一橋大学「連合寄付講座」

2014年度“現代労働組合論I”講義録

第5回(5/9)

職場の課題とその取り組み
長時間労働の是正にむけた取り組み

松田康子(情報労連中央執行委員)

はじめに-自己紹介

 情報労連で中央執行委員を務めている松田です。私はNTTデータという会社に、1993年に入社しました。現在もNTTデータの社員ですが、組合専従となったため、今は会社を休職し、組合の仕事をしています。
 みなさんは、情報労連と聞いて、どんなイメージを浮かべますか。「マスコミ関係ですか」と尋ねられることがありますが、主な業種は情報通信業で、NTTやKDDI、通信建設関連企業の労働組合が集まった産業別組合(産別)です。その他には、製造業の「高清水」という秋田の酒造会社の労働組合も情報労連に加盟しているなど、多種多様な産業の労働組合が集まっている、複合産別組織です。
 私が労働組合の仕事に携わっている理由の一つは、労働組合の活動を通して世の中を見て行くということが、非常におもしろいと思うからです。物事には裏と表の両面があります。企業経営をそこで働く者の立場、労働組合の側から見るというのはとてもおもしろいことです。そして、労働組合の活動は多岐にわたっていて、会社と交渉するだけではなく、社会貢献活動や国際活動もやっています。労働組合では、会社の仕事だけではできないような様々な経験をすることができます。
 私が組合役員になったきっかけは、持ち回りで順番が回ってきたからです。もともと私はシステムエンジニア(SE)として入社したのですが、配属されたプロジェクトが入社半年でなくなるという憂き目に遭い、SEから外されてしまいました。そのとき配属されたセクションから組合の女性役員を出さなければならないということで白羽の矢が立ったわけです。それがきっかけでしたが、組合役員をやっているうちにいろいろおもしろいことがわかってきて、今に至っています。

1.「ブラック企業」から働く人を守る

 今日は、「長時間労働の是正にむけた取り組み」というテーマで話をします。最近とても注目を浴びている言葉に、「ブラック企業」という言葉があります。みなさんも関心が高いのではないかと思います。先日、情報労連では、NPO法人POSSEの代表、今野晴貴さんをお招きして講演会を開催しました。今野さんによれば、「ブラック企業」という言葉は、もともとIT技術者の間で使われたネットスラングだそうです。私の出身企業をはじめ、情報労連の中にもIT系企業は存在していますが、まともな労働組合があるところでは、「ブラック企業」と呼ばれる会社はありません。今野さんのお話を聞くと、とても酷い実態が見えてきます。「ブラック企業」は新興産業から出てきているケースが多いようですが、そこにはまず労働組合はありません。労使関係不在の新しい産業で、若者を大量に採用して、過重労働で使いつぶして行くというのが、狭義の「ブラック企業」の定義です。広義としては、違法な労働を強いるということになるかと思います。
 働く人にとっては、ワークルール、つまり労働者を守る法律や労働協約、就業規則などが必要ですが、ブラック企業は、そういったものを無視して、労働者に過重労働をさせています。また、ブラック企業には労働組合がないために、違法な労働を強いるといった現象が起こっています。「ブラック企業」から働く人を守るには、労働組合によるチェックが不可欠です。
 このイラスト(右図)を見たことのある人はいますか。これは連合の公式マスコットキャラクターです。何をモチーフにデザインされたと思いますか。ヒントは、名前の「ユニオニオン」です。
 答えは「たまねぎ」です。なぜたまねぎがマスコットキャラクターかというと、たまねぎはいくつもの葉が重なり合ってできています。1枚1枚は薄い層ですが、ギュッと集まっておいしいたまねぎになるという語源があります。同じように労働組合(ユニオン)も、一人ひとりの労働者の力は弱いけれど、みんなで団結すると強い力を発揮します。「ユニオニオン」という語呂がいいのか、結構人気があります。みなさんにご紹介しておきます。

2.労働時間の動向

(1)日本の年間総実労働時間の現状
 今日のテーマに関連したデータをいくつかご紹介します。まずは日本人が何時間働いているかを見ていきたいと思います。図表1は年間総実労働時間の国際比較で、グラフの黒い太線が日本です。

図表1[年間総実労働時間数の国際比較]

 日本では労働時間の長い状況が続いてきました。とくに1980年代はダントツで長く、日本の貿易黒字に対し外国からは、「日本は労働者を長時間働かせて、安い品物を売っていてアンフェアである」という指摘を受けました。こうした指摘を受けた日本政府は、1992年に「時短促進法(「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」、5年間の時限立法として施行)」をつくり、労使で労働時間を短くしていく取り組みが進められました。
 ところで、このグラフからは、日本の労働時間が減少傾向にあることがわかります。1980年の年間総実労働時間は2,100時間台でしたが、2010年には1,733時間になっています。しかし、このデータだけで「労働時間が減って良かった」と、鵜呑みにはできません。なぜなら、一般労働者(フルタイム)とパートタイム労働者に分けて労働時間を見てみると(図表2)、一般労働者の労働時間は、2,000時間以上で高止まりしたまま減少していないからです。日本の労働時間が短くなってきたのは、パートタイム労働者の増加が主な要因です。こうした状況から、日本では、働く人の労働時間が二極化していることがわかります。

図表2[年間総実労働時間の推移]

 なお、男性の場合は、週60時間以上働く人の割合が2割弱を占めています。週60時間というと、週休2日で週5日勤務の場合、1日12時間働く計算になります。朝9時から夜9時まで働くとして、休憩を入れると終業は夜10時以降になるかもしれません。残業が1日4時間以上という状態で働き続ければ、体を壊すのではないでしょうか。
 実は、過労死認定基準の一つに労働時間の目安があり、それが週60時間です。日本では男性の2割弱はこうした実態にあり、つまり5人に1人は、過労死してもおかしくない時間働いているということになります。ちょっとこわいことです。

(2)男女別・年齢階層別の仕事時間と家事関連時間の現状
 次に、仕事時間と家事関連時間の状況を見てみます。(図表3

図表3[男女別・年齢階層別の仕事時間と家事時間関連]

 調査結果によれば、男性は長時間働いていて、家の仕事はほとんどしていません。1日12時間も働いていては家のことなどできるはずはありません。一方女性は、パートタイムで働く人が多いこともあり、家事関連時間は長くなっています。
 私はこのグラフから、家事関連時間と仕事時間を足すと、女性の方が男性よりトータル時間では長くなっていることに結構ショックを受けました。女性はパートタイム・フルタイムを問わず、仕事に加え家事もやらなければならない、こうしたなかで、女性は家事負担があるため、なかなかフルタイムで働けないということにもつながっているわけです。
 政府は、今さかんに「女性の活躍推進」と言って、女性の管理職比率などを引き上げようとしています。そのこと自体はとても良いことだと思いますが、女性の活躍推進のために何を検討しているかというと、家事をしてくれる外国人労働者の受け入れです。働く女性の側からすれば、外国人労働者を受け入れることよりもまず、「夫を早く家に帰してくれ」という意見が大多数であり、私は女性の声が反映されていない議論だと思っています。

3.長時間労働の健康への影響

 労働時間の現状に関わって、日本人の睡眠時間の状況にもふれたいと思います。調査によれば、日本の有職者の平日睡眠時間は、この50年で約1時間短くなって、平均で7時間を切っています。なかでも40代女性の睡眠時間は6時間28分と、一番短くなっています。国別では、日本は労働時間が長いせいか、韓国に次いで睡眠時間が短くなっています。
 一方、医学的な研究も進み、睡眠の大切さが見直されてきています。最近、厚生労働省が策定した「健康づくりのための睡眠指針2014」では、睡眠は健康のために大事であり、勤労世代の疲労回復・能率アップのためには毎日十分な睡眠をとるようアドバイスしています。
 週60時間以上も働いている人たちは、十分な睡眠時間がとれていないと思いますが、「睡眠不足は生産性を下げる」と指摘する医師もおり、本人は能率が下がったことに気づいてないという調査結果もあります。休日にまとめて寝だめして疲労を回復しようと考える人がいますが、残念ながら睡眠はためられません。毎日の十分な睡眠が重要なのです。
 1日の睡眠時間が6時間未満の場合、心筋梗塞を発症するリスクが高まると言われており、脳・心臓疾患の労災補償状況を見ても、長時間労働に起因した労災認定の件数は、高止まりの傾向にあります。
 また、精神障害の労災補償状況では、自殺に限った場合、長時間働いていたというケースの割合が多くなっています。ちなみに、みなさんの中で、「過労死」という言葉を知らない人はいないと思いますが、こういう言葉(実態)があるのは残念ながら日本だけです。英語でもそのまま「karoshi」という言葉が使われ、日本は大変不名誉な状況にあるといえます。過労死をめぐって有名な判決があります。入社2年目の電通社員が自殺し、ご両親が会社に責任があるとして裁判を起こした事件です。この判決でも、「使用者は、雇用する労働者が疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことのないよう、注意する義務を負う」ということが打ち出されています。企業には、その規模にかかわらず雇用する労働者の心身の健康に注意する義務があります。しかし、業績を追求するあまり、このことが配慮されない場合が往々にしてあります。したがって、労働組合には、会社の働かせ方をチェックする役割があります。
 人権保護等を扱っている国連の社会権規約委員会は、企業が自主的に努力をしているにもかかわらず、日本では相当数の労働者が過重労働に従事し続けていると指摘しています。今、政府は、ホワイトカラー・エグゼンプションなど、「柔軟な働き方」を可能とする規制緩和を検討していますが、国際的に見れば、日本の労働時間規制は全然強くなく、日本に求められているのは、長時間労働への規制の強化と違反に対する罰則の強化です。

4.労働時間に関する法律とその課題

 働く人の労働時間は、労働基準法という法律で決められています。この法律が制定される前は、労働者は、1日12時間やそれ以上の長時間労働を強いられていました。しかし、憲法第25条の「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」との規定を受けて、労働基準法は、その第1条で、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と定めています。そして、労働基準法第32条では、「使用者は労働者に対し休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、また1週間の各日については1日8時間を超えて労働させてはならない」と定めています。これが労働時間の大原則です。
 それでは、なぜ週60時間以上働く人がいたり、過労死が起こったりするのでしょうか。これは、ブラック企業、ルールを守らない会社が勝手にやっているからなのかというと、そうではありません。実は、日本の労働時間法制には、非常事態や業務上の必要性により、1日8時間を超えて労働することが想定される場合、8時間を超えて働かせることができるという柔軟性があるのです。
 その場合、何時間でも働かせていいのかという話になります。まず、会社が時間外労働を命令できる根拠となるものに、労働基準法第36条の規定があります。使用者は、職場の過半数を組織する労働組合か、組合がない場合は過半数を代表する者と、書面による協定を結びます。これを労働基準法第36条からとって、「36(「さんろく」または「さぶろく」)協定」と言い、業務上の必要性があるときは、何時間までは残業させてもいい、という協定を労使が結ぶわけです。この協定がないと残業はさせられません。
 さらに、「36協定」に加えて、特別な事情がある場合、「特別条項付き協定」の適用が可能です。この「特別条項付き協定」を締結した場合、「36協定」で定めた上限時間を超えて残業させても良いことになっています。特別条項付き協定により何時間延長時間として定めるかは、基本的に労使の自治、つまり労使の話し合いに委ねられています。
 「36協定」の上限時間については、厚生労働省より限度基準が出ていますが、それを超えても罰せられるわけではなく、日本の法律では、延長時間の上限規定は実質的にはないといえます。そうなると、協定の当事者である労働組合の責任はとても大きいわけです。したがって、私たち組合役員は、責任を自覚し労使協議を行っています。しかし、残念ながら労働組合のない職場が圧倒的に多いなかでは、その実態をふまえた法律のあり方を考えなければなりません。いま、連合はこの法律の改正を求めているところです。
 一方、欧州連合(EU)では、労働時間に関する厳格な上限規制を設けていて、原則、4週間以内を平均して週48時間以内となっています。これでは日本より長く働くことになるのではないかと思うかもしれませんが、そうではありません。日本の場合は、36協定を結べば週40時間を超えて残業をさせることができますが、EUでは、時間外労働を含めた労働時間の上限規制となっていて、原則、これを超えて働かせることは認められていません。
 もうひとつ、EUには「インターバル規制」というものがあります。この規制の1つは、24時間につき連続11時間の休息を付与しなければならないというものです。つまり、1日の勤務が終わったあと、次の勤務まで、11時間以上の休息をとらせなければいけません。また、2つめは、7日ごとに最低連続24時間の休息をとらせなければいけないという規制です。この「休息」という考え方は、日本の法令にはなく、ヨーロッパのこれまでの伝統や歴史の中で培われた、素晴らしい考え方だと思います。

5.情報労連の取り組み

(1)インターバル規制の労使協定締結に向けて
 情報労連では、労働時間短縮に関する目標を3段階(最低到達目標・中間目標・最終到達目標)で設定しています。これは加盟組合がそれぞれの実情にあった取り組みができるようにしたもので、各労組は3段階の目標をもとに時短計画を立てて会社と交渉します。
 さきほどEUでは、インターバル規制が導入されていることをお話ししました。連合は今、この規制を労働基準法に盛り込もうと取り組んでいます。
 情報労連は、他の産別に先がけて、このインターバル規制の労使協定化に取り組んでいます。なお、EUは11時間の休息時間の規制でしたが、情報労連では10時間の休息時間を設定しています。そして、例えば、時間外労働で深夜0時まで働いた場合、翌日の勤務の始業時間が9時であっても、1時間を勤務免除として始業は10時とする、そういう取り決めを進めていこうとしています。
 2009年春闘では、「導入に向けた労使協議の促進」を方針に掲げて取り組みました。情報労連の加盟組合に、通建連合という、通信建設業(電話線を引くなどの建設工事をする会社)の労組の集まりがあります。この通建連合を中心に、13組合で労使協定が締結されました。ちなみに、それ以前の取り組みとして、「インターバル」という名前こそありませんが、同じルールを会社の就業規則に盛り込んだ加盟組合が結構ありました。
 翌2010年春闘では、「労使協定化」を方針に掲げ取り組みました。新たに2組合で協定化が実現しましたが、その後はなかなか協定化が進みませんでした。その背景には、会社が規制を嫌うこと、休ませるがその間の賃金は払わない、といった問題などがありました。また、インターバルが10時間では長すぎるということで、なかなか新たな協定締結に至っていません。

(2)協定促進にむけたガイドラインの策定
 情報労連では、こうした状況を打開するため、2012年11月に「勤務間インターバル規制のガイドライン」を策定しました。以後2013春闘・2014春闘で要求が広がり、2013年の秋には、情報サービス、いわゆるIT企業での協定締結という実績が出てきました。こうした動きが次の導入拡大につながるよう、現在、ガイドライン補強のための改訂を検討しています。  
 ガイドラインでは、労働組合が①実態を把握し、②規制が必要かどうかを検討し、③勤務間インターバル規制を要求する、という手順を示し、労使交渉では、「長時間労働の危険性と休息時間確保の必要性」について労使の認識を合わせることが重要であるとしています。
 みなさんの中には、労働組合に対して、会社と対立する、会社経営の足を引っ張るというイメージを持っている人がいるかもしれません。たしかに見方が違えばお互い対立することもありますが、労使は車の両輪の関係にあり、目指すところは一緒です。会社にとって、労働者が健康で能力を発揮することは、非常に大事なことです。やみくもに働かせて労働者をつぶしてしまうことは、会社にとっても大きなマイナスです。そこで、ガイドラインでは、労使で長時間労働の危険性と休息時間確保の必要性について認識を合わせることをポイントとしています。
 また、ガイドラインでは、何時間のインターバルで協定を結ぶかについては、個別の労使に委ねる形にしています。EUは11時間ですが、日本では通勤時間、睡眠時間、食事時間などの実態を考えた場合、11時間は結構厳しいと思っています。一方、例えば深夜0時まで残業をして帰宅したときに、翌朝少しゆっくり出勤したいと思っても、9時間のインターバルでは、始業は9時となり通常と変わらなくなり、これではインターバル規制になりません。会社側からは9時間規制でも長いという反論があり、時間設定はなかなか難しいところです。そこでガイドラインでは、11時間のインターバルをめざしつつ、最低確保すべき休息時間として、「睡眠6時間」が確保できる時間という原則を示しています。

(3)インターバル規制の導入効果
 実際にインターバル規制を導入した加盟組合からは、長時間作業にならないよう、休息時間の確保を念頭に入れた工事計画を立案するようになったとの声が寄せられました。労働時間や作業時間に対する認識が高まり、仕事にメリハリが出て、ワーク・ライフ・バランスの意識が高まったという声もありました。また、IT業界では仕事ができる人に仕事が集中しがちですが、インターバル規制を導入することによって、一人に仕事が集中しないよう、仕事の分担を意識するようになったという話も聞きました。つまり、インターバル規制の導入が仕事のやり方に対する意識も変えたということになります。

(4)裁量労働制への取り組み事例
 次に、加盟組合の裁量労働制導入の取り組みをご紹介します。裁量労働とは、残業時間という概念がない働き方です。労使協定によって決められた労働時間をもとに、1日何時間仕事をするかなどは個々の労働者の裁量に任せられ、決められた労働時間以上働いても残業代は出ません。私の出身企業、NTTデータは裁量労働制を導入していますが、導入に至るまでには相当の時間をかけて労使で議論を行いました。裁量労働制は、残業代を払わなくて良い仕組みであるため、残業代を払いたくない企業が裁量労働制を導入してしまうということが起こり得るわけです。実際に情報労連傘下の組合の中でも、労働組合の要求によって、導入されていた裁量労働制を廃止した事例もあります。
 仕事の目標を設定し、働く時間の長さではなく、労働の質や成果で評価するという考え方は、必ずしも悪いわけではありません。しかし、十分な検討や規制なしに導入してしまうと、単に残業代を払わなくてすむ制度になりかねません。
 NTT労組データ本部では、長い時間をかけての議論と、トライアルという形での導入実験をやった上で、本格導入時には、労使間で、「裁量労働は、時間の概念を持たず、自らが裁量を発揮し、これまでの働き方を変革していくことを通じて、労働時間を短縮しようとするものであり、労務費コストの削減につなげるものではない」という基本認識を確認しました。また、その制度は全員が対象ではなく、新入社員を適用対象外とし、職種も限定しています。さらには、他にもルールがあり、その一つに、本当にその仕事が裁量労働にふさわしいかどうかを評価するため、アセスメント設問を実施しています。チーム全員がこの設問に答え、自分に裁量があるかどうかをチェックして、裁量労働で働くことができると判断して初めて対象となります。しかも、労働時間の管理をきちんと行い、業務が集中して長時間になる場合には、一時的に裁量労働から外します。NTT労組データ本部では、こうしたさまざまな検討と議論と実践を経て導入に合意しました。

6.今起きている労働時間規制緩和の動き

 諸外国と比べて、日本の労働時間規制は緩く、むしろ強化が必要であることにふれてきましたが、今、日本では労働時間の規制緩和が検討されています。この動きで一番問題と思っているのは、労働時間に関わる議論が、労働者代表が不在の中で検討されていることです。
 労働者の働き方に関する法律は、「ILOの三者構成原則(政府代表だけでなく使用者団体及び労働組合の代表がその意思決定機関に正式に参画すること)」にもとづいて、議論されることになっています。しかし、現在の規制緩和の議論は、政府の成長戦略の一環として進められ、労働者代表のいない産業競争力会議や規制改革会議の中で検討が続けられているのです。
 日本は国際労働基準を定めるILOに加盟しており、この原則を守らず労働者代表が不在の中で議論を行う、このことが大きな問題であることにふれておきたいと思います。

おわりに

 最後にこれだけはお伝えしたいと思います。
 働くということは、本当に大事なことだと思います。私もずっと働き続けていて、そう実感しています。働けるということは、とても幸せなことです。私には子どもがいますが、子どもがいると働き続けるのは難しいとされる状況のなか、働き続けられることを本当に幸せなことだと思っています。
 労働組合は、働く人が幸せに働けるよう活動しています。私もそこに魅力を感じて役員をやっています。みなさんも、社会人になったら、ぜひ労働組合の活動に参加してください。ご清聴ありがとうございました。

以 上

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