一橋大学「連合寄付講座」

2011年度“現代労働組合論I”講義録

第4回(5/20)

課題と取り組み(2)雇用と生活を守る取り組み
~日産自動車労働組合の事例を中心に

ゲストスピーカー:斉藤雄治(日産労連 副会長)

はじめに

 皆さんこんにちは、日産労連の斉藤です。
今日は、日産自動車労働組合(以下日産労組と略記)における雇用と生活を守る取り組みについてお話しします。最初に、日産労組を紹介します。次に雇用を守る取り組み、3番目に組合員の生活を守る取り組み、4番目に自動車産業を守り発展させる取り組み、そして最後に皆さんからのご質問をお受けしたいと思います。

1.日産自動車労働組合とは

(1)労働組合の組織概要:連合~自動車総連~日産労連~日産労組
日産労組は、日産自動車に勤める従業員が集まった企業別労働組合です。日産労連(全日産・一般業種労働組合連合会)は、日産グループと一般業種の企業別労働組合が集まった連合会組織で、日産労組はこの日産労連に加盟しています。そして日産労連は、産業別組織である自動車総連(全日本自動車産業労働組合総連合会)に加盟して、自動車総連は、ナショナルセンターである連合(日本労働組合総連合会)に加盟しています。
自動車総連は、日産労連をはじめ全トヨタ労連、全本田労連などが結集した組織で、12労連、1,114組合、77万人の組合員で構成されています。また自動車総連は、金属関係の国際労働組合組織であるIMF-JC(全日本金属産業労働組合協議会)に加盟しています。また、車の販売や流通に関係する企業の組合は、サービス流通産業の国際労働組合組織であるUNI-LCJ(ユニオンネットワークインターナショナル日本加盟協)にも加盟しています。
日産労連は1955年に設立され、現在381の労働組合が加盟、組合員は146,000名です。全国に広がる組合員のサポートのため、本部のほかに九州から北海道まで、9つの地域本部を配置しています。日産労連の特徴の1つは、日産自動車と資本関係や取引がない企業の労働組合も加盟していることにあります。日産労連に加盟する組合員の仕事は様々で、自動車関係以外に印刷業界や食品関係、タクシー運転手、建築関係などもあります。これは、もともと自動車関係だけで活動をスタートしましたが、日産の事業所の近隣で働く仲間も日産労連の考え方に共鳴いただき、一緒に活動してきたという歴史によるものです。そのようなこともあり、日産労連に加盟する約90%の労働組合は、組合員数500名以下の労働組合です。
日産労組は日産労連の中核組合です。日産労組は1953年に結成され今年で58年になり
ます。組合員は25,800名で、7つの支部と1つの地区で構成されています。

(2)運動の基本原則
私たちは組合運動を積極的に進めていくために、運動の基本原則を定めています。7つあるので、私たちは「7本柱」と呼んでいますが、その一部をご紹介すると、1つ目の原則は、「立党の精神を忘れぬこと」で、労働組合の使命は組合員の賃金、労働諸条件を安定向上させ生活改善をしていくことであるとしています。また、7つ目の原則は、「源泉の増大と分配の確保」で、ちょっと難しい言葉になりますが、私たちは、労働組合結成にあたって、経営体制と労使関係の正しい理解から出発して今日の繁栄を築いてきましたが、生産性向上のための経営協議会や職場における日常活動は、我々の生活をより良くするために欠かすことのできないものであり、正当な分配を確保するためには、強固で正しい労働組合活動が必要であるという考え方です。つまり良好な労使関係があれば、企業も繁栄し、そのことが組合員の幸福にもつながるということで、この運動の基本原則は、日産労組だけではなく上部団体である日産労連の考え方でもあります。

(3)組合活動
日産労組には、組合活動の柱が4つあり、1つ目は「魅力ある企業と職場づくり」です。組合員の生活の糧となる賃金の引き上げや、労働条件、労働環境を改善するための活動です。2つ目は、「ライフサポート活動の推進」です。例えば組合員が亡くなった場合や生活上で直面するトラブルに対して、皆で助け合おうという活動です。3つ目は、「政策・制度改善の取り組み」です。私たちは毎年賃金を獲得する交渉をしていますが、賃金を上げても税金や社会保険料がどんどん増えていったのでは、手元に残るお金が増えず生活も安定しません。こうした課題は、企業と労働組合の努力だけではどうにもならず、したがって、政治や行政の場に私たちの意見が反映されるよう活動しています。4つ目は、今まで述べた3つの柱の土台となる「生きいきとした職場・組合づくり」です。どの組織も人間関係や仲間意識がしっかりしていないと活動は進みません。職場単位の仲間意識づくりや若い人の育成などがこれにあたります。

(4)魅力ある企業と職場づくりに向けた労使のコミュニケーションの充実
活動の柱である「魅力ある企業と職場づくり」では、企業が成長し、そこに働く組合員もまた成長していくという好循環が必要です。そのためには、労働組合と会社とのコミュニケーションの充実が大変重要な取り組みとなります。
日産労組は、日産自動車の中期の経営計画や経営諸施策が、組合員に及ぼす影響や問題点を確認し、経営に対してフィードバックをしています。これらを通じて組合員の雇用と生活の安定を守り高めていくことを目指しています。この活動は、各職場単位でも職場労使意見交換会として行われています。 

(5)日産労組と日産自動車の関係
1986年、日産労組と日産自動車は、「日産自動車と日産労組とは労使が対等な立場に立ち、お互いの責任を全うすることにより健全な労使関係を確立し、生産性向上に協力して取り組み、会社の永続的な発展、従業員の雇用の安定および生活の維持向上を図る」ことを目的に労働協約を締結しました。
日産の労使には、労使が激しく対立し、企業の存続すら危うくなった不毛な時代がありました。こうした時代があり、現在の労使関係があることもご紹介しておきたいと思います。皆さんは、「生産性向上運動」をご存知でしょうか。労働協約にも「生産性向上に協力して取り組み」とあります。日本では1955年に生産性本部が設立されましたが、当時この生産性向上運動について、労働組合側には労使協力の美名のもと経営者による搾取を増長するものだという意見もありました。一方、経営側からも生産性向上運動は経営者の専権事項であり、労働組合は介入すべきではないといった意見があったと聞いています。そうしたハードルを乗り越えて、生産性向上運動に対する労使の合意と協力関係が実現し、その後の日本の経済発展に大きく寄与しました。この場で確認された生産性三原則は、「雇用の維持拡大」、「労使の協議・協力」、「成果の公正配分」です。生産性向上運動を進めるにあたって、労使で生産性三原則が合意されたことは、日本的労使関係に大変重要な影響を与えており、日産の労使も、こうした考え方に基づいて労働協約を締結しています。

(6)組合活動はみんなの声が出発点
私たちは、組合活動の原点は組合員一人ひとりの自由な意見や要望をしっかりと組合活動や会社との協議・交渉に反映させていくことにあると考えています。組合員の声を活動に反映していくため、組合員の意見、要望は執行機関と議決機関に伝えられ、議論を経て労働組合の活動方針や具体的な活動へと繋がっていきます。組合活動の報告や会社との協議・交渉の結果は、それぞれの職場委員会や職場大会で組合員に報告されます。
また、組合員意識調査も実施しています。組合員が25,8 00人もいると、いろいろな声が出ます。そうした声を活動にいかすため、日産労組では2年に一度全組合員を対象に、組合活動あるいは会社に対する意識調査を実施し、組合活動で力を入れて欲しい項目などについても調査をしています。なお、こうした意識調査だけでなく、団体交渉や協議などの報告の場でも、その都度職場の意見を集約しており、この取り組みは、協議・交渉の大きなバックボーンとなっていると同時に、組合活動の基本サイクルとなっています。
組合活動に対する組合員の総合満足度を調査した結果では、組合員の約7割が満足と答えています。組合員の意識調査は、組合員の要望をしっかり把握するという目的に加え、執行部に対する組合員の評価という側面もあり、大変重要な調査となっています。

2.組合員の雇用を守る取り組み

(1)雇用問題につながる事由
ここからいよいよ、組合員の雇用を守る取り組みをお話しします。
組合員の雇用問題につながる事由にはどんなものがあるのか、例えば、企業の倒産です。また、事業所の移転・閉鎖の場合、新たに働く場が用意されるかもしれませんが、自分の健康、家族の健康、子どものことなど、様々な理由で転勤できない人も出てくる可能性があります。事業の縮小も雇用問題につながります。景気が悪くなると事業を縮小する企業が増えます。分社化や事業譲渡では、働く場所は確保されても今までの会社とは違う会社で働くことになるかもしれません。労働条件が変わる場合や厳しいときには希望退職も行われます。働く場所が同じでも、他社への出向や転籍を求められる場合もあります。

(2)ユニオンショップ協定と雇用確保の三原則
日産労組と日産自動車との労働協約によって、会社従業員は原則組合員でなければならにことが明確に謳われています。このユニオンシップ協定の解釈・効力については様々な意見や労働判例がありますが、労働組合にとっては、組合員の雇用を守っていく取り組みの1つとなっています。
また、日産労組は「雇用確保の三原則」を確認しています。それは、「雇用調整を採用抑制と自然退職との差で行うことは容認する」、「社内外への応援・出向については職場の理解と納得を前提に対応することとし、転籍についてはこれに加えて本人同意を前提とする」、「ただし、いかなる施策であっても、本人の意思に反して結果として退職に追い込まれるような施策についてはこれを認めない」というものです。

(3)事業構造改革(リストラクチャリング)に対する日産労組の基本態度
企業の事業構造改革に対する日産労組の基本態度は、組合員の雇用を守るという大原則を前提に、「日本事業の体質強化における課題が短期的な収益確保策にとどまることなく、日産グループ全体としての真の企業体質強化、ならびに自動車事業全体の健全な発展につながるものであること」、「『人を大切にする』という労使の基本理念を堅持するとともに、粘り強い取り組みが継続できる職場体制を築き上げること」、「労使協議会や職場労使意見交換会を更に充実させ、社内の合意と協力体制の確立に努めること」の3点です。
この3点には、日本的経営の特徴がよく表れています。1点目は、長期的視点に立った企業経営の必要性を訴えています。2点目は、従業員、組合員が最も価値のある経営資源であるということを訴えています。3点目は、従業員参加による労働意欲とチームワークの重視です。私は、こうした考え方を基本に企業は働く人とともに様々な困難を乗り越えていくということが、今後の日本にとって大変大事ではないかと思っています。

(4)会社再生に向けた「日産リバイバルプラン」の策定
日産自動車は、1990年代後半に大変重大な経営危機を経験しました。当時の日産自動車は、グローバル競争が激化する中、市場でのシェアが低下し続けていました。しかも1991年からの8年間で7回も赤字を計上していました。当時の売上高は約2兆円でしたが、2兆1千億円という有利子負債を抱え、格付け会社からは投資不適格というランクをつけられました。そうなると、日産は危ないということで、市場から資金の調達ができなくなり、銀行もお金を貸してくれません。日産は正に瀕死の重傷に陥ってしまいました。
そこで、資金提供先を探していたところ、提携条件に合致したのがフランスのルノー社でした。当時、ルノー以外にも複数の自動車メーカーとの提携を検討していましたが、ルノーをパートナーとして選んだ理由のひとつは、販売する地域が世界で競合しない、つまり日産が強い所はルノーが強くなかった、逆にルノーの強い所が日産は強くなかったという状況にあり、両者の弱点を相互補完できることでした。また、部品の共同購買によるコスト低減も提携先にルノーを選んだ理由です。そして1999年10月にカルロス・ゴーン新社長が就任し、まさに日産の再生を賭けた「日産リバイバルプラン」がスタートしたわけです。
当時ゴーン社長は、約半年をかけて日産の全事業所を回り、従業員から話を聞きました。ゴーン社長は日産自動車がこの様な経営危機に至った原因を1つ目には、企業としての明確な収益志向の不足、2つ目には、顧客志向の不足と過度に同業他社の活動に捉われていたこと、3つ目には、部門横断的課題と組織の壁を乗り越える業務が不足していたこと、4つ目には、危機感の欠如、5つ目に、ビジョンや共通の長期戦略が共有されていなかったこと、と指摘しました。そして若手中堅の幹部を中心とした組織「クロス・ファンクショナル・チーム」を発足させて、再建計画を取りまとめました。当時、私は日産労組の書記長という立場でしたので、ゴーン社長と何度も直接顔を合わせて協議を行いました。
日産リバイバルプランは、私たちにとって大変衝撃的な内容でした。発表された施策は、1つは、車両組立3工場の集約とパワートレイン(エンジン工場)2工場の集約(これは工場閉鎖ということです)、2つ目は、それまで多角的経営で様々なことをやっていましたが、事業の「選択と集中」により自動車部門に特化する、例えば宇宙航空事業や繊維機械事業は売却の対象となりました。また、銀座にある本社ビルをはじめとした資産の売却も行われました。3つ目は、人員規模の適正化です。これは、日本国内だけでなく世界全体で、148,000名から125,000名に人員規模を削減するというものでした。

(5)日産労組の対応
私たち日産労組は、組合員の雇用と生活を守るためには、会社との日産リバイバルプランに関する徹底協議によって、何としてもこの再建計画を全員の力で達成をしなければいけないと覚悟を決めていました。そして、日産労組として3つの要請事項を会社に提出しました。1つは、工場閉鎖を含めた事業構造改革についての明確な目標設定と、すべての組合員、従業員がその目標を共有化すること、2つ目には、その目標の達成に関する責任の所在を明確にすること、3つ目には、雇用や労働条件に関するあらゆる意思決定について、労働組合との事前協議に基づいて行うこと、という要請内容で、ゴーン社長はそれを受け入れました。
その後の労使協議は、主に日産労組の組合員に関しては、日産労組と日産自動車との間で行われました。また、この施策には、日産の労使間だけの問題ではなく、日産グループ全体に関わるものもあり、そうした内容については、日産労連と日産自動車との間で協議を行いました。当時、新聞各紙の見出しには「日産、フランスのルノーと提携して、23,000人の首切り」と大きく書かれました。世界全体で23,000人の人員削減をしたのは事実です。しかし、日本では、この再建計画で1人の解雇者も出していないというのが事実です。他工場への異動や異動困難者への対応などで、すべての組合員の雇用を確保しました。ただ、会社の危機ということで、この機会に会社を辞めて新たな仕事に就こうという人はいましたが、辞めさせられた人は1人もいません。

(6)村山工場の閉鎖に対する取り組み
具体的な取り組みとして、村山工場の例についてお話しします。日産リバイバルプランにより工場が閉鎖されることになり、そのとき約2,500名いた組合員は、仕事とともに神奈川県の追浜工場や、栃木県の栃木工場などに異動することになりました。
日産労組は、異動対象となるすべての組合員と個人面談を実施し、異動の可否や異動する場合の問題点、異動できない理由などの把握に努めました。もちろん本人の事情だけでなく、お子さんの学校の問題や同居の家族のこと、現在住んでいる自宅の住宅ローンのことなどもあるわけです。こうした組合員一人ひとりのあらゆる要望を把握しながら、会社との協議・交渉に臨みました。日産労組が、組合員に個人面談をしたところ、最初の結果では約6割の方が異動可能ということでした。約3割が検討中、1割は様々な理由で異動できない、という結果でした。そこで、異動できない人のために、村山工場の一部の工程を残し、200名程度は村山工場で働き続けることができるよう、交渉を行いました。さきほどお話したように、これを機に辞めようという人には、新たな仕事を見つけていただくお手伝いもしました。結果として、すべての組合員の雇用と生活が確保された上で、この計画は完遂されました。
組合員も職場も私たち執行部も、もちろん会社も大変苦しい思いをしましたが、日産リバイバルプランの実行により、日産はV字回復を果たしました。その後も健全な労使関係をベースに、労使が真剣に日産の経営改革を進め、新たな成長の過程をたどって現在に至っています。
雇用を守る取り組みは、大変厳しい取り組みになりました。なかなか一口で言えない様なことも沢山あったわけですが、組合員の生活の基盤である雇用を守るということは、並大抵のことではないということを、正直に申し上げておきたいと思います。

3.組合員の生活を守る取り組み

(1)賃金・年間一時金への取り組みと賃金決定のプロセス
賃金・一時金の安定的な向上に対する組合員の期待には、大変大きなものがあります。皆さんも就職するとしたら、給料やボーナスはどうなっているかが気になると思いますが、会社から支払われる賃金や一時金は日産の場合、労働組合と会社との交渉によって決定されます。日産労組では賃金・一時金以外の労働条件は通年で協議・交渉を行い、賃金・一時金については、春の取り組みとして毎年2月から3月にかけて会社と交渉をして決定します。
労働組合が賃金・一時金の要求内容を決定する判断要素には、組合員の生活の安定が大事な要素としてあります。そして社会情勢、連合などの上部団体の方針や、企業業績など数多くの要素を検討し、執行部案を決定します。その執行部案を組合員に提案し、職場討議、代議員会などの採決を経て要求内容を確認します。労働組合は、要求が決定すると会社に団体交渉を申し入れ、団体交渉では組合員の努力に対して正当に報いるべきとして、要求の妥当性を訴えます。団体交渉の結果は組合員に報告され、組合員は会社に対する意見や要望、執行部に対する意見などを出し、労働組合はそれを集約します。団体交渉は数回行われますが、組合員の声が団体交渉の状況を大きく動かしていくのが日産労組の現状です。

(2)賃金・一時金以外の労働諸条件の取り組み
労働諸条件の改善では、時間外労働(残業・休日出勤)に対する割増率や、家族手当・通勤手当なども交渉の対象となります。労働時間短縮も重要な取り組みです。日産は現在所定労働時間が1952時間となっていて、年間総労働時間1800時間台の実現に向け取り組んでいます。自動車産業の場合、生産体制との関係から、祝祭日を全部休みにすることができず、労使交渉で年間の就業日を定めた年間カレンダーを決めています。
今朝(2011年5月11日)、この年間カレンダーを自動車産業全体で変えようという動きが報道されました。原発事故に伴う電力対応として、7月から9月の土曜日、日曜日の休日を木曜日と金曜日に変更することを自動車工業会が決めました。自動車業界は非常に大きな裾野を持っていて、休日がメーカー毎にバラバラであると、そこに部品を納める企業に働く人たちは休めなくなってしまうため、自動車業界として年間のカレンダーを決めてきました。この夏の電力対応についても、そうした背景から自動車産業全体として決定しましたが、今回の休日変更では、共働き家庭のお子さんの保育園の問題などもあり、今後、労使協議や交渉でその環境づくりをしていくことになると思います。

(3)日産労連の取り組み
次に、上部団体である日産労連の取り組みをご紹介します。組合員の生活を守っていく上では、可能な限りスケールメリットを生かした活動が重要であると考えています。日産労組独自でも様々な制度をもっていますが、多くは日産労連の制度の中で運用されていて、私たちは、この活動を「リック(Lic=Live Coordinatorの略)」と呼んでいます。日産労連の組合員は、リックカードを持っていて様々な会員サービスを受けることができます。
特徴的な活動に共済活動や福祉活動があります。日産労連の共済制度は、組合員から組合費とは別に、月170円の掛け金を頂いて運用しています。組合員の死亡、傷病や障害などに対し共済金が支給される制度になっています。また火災共済、生命共済は任意加入の共済です。今回の東日本大震災に被災された組合員に対する緊急給付では、日産労連全体で28億円程度の支出になると予測されています。
また、日産労連は広く社会に目を向けた福祉活動も積極的に行っています。NPO法人「ゆうらいふ21」を設立して、社会貢献活動に取り組んでおり、福祉施設への車輌寄贈や設備機材の援助、国際福祉活動として発展途上国への援助なども行っています。また、心身にハンディキャップを持っているお子さんを招待して、クリスマスチャリティー公演として、ミュージカルを楽しんでいただく活動を行っています。この公演は、1976年から始まり劇団四季による本格的なミュージカルを、これまでに114万人の方々にご覧いただきました。

4. 自動車産業を守り、発展させる取り組み

(1)政策・制度の取り組み
私たちは、自動車産業に働く組合員の安心、そして確かな暮らしの実現には、自動車産業の将来にわたる発展が重要と考えており、この分野の取り組みは、主に自動車総連の役割となっています。具体例として、現在、日本では自動車を持つことによって9種類もの税金がかかることになっており、自動車ユーザーは大変高く、しかも複雑な税負担を強いられています。自動車を購入すると、消費税と自動車取得税がかかります。また、ガソリンには揮発油税がかかり、ガソリンスタンドでは、ガソリン価格に消費税がかかっています。日本の自動車ユーザーは、イギリスの3倍、アメリカの45倍もの過重な税負担を強いられております。このような現状に対し、自動車総連としての解決案を示し、国や行政に改善を求めています。私たちは自動車が国民生活を支える大変有益な交通手段であり、適正な税負担の上で、その利便性や有益性が発揮されるべきと考えています。

(2)車の未来に向けて
将来にわたる自動車産業の発展を考えるとき、労働組合の役割は大きいものと考えています。また現在、自動車産業は大きな変革期を迎え、世界で販売される自動車のほぼ3台に1台は日本車という、グローバル産業になっています。地球温暖化や環境問題とも関連して、クリーンエネルギーの次世代自動車の技術開発が行われ、ハイブリッド車や電気自動車が実際に街を走っています。もっと多くの人に車に興味を持っていただきたいというのも、私たちの偽らざる気持ちです。
本日は、雇用と生活を守る取り組みについて、日産労組の事例を中心にご紹介しました。ここでお話ししたこと以外にも、非正規雇用労働者に対する取り組みや、年金支給開始年齢の引き上げに伴う60歳以降の就労確保の問題、ワーク・ライフ・バランスなど、雇用と生活に関わる課題は多岐にわたっています。
私たちは、今後も様々な課題に積極的に取り組み、労働組合の役割と責任を果たしていきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。

以 上

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