一橋大学「連合寄付講座」

2009年度“現代労働組合論II”講義録
労働組合の課題と取り組み

第9回(12/4)

労働組合(連合)はジェンダーにどう取り組んでいるか

山口洋子(連合副事務局長)

 みなさんこんにちは。今日は連合を中心に、労働組合がジェンダーにどう取り組んでいるかについてお話します。ジェンダー問題は非常にグローバルな共通課題になっていますので、国際的にどのような取り組みがなされているのか、ということも話したいと思います。

 1.男女平等政策

  連合の政策はあらゆる分野に及んでいます。連合の政策・制度は、雇用・労働は当たり前、経済や税制も生活に関わっています。産業・資源エネルギーや、食料・農林などもあります。これらについて連合は2年に1度、働くものの立場から実現すべき政策について冊子にアップデートしてまとめます。その中には男女平等政策も入っています。とりわけ男女平等、中小企業、非正規雇用は、政策のすべての分野に関わってきます。たとえば、男女平等でいえば雇用・労働、経済・税制改革、福祉・社会保障などのさまざまなところに関わっています。「雇用・労働政策」中に、男女平等に関わる政策として、改正男女雇用機会均等法の実効性の確保や、そこにかかわる同一価値労働・同一賃金の課題があります。労働時間や、賃金など労働条件に対する均等待遇も具体的な男女平等課題としてあります。さらに、子育て支援政策、あるいは女性の就業継続を可能とする政策など、「福祉・社会保障政策」が中心的になりますが課題としてあります。
 日本の労働組合の特徴である企業別労働組合は、1つの会社の中の労使関係によって、身近な賃金や労働時間、そのほかの様々な福利厚生に関わる制度について決定するという役割をもっています。その次に、企業別労働組合が加盟している産業別労働組合(産別)では、産業分野全体に関わる産業政策について議論します。そしてナショナルセンターである連合は国に対して、様々な政策や制度に関する要請をします。実現に向けて要請をし、その結果実現させることが、ナショナルセンター連合の最大の役割と機能です。なお、連合の中にも47都道府県に地方連合会という地方組織があります。そこでは、県または市町村を相手に政策や制度に関する要請をします。

 2.男女平等推進の取り組み

 (1)各組織における取り組み
 さらに連合は政策・制度を国に対して要請をするだけではなく、労働組合の運動を通して実現をするという取り組みをしています。
 ヘッドクウォーターとしての連合本部と、構成組織としての産業別労働組合があります。そして47都道府県の地方連合会、さらに、地域に近いところに300か所の地域協議会を作ろうとしています。地方連合会は県に1つですので、たとえば福井県では、福井県の中を3分割したところに3つの地域協議会を作ることによって、より組合員や労働者に近い場所を作ろうとしています。政策・制度は2年間にわたって私たちが実現、達成したいものを掲げています。
 どのタイミングでだれに要請をするのか、あるいは集会などで機運を盛り上げるのかなど、様々なタイムスケジュールや段取りが求められます。1年間にどれを優先的に行うのかを明確にしたのが取り組み方針で、これを毎年策定します。連合本部は、政策・制度づくりを総がかりでやっています。連合本部が政策を提案しますが、産業別労働組合や地方連合会の参加によって議論をし、何回も調整して全員参加で出来上がります。それをもとに連合本部は具体的な方針の明確化や、掲げた政策に関するデータや情報の共有化をします。そして、産業別労働組合に産業レベルにおいて、あるいは産業別労働組合の単位組合である企業別労働組合に、政策についてわかりやすく、どうしてその政策が必要なのかを説明をします。
 政策・制度要求の多くは法律や制度にしたいということで国に対して掲げます。もう一方、企業別労働組合の労使協議の中での政策・制度というものがあります。たとえば、私の出身企業の育児休業に対する政策・制度を例にとると、「育児休業期間は法律で最低限の水準として1年間と決めているが、わが社ではこれを3年間としたい」ということを労働組合で申し入れます。これが、企業との間で「3年間も休まれると大変だけれど、やはり男女ともに働き続ける優秀な人材を確保するために、わが社では育児休業は3年間必要」と労使合意できれば、労働協約という労使の中でのいわば法律に落とし込んで、国の法律を上回ったルールができます。さまざまなことが企業別労働組合では可能ですので、そういった取り組みに対する指導を産業別労働組合の中で行っています。
 一方、連合本部の取り組みの1つとして、法律を作るところに大きくかかわっています。労働関係法令というのは、多くはILOの基準に則って、三者構成で審議しなくてはいけません。使用者代表と、労働者代表である連合と、中立な立場から意見を言う公益の三者によって審議会が設置されます。その審議会の中で労働法関連の法律について議論をするわけです。その審議会に出席をして、「やっぱりその法律はぜひとも必要だ」とか、「今あるこの法律をやはりこういう方向で変えるべきだ」というような主張をするのも連合の仕事です。
 3割ぐらいの企業別労働組合において労働協約化された制度は法制化できるという、不文律的なものがあります。法律を作るためには審議会での取り組みも強化しますが、企業別労働組合の労使協議において協約化するという運動も併せて取り組んでいます。

(2)人材育成
 さらに、政策を推進する立場の人たちを育成するために、人材育成は男女平等推進の重要な取り組みと考えています。各都道府県においても審議会のような取り組みは行われていますが、そこに参画をして、その政策・制度の実現を高めるためには、自らが重要性を訴えてこそ効果が上がります。その意味でも、地方連合会あるいは産業別労働組合では女性のリーダーを増やすことが大切です。
 連合では、女性リーダー養成講座を毎年開催しています。現在行っているのはアサーティブトレーニングです。対象は女性の組合役員、担当者で、他者に自分が思っていることを共感してもらうためにはどのようなアプローチやどのような発言の仕方がいいのかという極めてテクニカルな部分をトレーニングするものとして実施しています。このほかに男女平等講座もあります。子育て期にあたる30~40代前半ぐらいの男性を対象とした講座です。男性同士で男女平等やジェンダー平等が日本においていかに重要であるかについて、講演を聞いたり、ワークショップで議論をすることによって気づいてもらうという、大変に効果のある講座になっています。
 経験交流という視点からは、毎年10月に1000人規模の集会となる中央女性集会も開催しています。女性集会というネーミングですが、男性も参加します。そこで女性政策や男女平等、ジェンダー平等政策をいかに進めるべきか、ということについて議論をしています。地方ブロック別の女性会議は、毎年12月ぐらいから同様に議論します。

 (3)連合内外のネットワークと広報
 また、連合内外とのネットワークや広報についても、情報提供やPR、周知徹底という点から非常に重要です。最近、連合のホームページの中に「働く女性」というタブを作りました。そこに入っていくと様々な情報がとれます。その中で一番大きいのが「男女平等参画ニュース」です。地方や構成組織において何らかの男女平等推進についての取り組みがあると、すぐにニュースにしてホームページにアップしています。
 最近で読者が多かったのが、アメリカのオバマ大統領が就任して最初に大統領として署名した男女平等賃金を明確にした法律についてです。レイバーアタッシェという外交官を連合から今10か国ぐらいに派遣していますが、ワシントンに派遣しているアタッシェから即情報が入って、それをニュースにしましたところ、非常にヒットしました。政策担当者はヒットするとやる気が出てきて、わが県あるいはわが労働組合も、ということで投稿がどんどん増えています。
 ほかにも男女平等推進のためのパンフレットや、女性を労働組合の活動により多く参画させるためのもの、様々な仕組みを理解してもらうような器材を作っています。これら器材は、政策・制度を進めるにあたって様々なところに持っていきます。
 麻生政権時の小渕消費者担当大臣のところに出かけ、特に少子化対策、小渕さんは男女共同参画推進を担当していたので、そこに関わる連合の政策を持って行き、その場で説明をしました。それぞれ政策に関係する大臣のところに要請に行きます。ただ、このときは自民党政権でしたので、要請に行ってもなかなか私たちの政策を理解してくれず、実現の度合いが低いということもありました。民主党に政権が変わったので、もう少し私たちの政策の実現の度合いが高くなるのではないかと思います。
 多くのあまり政治に興味のない女性の組合員たちに、私たち(女性)と政治の関係から考えると、政治の窓口である選挙は非常に重要であると伝えています。たとえば私たちの生活を守るとか、仕事の場での労働環境を守るなど、企業の手厚い福利厚生が減少している今日、法律や制度は私たちを守る重要なものであるという視点です。
 そのようなことを実現する法律は国会議員に課せられた重要な役割です。国会議員はそのような視点で選ばなければいけません。興味がないから投票にも行かない、ということでは結果的に私たちのための法律がどんどん遠のいていくということをわかってもらうために、パンフレットを作り、理解を深めてもらうため、全国の女性組合員の方たちに配布しました。
 私たちは職場において日常的に様々な不満を感じています。「男性と一緒に仕事しているのに、結婚して妊娠、出産になると、なぜ私たちがやめなくてはいけないのか」、「同期で、学生時代は私のほうが成績が良かったはずなのに、会社に入ったとたんに急に昇進昇格で女性よりも男性がどんどん上がっていくのはおかしい」と、様々な不満が出ます。それをロッカールームで愚痴を言って終わってしまって本当にいいのかということです。それを労働組合にもっていき、多くの人たちが同じことを不満だと思っているのであれば、どうしたらそれを解決できるのか、同時にみんなで話し合うことが前進につながります。
 雇用機会均等法改正のときに、仕事の与え方が違うという不満が労働組合の集会や女性たちの会議のなかでたくさん出されました。たとえば、女性がせっかく営業という職務に就いても、「男性は目標100万円だけれど、あなたの場合は50万円ね」ということで、一生懸命にやって男女ともに100%クリアしても、「そりゃ100万円のビジネスを成功させたのだから男性の評価が高い」ということになってしまう。そこで、均等法改正の審議会に出たとき、「ぜひ今回の均等法の改正の中にこの部分の解消を入れられないか」と連合の立場で主張しました。
 私たちが審議会で議論するとき、「なぜ私たちはこの法律を改正したいか。現場でこんなことが起きています」と具体例でアピールします。具体的に言うと、審議会でのコンセンサスが得やすいのです。たとえ使用者側が反対しても、「それによって働く女性たちのやる気を削いだら、企業としてもマイナスじゃないですか」ということで、「仕事の与え方について差別をしてはいけない」ということが具体的に審議会のまとめの中に入りました。法律改正は国会となりますから、国会の場では民主党の女性議員と連携して取り組んだ結果、最終的に私たちの思いが改正雇用機会均等法の中に盛り込まれました。
 職場の中であきらめないで言ったことが、法律を通して私たちのまわりの環境の改善になることを具体的に示したわけです。1+1は女性の力です。女性は1人ではなかなか力を発揮できませんが、もう1人仲間を呼べば、もっとパワフルになる、というキャンペーンのテーマをつくりました。このようなことの積み重ねから、民主党政権になって今までよりも私たちの政策実現が近い状況に変わってきています。
 私たちは、大臣だけでなく、必ず各党にも行きます。自民党や公明党にも私たちの思いをすべてお話しましたが、なかなか実現できませんでした。では、民主党に政権が交代をして、今はどうかといいますと、まだ政権を担当して2か月ちょっとですが、以前とは違います。私たちの政策・制度の実現までの距離が短くなりました。以前のように「これつくってください、お願いします」という要請や要求をすることはなくなりました。これは鳩山総理から言われていることです。「現政権の最大の支援団体である連合は、もう対等の立場なのだから、要求するとか、要請するではなく、一緒にどうやったらつくれるか、ということについて議論する」という1つのスキームができあがりました。
 トップ会談として鳩山総理や平野官房長官、連合のトップがこれからどのように法律を作るのかを決める大きな枠組みについて議論をしました。それを受けて、毎月の定期協議会で、官房長官や副大臣レベルと連合の事務局長や副事務局長とで、政策についての議論をするようになりました。

 3.男女平等のための課題

 (1)労働組合への女性参画推進
 現在の男女平等の課題として、労働組合への女性の関わる比率が大変に低いという実態があります。連合には5人の副事務局長がいます。そのうちの1人は女性です。これは20パーセントですが、連合全体の675万人のなかの女性の組合員の割合は30パーセントです。労働組合の役員や様々な意思決定機関にもその比率に応じた女性の参画を促すことが方針としてありますが、これがなかなか実現していません。1割前後です。政策・制度の実現や推進と併せて、進めていかなくてはいけない課題です。

 (2)男女間の賃金格差
 連合は、雇用・労働政策の中で男女間の賃金格差の是正を大きく掲げています。平均的に30パーセントを超える賃金格差があります。様々な研究者が、男性と女性の年齢を一緒にしたり、学歴・学部が同じ場合を比較したりしても、最終的に意味不明な20パーセントの格差は残ります。その中で、最も男女間の賃金格差に大きく影響しているであろう問題は管理職への登用の差です。
 管理職の賃金水準は高く、さらに手当が付いて差がでてきます。管理職の登用率は先進国のなかでフランスと日本が低いです。なぜ、女性の管理職への登用が遅れているのか。今の段階で、その理由は短い勤続年数です。女性の場合、妊娠や出産というライフ・イベントがあります。北欧ではライフ・イベントに関係なく就労が継続できます。日本では就業継続を可能とする環境整備ができていないために、勤続年数が短いのです。そうすると管理職への登用の対象にもなりません。それから貢献度合いです。働き続けても、家族的責任という家事や育児に対しては、今は女性が中心です。企業に対して、不意な残業や時間外労働、出張、休日出勤ができるのは、女性よりも男性です。企業に対する貢献度合いが高いとされます。そういう人たちが責任ある立場になるべきだ、ということです。
 生活関連手当は、世帯主要件に基づいて支給します。戸籍上、住民票上の世帯主の多くは男性で、その男性に生活関連手当が支給されます。また、職務上の男性と女性の仕事区分を見るとは、営業職は男性が多く、事務職は女性が多い、という実態が見えています。
 人事賃金システムについては、昇進・昇格のシステムが不明確な企業が多く、賃金も具体的にどのように上がっていくのかを承知していない労働者が多くいます。様々な理由から、結果として男女間に30%を超える賃金格差が生じ、雇用・労働の分野において非常に大きな課題となっています。

 (3)ワーク・ライフ・バランス施策の実施
 育児・介護休業法の改正が11月20日、最終的な省令指針までクリアしました。2010年6月30日には改正育児・介護休業法が施行されます。子供が生まれても中断せずに働き続けたい、という女性たちの思いに対して、それを可能とするような要件が入りました。今は共働きの世帯のほうが片働き世帯よりも多いわけです。しかし、相変わらず様々なシステムのベースは片働き世帯を中心にしています。共に働きながら、育児や家事は女性である妻・母親にかかっています。父親・夫も決してそれを是としているのではなく、もう少し関わりたいと思っていますが、長時間労働であることなどから実現できません。解決するための1つのきっかけになればと、改正法では父親の育児休業の取得促進策が掲げられています。

 5.国際機関におけるジェンダー平等への取り組み

  ジェンダー平等は、国際的にほとんど地域差のない課題です。いくつかの国際機関の紹介と、その中での議論について報告したいと思います。

 (1)ILO(国際労働機関)
 ILO(国際労働機関)の創設は1919年です。現在、加盟国は183、条約は188、勧告は199です。ILOはILO条約やILO勧告を策定して、それに加盟国が批准をするという、1つの法的な手続きがあります。その条約や勧告を広く加盟国の中に広めていきます。政府や使用者、労働者の三者の代表が参加することが原則になっています。ILOの会議場の真ん中に政府代表が陣取り、その左側に労働代表、右側に使用者代表というパターンができています。様々な会議において、その三者が意見を交換して、一致したものについて条約を策定して採択します。
 具体的な会議に理事会があります。地域ごとに地域を代表する理事がいて、その方たちが年に数回理事会を開催して、加盟国の中で何か問題が起きているかどうか、さまざまな情報を集めます。その理事会から年に1回報告を受けるのが、毎年6月に開催されるILOの年次総会です。5月末から6月中旬ぐらいまで2週間開催され、その中でいろいろな会議が行われます。
 ILO条約第1号は労働時間についての条約です。この条約に、人は8時間働き8時間休み、8時間は自分のために使うと規定されています。ジェンダー平等の関連でいえば、100号条約は男女の賃金格差に大きく関連します。同一価値の労働について、同一の報酬を支払わなければならないという同一価値労働同一賃金原則をうたっている大変に有名な条約です。日本はこれを批准しています。
 111号条約は、雇用および職業についての差別待遇に関連して、パートタイマーや派遣労働、契約労働などの雇用形態の差で差別してはいけない、というものです。日本はこの批准をしていませんし、批准できません。156号条約は、家族的責任を有する男女労働者の機会および待遇の均等で、これは批准しています。183号条約は、1952年の母性保護条約を改正したものです。これも批准をしていませんし、批准できません。
 「批准できません」という表現をしたのは、ただ手を挙げればILO条約を批准できるわけではなくて、きちんとそれに見合った国内法の整備が必要で、そのような環境整備ができていないと批准できないということです。111号条約は雇用形態別の差別が非常に大きいために批准できません。183号条約は、育児休業や出産休暇など、さまざまな母性保護の視点に立ったときに、生活できる所得保障の環境整備ができていないために、日本は批准していません。
 このような188の条約と199の勧告について、加盟国はできるだけすべての条約を批准する努力をすることとなっています。
 条約に批准をしたのに守られない場合は、ILOから厳しい勧告を受けます。例えば日本は、100号条約に批准していながら男女間の賃金格差が30パーセント以上もあります。これについては、批准をしたのに、なぜ条約を守れないのか、日本はILOから折につけて厳しい勧告を受けています。厳しい勧告を受けるだけではありません。2007年のILO総会の1つの委員会である条約勧告適用委員会において、日本政府は槍玉にあげられました。100号条約を批准しておきながら、男女賃金格差が大きいためです。このとき、政労使のうち労働側は、いかに政府が条約履行のための努力をしていないか、という事例を示しましたが、使用者側はあまり発言しませんでした。そのときの議論の結果、日本政府はさらに努力しなさい、という勧告が条約勧告適用委員会から出されました。
 2009年には、ILOが「ディーセントワーク―人間らしい当たり前の働き方―の中心にあるジェンダー平等」を大きく掲げ、これについて、1週間議論をして決議が採択されました。

 (2)ITUC(国際労働組合総連合)
 次はITUCとITUC-APです。これは、企業別労働組合や産業別労働組合、ナショナルセンターの連合のさらに上にある国際組織です。1億7571万人の組合員が集っています。ITUC(国際労働組合総連合会)が全世界の労働組合の集まりで、ITUC-AP、(ITUC-アジアンパシフィック)はアジア太平洋の地域組織です。それぞれの地域にITUCの組織があり、その両方の活動をしています。
 ここでもジェンダー平等は非常に重要なテーマです。いかに労働組合の中に女性参画を進めるか、それから賃金格差の問題は、日本ほど大きくはなくても各国における大きなテーマです。アフリカや中南米、中東、南アジアなどにおいては、女性の労働条件が劣悪であること、人間以下の扱いを受けている、という問題があります。女性たちのエンパワーメントに何が必要なのか、ということも議論になっています。
 ITUCが結成されたのは2006年です。第1回世界女性大会や女性会議がジュネーブやブリュッセルで開催されました。そのとき、ジェンダー平等に関する労働組合の課題に地域差はないことを実感しました。ここでジェンダー平等の推進決議がなされました。そのほかに、ITUCを中心にジェンダー平等推進決議やジェンダー監査が実施されています。

 (3)CEDAW(女性差別撤廃委員会)
 女性差別撤廃条約が国際人権規約の1つとして1979年に採択されました。女性差別撤廃条約を批准するために国内法を整備する必要がありました。当時の日本に批准する資格はありませんでした。さまざまな法律に問題があり、男女平等を具体的に明確にした法律がありませんでした。そこで当時の日本政府は慌てて国籍法を改正しました。家庭科の履修の問題など、さまざまな法律を改定しました。1985年に男女雇用機会均等法を成立させたことで女性差別撤廃条約を批准することができました。
 女性差別撤廃条約は批准するだけでなく、ILOと同じように批准に見合った行動を日本政府がとっているかどうか、その成果が厳しく問われます。今年7月の撤廃委員会の審査会で、日本はまた大変な槍玉にあげられ、厳しい勧告を受けました。前回2003年にも審査を受けたときに、改正するよう指摘されたことがほとんどできていなかったのです。これは差別撤廃委員会の怒りをかいました。そして2年後まで、と勧告されました。ジェンダー平等に問題のある民法を改正して、さまざまな分野に女性が参画できるような取り組みを推進し、2年間に暫定的な推進措置、いわゆるポジティブアクションを明確にしなさい、ということが勧告の内容です。

 (4)CSW(国連女性の地位委員会)
 さらに、CSW(国連女性の地位委員会)でもさまざまな審査をしています。CSWは1946年に国連の誕生とともに、経済社会理事会の下に設立され、CEDAWとの役割分担をしています。「女性の参政権に関する条約」「既婚女性の国籍に関する条約」「女性差別撤廃条約」などの原案を審議し、毎年3月各国の女性差別の現状把握等を目的とした会議を開催します。
 CSW委員会は国連の内部に対して働きかけます。具体的な男女平等を進めるための実態を把握して、国連内部につなげる役割をはたしています。
 特に2010年3月には、北京+15をテーマに掲げています。15年前の1995年に第4回世界女性会議(北京会議)が開催され、男女平等推進に向けての行動綱領である北京行動綱領がつくられました。これを5年ごとに審査する会議が行われています。2010年はちょうど北京行動綱領が明確にされてから15年ということで、例年の地位委員会の議題にプラスして新たな北京行動綱領をいかに進めるか、という議論がなされます。

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