一橋大学「連合寄付講座」

2017年度“現代労働組合論”講義録

第8回(6/11)

地域における労働運動

連合静岡副事務局長 町田 義和

はじめに

 皆さん、こんにちは。連合静岡の町田と申します。今日は、連合静岡における活動について報告をさせていただきます。

自己紹介

 初めに、自己紹介させてもらえればと思います。私は、元々入社した企業にある労働組合に籍を残したまま、地方連合会である連合静岡に派遣され、仕事をしています。既に11年が経過しました。元々企業に就職をしましたが、4年間しか会社の仕事をしておりませんので、巡りあわせにより労働組合の仕事に長く携わることになりました。これは、1990(平成2)年に衆議院選挙が行われた時に、たまたま労働組合の運動の1つである政治活動ということで、その選挙に関わったという経過があります。残念ながら、結果としては支援した候補者は落選という形になってしまいました。定数4、つまり4人が当選する中で5番目の得票でした。自分の中でも確実に当選できると思ってその運動に参加していたので、この結果にはかなりショックを受けました。このショックがきっかけで、労働組合の役員をもう少しやってみようと思っていたら、いつの間にかずるずると、実は今年で30年目に入りました。
 今日こうした場で自分が話をすることになるとは思っておらず、少し緊張していますが、我々が今静岡で行っている活動を報告させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。
 前半は、連合静岡における活動について説明をいたします。後半は、静岡県内の労働者自主福祉運動ということで、協同組合間協同の実践について触れていきたいと思います。

連合静岡の紹介

 まず連合静岡の紹介です。日本には47都道府県あり、全ての都道府県ごとに地方連合会が存在します。その中の静岡版の地方連合会だと思ってください。連合静岡の中では、9つのエリアごとに地域協議会を設置して運動を展開しています。なぜかと言いますと、静岡県は東西に非常に長い県です。一番西の湖西地協は浜名湖の西側にあり、どちらかというと愛知県に近く、ほぼ生活圏も経済圏も愛知県という位置づけになっています。その浜名湖を越えると浜松地協のエリアで、スズキ自動車、ヤマハ発動機、さらには本田技研発祥の地と言われる浜松工場もあります。つまり、自動車産業中心で、どちらかというと大手のメーカーの下にあるサプライヤーという下請け企業が、たくさんの中小企業が存在しているのが西部エリアだと思ってください。そこから中部を飛ばして、東部にいくと、紙の産業が中心の富士市から始まり、沼津三島という非常に大きな、大手のサプライヤー、製造業の会社があるエリアもあれば、伊豆半島や下田までいくと、ほとんど観光しか産業がないようなところとなります。つまり、静岡県内の東部・中部・西部、色々なところを見てみると、それぞれの地域性があり、一元的な活動管理が難しい面があるので、地域を9つに分けて地域ごとの活動展開をしてきています。
 連合静岡の組合員の推移ですが、実は年々減少傾向にあります。平成23年には、20万人を確保していましたが、2017年の段階ではついに19万人を切ってしまいました。全国的に見ても、労働組合の組織率は17%台と言われていますので、5人に1人以下の組織率だとみていただければと思います。ただ、我々としては、公称は20万人ということで発表させてもらっています。
 続いて、連合本部段階では48の産業別労働組合が加盟していたと思いますが、連合静岡の場合は、33の産業別労働組合で構成しています。その中で、先ほどのスズキ、ヤマハ発動機の大手を中心とした自動車総連、私が元々所属していますJAM静岡、あとは繊維・流通関係のUAゼンセン、行政関係の自治労、電機産業の電機連合など様々あります。なぜ産業別労働組合が存在するのかということは、前段の講義で色々と聞いているかと思いますので、省略しますが、いずれにしても、地域ごとに独自性のある活動をしなければいけないものもあれば、当然、産業別で色々な交渉の仕方も違いますので、そういった意味でも、これだけの産別があると思ってください。

地域に根ざした顔の見える労働運動-連合評価委員会<最終報告>

 本題に入りますが、まず、2003年に連合評価委員会から最終報告が発表されました。これは、連合の役員以外の有識者を中心に、今、連合あるいは労働組合といったものがどのように見られているかを、率直に様々な角度で議論をしていただき、評価していただいたものです。その中で、労働運動の社会的存在意義について提起がありました。今の労働組合はどちらかというと正社員中心の労働組合ではないかと。
 競争主義・市場主義の蔓延から、非正規社員が非常に増えています。なぜ競争主義・市場主義の蔓延から非正規社員が増えるかというと、残念ながら、企業経営をするにあたり、労務費コストの削減が一番会社の利益につながる。また、コストの中で一番削減しやすいのは実は労務費なのです。正社員で雇用すると、当然のことながら退職金も含め福利厚生費、社会保障費など様々なものがかかり、非常に大きなコストとなります。ところが、非正規社員は残念ながら、そのコストをかなり低く抑えることができます。さらに言うと、あってはならないことですが、非正規社員を中心に雇用の不安定化、つまり、いつでも「ごめんなさい、あなたもうやめてください」ということにつなげられるという部分がどうしてもあり、そういったところから非正規社員化が進んでしまっています。
 ただ、労働組合の役割は働く環境を整えるということが重要なところになってきますので、そういった意味で言うと、我々は、正規社員だけではなく、非正規社員にまでキチンと目を向けて組織化ができていないということは、労働組合の存在意義の希薄化につながってしまうのではないか。やはりここは大きな問題であると捉えられたということが、この社会的存在意義というところになります。
 続いて、外部から見た労働組合ですが、活動というのは、外から見えにくいです。なぜかと言うと、それぞれ企業内労働組合の中だけの活動になっていたり、どちらかというと、連合は雇用の安定した正社員、大企業の男性社員の利益代弁者と見られているからです。
 ここ数年、政府・自民党、特に安倍首相が企業に対して「ベースアップをしなさい」と言ってきました。本来こうしたことは、政府・自民党が言うべきものではないです。ベースアップや賃金、労働条件の向上は、企業労使の自治によって決まるものですから。どうも最近は政府主導で賃上げができるようになってしまったような感じがしますが、実際に対象となっているのは、実は大手中心・正社員中心なのです。中小企業や労働組合のないところで、「ベースアップできますか」と問われても、中小企業経営者は「とんでもない、そんなことをしたら会社がつぶれてしまう」というのが実態です。現在の安倍首相が唱えている部分が本当に良いのかどうか問題提起があると見ていただければ良いと思います。
 3つ目、労働することの価値を見直し、労働運動の存在理由を再確認。簡単に言うと、皆さんもアルバイト等されている方もいるかと思いますが、働くということは衣食住のためにお金を稼ぐということが一番の目的なのでしょう。しかし実際には、どんなアルバイト、どんな非正規社員、どんな産業、どんな雇用形態であろうと、それぞれ社会構造の一部として組み込まれている。つまり、社会全体の中で何らかの役割を得、貢献しているということが本来の労働というものの考え方になっていますので、その部分について、もう一度再確認をしなければいけないという提起があったと思ってください。
 連合評価委員会の最終報告について簡単に説明しましたが、実際に本文を読むと労働運動の原点に立って「これが本当の労働組合なのだな」というものが分かるかと思います。

労働相談「わたしたち、働く人の味方です!」

 では、連合静岡で進めてきた「顔の見える労働運動」へ、地域特性を勘案し、県内東部と中部と西部の3つのブロックに分けて活動展開してきたものを説明させていただきます。実は、連合静岡だけでなく全国47の地方連合会は、どこでもすべてこの労働相談を行っています。実際には、2月の春闘時期と10月に都道府県ごとに最低賃金が発表されますので、最低賃金の周知という目的で11月ごろに、ほぼ3日間、それぞれの地方連合会で一斉にこの労働相談のキャンペーンを実施してきました。静岡としては、今、380万県民の中の160万人が勤労者であるといわれています。そのうちの約20万人しか組合員がおりませんので、残りの140万人の勤労者に対して、どんな問題があるかということもなかなか把握できておりません。年2回、3日ずつ6日間のキャンペーンだけですべてが把握できるかというと、なかなかそうではないものですから、日常活動の中できちんと把握をしながら解決に結びつけていく、これが本来の労働組合、連合の役割ではないのかということで、労働相談をキャンペーン期間だけのものから常設に変えました。
 しかし、9つの地域協議会すべてで常設できるだけの役員を配置できるかというと、労働組合の担い手が近年減ってきており、非常に厳しいものがあります。そうしたことから、中心となる東部と中部と西部というブロックに事務所を設け、ここに我々のスタッフを常駐させ、月曜日から金曜日の朝9時から17時半で労働相談を受ける体制を作りました。当然のことながら、そのためには労働法に関して様々な知識も得なければいけませんし、労働法を超えた難しい相談もありますので、そういった勉強会もしていきながら設置しました。
 ただ、これまでやってきた2月と11月のキャンペーンも継続して実施しております。ただ、少し形態が変わり、常駐しているスタッフは補助的な役割に回り、9つの地域協議会の役員に、東部・中部・西部のブロックに来ていただき、キャンペーン期間中は相談を受けていただくようにしました。なぜかと言うと、地域の中で一番身近なところですぐに相談できる体制を整えていく必要があります。また、企業内労使や自分の組織の組合員だけではなく、近隣の方に対しても色々な話ができるといった協力という意味での部分もありました。これらから、各地協の役員も参加をしていただき、日常のチェック機能を活かすように進めてきました。
 また、このフリーダイヤル(0120-154-052)は、全国どこでもつながります。ただし、電話を掛けたところの都道府県の地方連合会につながりますので、静岡県内で労働相談があり、フリーダイヤルをかけていただければ、我々スタッフの誰かがとることができます。また、連合静岡のホームページからメール相談等もできますので、ぜひ参考にしてください。
 続いて、具体的な相談について説明したいと思います。実際には、働く条件から様々な職場環境まで、幅広く相談受け付けています。一例としては解雇の問題。「あなたは明日から来なくていいよ、クビだから」と言われた問題、あるいは企業倒産により、職を失っただけならまだいいのですが、企業倒産前段には、賃金の未払い、残業代の未払い等もあるかと思いますが、要は労働債権が残っていることがほとんどです。これはきちんと確保する必要がある。当然のことながら、この残業代や休日出勤代を払ってもらっていないということも多々あります。代表的なのはこういった相談になりますが、実は、通年で労働相談を受け付ける体制をとっていると、労働者だけではなく、経営者の方からも相談が寄せられます。2018年4月から、労働契約法改正に伴い、一定期間の雇用契約を結んで働く、その更新をし続けることにより、労働者からの申し出で無期契約に転換する権利が行使できるようになりました。それに伴い、経営者の方も、どのように対応すればよいかという相談もあります。さらには、法律を決めるのは国であり国会ですが、労働法自体がおかしいと我々地方連合会に文句を言ってくる経営者の方もいらっしゃいます。こういったことも労働相談の中で受け付けております。ただ、一般的には、解雇・倒産・残業代の未払というものが多々寄せられているのが実態です。
 相談件数ですが、2007年秋から常設の労働相談を受け付けております。2008年から約10年の推移ということでいえば、2008年が突出して多いのですが、これはリーマンショックがあり、派遣労働者の派遣切りがあったためです。その後は、増えたり減ったりという推移でしたが、2015年以降、1,072件、1,300件、1,500件となっています。昨年度1年間の集計結果が1,500件ですから、静岡に3つのブロック事務所があり、常駐スタッフがいて、我々の稼働日数から計算すると、日々どこの事務所も1日に1件以上の相談が寄せられているということだと思ってください。
 ただ、これは静岡県内で労働問題がものすごく発生しているというわけではありません。私のように、企業別労働組合からの派遣という形で交替するスタッフが半数います。その派遣されたスタッフの専門分野は皆さんそれぞれ違います。たまたま今、広報分野において精力的に活動してくれるスタッフがおり、ホームページが充実し、ラジオ放送やラジオCMを実施しています。実は、2017年春ごろまで、ラジオ番組で様々な労働相談事例を発信していました。その効果があり、様々なところからたくさん相談が寄せられるようになりました。
 2017年度の相談者の属性ということで、まず雇用形態について話しますが、一般的に正社員と、非正規社員と言っています。この非正規社員は、パート、契約社員、アルバイト、派遣社員、嘱託社員、臨時非常勤がすべて含まれます。そうした中、正規社員と非正規からの相談は、ほぼほぼ半数ずつだと思ってください。
 そして、最近、相談が増えているのが契約社員です。先ほど話したように、労働契約法の改正を受け、期間契約を更新し、トータルの年数が5年を超える契約を結んだ時点で経営者に対して無期に転換、つまり、もう自分が辞めるというまで働き続けることができる無期転換を申し込む権利が発生しています。経営者のみなさんが、それを防ぐため、実は過去10年どころか、相談を受けた中で最大は20年というものもありましたが、ずっと反復更新をして勤めてきたのに、突然、契約終了を言い渡されたという相談が多々寄せられました。
 相談の内容ですが、多いのは賃金関係です。残業代未払い、休日出勤代未払いはざらにあります。常に相談の電話がかかってきます。しかし、残念ながら、記録がないと証明できず、証明がないと請求ができません。皆さんもぜひ1つの知識として今日覚えて帰ってください。働いていて、もし働いた時間よりも給料が少ないと感じたら、その日から自分の手帳にメモをつけてください。もしくは、スマートフォンなどで何時から何時に働いたということをずっと記録してください。こういった情報があれば、後々請求はできたりしますので、ぜひ覚えておいてください。
 それから、特に労働時間の関係は有給休暇の相談が一番多いです。会社の経営者もしくは上司から「うちの会社には有給休暇はない」と言われたという相談が非常に多いです。しかし、一定期間継続して勤務をしたその実績に合わせて、有給休暇を取得する権利が発生している、労働基準法に認められた労働者の権利になっています。しかし、企業経営者は会社の制度だと勘違いしている、もしくは、そのように言っている経営者が非常に多いです。ただ、働いている人が有給をとりたいと言ったことで、給料が減額をされるまでは違法とはならないので、ここも残念ながら依然として難しい問題です。
 それから差別ですが、セクハラの問題などのハラスメントの問題、これらも差別の中に含まれますが、連合静岡に寄せられる相談の中で少し心配をし、パワハラ・セクハラ、マタハラよりももっと深刻だと思うのは、同じ職場で働いている同僚からの嫌がらせを何とかしてほしいという相談が、最近寄せられるようになりました。やっぱり人間関係の問題だと思うのですが、非常に世知辛い世の中という言い方をしてそれだけで済ませていいのかわかりませんが、非常に由々しき問題になっているのかなという思いはしております。
 このように様々な相談が寄せられていますが、先ほど言ったように、件数が非常に増えています。本来は労働者、つまり働いている中で問題に直面しているご本人から相談を寄せていただくのが一番良いのですが、傾向としては、親族、お父さんやお母さん、さらには、友人・知人、一番多いのはお父さんお母さんからの相談です。30歳を超えた息子や娘のことを、お父さんやお母さんが相談してこないでよという思いもあるのですが、様々な周知活動を充実したことにより、本人ではない方から相談が寄せられることが非常に多くなっています。ただこれは、事実関係の確認が非常に難しいので、一般的、もしくは労働法上でのアドバイスしかできません。やはり、必ず本人からかけ直していただき、それにより、様々なアクションを起こさないまでも、働いているご本人の気持ちがスッキリするだけで全く変わってくるという話をするのですが、なかなか本人からはかかってこないのが実態です。

連合静岡ユニオンによる問題解決へ

 少し別の観点から、連合静岡ユニオンの説明に移りたいと思います。これは何かと言いますと、我々も日常の中で労働相談を受けています。そこで様々な法律に則ったアドバイスをします。ただ、中身として少し悩ましいのは、法律に則ったアドバイス以外の、メンタルを病んでいる方です。人間関係などは法律で一括りにできないので、「それは法律上こうなっています」というアドバイスができません。しかし、完全にメンタルを病んでいる方に対して「ごめんね、時間ないから」とさっと電話を切るわけにはいかないので、延々とうちのスタッフが電話で相談を受けていました。最長で4時間半です。しかし、最終的に解決には至りません。ただ、聞くことによってスッキリしたという方もいらっしゃるので、それが我々の役目なのかなとも思っています。
 労働法に明らかに違反している、もしくは緊急性の高い場合。以前起きたのは「すいません、朝、会社に出勤したら門が閉まっていて、張り紙がしてありました」ということで、その門から電話をかけてきた方がいらっしゃったので、すぐにうちのスタッフが駆けつけたところ、企業倒産になっていた。その日からすぐに、労働債権の確保のため弁護士と連携をとりながら対応をした。このように緊急性のある場合、本人に相談なく対応する場合もありますが、基本的には様々な解決方法をご本人が主張していただく、それでも解決しない場合は監督署へ行く、あるいは我々連合静岡のスタッフとともに交渉に入る、弁護士を立てるということもあれば、県の労働委員会で解決への斡旋、あとは、労働審判という方法もあります。
 それぞれの職場の問題解決には様々な方法があるのですが、ご本人が「裁判までは…」ということであったり、また我々としては、1人でも入れる労働組合を連合静岡内に組織しております。2006年10月に作りました。なぜ2006年かと言うと、先ほどの連合評価委員会の最終報告を受けて議論しながら、これからの運動をどうしていこうと検討していた時に、労働相談を受けるのは良いが、ただ相談を受けて別の機関に振り分けるだけでは意味がないだろうと。やはり、労働組合法に則った労働組合を設立する。労働組合は複数で結成しなければいけないので1人では作れませんが、1人で入ることのできる連合静岡ユニオンを2006年10月20日に結成をしました。結成した上で、問題解決に向かえるだけの体制ができたということで、2007年から労働相談の常設を開始しました。
 2006年からですので今年で12年が経っていますが、組合員数を見ますと全体で32名しかいません。静岡県内で働いている140万勤労者のうち32人しか、うちの1人でも入れる組合に入っていません。なぜかと言うと、労働相談に来られる方の一番の目的は、自分が今抱えている問題を解決することです。連合静岡ユニオンの規約上でいくと、組合費は月額1,000円いただいております。これは、どうしても若干なりとも必要経費かかりますので、そうした意味合いでの1,000円です。これを半年間分、前払いでいただき、まず組合員になっていただきます。なぜ半年間かと言うと、相談が始まり、団体交渉に入る、あるいは弁護士を使う、もしくは労働委員会などの様々なところの斡旋等々、行政機関のお手伝いをいただきながら、もしくは労働基準監督署、監督行政にお願いをして解決という方法が、ほぼ半年あれば解決するだろうという見込みの中で、半年という区切りになっています。ほとんどの方が、近年特にそうですが、ご自身の問題が解決すると、半年後に次の更新の問い合わせをすると大体返事がありません。つまり、更新されない方が多いのです。
 現在残っている32名は意外にも過去から継続されている方が非常に多いです。これはなぜがと言うと、我々スタッフとの人間関係ではないかなと私は勝手に想像しています。そこから、それぞれご自身のお勤めになっている企業の中で労働組合を作りたいという方も中にはいらっしゃいますが、そういった方はどんどん労働組合結成の動きに入っていきますので、そればかりではないのかもしれませんが。いずれにしても、残念ながら、なかなか増えていかない。ただ、増やすのが目的ではないので、継続して活動は展開しています。
 続いて、連合静岡ユニオンに加入するメリットについて簡単に申し上げます。やはり一番のメリットは問題解決ですが、日常の中で、賃金、労働条件、労働法制など様々な情報を我々としても発信させてもらっています。残念ながら、賃金・労働条件というものは、企業によって違いますので、一概に目安を出すわけにはいきませんが、地域実態をお示しすることはできます。さらに、労働法制。現在も国会で審議されております、働き方改革関連法案なるもので、労働時間の上限規制を導入したり、一方で、高度プロフェッショナルといって、一定の年収を稼ぐ人で、特定の仕事、つまり高度な仕事をしている方については、労働時間の規制なしに、何時間働こうが、例え年間1日しか働いてないとしてもすべて許される。つまり、働いた時間で賃金が決まるのではないという制度の導入を審議しています。そういった形で、日々、労働関連法案も変わっていますので、こうした発信もしています。
 当然のことながら、日常的な悩みはいつでも相談できます。もう人間関係ができているので、多い人は1週間に1度くらいかけてくる方もいらっしゃいます。
 それから、ご本人の希望により団体交渉にもっていく場合、必ず我々スタッフが同行をして一緒に交渉をします。
 また、連合静岡ユニオンの組合員になれば、労働金庫や全労済のサービスも活用できます。
 さらに、行政の利用、ここでのポイントは労働審判というもので、労働委員会はお金がかかりませんが、労働審判は弁護士がついて裁判費用が発生しますので、こういったところでの働きかけをする場合で、給料を払ってもらえない人の未払いを請求するといった問題については、元々お金がない労働者ですから、その人たちに、「労働審判に行きなさい」というわけにはいきません。我々としても、弁護士費用の一時立て替え等も活動としてやっています。これらが連合静岡ユニオンのメリットだと思ってください。

労働条件の維持改善には…

 労働条件の維持・向上ということで、労働基準法は、働くための最低限のルールを定めたものですが、各企業では、労働基準法だけでは決められないものもあります。何かと言いますと、連合静岡に寄せられる相談の中に、自分の賃金が同期と比べて安い、退職金を払ってもらえないなどです。つまり、労働基準法に定められているのは、賃金は、毎月払い、通貨払い、全額払いの原則があるだけで、いくら払いなさいということがどこにも書いてないのです。唯一、賃金額が決められているのは最低賃金。これは都道府県ごとに、毎年春闘が終わったころを見計らって、審議会を行った上で、各県ごとの最低賃金が決まります。これは時間額です。時間額の定めはありますが、企業で働く正社員、非正規も含め、月額は労働基準法には定めがありません。
 さらに、一時金。皆さんボーナスという言い方をするかもしれませんが、一時金も法律上には定めがありません。あくまでも、各企業の中で、企業労使、もっと言うと、労働組合がないところでも一時金を支払う経営者はいますので、これは企業の業績に応じ、あとは労働組合があれば交渉能力も変わりますが、それぞれの企業努力によって払うものであって、払わなければいけないものではない。退職金もそうです。退職金も払いなさいという定めはありません。年金等の問題もあり、退職金うんぬんということを政府も言いますが、そうであれば労働基準法上に退職金の定めを入れなさいと言いたいのですが、それがないのです。あくまでも福利厚生の一環であるとみてもらった方がいいと思います。
 これらをいかにして、労働条件として、労働環境の改善につなげるかというと、ポイントは労働組合になってきます。しかし、皆さんがこれから社会に出て働くことになった時に、経営者に直接「自分の賃金を上げてくれ」「一時金はこれだけほしい」「退職金はこれだけ、例えば定年まで勤めたらこれだけの退職金を支給してくれ」と言えるのでしょうか。そもそも制度がないところがほとんどですから、それらをきちんとした労働条件として確立するためには、労働組合が必要になってきます。1人ではなかなか問題解決ができないので、職場の仲間とともに改善すべく進めていかなければいけません。
 労働組合法第2条を読ませていただきますが「『労働組合』とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」。つまり、自分たちが自主的に、自分たちが働く条件を決めようということで、ともになって組織するものが労働組合ということになります。これをきちんと確立していかないと、なかなか労働条件の維持改善にはつながらない。
 我々連合静岡として、そういった点についてもアドバイスをさせてもらっています。まず、労働相談の電話がかかってきたら、その中身についてアドバイスします。様々なレクチャーをしていきます。団体交渉、あるいは行政機関のお手伝いをお願いして解決する方法もありますが、労働組合を作るということも1つ必要で、そのためには、まず職場の中で同じ考えを持っている仲間を作ってください。それができたら、さらにその拡大を図るための労働組合結成準備の活動をしていきます。労働組合も自主的に運営する組織になるので、やっぱりルールが必要です。まず、労働組合法上でこういった文言について定めなさいというものが記載されていますから、それに従ってまずルールを作ります。そうすると、運営上の費用が発生しますから、最低限の組合費も決めなければいけません。様々な準備ができた段階で、結成大会を行い、組合を設立し、会社側に労働組合を結成したと通告します。そこから交渉に入っていきますが、まずは、きちんとお互いに労使でコミュニケーションをとって、生産性向上に向けてともに連携をしながら、そこで得た成果、利益については、正当に配分を求めていきますので、存在を認めていただくというところから入っていく。そういったアドバイスも、連合静岡としてはお手伝いとしてやってきております。
 ただ、「労働組合までは…」ということで、非常にハードルが高いということはあります。先ほど、家族からの相談という話をしましたが、連合静岡の相談ダイヤルに電話をかけてくることすら、なかなかできない方というのは非常に多いと思います。だから、家族が心配して電話をしてしまう。「あなたこの番号掛けなさいよ」と言ってもかけられない。連合静岡に電話していると、それだけで自分はどこの会社に勤めている何者なのかがばれてしまうのではないかという恐怖感に駆られながらかけてくる方も実際にはおります。名前を名乗っていただき、会社名を言っていただいても、それが本当かどうかを確かめる術はありませんし、分からないのですが。ただ、そのくらい労働組合というものはハードルが高いということです。
 我々は、そういった踏み込めない労働者の皆さんに対し、もっと門戸を広げ、色々な方たちとつながることができるような戦略、つまり、未組織労働者との緩やかなつながりを通じてということで取り組みを進めてきました。それが「連合静岡メイト」というものになります。メイトは英語で仲間という意味だそうです。

連合静岡メイト ~働くあなたのためのレスキューネット~

 背景には、先の見えない厳しい経済状況があります。ここ1年、有効求人倍率は非常に上がってきて、久々に売り手市場になってきました。しかし、まだ正社員となる道は非常に厳しいものがあると思います。これから社会に出る大学生の皆さんについては、一定程度、正社員への道は広がってきたと思いますが、既存の非正規の方々が全員、有効求人倍率が上がったから正規に変わるかといったらそうではありません。そこはそのままです。そういった状況の中、我々労働組合として、連合として、非正規の方々に対しても、手を差し伸べていかなければならない。そうしないと組織率の低下はどんどん続いていってしまう。
 さらに言うと、先ほど労働組合の組織率は約17%と話しましたが、中小企業で労働組合組織のある企業というのは1割に満たないというのが実情です。1%台あるいは2%いかないのではないかというのが実態だと思ってください。そのくらい、ほとんどの企業は中小企業であるにもかかわらず、その中では労働組合がないのです。
 こうしたことを考えた場合、静岡380万県民の中で、160万人の勤労者がいらっしゃいます。我々連合静岡の組合員は、ユニオンに入っている方も入れてほぼ20万人だと思ってください。様々なつながりの中でつながった組織もあるのですが、やはり、このすべての160万勤労者が様々な紛争などに対して問題解決するということではなく、それに対しての安心感を得るためのレスキューネット(仕組み)を作っていかなければいけないということで、作り上げたのがこの連合静岡メイトです。つまり、緩やかなつながりをもつ新しいスタイルの組織で2010年4月1日に設立しました。
 何をするかよりも知っておいていただきたいのは、やはり働く上で、知らないと損する、知らないと大変な目にあってしまう。1つの例としては、車を運転する時に、国で定められた試験を受け、免許を取らないと運転はできないです。でも、新しく会社を作る場合、労働基準法や働くための法律に関する試験を受けて、その試験に受からないと会社を設立できないということはないです。労働法をまったく知らない方でも、経営者になれるのです。つまり、何の資格もないのに世の中で車を運転しているのと一緒なのです。そういった経営者もいれば、同じように社会に出ていく皆さんも、法科を勉強する方は別かと思いますが、やはりほとんどの方が働くための法律なんて知らないです。何も知らずに、社会に出て働いてしまっている。
 皆さんに、これから企業で働くために参考にしていただきたいのは、働くために労使協定というものが必ず必要になってくるということです。法律上では、1日8時間、週40時間以上働かせてはならないとあります。ところが、それでは会社経営が成り立たないので、法律上、会社と労働者の過半数で組織する労働組合、または、労働者の過半数を代表する労働者代表の間で、36協定を締結すれば、8時間以上、週40時間以上働かせることができるという定めがあります。逆を言えば、労働者が拒否をすれば、1日8時間、週40時間しか働かせることができないのです。さらに言うと、アルバイトの給料は現金でもらう場合と、口座振り込みになる場合とがあるかと思います。どちらがどのくらいの割合かは分からないのですが、先ほども言いましたように、通貨払いで全額払いの原則があり、「通貨」とあります。銀行振り込みは通貨ではないのです。つまり、本来、銀行口座に給料を振り込むことを法律で認めていないのです。ただ、労使協定を結ぶと、それも可能になる。つまり、働かせる側の経営者と働く側の労働者が約束をすれば、様々なものの許容範囲が広がっていきます。ある意味働きやすくなるというものもあります。
 こういった事例も皆さんほとんど知らないかと思います。だからこれは知らないことで損をしている部分だと思っています。
 連合静岡として、このメイトにおいての様々なサービスとして、ウェブサイト上で情報提供をさせてもらっています。過去の紛争解決、労働組合結成の事例、法改正の中身、これは連合静岡ユニオンでも似たようなものがあります。それ以外にも機関誌で「LWマガジン」というものを組合員には、これまでずっと送っていました。メイトの会員になった方にもこの機関誌を送っています。中身は、静岡県内の様々な福利厚生、つまり遊びの情報、あとは食に関する情報といったものもあれば、様々な福祉事業団体の情報も入っています。あとは会員同士、つまり労働組合ではない、広く浅くつながりを持つためだけの、情報共有をやっていることから、談話会や公開講座の案内もさせてもらっています。
 ただ、連合静岡ユニオンとの一番の違いは団体交渉。つまり、労働組合法上で言う労働組合組織ではありませんので、解決に向かうためにメイトは何の役割も果たせません。解決をめざす場合は、ユニオンに入ってもらえばいいと思います。様々な相談、情報提供、事業団体、福祉事業団体の取引もでき、ほぼ連合静岡ユニオンと変わりませんが、交渉だけはできないと思ってください。
 現在の会員数ですが、2010年4月に設置をし、2010年9月段階で137名いました。現在は150名しかいません。8年経ちましたが増えていません。設置当初は、労働相談の電話がかかってくれば必ずメイトの話をしましたが、最近ちょっとそうした案内をさぼってしまっています。知らせ方が疎かになっているところがあるのですが、もう1つは、もしかすると、連合静岡という冠がついており、これが邪魔をしているのではないかという点についても意見交換をしています。やはり、地域において連合静岡を知っている方がいらっしゃるので、労働組合組織というとハードルが高くなっているのかなという思いがあり、ここは1つの課題になっています。さらに、今、連合静岡のホームページ上から入ることができるのですが、単独にはなっていないので、ホームページ上の問題がありはしないか。それから、組織拡大、つまり、もっともっと広くつながりを持つための色々な展開ができているのか、いないのかという点も課題になっています。これらを少し見直すということで、今、議論を始めております。
 ここまでが連合静岡の取り組みとなります。基本的に、連合静岡メイトというのは、連合静岡独自の取り組みです。連合静岡ユニオン、つまり労働組合法上の1人でも入れる労働組合、これはほぼすべての47都道府県の地方連合会にあると思ってください。それぞれの地方連合会が設置して運動を展開していますが、それだけではなかなか厳しいということで、メイトを設置したとご理解をいただければと思います。様々な方々と本当に広くつながりを持つということを重点に活動展開をしてきました。

自主福祉運動の原点を見直すために

 ここからは「自主福祉運動の原点を見直すために」ということで話をさせていただきます。何かと言うと、まず、労働者自主福祉運動とは、その言葉すらなかなか理解されないかと思いますが、連合静岡ユニオンや連合静岡メイトというのは、基本的に、勤労者だけをターゲットにして働き方や雇用に焦点を当てています。労働者自主福祉運動というのは、勤労者の生活全般の課題をターゲットに、さらに言えば、生活者全般、広く静岡県民全体に対しても働きかける運動だと思ってください。ネットで調べれば出てきますが、労働者が相互扶助や協働・連帯の理念と手法に基づき、自らが主体となって、自らの組織と資金により、生活上の問題解決に当たる活動を労働者自主福祉運動と言います。つまり、働くということだけではなく、生活全般の課題に対し、自分たちが思いを同じくする人たちと集まり、資金も自分たちで拠出をしながら活動をすることが自主福祉運動であると考えてもらえば良いと思います。
 静岡県内には協同組合という非営利の組織がたくさんありますが、分かりやすいところでいえば労働金庫や全労済。コマーシャルも良く流れていますので見たことがあるかと思います。簡単に言うと、労働金庫は1950年(昭和25年)に岡山県で始まりました。当時は戦後間もない頃なので、非常に厳しい経済情勢で、銀行も勤労者にはお金を一切貸してくれない時代でした。労働者が生活に困り、お金を調達する際には、給料以外では質屋に行って自分の家にある家財をお金に換えていたというのが実態です。ですから、いつまで経っても生活は向上しませんでした。本当にこのままで良いのかという観点から、労働者が岡山県を初めに立ち上がり、自分たちの毎月の給料から、わずかずつお金を拠出しながら、自分たちのための金融機関を作り上げた、それが労働金庫だと思ってください。我々も、労金の会員になっている各労働組合が、一斉積み立てという、毎月定額で積み立て、あるいは財形、もしくは預貯金という形で必ず自分たちも拠出をしています。その後、困っている人、お金を借りる必要が生じた人に、その資金からお金を貸す。この仕組みを労働金庫だと思ってくれれば良いと思います。
 全労済は、簡単に言えば、損保と生保が一緒になったものと思えば良いです。全労済は、1954年(昭和29年)に大阪から立ち上がりました。これもわずかながら勤労者がお金を出し合い、自分たちの助け合いのために全労済を作り上げ、現在の全国組織になっています。全労済が飛躍的に会員拡大できたのには、実は1つ事情があります。昭和29年に全労済ができ、翌年、昭和30年に新潟でものすごい大火がありました。その時、全労済に加入をしていた方々が、火災共済金を受け取るのですが、できてからまだ1年経っていなかったので、共済金を払う財源がありませんでした。そこでどうしたかと言いますと、先にできていた労働金庫に対して、我々労働組合は、闘争資金と言ってストライキを行うための資金を積み立てています。その資金を担保に労金から全労済に貸し付けをして、火事にあった方々の共済金を給付しました。できてわずか1年も経たないこの組織が、きちんと共済金を給付してくれる、補償をしてくれるということで、ここから飛躍的に拡大し、現在に至るということです。

協同組合間協同実践研究会を設置

 我々労働組合が、お金を出し合い、これらの協同組合である労金や全労済を作ったのですが、現在は悲しいかな、業者と利用者のような関係に少しなりつつあったのが実態です。元々は、お互いの助け合いで、福祉事業団体としてやってきたにもかかわらず、時代を経て変わってきてしまった。この点に対しては、お互いの事業をきちんと知り、協同組合の可能性を追求しようということで「協同組合間協同実践研究会」というものを設置しました。ここには、労金や全労済、それから生協。そして我々連合静岡も一緒になって、合計8団体で、地域福祉、教育活動、宣伝活動、事業制度という4つのテーマで研究会を進めてきました。
 まずは、地域福祉の協働ということでいきますと、それぞれの団体が社会貢献活動をやっていました。連合では「愛のカンパ」といって、産業別組織、都道府県ごとにカンパ活動を行い、それを連合本部に集約し、NGO、NPO活動を行っている方に対し、連合本部の基準によって、都道府県ごとに様々な団体に助成金を交付させてもらっています。こうした資金面でのお手伝いをさせていただいている活動もあれば、連合静岡も含めて県内の8つの事業団体がほとんど関わっているものとしてフードバンク事業というものもあります。今、全国的に広がりを見せています。それから、労金の年間の剰余金から福祉車両を寄贈する事業などを色々と洗い出してみると22の事業がありました。それから、福祉団体、NPO、市民団体とのネットワークについても、県内に幅広くネットワークができていました。このネットワークは、64の福祉団体やNPO、それから行政、さらには静岡県内にある大学とも連携がされておりました。こういったものもまったく知られていなかったので、いかに、それぞれが個々で事業を行っていたかということに気づきました。こうした中、すべての団体がほぼ関わっていたものが、フードバンクだったのです。このフードバンクを統一の事業として進めていこうと決めました。
 フードバンクとは何かと言いますと、貧困対策の一環です。皆さんも、ご両親の仕送り、あるいはご自身で稼いでいるのかもしれませんが、生活はなかなか厳しいかと思います。世の中には、1日1食食べられない方も結構おられます。しかも、就職もなかなかままならない。就職活動しようにも、日々の食料を確保するだけでも手いっぱいで、そこまでの意識が回らないという人が、実は意外と多いのです。しかしながら、一方では、もう賞味期限が1か月くらい経ってもまだそのままほったらかしにしてあるような食料って意外と家の中にあるかと思います。さらに言うと、静岡県は40年以上前から、東海地震の危険性が指摘されていますので、備蓄品として各家庭も行政も、様々なところに大体5年は保存できる食材が貯めてあります。それらは、必ず賞味期限前に入れ替えをしなくてはなりません。今では、入れ替えたらその食材は捨ててしまいます。非常にもったいないです。皆さんが1年間で食べる食料の量と、廃棄されている食料の量がほぼ同じということを知っていましたか?その無駄にされている食料をフードドライブといって、それぞれ拠出していただいて、その上で困った人たちに食料を、行政を通じて展開をしていくことによって貧困対策の一翼を担う。簡単に言えば、フードバンクとはそういう事業です。こういった取り組みを静岡県内全体で進めてきました。
 続いて、教育活動の協働ですが、これもそれぞれの団体で様々な教育活動を展開していますが、一番ショッキングだったのは、労金・全労済・生協という代表的な3つの事業団体に職員が約1,200人おられ、どのような事業を行い、どのような関係性にあるかを調査しました。その結果、生協は若干違うのですが、労金・全労済は、日常の中で、例えば、労金で住宅ローン借りた場合には、必ず全労済の火災共済に入ることになっています。これセットです。これすら、労金職員、全労済職員で知らない方が非常に多かったのです。さらに言うと、この研究会のメンバーに私も連合静岡の代表として入っていたのですが、意外とその他の団体が何をやっているのか知らないことが多く、結構ショックを受けました。それだけ日常の活動において連携とれていなかったというのが実態ではないかと思います。そういったものをこれからも継承していくために、労働者自主福祉活動の研修機会、つまり今やっている活動をきちんと後世にも語り継いでいくための語り部プロジェクトなるものを立ち上げました。それぞれ各団体から専門で、連合静岡も当然入っていますが、自分たちが何をやっているのか、何の目的で、どういったことをして、どういった人を対象に運動を展開しているのかを、きちんと語り継いでいくというプロジェクトが立ち上がりました。
 そして、広報活動の協働という部分。まずは、先ほどLWマガジンでも触れましたが、我々連合静岡として、組合員の福利厚生ということで、情報誌を年4回発刊してきました。ただ、ここは連合静岡の組合員しか対象にしていなかった。実は、労働金庫も、全労済も。今回のこの協同組合間協働というものを、主に取り仕切ったのが労働者福祉協議会という組織になります。通称「労福協」と言いますが、この労福協も情報誌を発刊していました。これらがバラバラで本当にいいのかと。我々連合静岡の場合、組合員一人ひとり20万人に配布していましたが、労福協、全労済、労金は、それぞれ会員の労働組合に数部ずつしか展開していなかったので、組合員に対して情報がうまく発信されていませんでした。そこでLWマガジンに入れようということで、その情報をひとつにまとめました。当然のことながら、連合静岡組合員20万人にも、労金や全労済の情報が常に年間4回必ず届くようになりました。さらに言うと、連合加盟ではない労働組合、そういった事業団体の職員にも、同じようにLWマガジンを配布するようになり、広く県内の勤労者に対して展開されるようになりました。その結果、現在、発行部数は約40万部に増えています。それだけ運動が展開されたと見てください。
 もう1つ、「ハートでつながるたすけあい」というものをテーマとしました。これは、研究会を8団体で構成したのですが、県内の協同組合間協同に関係する組織として労福協というものがあります。また、福祉基金ALWFというのは、簡単に言うと、労金が、毎年度末に出た利益に対して、配当金という形で組織に返すものもあれば、社会貢献活動として福祉基金を立ち上げ、そこが中心となって様々な公益事業をやっているということです。勤信協ということで、我々組合員は、組織で保証料を負担するということで、借金をし、もし返済できなくなった場合に保証してくれる保証協会なるものもあります。それから、先ほどから言っている全労済、県生協連。年金協会は、厚生年金を財源とした様々な福祉事業をやっている団体です。ユニオントラベルは、事業団体の1つとして旅行業を福利厚生の一環として行っており、我々が組織しています。それからライフサポートセンター友の会、これは労金でお金を借りるためには、いずれかの労働組合組織の組合員でなければいけないのですが、一般の方でもこの友の会に入ることにより、労金でお金借りることができたり、全労済で共済に加入することができる。あとは連合静岡。これらをひとつの森として考える、つまり「あなたの夢をサポートします ようこそ!たすけあいの森へ」という考え方のもと、1つの共通のチラシを作り、県内で展開をしています。これが、イメージ素材として効果的ではないかなと思っております。
 

研究会答申後の具体的な効果

 この研究会答申後、実際に様々な効果が事業として表れています。まず、労働金庫と生協の場合、これまで生協の組合員は、労働金庫でお金を借りるか、地方銀行、もしくは都市銀行、信金等で借りていたと思います。労金以外、実際には労金でも、保証料を支払わなければいけませんでした。住宅ローンは大体25年あるいは30年といった期間をかけて払います。そのための保証料として、20万円あるいは30万円といった金額がかかります。保証料も借金の1つになってしまいます。今までは自己負担だったこの保証料が、今回の研究会の成果により、労金と生協が連携することで無料になりました。こうしたことにより、労金は融資の利用が格段に伸びます。当然のことながら、配当金という形で、年間の利益が出た場合、労金は各組織に還付します。要は、利用配当金という形で、組織の運営に使ってくださいということで戻します。その利用配当金が生協に入るようになりました。
 さらに、労金と先ほどの9つの団体すべてが、キャッシュカードを持っていれば、利用手数料が無料になりました。今、セブン銀行がATMを使っても手数料が無料だと思うのですが、一般の都市銀行、地方銀行、労金もそうかもしれませんが、ATMを使うと、手数料が必要になります。これがすべて無料になりました。
 それから、自主福祉運動の研修ということで、我々団体会員、また、今回の研究会により関係している団体すべての方もそうですが、それ以外の一般の生活者に対しても、色々な研修への参加の機会が拡大できるようになりました。
 さらに、生協では、おうちコープという宅配をやっていますが、これが様々な団体と連携をすることにより、範囲が一気に拡大し、おうちコープの利用者が増えてきました。
 つまり、研究会を行ったことにより、お互いにwin-winの関係が拡大したということが一番の成果ではないのかと思います。知らなかったものを知ることにより、どれだけ自分たちが、共助という部分で、お互いの助け合いができたかと理解したことによって、それが拡大し、さらに生活が豊かになるということにつながったと見ていただければと思います。

地域役立資金

 以上が自主福祉運動の説明になりますが、実は、一番基礎になるのは「地域役立資金」というものです。2010年に各労働組合もしくは様々な組織が労働金庫の会員になっています。そして、必ず、まずは出資金を組織として拠出します。その上で、預金や融資、借金をした時の利用配当、労金で利益が出た時には、その利益から組織に対して配当の還元金があります。これをそのまま組織に戻すのは本当に良いのか、我々の狭い組織内だけで完結してしまっていいのか。そんな疑問を呈した中から、2010年にこの地域役立て資金を作り上げようということです。一度は労働金庫から各組織に配当として展開がされました30億円、これをすべて再拠出という形で出していただいてできたものが、この地域役立資金です。
 この資金は、勤労者・生活者へのワンストップサービスのために使用しました。地域の活動拠点づくり事業、地区の活動拠点づくり事業、それから本部の活動拠点づくり事業、つまり、県内にある様々な事業団体が1つになって活動する拠点を作りましょうということです。連合静岡のブロック事務所の東部・中部・西部、この3つの拠点事務所に3団体が同居しています。連合静岡は労働相談を受けています。サポートセンターは生活相談、身の上相談、離婚の問題、嫁姑問題、税金対策など様々な問題についての相談を受けている。そして、地域労福協という協同組合のすべての窓口となり得る組織。この3つの団体が1つの事務所に同居をしていることにより、勤労者・生活者へのワンストップサービスが実現できるようになりました。ここへ行くだけで、あるいはここへ電話をするだけで、様々な悩みが解決できるという拠点が整備できました。
 さらに、それ以外の資金活動として、協力支援があります。ロッキー奨学金と言って、毎年わずかながらですが、給付型の奨学金制度があります。今のところ1人30万円しか出せていませんが、今年も静大生を中心として何名かこの給付金を受け取っていただいているはずです。それから、ロッキーの教育ローンを利用した場合、利子補給もさせていただいています。さらに、研究会でも協同事業として行ったフードバンクについても、生活困窮者支援ということで、フードバンクふじのくにへの資金支援をさせていただいています。フードドライブということで様々な食材を集めていただくのですが、どうしても物流の費用、あるいはそれらを貯蔵しておくスペースも必要になります。様々なところで費用が必要となるのですが、NPO団体なので、それぞれが協力して資金を出し合わないとなかなか難しいので、そこに対しても拠出をしていく。
 この研究会の前段に、こうした地域役立資金なるものが、スタートの発想としてあったことにより、今回の協同組合間協同の研究会の実践につながったと私は見ています。
 これから社会に出ていく皆さん、労働組合というと、どうしても労働条件の向上、中には政治的な色合いが濃いと見る方もいらっしゃいますが、お互いの助け合いの運動がまず原点にある。さらには、労働組合だけではなく、様々な協同組合が地域にありますので、皆さんも、これから一翼を担うという意味で参考になればと話をさせていただきました。ご清聴ありがとうございました。

以 上

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