続けることができます。
また、クローズドショップというものがあります。これは、特定の職種の中で組合員でないと仕事につけないというものです。代表的なものに、船乗りの労働組合である海員組合があります。国際(外航)や国内の海運・旅客船事業、水産や港湾の海事産業で働く船員と、それらの分野で働く船員以外の労働者は、海員組合に入っていないと仕事につけません。そういう職能資格的な労働組合が、クローズドショップです。
2-3.組織構造
?単位組合(単組:企業別)
日本の場合、特徴的なのは、企業別組合が基本的な単位になっていることです。会社ごとにそれぞれの労働組合があり、ある会社に就職をすれば、そこの会社にある組合に入るというのが一般的です。たとえば、トヨタ自動車に就職すると、トヨタ自動車はユニオンショップですから、トヨタ自動車の労働組合に入ることになります。
企業別組合ではどのような仕事をするのかというと、一般的には企業の労使関係を軸に、そこで働く人の賃金・労働条件から福利厚生に至るまでを、会社と協議して決定しています。中には、単に賃金・労働条件のみにとどまらず、会社の経営方針などにも関与していく場合もあります。
②産業別組合(産別:同一産業)
同一産業の単組が集まった、産業別労働組合(産別)というものがあります。たとえば、トヨタ、日産、ホンダ、マツダの組合というように、同じ産業の企業別組合が一緒になって産業別組合を作ります。それぞれが競って車を売っている会社同士が一緒に組合を作ることを不思議に思われるかもしれませんが、産業別労働組合は、同じ産業として産業政策について話し合うという役割があります。
また、産別には、たとえば自動車なら、同じ自動車産業で働く労働者の賃金水準を大筋で揃えていく、という機能があります。実際には、それぞれの会社で多少の差は出てきますが、逆にいえば企業間で労働者の賃金のダンピング競争をさせないという役割を持っているのです。つまり、産業別労働組合として、最低の労働条件の統一をはかるという役割があります。
産別には、国際的な産業別組織があります。たとえば、国際金属労連(IMF;International Metalworker’s Federation)、国際公務労連(PSI;Public Services International )などです。産別は、こうした産業別国際組織にも加盟をして、国際的なレベルでも同一産業の課題について情報交換や対応を行っています。
③ナショナルセンター(全国組織)
日本における産業別労働組合の総結集の場が、日本労働組合総連合会(連合)です。加盟産別52団体、675万人の組合員がいます。52の産業には、自動車産業の労働組合、サービス産業の労働組合、生保会社が集まった労働組合などがあります。私が所属している自治労も連合に加盟しています。自治労は地方公務員を中心とした労働組合で、県庁、市役所、町村役場の労働者の75%を組織しています。現在、自治労は、水道関係の全日本水道労働組合(全水道)と日本都市交通労働組合(都市交)と統合して、地域公共サービス労働組合連合会(地域公共連合)として、名前を変えようとしているところです。
連合は、個別の単組の課題というより、ナショナルセンターとして勤労者全体に関わる政策を作り、その実現に努力をしています。具体的には、税制、年金・社会保障制度、住宅、エネルギーなどの課題について政策を作り、それにもとづいて政府等に対して、様々な課題を改善させるため、働きかけています。例えば、労働法制など勤労者に関わる政策についての政府の審議会のメンバーに連合が労働組合代表として入り、勤労者の立場から法律改正に向けた意見反映に努力をしていくというものです。
また、連合は民主党を支持しています。なぜかというと、こうした政策を具体的に政治の場で実現するために、政党との協力関係を進めていく必要があるからです。
他方、ナショナルセンターは、全般的な勤労者の支援も行っていて、その意味から労働者の相談対応等を行っています。
連合には、47都道府県に地方連合会という組織があり、その地方連合会の下に、さらに、地域的な単位ごとに地域協議会という組織を400ほどもっています。そこに専従の役員、職員をおいて日常的に活動をしています。現在、地域協議会では全体の再編統合を進めていて、将来的には約300に再編したいと思っています。
④ITUC(国際組織)・・各国労働組合の連帯組織
労働組合の国際組織として、国際労働組合総連合(ITUC;International Trade Union Confederation)という組織があり、国際的な課題を解決するために連帯をしています。ITUCには現在、155カ国1億6,800万人の世界の労働者が結集をしています。もちろん連合も加盟しています。
ITUCではどのような活動をしているのでしょうか。アメリカのホテル会社の例で、会社が労働組合を作らせないということがありました。ITUCではこのような不当労働行為に抵抗するため、世界中でそのホテルを使わせないように圧力をかけるようなことにも取り組みます。
今年は、最も基本的な労働者の権利である「結社の自由と団結権保護」に関するILO第87号条約の採択と、人権尊重におけるすべての人民とすべての国が達成すべき世界共通の基準を宣言した『世界人権宣言』採択から60周年にあたります。ITUCは、60年を記念して、全ての国で「ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現」ということを呼びかけています。連合もこの呼びかけに応じて、ディーセントワーク記念日ということで、10月に集会とパレードを行うことにしています。このように世界的な連帯の場として、国際的な労働組合組織があるのです。
2-4.組合費について
一人ひとりの組合員から、平均的にみると基本給の約1.5%を組合費として徴収しています。たとえば、30万円の賃金であれば4,500円が単位組合の組合費となります。そのうち、一人当たり400~700円を産業別労働組合の会費とし、そこからさらに、連合の会費が一人当たり85円ということになっています。私の所属する自治労には、各市役所などの組合から一人当たり580円の会費が入ります。実は、その中から私の賃金が支払われています。私は、国勢調査で職種を記入する時は、会社員ではなく団体職員ということになります。つまり、みなさんの組合費から賃金が支払われているわけです。
連合では、組合員一人当たり85円の会費をいただいて、年間約40億円が予算となっています。その中から職員の賃金が支払われ、さらにはITUCの会費を支払ったり、ということになっています。
3.就業(社)形態によるワークルール・法適用
3-1.使用者と労働者の約束・・・労働契約
皆さんの大半は、いずれどこかの会社等に就職をし、働くことになるかと思います。ある人は公務員になるだろうし、ある人は民間企業に就職をする、中には個人の自営業を継ぐ人もいるかもしれません。でも、大半は賃金労働者、つまり、働いてその対価として賃金を得て生活をしていくことになると思われます。
働くということは、基本的には、自分の生活のためということだと思います。しかし、それだけとは限りません。たとえば、自己実現ということもあります。働くということには、さまざまな理由があると思います。労働組合的な観点からいきますと、皆さんが働く「入り口」というのは、どこかに就職をするということですから、それは、そこの会社と皆さんが労働契約を結ぶということです。契約ですから、労働条件は、労働者と使用者が対等な立場で決定をするということです。しかし、実際はそうはなりません。使用者は、この人を雇うか雇わないか、運命を握っていることになりますから、就職する場合は、使用者の方がやはり強いわけです。
①法律的最低条件
使用者は、皆さんが就職した時の条件はどうなるのか、最初に1ヶ月の賃金額や毎月の支払日、休暇についてなど提示しなければならないことになっています。労働者は、その提示内容に同意して、初めて就職をします。これが労働契約の基本となります。
こうした労働契約の内容は、さまざまな法律の中で規制され決まっています。基本的には労動基準法があります。また、賃金においては最低賃金法があり、都道府県ごとに最低の賃金を決め、これを下回ってはいけないということが決められています。あるいは安全に働くためには労働安全衛生法という法律もあります。詳細については触れませんが、働く上で最低の条件を定める法律があることを知っていただきたいと思います。
②職場の基本的労働条件
就職すると、会社には就業規則があります。ただし、あってもなかなか見せてくれない会社もあります。就業規則に記載すべき事項は、労働基準法で定められていて、就業時間、賃金の支払い方法、どんな場合に退職になるか、有給休暇などを決めなくてはならないことになっています。これが職場の基本的労働条件となります。
③集団的労使関係
労働組合がある場合には、この就業規則よりも、もっと労働条件のいい内容を労使で決めていきます。これが労働協約です。個人で決めないで集団的に労働契約を結ぶ、これが集団的労使関係です。個人と使用者ではなく、労働組合と使用者で労働契約(労働協約)を結ぶということです。そうすることで、たとえば、法律で決まっている育児休業や休んだ時の賃金保障などの条件をもっと引き上げることができます。
3-2.就業(社)形態
ワークルールは、一般的には労働基準法が全て網羅するわけですが、職種ごとに様々な法律があります。民間企業に就職した場合、基本は労働基準法です。さらに、労働組合があるところ、ないところを含めて労働組合法があります。公務員の場合、国家公務員は、労働基準法の適用除外になっています。国家公務員は国家公務員法、地方公務員なら地方公務員法という法律が独自にあり、その中で、労働条件に関するさまざまなことが決められています。公務員の場合、労使交渉はしますが、特に行政職や事務系の場合は団体交渉権がありません。ですから、それぞれ公務員法によって、さまざまな労働条件がそこに記載をされているわけです。
それから、非正規雇用に関しては、例えば派遣労働者については、「労働者派遣法」があります。派遣法は今、改正問題があり、連合は重点的な課題と位置づけています。また、パート労働者については基本的には労働基準法が適用になりますが、パートタイム労働法という法律によっても規制されています。このように、職種や就業形態によって適用される法律が違う、ということを覚えおいていただきたいと思います。
現在、新たな課題となってきているのは、個人請負の問題です。一般的に「請負」というのは、ある会社が自分のところの仕事を、別の会社に丸ごと請け負わせることです。これを「請負契約」といい、実際に民法の世界で適用されています。しかし、最近は個人請負と称して、この請負契約を偽装している場合があります。個人請負は、個人を事業主として仕事を請け負わせるという形です。それを偽装するとは、どういうことかというと、たとえば、バイク便や自転車便などで会社から会社へ資料を運ぶ仕事があります。本来、請負は、その指揮命令を依頼側が行うことは違法となっています。しかし、この場合、実際には「これを何時までもっていけ」というように、依頼側の人間が直接具体的な指揮命令を行っているのです。こういうことで「偽装請負」というわけです。これについては、厚生労働省も、指揮命令のあり方から当該の個人は「労働者」であり、元の請負に出した会社に、労働者性を認めて社会保険(年金保険料・健康保険料など)を払いなさいと、いう指導を行っています。
外食産業での問題もあります。外食産業では売り上げを伸していきますと、若いうちから店長に昇進していきます。店長は「管理職」とされます。なぜ管理職かというと、店のアルバイトの採用権がある、あるいはアルバイトに対する指揮命令をやっているからだというわけです。そして、25歳にして○○店の店長になると、あなたは管理職だから時間外手当は払えませんよということが問題として出てきています。
連合も支援しているマクドナルドユニオンという組合があります。マクドナルドで働いている店長が、自分は管理職とはいえないということを理由に、今、不払い残業代を請求する裁判を起こしています。これに対して、会社側は、店長として店を任しているのだから管理職であり、時間外手当は払う必要がないという主張をしています。しかし、この店長は「名ばかり管理職」、名前だけの管理職になっています。確かにアルバイトの管理はしていますが、本来「管理職」というのは、会社の経営と一体となって行う立場にあります。また、管理職にふさわしい水準の報酬が支払われているか、ということも重要であり、実際そうした観点からの判例があります。要するに、本来の管理職ではなくて、管理職という名前をつけた安上がりな労働者にしようとしているのではないかと、連合もこの裁判を支援しているところです。
4.職場でのトラブル
今、CSRやコンプライアンスという言葉がよく使われています。今の情報社会では、企業が法律違反を起こし、それが社会問題化するということは、会社に対する信用性、信頼性が失われます。企業には、社会的な責任を果たしているかどうかという意味で、企業ブランドに対する信用性があるのです。そのため、労働組合にも、企業がマクドナルドのような不祥事に巻き込まれないように、経営をチェックしていくという機能があります。
ただし、現実にはそううまくはいきません。職場でのトラブルとしてよくある例ですが、皆さんが1年以上同じ職場でアルバイトをしていたとして、友だちと旅行に行くことになり、2日間休みたいと申し出て、職場の上司から「忙しいからだめだ。どうしても旅行に行くならアルバイトを辞めてから行け」と言われたとします。これは、明らかに経営者が法律を無視しているか、法律に対して無知だということです。しかし、法律を知らない経営者でも権力はあります。「俺が雇ってやっているんだ」という意識をもっているわけです。したがって、働いている人の側も、自分が働く権利を牛耳っているのは使用者だというイメージをもっていたりするのです。
しかし、本来いろいろな労働関係の法律があるわけです。このことを、経営者側も働く側も、驚くほど知らないために、問題が起こるのです。先ほどの例で言えば、どうしても旅行に行きたいのなら、アルバイトを辞めてしまえ、という人も多いかと思います。しかし、労基法では、アルバイトでも一定の条件のもと、有給休暇がとれるようになっていて、その休暇をとっても、その期間は働いている時と同じ給料がもらえるという規定があるのです。休暇の取れる日数も、週何日間働いているか、勤続何年かにより、具体的に決められています。
ただ、労働法を勉強したとしても、実際に「有給休暇をください」と言うことはかなり困難でしょう。最初から辞めるつもりで、喧嘩を覚悟で言ってやろうと思っているような強い人なら言えるかもしれません。しかし、残念ながら、心優しい皆さんはなかなか言えないのです。その結果、おそらく旅行は我慢するということになってしまうのだろうと思います。
このように、働く場でのさまざまな困難に対して、何も言えないという問題があります。今、連合には、インターネットを通じて労働相談を受けるシステムがあります。電話でも相談を受けています。現在、これらを利用される人が非常に多いのですが、その時に「個人では言えないから、労働組合をつくろう」という呼びかけをしています。
働く人というのは、もともと弱い存在です。弱いから労働組合という形で連帯をする、ということが、労働組合の原点です。強い人間は、一人で生きていけるかもしれません。しかし、本来働くということは、使用者に対して弱い立場にあるのです。したがって、不当な首切りや労働条件を押し付けられないために連帯しよう、というのが労働組合の役割なのです。先ほどのアルバイトの例で言えば、きちんと有給休暇を取れるように、同じ職場で働く仲間たちが一緒になって管理者に交渉していく、ということです。
個々の職場レベルでは解決できない問題については、労働法などの様々な法律をもっと使い勝手をよくしていこうということで、各産別組合やナショナルセンターである連合が、法律改正にむけて活動をするという役割を担っているところです。
5.労働組合の役割・可能性(連合の戦略)
連合では、まさに弱い立場にある働く側のために連帯をして、安心して働き続けられる環境を作っていきたいと考えています。さらに、労使関係だけにとどまらず、非常に広い範囲での連帯を求めて、活動をしています。たとえば、核兵器廃絶、広島や長崎での平和集会、あるいは沖縄をはじめとする各地の在日米軍における地位協定の問題、北方領土の問題などです。こうした国民的運動はかなり政治的な課題を含んでいますが、これらについても活動をしています。核兵器廃絶の運動については、現在、ITUCに提案して、全世界の核兵器廃絶に向けたアピールを世界各国の労働組合で採択していく運動を進めているところです。
現在、労働組合の領域である集団的労使関係における労働紛争は、非常に減ってきている一方、問題が個別化して、個人に関わる職場の働き方、個人的な処遇に対する労働紛争が非常に多くなっています。連合にも、本人からももちろんありますが、配偶者などからの相談も多くなってきていて「夫(あるいは息子・娘)が、こんなに遅くまで働いて法律違反ではないのか」という具合です。個人的な処遇についての相談では、「同期とくらべてどうも賃金が低い、これは不当ではないのか」等があります。
このような相談の増加は、実は、この間成果主義型の賃金や処遇による影響で、一人ひとりの労働者が非常に孤立化しているという問題があるのではないかと思います。皆さんがこれから就職して働いていく中で、もしかしたら、隣の社員にも相談ができないような職場の問題を抱えることがあるかもしれません。しかし、その問題について個人では言えないというならば、集団的な労使交渉によってその制度を変えるという解決方法があると思います。そういう趣旨から、労働相談では、相談内容が個人的なものなのか、会社の制度上の問題なのかを見極めながら、解決に向けて対応しています。
メンタルヘルスについても、非常に多くの課題があります。以降の講義で具体的な話があるようですが、これについても、非常に多くの誤解があります。たとえば、病気になると本人のせいにされたりしますが、もしかしたら職場の環境に起因しているのかもしれません。組合では、こうした問題に対しても、プライバシーに配慮しつつ、企業のシステム上の問題として会社側と協議し、職場の改善をはかる取り組みをしています。
今は雇用形態が多様化しているため、派遣・パート労働者など非正規労働者のサポートにも取り組み、同時に労働組合への加入を進めているところです。
6.おわりに
再度、本日のテーマ「労働組合は、若者と、どう向き合おうとしているのか」に戻ります。本日の連合寄付講座を通して、労働組合、あるいは労働に関する法律、働くことはどういう意味を持っているのかについて、皆さんに考えていただければと思っています。そして、何か問題があった時には、ぜひとも労働組合を頼っていただきたいと思います。
最後に、連合の活動の一つを紹介したいと思います。みなさんのほとんどがインターネットを使っていると思いますが、ぜひ、一度連合のホームページにアクセスして見てください。トップ画面の右上にbooing.jpというのがあります。働いている人々がそこをクリックして、働く中での悩みや不満を書いていただくと、ブタのマークが出てきてジャンプします。その飛び出す距離によって、不満度が測れるということになっています。そこに労働の相談が書き込まれた場合には、連合が回答をしていくという取り組みをはじめています。このようなインターネットを通じても、労働組合に関心を持っていただければと思います。
今日は、労働組合の「入り口」の話として、最初の概論ということで話をさせていただきました。これで終わりたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
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