一橋大学「連合寄付講座」

2014年度“現代労働組合論I”講義録

第6回(5/16)

職場の課題とその取り組み
男女がともに働きやすい職場づくりに向けた取り組み

久田江里奈(生保労連中央執行委員)

はじめに

 みなさん、こんにちは。生保労連で中央執行委員をしている久田と申します。今日は、男女がともに働きやすい職場づくりに向けて、前半で生保労連の取り組みを、後半では朝日生命労働組合の取り組みをご紹介します。
 私は2002年に本学を卒業し、朝日生命に総合職として入社しました。入社後約6年間、群馬支社と横浜統括支社で営業職員への教育や販売指導をしました。入社7年目からは、川崎の溝口営業所で営業所長を4年間務めました。朝日生命では私が女性総合職で初めて所長になりましたので、私の意思とは関係なく、女性の活躍云々という場に引っ張り出されることが多いです。
 そして、入社11年目の2012年4月に人事部門に異動して採用業務に携わった後、6月より朝日生命労働組合の中央執行委員になりました。知り合いから組合の専従役員をやってみないかと声を掛けられたのがきっかけです。それまで営業現場に近い仕事しかしていなかったので、組合本部に行けば会社全体を見渡すことができ、自分のキャリアにもプラスになると考え、引き受けました。上部団体である生保労連の役員も兼務し、ふだんは朝日生命労働組合で組合の仕事をしています。

1.生保労連とは

 生保労連とは、生命保険会社の労働組合で構成される産業別労働組合です。生命保険会社には営業職員と内勤職員という二つの職種があります。営業職員は保険を販売し、内勤職員は事務など管理業務を担います。仕事の中身が違うことから、かつては営業職員・内勤職員で別々の労働組合をつくっていました。加盟する上部団体も異なりましたが、1969年に同じ生保産業で働く者同士ということで一つになりました。2013年4月現在、生保労連は約24万名の組合員がいます。そのほとんどが営業職員で、組合員の8割を女性が占めているのが大きな特徴です。
 図表1は生保労連に加盟している組合の一覧です。国内に40数社ある生命保険会社のうち16社が加盟しています。未加盟の労働組合がある生保会社には、損保産業の産業別労働組合である損保労連に加盟している労働組合をもつ損保系生保会社や、JP労組に加盟しているかんぽ生命、もともと組合のない外資系生保会社があります。
 生保労連に加盟している16社は、企業活動上ライバル関係にありますが、労働組合の活動をするうえでは強い結束力で結ばれ、日頃から互いに情報共有をしています。こういう状況は、一社員として会社で働いているだけでは経験できないことだと思います。

図表1 生保労連の加盟組合

2.生保労連の2013年度運動方針

 労働組合は、会社の事業計画にあたる「運動方針」を決めて活動しています。生保労連では、2013年度の運動方針に4つの柱を立てています。
 1つめは「生保産業の社会的使命の達成」です。生命保険を広く普及させ、いざというときには保険金や給付金を確実にお支払いすることで、国民の生活をしっかり支えられるようにしていこうという取り組みです。また、生命保険は国の社会保障を補完しており、加入者に対して税制面での優遇措置があります。しかし今、この制度を縮小しようとする国の動きがあり、生保労連は逆に拡大してほしいと働きかけています。その際、1つの生命保険会社の労組が単独で国に要望しても効果がありませんので、同じ産業で働く者が集まる生保労連として、産業全体が一体となって取り組んでいます。
 2つめは「総合的な労働条件の改善・向上」です。いわゆる春闘をはじめ、賃金や働く環境を改善していくことをめざしています。
 3つめの「組織の強化・拡大」では、各組合へのアドバイス機能の強化や生保産業における未組織労働者の組織化、組合活動への女性参画の推進などに取り組んでいます。
 4つめの「生保産業と営業職員の社会的理解の拡大」は、生保業界を知ってもらうために、消費者団体との意見交換や社会貢献活動なども行っています。

3.「男女共同参画」はなぜ必要なのか

 男女共同参画社会とは、「男女が社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」というのが法律上の定義です。
 男女共同参画はなぜ必要なのか、4つの視点からお話しします。
 まず少子高齢化が進む中、社会にとって、「あらゆる分野への女性参画は社会発展に不可欠」との認識が国際的な流れです。日本では女性役員が少ないとか、女性の社会進出が非常に遅れているという指摘がまさしくそれです。
 次に、働く者の視点でいうと、男女がともにワーク・ライフ・バランスを実現し、働きがいのある職場をつくるうえで、男女共同参画は不可欠です。男性の働き方を見直すだけでなく、女性が一緒に活躍していける社会をつくっていく必要があります。
 労働組合の視点でみると、女性組合員が労働組合の意思決定に参画し意見反映を行うことは、労働組合の民主的な運営や活力、さらには共感のもてる組織づくりを進めるうえで不可欠と考えます。組合は基本的に男性社会です。就職して私が男性社会を初めて痛感したのは、実は組合役員になった時でした。特に生保の場合、女性組合員が非常に多いにもかかわらず、組合役員の多くが男性ですので、女性の視点を積極的に入れていかないと組合員の気持ちが離れていってしまいます。
 会社という視点からは、男女がともに能力を発揮することは、生産性の向上さらには会社の発展につながるため、男女共同参画が求められています。

4.生保労連の「男女共同参画」に向けた取組み

 生保労連では、「職場」と「組合活動」それぞれにおいて、男女共同参画に取り組んでいます。

(1)職場における男女共同参画の推進
 全組合員の約8割を女性が占める生保労連にとって、男女共同参画は非常に重要な課題です。そこで、直接・間接差別の解消、コース別雇用管理制度の適正な運営、ポジティブ・アクションの推進など、男女がともに安心と働きがいの持てる職場をつくろうと取り組んでいます。

(2)組合活動における男女共同参画の推進
 図表2-1は、各生保組合における女性本部役員の選出状況を示しています。生保労連に加盟する各組合の女性役員数を合算したもので、女性役員数は全体の2割弱という状況です。

図表2-1 各生保組合における女性本部役員の選出状況(合計)

 生保労連ではどうかというと、2010年度、2011年度は0名でした(図表2-2)。「こんなに男性社会だと感じたことはない」という私の気持ちを理解いただけるのではないでしょうか。2012年度にようやく私を含め女性役員が選出され、現在4名います。そうやって無理にでも入れていかないと改革は進んでいかないのかもしれません。

図表2-2 生保労連における女性本部役員の選出状況

5.なぜ組合活動への女性参画は進まないのか

 なぜ組合活動への女性参画はなぜ進まないのかというと、まず推進体制が挙げられます。労働組合は依然男性社会なので、そもそも女性参画を推進しようという計画がありませんでした。たとえ計画があったとしても、女性がいないので積極的に進めようとする人がいません。
 次に、女性自身、仕事と家庭の両立で精一杯なのに、さらに組合活動まで手が回らないという現状があります。組合活動が女性の生活スタイルにそぐわず、気持ちが向きにくいといえます。
 さらに、男性役員や組合員など周囲の意識が十分とはいえません。男性が頭を使う仕事をして、女性はコピー取りやお茶くみをするという、一昔前の性別役割分業の意識がまだ根強く残っているため、女性参画はなかなか進みません。この意識を変えていく必要があります。

6.生保労連における男女共同参画に対する取組み

 生保労連では2010年に「『組合活動への女性参画』の着実な前進に向けた中期取り組み方針」を策定し、加盟組合がそれぞれの運動方針に明記してしっかり取り組んでいくことになりました。では、具体的に何をやっていくのかというと、大きく分けて4つあります。
 1つめは、女性が組合活動に参画しやすい環境づくりです。セミナー・研修会などで気軽に発言してもらったり、女性だけで意見交換できる場を設けたり、家庭を持つ女性でも参加しやすいランチタイムに会議を設定するなど、女性が組合活動に参加しやすい環境をつくろうと努めています。
 2つめは、機関会議に意識的に女性を参加させるよう取り組んでいます。
 3つめが、女性組合役員の積極登用です。先述の通り、組合役員のほとんどを男性が占めています。また、数少ない女性組合役員の多くが営業職員で、内勤職員の女性組合役員はほとんどいません。組合役員がいないということは、その職種の人たちの気持ちを代弁し意見を反映させることが難しくなります。ですから、積極的に女性を登用していくよう取り組んでいます。
 4つめは、女性組合役員が活躍できる環境づくりです。1つめと重なりますが、会議が開催しやすい時間帯への変更だけでなく、短時間で効率よく終わらせるなどの工夫をしています。
 これらの共通課題をふまえ、2014年に策定した中期取り組み方針では、女性組合役員を[1]各組合で1名以上増やす、[2]生保労連全体で30%到達をめざす、という2020年までの到達ガイドラインを定めました。

7.朝日生命と朝日生命労組の概要

 朝日生命と朝日生命労働組合(以下「朝日労組」)の取り組みをご紹介します。朝日生命は1888年に創業し、2013年に125周年を迎えました。拠点は本社3カ所、営業所は全国に644あります。従業員数は現在17,018名(うち女性14,632名)で、その内訳は営業職員が12,514名(うち女性12,212名)、内勤職員が4,504名(うち女性2,420名)です。女性総合職については、採用が始まったのが1995年からということもあり、まだ93名と少数です。
 朝日労組は、営業職員で構成された組合と、内勤職員で構成された組合が一緒になり、2001年に結成されました。組合員数は15,678名(うち女性13,753名)です。ユニオンショップ制で、会社に入ると同時に組合員になります。

8.朝日労組がめざすもの

(1)2013年度運動方針
 朝日労組では、「組合員の幸せの実現」というスローガンを掲げ、2013年度運動方針として5つの柱をベースに活動しています。
 1つめは、組合本来の役割である「総合的な労働条件の維持・向上」です。春闘の交渉だけでなく、会社の計画や方針、制度について、組合員に丁寧に説明をしたり、必要に応じて組合側から会社側に意見や提案をしたりしています。
 2つめは「活力あふれる働きやすい職場づくり」で、ワーク・ライフ・バランスの実現や女性の活躍推進に向けて、会社と協議を行っています。
 3つめの「経営に対するチェック機能の強化」については、組合の目線で会社の健全性や業績状況をチェックし、会社に提言を行っています。
 ほかに、「さらなる組織力の強化」「生保労連・友誼団体との連携強化」という柱を掲げています。

(2)対等な労使関係と身近な組合の実現
 労働組合と経営が信頼関係を築くには、労使が対等な存在として互いに認め合い、誠実に向き合うことが重要です。組合は、組合員の声をしっかり反映しながら現場視点の提言を行っていくことで経営側と現場をつなぎ、経営側から必要とされる存在でなくてはなりません。一般的に経営陣と現場では距離感があるため、組合はその間に立ち、会社の考えていることを正確に組合員に伝え、逆に、現場の声を経営側に届ける橋渡し的な役割を果たしています。これによって、会社は良い方向へ向かい、収益アップにつながり、組合としても賃金交渉などでプラスに働きます。組合は会社と対立しているイメージがあるかもしれませんが、そうではなく、会社の目指すところと組合の目指すところは、基本的には同じなのです。
 現場の声を集め経営側に届けるためには、組合員一人ひとりが結びつきを強め、組合活動に積極的に関わってもらう必要があります。私自身、入社以来、組合に大きく関わることなく会社人生を過ごしてきましたので、組合役員になって初めて「知らないところで自分たちのために活動してくれていたんだ」と組合を身近に感じたほどです。まだまだ一組合員のところまで、組合の存在をアピールし切れていないという課題に、力を入れて取り組んでいるところです。

(3)組織体制と取り組み概要
 図表3は朝日労組の組織体制イメージです。会社の営業所、支社、本社に対応する形で、組合は班、支部、本部を置いています。日頃は支部と支社の間で、「職場懇談会」とよばれる現場レベルの労使協議を行い、仕事の流れに対する意見や要望をやりとりしています。経営方針、労働環境等、現場レベルで解決できない問題は、月に1回程度、本部と本社との間で「経営協議会」とよばれる労使協議を行っています。労働条件に関する規定、就業規則を変更する場合はここで協議され、組合が合意しないと変えられない仕組みになっています。

図表3 組織体制イメージ

 図表3にはありませんが、全社レベルの協議会として、「業務懇談会」「事務懇談会」「商品懇談会」が年に1回開催され、業務効率化やお客様が求める商品開発など、営業現場で必要とされていることについて現場の意見を吸い上げて会社に提案しています。
 ほかにも、長時間労働の改善や休暇の取得促進に向けて意見交換をする「労働時間等設定改善委員会」、人事評価制度の公正性確保と評価について話し合う「人事制度フォローアップ懇談会」が設置されています。

9.朝日労組における「男女共同参画」に向けた取組み

 スタート当初は「女性の活躍推進に向けた取組み」と銘打ち、女性にスポットを当てた活動をしてきましたが、しだいに「女性が働きやすい環境」=「男性も働きやすい環境」ということになっていき、2010年度からは「ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組み」として男女双方の視点で活動することになりました。
 具体的な取り組みとして、組合と会社が話し合い、2006年度に人事制度を改正し、専任職(いわゆる一般職)とよばれる転居を伴わない事務職の職務を見直しました。専任職のように仕事の中身を限定してしまうと、それ以上の活躍をすることが難しくなり、本人の意識もそこで止まってしまいます。また、周りもそれで充分だとみなすため、女性の職場での活躍の機会が失われてしまうわけです。そこで、「エリア総合職」と名前を変えて、事務に限らず他の仕事もできるようにしました。同時にこの改正で、エリア総合職であっても本人が希望した場合には全国転勤型の総合職へも移行できるようにしました。
 そのほか、朝日労組では、会社が主導する「女性の活躍推進委員会」の報告を受けて意見を具申したり、アンケートを通じて組合員の声を集約し、労使協議等で会社に意見したりしています。
 2007年の春闘では、会社側が設定した「ポジティブ・アクション」(女性をより活用・活躍させていこうという制度)をしっかり浸透させること、休暇制度をさらに充実させることを要求し、実際に前進がありました。その一例が、看護休暇制度の拡充です。育児をしながら働く職員には、急に子どもが熱を出してしまって仕事を休まなければならないというケースがあります。その際、本人有給休暇とは別に、看護休暇という制度があります。2007年までは小学校に入る前の子どもだけが対象でしたが、組合の取り組みによって、現在では小学校低学年まで対象が広がり、取得日数も上限5日から7日に増え、仕事と育児を両立しやすくなりました。
 2014年の春闘では、介護の問題にも取り組みました。今は、男性でもこの問題を抱える人が増えています。そういった事情を抱えている人でも働き続けられる環境整備をするよう要求し、結果的に育児と同様、短時間勤務が可能になりました。また、介護で休職した人が復職しやすい環境をつくる約束も会社から取り付けました。

10.「朝日生命ポジティブ・アクション」

(1)朝日生命ポジティブ・アクションとは
 「朝日生命ポジティブ・アクション」とは、2006年度より会社が中心となって進めている取り組みです。[1]女性職員の管理職登用やキャリアアップ支援をする「キャリア開発」、[2]女性職員の職務領域を拡大していく「チャレンジ支援」、[3]女性職員の仕事と家庭の両立を支援する「ワーク・ライフ・バランスの推進」、という3つの視点で取り組んでいます。こうした女性の活躍推進を通じて、組織を活性化させ、最終的にはお客様サービスおよび生産性の向上につなげ、企業価値を高めていくことをめざしています。

(2)推進体制
 ポジティブ・アクションを推進するために、当時社外取締役だった坂東眞理子氏の監修のもと、社長を委員長、役員と女性職員を委員とする「女性の活躍推進委員会」が設置されました。私も組合員の代表として最初のメンバーとして参加しました。
 少子高齢化が加速し、労働人口が減少していく日本において、従来型の男性中心の労働だけでは社会が回りませんので、女性に活躍してもらう必要があります。そこで、国も会社も、女性が活躍できる職場環境づくりに必死で取り組んでいます。しかし、女性の気持ちはどうかというと、バリバリ働きたいと考えている人は少ないのが実情です。実は女性の意識の部分が大きな課題になっているわけです。
 そこで朝日生命では、職員意識調査などを行い、女性の視点を反映させた形で3年ごとに数値目標を組み入れたプランを立て、推進状況を確認しながら取り組んでいます。

(3)これまでの取り組み成果
 最初の3年間(第I期:2006~2008年度)は出産育児制度を中心にハード面の整備を行いました。次の3年(第I期:2009~2011年度)はポジティブ・アクションの浸透・定着をめざし、より多くの女性職員がキャリアについて考え、その実現につながる支援制度を検討・実施をしました。これまでの取り組み成果のうち、仕事と家庭の両立支援制度の面で特徴的なものを3つご紹介します。

[1]仕事と育児を両立するための異動配慮
 総合職は転勤が伴います。この職種を選んだ以上仕方のないことですが、そうはいっても、結婚・出産を迎えたときに、転勤があると育児の問題に直面します。そこで現在は、子どもが3歳になるまでは大きな異動はしないという配慮がなされています。これは、女性総合職のための「配慮」であり、「制度」ではありません。
 運用にあたっては、男性から見た場合どうなのか、女性の間でも総合職とエリア総合職の場合どうなのか、不公平感のないよう人事処遇をしなければなりません。また、気持ちの面でも「あの人ばかりずるい」という事態にならないよう、みんながお互いを思いやり、意識改革をする必要があります。

[2]配偶者の転勤による同行制度
 配偶者の転勤による同行制度は、エリア総合職が対象です。エリア総合職は本来、転勤がないのですが、他社で働く夫が、別の地域に異動になった場合、夫の勤務地に近いところで働けるよう異動を認めるという制度です。

[3]再雇用制度
 再雇用制度は、出産して一度退職した人について、一定の条件のもとで再度雇用することができる制度です。

(4)数値でみる取り組み成果
 図表4は、女性の活躍推進がどれくらい進んだか数値で示したものです。平成17年(2005年)度の開始時に、女性の管理職数はわずか22名でしたが、平成25年(2013年)10月の時点で148名まで増えました。女性総合職の採用占率は、3割以上の目標に向けて意識的に増やしているところですが、まだ1割強で苦戦しています。ほかに、「ポストチャレンジ」という自ら手を挙げて他の職場・職務への登用にチャレンジする制度がありますが、その応募者数はまだまだ少なく、今後の課題といえます。

図表4 女性活躍推進指標

11.現在の「朝日生命ポジティブ・アクション」の取り組み

 ポジティブ・アクションの大きな目標は、生産性の向上です。現在は第III期(2012~2014年度)に入り、会社の収益をさらにアップさせるために取り組んでいるところです。具体的には、いろんなところに女性の視点・発想を取り入れようと、女性職員の活躍フィールドを拡大させることと、女性の管理職登用を推進することをめざしています。

(1)職員意識調査結果からみた今後の課題
 ポジティブ・アクションについて、2012年9月に全内勤職員を対象に意識調査を行いました。その分析結果は次の通りです。

[1]女性の活躍推進全般について
 ポジティブ・アクションの趣旨・内容についてはほぼ理解が浸透しているという結果が出ました。制度も充実しており、少しずつ利用しやすい環境になっているという印象を職員は持っています。また、上司による公正な評価やチャレンジする機会は、男女にかかわらず公平であるという意識も根付いています。
 一方、女性が仕事上抱えやすい悩みや不安に対して、アドバイスを受ける存在がいないと思っている女性職員が非常に多いことが分かりました。これは考え方次第だと思います。私の場合、女性総合職の先輩がいなかったため、相談できる女性はいませんでした。いないのが当然と思っていましたし、また環境の近い男性上司に相談にのってもらえたので、アドバイスを受ける人がいなくて困ったという経験はありませんでした。やはり、女性に活躍してもらおうとした時に、女性の方が相談しやすいのは事実ですし、そうした意識がアンケートの結果として出てきたということです。
 これに対して、会社は今メンター制度というものを取り入れています。人事部門が、若手総合職や新任管理職の女性を対象に、似たような経験をしてきた職員を紹介してくれ、仕事上の課題や今後のキャリアなどについて相談・共有できるネットワークづくりを支援してくれます。

[2]女性の新たな職務・職場へのチャレンジについて
 新しいことにチャレンジすることに対して、女性職員は非常に慎重な姿勢を見せているのが現状です。ただ、会社としては女性に活躍してもらいたいので、それぞれの意識を変えていくのが一番の課題になっていると思います。

[3]女性職員の管理職への登用について
 社内には、まだ役員になるまでの女性の人材が育っていません。会社としても、今、必死で管理職への登用を行おうとしているところです。男性の抵抗は少ないのですが、女性自身が上に行きたいという意欲をあまり持っていないのです。意欲のある女性は、総合職で約半数、エリア総合職で1割程度しかいませんので、そこを改善していくことも今後の課題です。

(2)組合活動における女性参画の効果・メリット
 女性の視点が加わることで、組合活動においても、新たな気づきを得られるというメリットがあります。私自身、生保労連や朝日労組で意見を求められる機会が多く、自分の意見が組合活動にとってプラスにつながることだと思い、積極的に発言しています。
 現在、朝日労組の役員のうち、女性が占めるのは約2割で、私以外はみな営業職員です。まだまだ男性社会が根強い中、ひとりの力で変えていくのは難しいので、やはり女性の仲間、とりわけ内勤職員の女性役員を増やす必要があると今思っています。

12.先輩としてみなさんへ

 最後に、先輩としてみなさんにひとことお伝えします。私が会社で12年間働き続けることができたのは、相談できる相手がいたからだと思っています。どんな仕事をするにしても、そうそう自分の思うようにはいきません。就職活動のときに「素敵な会社だな」「こんなところで働きたいな」と夢を抱いて入社しても、実際入ってみると自分の思い描いた理想とは違うことがあります。それはたぶん、働いてみないと分からないことですから仕方がないことだと思います。
 そのギャップに苦しみ、「本当はこんなことをしたかったわけではない」と思い悩むことはあると思います。そんなとき、いろいろと話を聞いてくれる人、相談できる人が身近にいてくれると、いろんなことが乗り越えられると思います。中には、身近に相談する人がいなくて、組合に相談に来る方もいます。私自身、仕事や職場で悩んだとき、自分の環境をよく分かってくれている人が身近にいたことで、多くの困難を乗り越えられたと感じています。
 ただし、サポートはあっても最終的には自分で乗り越えるしかありません。大変ですが、やり続ければ自分にとってプラスになるはずです。このことを覚えておいていただければ、悩みはしますが、悩み続けることはなくなるし、問題も一つ一つ解決していけると思います。
 そして、後々はみなさん自身が先輩の立場になったときに後輩の話を聞いてあげられる人になってほしいと思います。そういう先輩がいてくれれば、後輩たちも安心して仕事を続けられるのではないかと思います。
 大学時代はしっかり学び、しっかり遊び、社会に出たら、今言ったことを頭の片隅に置いて仕事をしていただけたらと思います。本日はありがとうございました。

以 上

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