一橋大学「連合寄付講座」

2012年度“現代労働組合論I”講義録

第8回(6/1)

働く現場の抱える課題と取り組み[4]
女性のキャリア形成の取り組み~損害保険産業労組の事例を中心に

ゲストスピーカー:塩谷 恵理(三井住友海上労働組合 書記長)

1.自己紹介

 私は、三井住友海上労働組合で書記長を務めています。労働組合では委員長がトップとして運営方針を決めますが、書記長はその実行部隊の取りまとめ役です。
 また、私は連合の女性中央執行委員を務めています。連合は産業別労働組合(産別)のトップで中央執行委員会を構成していますが、女性がトップという組織は少なく、そのための女性中央執行委員枠をつくり、女性の意見を連合運動に反映しています。
 私は、1995年に住友海上に一般職で入社して、広報部に配属となり、社内報やホームページの立ち上げ、マスコミの取材対応といった仕事をしていました。そして、2001年10月に住友海上と三井海上が合併し三井住友海上となった1年半後、私は一般職からエリア総合職に職種転換をしました。一般職は仕事が限定されていたため、仕事を続けるにあたって限定された職種のままでいいのかという疑問を持ちました。そこで、エリア総合職という転居・転勤がない総合職に転換し、配属されたEビジネス推進部では、インターネットや電話のコールセンターなどを使い、お客様と直接コミュニケーションをとるビジネスの企画を担当してきました。
 組合活動との関わりについては、職場に来た組合役員から、みんなでお弁当を食べながら人事制度の変更などについて説明を受けたことはありました。それ以上の接点はなかったのですが、2006年の夏に労働組合が組合活動に意見を言ってくれる人を探しているということで私に声がかかり、その年の9月には執行委員になりました。このときは非専従役員ということで、普段は職場で仕事をし、組合の会議などがあるときはそちらに参加をしていました。その後、販売推進部への異動を経て2009年9月には、組合の仕事だけをする専従役員となり、2011年9月から書記長を務めています。そしてその翌月には、連合の女性中央執行委員に選出されました。

2.三井住友海上の概要

 三井住友海上の事業は損害保険業です。生命保険が主に人を対象とする保険だとすると、損害保険は物に対しての保険です。例えば、自動車保険や家にかける火災保険などで、自動車や家が損害を受けたときに保険金を支払います。また、自動車事故では場合によっては人にけがをさせてしまいます。その場合も損害保険で補償をしていますので、傷害保険も扱っています。
 会社の従業員数はパート社員を除き約15,000人です。全国に営業所が530ヵ所、保険金お支払いセンターが248ヵ所あり、北は北海道から南は沖縄まで各県には県庁所在地だけでなく、2、3ヵ所の拠点があります。海外は41カ国に405拠点があります。
 損害保険業が生命保険業と大きくやり方が違うのは代理店方式という点です。全国に約39,000の代理店があります。生命保険業界では営業職員が保険販売を行いますが、損害保険の場合はそれを代理店が行います。多くのお客様は、ディーラーで車を買う時に自動車保険に、不動産屋で部屋を借りる時に火災保険に入られます。このように、損害保険業では、自動車販売などを本業とする方々が代理店という資格を持って保険を売るというスタイルをとっています。

3.三井住友海上労働組合の概要

 三井住友海上労働組合では、全国をまとめて1つの運動を進めるため、全国に49の分会と15の地区会という小さな単位の組織をつくり、それを本部で取りまとめるという活動スタイルをとっています。組合員数はパート社員を含めて18,560人です。女性の比率が非常に高く、パート社員を除いても女性の方が男性より多い労働組合です。
 各職場には、例えば、人事制度の変更の説明や残業時間の実態を改善するための話し合いを行う職場会を設置し、これを中心に活動しています。早帰りイベントとして、仕事を定時に切り上げて参加するボーリング大会を開催し、コミュニケーションを活性化させることなどにも取り組んでいます。
 また、当労組が最も力を入れているのは各種セミナーの開催です。働く人のモチベーションアップにむけたコミュニケーションスキルやタイムマネジメントといった、仕事に役立つようなセミナーを積極的に開催しています。

4.「創造性豊かな働き」の実現にむけて

 当労組がめざしているのは、「創造性豊かな働き」の実現です。多様な社員が個性を生かし、生き生きと長く働き続けられる職場、会社づくりをめざしています。
 ところで、日本では多様な社員というと、一般的にすぐ浮かぶのは男性と女性です。しかし、同じ男性、女性でも世代が違えば考え方も違い、同じ世代であっても大切にしていることは人それぞれに違います。家庭環境や個人事情も様々です。私たちは、こうした様々な違いをもった社員1人ひとりの個性を生かせる職場をめざしています。この個性とは得意なことも意味しており、人前で話すことが好きな人、資料づくりが得意、データ分析が得意という人もいます。こうした一人ひとりの得意技を生かしながら、生き生きと仕事ができる会社にしていきたいと思っています。
 創造性豊かな働きが実現できている状態とは、[1]積極的に学び、幅広い情報を収集するなど、常にチャレンジ意欲を持ち続けるとともに個性を発揮し、[2]円滑なコミュニケーションと最高のチームワークのもと、[3]限られた時間で効率的にメリハリを持って、[4]付加価値の高い仕事を行うこと、と考えています。
 創造性豊かな働きの実現にむけた課題は、今日のテーマに関するものとして2つあります。1つは男女平等参画の推進です。男女の区別なく全ての社員が個性を生かしながら、生き生きと働いているかどうかについては、まだまだ多くの課題があります。
 もう1つは、長く働き続けられることです。一般的には日本の大手企業の男性は、自分から辞めるつもりはなく、一定の仕事をしていれば長く働き続けられると考えている、これが常識となっています。一方、女性はというと、そうではありません。その原因には、出産、育児、介護といったライフイベントと仕事の両立が難しいということがあります。女性にとっては、まず長く働き続けることが1つのハードルになっていますが、実は金融機関がこのことに気づき始めたのは最近のことです。金融機関では男性が長く働き続けることは常識となっており、そのために何が必要かという切り口でしか物事を考えてきませんでした。しかし、ここ数年で、こうした女性の課題が明らかになってきました。

5.男女平等参画の推進にむけて

(1)コース別人事制度の現状と課題
 「創造性豊かな働き」の実現をめざした男女平等参画推進の取り組みには、まずコース別人事制度の改革があります。先ほどの自己紹介では、私自身が一般職から総合職に転換したことをお話ししました。コース別人事制度とは、人事管理制度の1つであり、採用時に総合職、一般職という複数のコースを設定し、コースごとに処遇するものです。具体的な呼称には、総合職、一般職、基幹職、事務職、営業職などがありますが、今日は「総合職」、「一般職」という言葉を使います。
 総合職と一般職には、賃金、異動、昇進・昇格などの運用に違いがあり、教育、研修のシステムも違っています。損保業界を例にとると、総合職は、「基幹業務を担う人」と定義されています。定型業務ではなく、いろいろな判断を伴うクリエイティブな仕事をするとなっています。特に損保業界では全国転勤、場合によっては海外転勤があり、概ね4、5年で異動しています。この異動をしながら昇進をしていくコースが全国転勤型です。転居を伴う転勤はないエリア限定の総合職もありますが、一般的には全国転勤型です。この職種は、女性が家庭をもち、子どもを育てることを考えると選びにくいという実態があり、結果的に総合職のほとんどは男性です。もちろん女性総合職も採用されていますが、辞めていく人が多く、総合職の95%が男性です。
 一方、一般職は、「事務を中心とした定型的な業務を行う人」と定義され、決められた範囲内で仕事をするとなっています。また、一般職の異動は限定的であり、昇進できる役職も上限があります。総合職の場合は部長や役員になれますが、一般職は主任、課長までという、役職登用の天井があり、昇進スピードも総合職と比べて遅いというのが実態です。原則的には転居を伴う転勤はなく、結果的に一般職はほぼ女性です。コース別人事制度自体は、男性が総合職、女性が一般職とは決められていませんが、仕事の中身や転居を伴う転勤が非常に大きな要素になっており、金融業界では、結果として男性は総合職、女性は一般職という固定的な制度運用が長らく続いています。
 実は労働組合も男性社会です。女性が組合のトップというところは少なく、男性中心の組織運営となっています。いま私は書記長を担っており、女性の組合役員も増えてはきましたが、それもここ4、5年の話です。したがって、それ以前の労働組合の多くは、女性が求めていることがなかなか分かりませんでした。三井住友海上労働組合では、4、5年前から女性組合員だけが集まり話し合う機会を意識的に設けるようになりました。「生き生きと働く」というテーマで、やりがいや働きがいの実現、そのための会社の支援策は何か、などを話し合ってきました。そこで出された意見の中で男性と少し違ったのは、やりがいや働きがいに関するものです。男性では、昇進や会社に認められること、という回答が多かったのですが、女性では、周囲の社員と支えあいながら仕事をすること、そして自らの成長がやりがいにつながっていることがわかりました。また、長く働き続けられる条件整備に対するニーズが高まっていることもわかりました。金融機関では、長らく固定的な性別分業が当然という観念があり、そのため男性は、「女性は本当に長く働き続けたいと思っているのか」という疑問を持っていたのです。女性に集まってもらい労働組合の場で話し合うことを通じ、女性も長く働き続けたい、成長したいと思っていることを男性役員と共有できるようになりました。
 損害保険業界の産別である損保労連では、10年前から損保業界の変化や一般職の仕事の変化などを調べています。その中で仕事の変化が組合員のやりがい、働きがいにどのような影響を与えているのかを分析しています。その結果では、IT化の進行によって定型的な事務の仕事は減ってきていました。一方、4000名以上いるパート社員に事務業務を教える仕事や代理店に教える仕事、新商品の販売を推進する仕事などの比重が高まっていることが明らかになりました。そして、それによって組合員のやりがいも高まっていることがわかりました。
 時を同じくして会社側にも動きがありました。リーマンショックなどにより、日本経済の不透明感が高まっています。損保業界では自動車の影響が大きく、バブル期には例えば若い男性であればほぼ車を買うという状況でしたが、時代は大きく変わり、今では車が売れなくなってきています。自動車が売れなければ保険も売れず、家が建たなければ保険は売れません。経済の縮小によって保険業界のビジネスも縮小し、こうした状況のなかで損保業界は再編を繰り返してきています。合併によって会社が大きくならないと体力がもちません。今、大手は5社、その中でも大手3グループに集約され、大手同士による厳しい競争が繰り広げられており、社員1人ひとりにもっと成果を上げてもらわないと会社はもちません。

(2)コース別人事制度の見直しにむけた取り組み
 コース別人事制度の見直しについては会社も問題意識をもっており、当労組は、今後どうすべきかについて検討段階から労使協議をおこなってきました。見直しのポイントは、転居転勤の有無は残すものの、クリエイティブな仕事をする人、定型的な仕事をする人の役割の差をなくしていくことです。労使協議の結果、2013年4月には、完全に総合職・一般職区分をなくし、転居転勤の有無の区分に改定する予定です。
 なお、当労組は見直しにあたり、改めて、総合職・一般職というコース別人事制度をなくすことが組合員にとって本当によいことなのか、会社にとって必要なのかを考えました。今まで限定的な仕事をしてきた一般職の人からは、急にすべてのことをやるよう言われるのではないか、という不安から大きな反発もありました。また、従来の書類作成やパソコン入力といった業務から、パート社員や代理店を指導する業務に変わり、やりがいがでてきたと感じている社員からも「これまでの人材育成も経験も異なる総合職と同じように比べられるのか」という不安の声が寄せられ、私たちも時間をかけて必死に議論しました。論議の際の観点は、中長期的な雇用の確保、処遇の維持・向上にあり、労働組合としては、これを忘れるわけにはいきません。そこで、例えば、コース別人事制度を残す場合、何が起こるかを考えました。会社は、非常に厳しい環境にあっては仕事をなんでもやってくれる人の方が良く、またこれまでと同じ人数でより大きい成果を求めます。保険で稼げる代理店をもっと増やしたいと思っている中では、「私は事務しかやりません」という人が沢山いることは、会社にとっては問題となり、「雇用は守るが全体の処遇を下げる」と言われかねません。
 一方、社員がやりがい、働きがいを感じられるかどうかということも重要です。この点について、私たちはどんな仕事を求めていくか、コース別人事制度をなくすことがやりがいや働きがいにつながっていくかどうかについて論議しました。会社の経営状況やIT技術の進化によって業務は本当に変わりつつあります。パート社員による事務作業、代理店によるパソコン入力の会社システムとの直結などにより、一般職が担っていた事務の仕事は劇的に減ってきています。将来のあるべき職場の姿について、組合員との意見交換を続ける中でたどり着いた当労組のスタンスは、社会全体を視野に入れて考えることでした。少子高齢化が進む中、これまでのように男性が中心に仕事を担っていく会社では、持続的な成長は期待できず、もっと女性が活躍していくことが必要です。また、保険加入者は男性だけではなく、女性に訴えかける商品づくりも必要です。事務業務が減少し、総合職の仕事とされていた代理店指導などはすでに一般職が担ってきている実態もあり、当労組では、役割を制限している制度を見直す必要性について、組合員が理解できるというまで何度も論議を重ねてきました。

(3)制度の的確な運用と定着にむけた取り組み
 コース別人事制度の見直しを了承することで労働組合の役割が終わるわけではありません。実はここから先が労働組合の一番の役割です。
 コース別人事制度を見直すことで、職場では柔軟な役割分担ができるようになります。これまでも役割は徐々に変わってきたものの、コース間には壁がありました。この壁が取り払われた場合、事務を担当していた人も違った役割を求められることになります。会社は、役割の変化に対応するための人材育成をしっかりやる必要があります。
 総合職は早く昇進する、一般職はなかなか昇進しないという常識や固定観念が会社の中にあり、このような考え方を変えていく必要もあります。総合職だから異動し、一般職は異動しなくていいといった考え方も変えていく必要があります。このような課題に対する労働組合の役割は、大変大きいものと思っています。
 当労組は、2013年4月の改定にむけて、職場の実態把握と必要な対応策について会社と協議を行っています。それはまさに人材育成が中心テーマです。すでに代理店への訪問指導や新規開拓業務を女性が始めている職場もあり、その場合の人材育成、OJTの実施や今まで培ってきたノウハウを伝える、場合によっては一緒に営業に同行する、そういった丁寧な支援が現場で行われているかを把握しています。逆の場合もあるかもしれません。男性マネージャーが、女性は営業がいやだろうと考えて、頑張って役割を広げたいと思っている女性がいても事務の仕事をさせるということがあるかもしれません。約700の職場があり、その1つひとつの実態を丁寧に把握する、私たちはこうした取り組みを行っています。
 もう1つは、組合員自らがこの見直しにむけて前向きに取り組むための風土づくりを進めています。。一般職の中には10年、15年と経験をつんでいる人たちがいます。この人たちは、今までは役割が違うということで比較されませんでしたが、経験をつんだ一般職は若手総合職よりも商品知識があり、電話でのやり取りを通じ代理店との信頼関係もしっかり築いています。一般職の業務の領域が広がることを前向きにうけとめられない総合職もいましたし、また、役割分担がかわることで一般職に依頼していた業務は誰がおこなうのかが不明瞭と感じ、円滑な業務運営ができなくなるという不安の声も寄せられました。会社の環境を考え自分はどんな役割を発揮していくか、私たちは、総合職の意識変革も進めています。一方、一般職の中にも一部ですが抵抗感があります。こうした人たちには、今までの総合職と同じやり方ではなく、自分が培ってきた知識や経験を生かし、自分なりに前向きに取り組むことが大事だと訴えています。私たちは、会社がやるからという受け身ではなく、この人事制度の見直しをきっかけに、やりがい、働きがいにつながる仕事をしていこうと、組合員の皆さんと話をしています。

6.ライフイベントと仕事の両立支援にむけて

 男女平等参画と切り離せない課題が、「ライフイベントと仕事の両立支援」です。
 育児・介護休業法の見直しなどもあり、両立支援制度は年々拡充されています。産前産後休暇はもちろん、育児休暇や短時間勤務制度を利用する人も増えてはきています。ただし、制度を利用したいと考えていても会社を辞めてしまう人は依然多く、労働組合に相談を寄せる人も多いという状況です。両立支援の主な課題は、上司の意識改革と制度への理解です。様々な制度を上司が知らないこともあり、上司の支援があるか否かが仕事を続ける、仕事を辞めるという判断に大きな影響を与えています。
 もう一つの課題は、損保業界全体の長時間労働の問題です。非常に残念ながら、残業を前提とした働き方がまだまだ根付いています。
 また、お互い様という風土の醸成も必要となっています。職場にもよりますが、産休や育休を取る人がでると周りに負担がかかります。残念ながら、一部ではありますが周りの社員から「迷惑だ」という声も聞こえてきます。まだまだ「お互い様、自分のときもよろしく」といった支えあう風土が醸成しきれておらず、責任感が強い社員ほど周りに迷惑をかけるからといって辞めてしまう、残念ながらこういう実態もあります。
 当労組では、こうした課題について職場会で話し合っています。有効策を見つけるため、育児や介護中の組合員を集めた懇談会を開催し、現行制度の良い点や不足点、職場風土面での課題などを徹底的に話し合っています。育児や介護を担っている方は仕事が終わってからの参加は難しいので、お昼休みの時間を使い両立支援について議論しています。
 こういった取り組みによって実現したことがあります。1つめは、上司むけの育児・介護休業制度を周知するハンドブックをつくりました。この中では、女性社員から結婚や出産の報告があった場合の対応例を掲載しています。例えば、上司から一方的に「結婚したから辞めるよね」と言ってはだめだなどの具体例が書いてあります。上司の中には、結婚や出産で女性は辞めるものと考えている人もいるため、意識付けが必要です。2つめは、社内eラーニングに、両立支援制度を学べるメニューを追加しました。3つめは、産休・育休中の社員のフォロー体制を拡充しました。職場復帰の時点では浦島太郎のような状態になります。このことはどこの業界にも共通といえますが、世の中の動きが速く休んでいる間に会社の中も変わってしまいます。そこで、当労組ではスムーズに職場復帰できるよう情報提供などをやっています。4つめは、短時間勤務制度の処遇のあり方に取り組みました。5つめは、介護に必要なことやどんな状況に陥りやすいかについて、専門家によるセミナーを会社主催で開催しました。

7.両立支援にむけた今後の取り組み

 両立支援策は、このように少しずつ拡充され、風土も変わりつつありますが、まだまだやらなければいけないことがあります。まずは長時間労働の改善です。会社だけではなく、組合員自身にも働きかけをしていく必要があります。限られた時間で生産性を高めることが望ましいわけですが、残念ながら金融機関には長く、遅くまで働くことを美徳と思っている社員が大勢います。仕事仕事以外の時間を使って社外の人脈をしっかりつくる、英語を勉強する、様々な知識を身につけることなども大切です。地域の人と触れ合うことで損保業界の常識が社会の非常識だということに気付き、こうした気付きは損保の販売や商品開発にも生きていくでしょう。ワークライフバランスは、生き生きと長く元気で働き続けるためだけでなく、一人ひとりの成長にも必要です。
 その実現に向け、いま、私たちが会社へ働きかけていることは、会社全体で無駄な業務を削減する、システムで効率化できることはシステム投資を行うことなどです。また、社内の過剰なルールの見直しです。これにより効率も生産性も上がると考えています。
 小学校就学後の子どもをもつ社員への支援もまだまだ不十分だと思っています。例えば短時間勤務制度はあるのですが、当社の場合は、取れる期間は子どもが3歳の年度末までです。保育園には延長保育がありますが、小学校にはその仕組みがありません。小学校就学後に利用できる学童保育は5時や6時に終わってしまい、小学校低学年の児童をもつ親にとっては大変です。小学校にはPTA、授業参観など様々な行事もあり、例えば短時間勤務を小学校3年生まで利用できる、行事への参加のための休みを取りやすくすることなどにも取り組んでいこうと考えています。また、男性社員は育児支援制度の利用状況にも課題があります。これは会社だけの問題ではなく、社会全体に男女ともに育児を行う文化を根付かせなければなりません。私たちは社会全体への波及効果も含め、男性を含めた育児支援制度の利用促進が課題であると思っています。
 あわせて、介護中の社員への支援の拡充も課題です。身近に実例が少ないことから、いろいろな労組の方ともお話をしていますが、介護支援制度の利用拡充と制度の見直しも必要です。今後、介護をしながら働かなくてはならない社員がどんどん増えていくと思います。介護をしながらの仕事は、育児よりも厳しいものがあり、子どもの誕生の場合は会社を休む期間の目安もつき、保育園も事前に準備できます。しかし、例えば親がいつ倒れるかはわからず、介護は急にやってきます。拡充策はまだ見つかっていませんが、介護中の社員の意見を聞きながら取り組んでいきたいと思っています。

8.女性キャリア形成支援にむけた労働組合の役割

 最後に、女性のキャリア形成支援にむけた労働組合の役割についてお話しします。
 1つは職場のニーズや実態を踏まえた制度づくりです。制度をつくるにあたっては、
 職場のニーズや実態を踏まえなければ意味はないと思っています。もちろん実態だけでつくることにはなりませんが、実態とかけ離れた制度をつくっても使われないことになってしまいます。もう1つは、組合員の意識変革による風土づくりです。人事制度はあくまでもインフラです。そのインフラが有効に使われるかどうかは、それを使う組合員の意識に大きく作用されます。せっかくいい制度をつくっても絵に描いた餅では意味がありません。より良い会社にしていくためには、会社にすべてをやってもらうのではなくて、労働組合が主体的に会社、職場を変革していくことが重要です。
 そして、もう1つ、労働組合の男女平等参画を進めていく必要があります。男性だけが組合の役員をやっていると、女性のニーズや価値観はなかなか理解できません。労働組合自身が変わる必要があります。私たちの取り組みは少しずつ形になりつつあり、その1つは、今私がこうした立場で仕事ができているということだと思います。これが途切れることなく、常に女性が組合役員になって、組合の意思決定にかかわらなければなりません。組合の意思決定に関わるということは、会社の意思決定の場で、女性のキャリア形成について意見が言えるということです。
 労働組合として、女性の組合活動への参画促進に意識的に取り組んでいきたいと考えています。

以 上

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