一橋大学「連合寄付講座」

2009年度“現代労働組合論I”講義録
Ⅰ労働組合とは何か

第10回(6/12)

地域組織の活動と役割-職場と生活をつなぐ連合の取り組み

ゲストスピーカー: 遠藤 幸男(連合東京会長)

1.連合の地方連合会:連合東京

 連合の47都道府県にある地方連合会の1つ、連合東京の責任者をやっている遠藤と申します。地方連合会の活動にはさまざまなジャンルがあります。今日、私は「地域組織の活動と役割-職場と生活をつなぐ連合の取り組み」という表題をいただいています。
  まず、日本における産業別労働組合が連合に加盟して、連合という組織を作っています。
  連合と一労働組合との違いはわかりますか。私はNTT労働組合の出身です。NTT労組は、NTTにおける賃金や労働時間など労働条件や社内福祉の問題、安全衛生の問題とか、NTTの職場内の課題や諸制度について、NTTの会社側と団体交渉や事務折衝などをして対応を決めていきます。それが単位労組、すなわち個別企業の労働組合の基本的な役割です。
  一方、連合というのは、個別(企業単位)労使のレベルにおける課題ではなく、国全体の、国民あるいは働いている人たちが生きていくための国のシステム、たとえば年金・医療制度や環境、平和の問題などを扱っています。それらの課題について、連合本部あるいは地方連合会、その下部組織である地域協議会、地区協議会という形で緻密に連合の組織をおいて、それぞれのステージでいろんな運動をおこないながら、働くもののための政策を実現していくという任務を負っています。
  地方連合会では、さまざまな課題について自ら考え方をまとめて、「これは台東区に申し入れないと解決しないな」「これは都に要請したほうがいい」「これは経営者団体に理解してもらわないといかん」というように、問題に応じて交渉相手を選び、その実現のために運動をしています。

2.現在の問題点

 資料に、「2.日本の社会の現状をどう見るか・我われはどういう時代を生きているのか」と書いてあります。ここでは、基本的なシステムが壊れ始めていることを問題として提起しています。
  例えば、正規・非正規雇用の問題です。日比谷の年越し派遣村に象徴的に見られるように、雇用の現状は「自分は一生懸命に働こうとしているのに、実際は自分の考えている収入には及ばないような所で働かざるを得ない」というような環境にあります。
  あるいは、年金制度についても、引退した後、果たして年金で暮らしていけるようなシステムになっているのか。本当に100年安心なのか、という問題もあります。
  介護も、今は老老介護です。60歳代の子どもが90歳代の親を見ているというケースが珍しくないわけで、本当に今の制度でいいのでしょうか。
  また、人間は好きで病気になる人はいません。いつ病気になるかわかりません。病気にならないように養生している人もいれば、病気に関係なく生きている人もいます。しかし、いざ病院にかかることになったとき、いまの医療制度で本当に大丈夫なのかどうか。75歳を超えたら「後期高齢者」などとレッテルを貼っていくような医療制度でいいのかどうか。
  安全保障にもさまざまな問題があります。これまで世界がアメリカを中心にして歩んできた、いわゆる市場原理主義のイデオロギーという形で、「勝てば官軍」「どんな方法でやっても成功すればその人は成功者だ」「うまくいかない人は脱落者」という形ではっきり分けてしまう、このような社会の中で生きていくのは、果たしてどうなのかというところに、今来ています。
  市場原理主義という、利潤だけを追求して手段は選ばないというアメリカン・スタンダードのグローバル化に対して、私たちは国際労働運動で闘ってきました。キーポイントは、支え合う社会、連帯する社会、そして共生する社会、公正な社会です。そういう方向に今世界全体が動いていて、日本の連合もそういう方向に新しく歩み出そうとしています。2008年5月に、新しい秩序づくりのためにさまざまな運動をやっていこうと連合の中で議論をして、「歴史の転換点にあたって~希望の国日本へ舵を切れ~」という基本文書を確認しました。
  また、連合は2006年から「ストップ・ザ・格差社会」というキャンペーンを行ってきました。資料に、象徴的な5つの格差(①雇用・労働と所得、②年金・医療・介護、③教育、④地域間、⑤生きる希望)と3つの歪み(①歪んだ富の分配構造、②雇用就業構造の歪み/働く貧困層(ワーキングプア)、③内外需経済構造の歪み)について書いてありますが、このような問題意識を持ちながら、格差と貧困をなくしていくという目標に向かって、日々、中央は中央で、地方連合会は地方連合会として、さまざまな活動を展開しています。

3.連合が目指す社会

 次に、「連合が目指す社会」について、これはきわめて重要であると考えています。一言で言うと、労働を中心とする福祉型社会の日本をつくろう、ということです。すべての人は「働く」ということを基本に、福祉のシステムをきちんとつくって、「安心、安全、安定」という基本的な考え方で進めていこうということです。
  日本の雇用労働者5,400万人のうち、正規雇用は3,510万人、非正規雇用は1,890万人です。これはどういうことかと言えば、現在では3分の1を超える人たちがパートや派遣、請負で働かざるを得ない、契約労働者で働かなければならない、本当は正社員で働きたいけれどもきわめて狭き門になっている、ということです。働く人たちの雇用形態が分散されているのです。なぜこういう事態になってきたかというと、1995年に日経連が提唱した、雇用ポートフォリオの3類型を基に、派遣労働者も製造業で使っていこうと法律が改悪され、今日のような状況が生まれているということだと思います。
  連合のシンクタンクである連合総研という調査研究機関が「労働組合は必要か」という調査をしたところ、「ぜひ必要だ」「あった方がよい」という回答が70%超となっています。こうした思いに応えるために、すべての働く人たちのために、労働を中心にした福祉型社会をつくろう、そのために私たち労働組合、連合は運動していこうということです。

4.連合東京の取り組み:概要

 次に、連合東京の取り組みについてお話しします。「連合東京」というカラーの資料を見て下さい。最初のページに写真がいくつか載っています。皆さん、これをみて何をしているのかと想像してみてください。一番左上は、多摩地区を中心とした勤労者のマラソン大会です。真ん中は、年金問題などいろんな問題に抗議の意を表して、国会前で座り込んでいる写真です。その右は、連合東京の執行委員会の模様。上から2段目左は、東京経営者協会の幹部と意見交換している光景です。同じ段の真ん中は、連合東京の定期大会。右端が、連合の宣伝カーに旗を立てての街頭演説です。実は、街頭で演説するのが私の得意分野です。不特定多数の人たちに向かって「いまの年金ってどうなんだ」「解雇された人たちをどうするんだ」という話を、池袋や渋谷、新宿、立川など東京の各所で演説しています。  
  真ん中の一番下は、連合ユニオン東京組合員交流集会の写真です。あるところで働いていて「あんた悪いけどやめてくれ」と言われます。日本の企業は、99%は中小零細企業です。大企業で働いている人はごくわずかしかいません。特に、従業員50人、100人位の企業の経営者はたたき上げで、自分1人でこの会社を立ち上げたという人が多いです。労働者がちょっと不満でも言おうものなら、「労働基準法なんか関係ない」「俺が法律だ」「明日から来なくていい」ということになります。労働相談をやっていると、とても働けないような所へ「行け」と言われたとか、残業代を出せないから払わないと言われた、などという相談がたくさんあります。
  連合東京には、そういう相談で直接事務所に来られたり、電話がかかってきたりします。そういう時、うちは一人でも入れる「連合ユニオン東京」を作っていますので、そこの組合員になってもらうよう薦めています。組合費は月1,000円です。連合ユニオン東京の組合員になってもらうと、一緒にその人の勤め先、例えばA製造会社へ行き、解決にあたります。会社から「あなた何者ですか」と聞かれれば、「連合です」「連合ユニオン東京です」と答えます。「なんで連合ユニオン東京がうちの会社に来るんですか」「実は、あなたの所のBさんは連合ユニオン東京の組合員なんです」「組合員があなたの会社からこういうことを受けた、ということで我われは来たのです」と言って、相談された問題を解決するため、会社と交渉します。
  たとえ、会社に労働組合がないという人たちであっても、社会的存在である連合がその悩みを聞かなくてどうする、と私は思っています。すべての労働者に連帯を求めよう、困っていたら助けようという運動を、連合東京はいろんなセクションでやっています。
  同じ資料の一番裏側に、「これが私達の仲間たちです!」と組織名がたくさん書いてあります。この名前を見て何の業種なのか、わかりますか?
  例えば、一番上の「UIゼンセン同盟」は「ゼンセン」という字にヒントがあります。今はカタカナですが、昔は、「全」という字と「繊維」の「繊」という字でした。つまり、東レ、旭化成など、いろんな繊維会社、紡績会社の組織だったのですが、いまはヨーカドーとかイオンとか、流通業をはじめとして、多様な業種が入っている組織です。また、上から4番目の情報労連は、NTTとかKDDIとか、情報通信などの組合です。このように、さまざまな産業の人たちが連合に加盟して、企業毎に労使で行う課題以外の運動に参加をしています。
  連合東京は、組織人員98万7,973名(2007年)、約100万人の組合員が加盟する組織です。連合東京の会費は1人あたり毎月75円です。つまり、大まかに言うと、75円×99万人×12ヵ月の予算の規模で、連合東京はさまざまな社会的な課題について取り組みを行っているということです。

5.連合東京の多様な活動

 レジュメの(2)②に「社会的課題への『政策・制度要求づくり』と実現のための行動」、③には、「各級行政への連合の意見反映(各種の行政審議会への参加)」と書いてあります。
  行政審議会はたくさんあります。もちろん、国にもあります。いろんな有識者が審議会の委員になりたがります。
  例えば、国がこういうことをやりたい、と思うとしましょう。でもストレートにやると、「なんだ、国が勝手にそんなことを決めて」となりますので、その課題を実現するための審議会という、第三者機関を設けます。そして、学者や労働組合代表、あるいはその道に精通している有識者などを審議会委員にして、「この審議会で議論をしていただいて、まとまった内容を国会に法案として出しています」というやり方をします。そのため、審議会委員はよほどしっかりしないといけないのですが、私の見るところ、役所が提案した内容でほぼ9割以上決まってしまうのが審議会の実態のようです。しかし、そういう審議会であっても、やはり言うことだけは言わなければいけないということで、連合東京も審議会のメンバーに入って意見を言っています。特に、東京都労働局の関係審議会のほとんどに、連合東京のメンバーが入っています。
  また、「④『何でも労働相談』活動(年間を通じて実施)」があります。この労働相談活動は、20年前に連合東京ができたときから、専従体制をしいて取り組んでいます。連合に加盟している労働組合の組合員だけではなく、労働組合のない会社に勤めている人たちの労働相談も受け付けています。
  それから、「⑤自主福祉運動の展開」は、一つには、戦後間もなく労働組合が作った銀行、労働金庫(労金)運動です。戦後の1945年以降、当時日本の金融機関は、働いている人たちを相手にしませんでした。銀行に行っても、働いている人たちはお金を借りられなかったのです。そこで「それなら、自分たちで銀行を作ろう」と、働く者が出資して作った銀行が、労働金庫です。労働金庫は、労働組合を会員として、困っている人にしっかり融資をし、貯金できる人には貯金してもらい、子どもが大学に入るための教育資金を提供したりという、働いている人たちの銀行です。
  二つ目には、労働者のための生命保険や損害保険、すなわち全労済です。これは働いている人たちがつくった共済組合です。
  第三に、サラ金、ヤミ金問題への対応です。サラ金は、最初はほんの小遣い程度の借金でも、借りたらあとの返済が大変です。恫喝まがいの取り立てもあります。我われは、それを社会的問題にして、300数十万人の署名を集めて、貸金業法という法律を変えさせました。また、労働者が多重債務に陥らないようにする取り組みも行っています。
  また、割賦販売法改正の運動もしました。皆さんも聞いたことがあると思いますが、要りもしない布団や着物などの訪問販売を断れずに泣いている人が大勢います。この押しつけ販売、いわゆる押し売りの問題を解決するために、割賦販売法の改正にも取り組み、改正に成功しました。どういうことかというと、いわゆる悪質商法では、売る人の隣に必ずクレジット会社がいます。言われるままに契約書に名前を書くと、支払能力に関わりなくクレジット契約が成立して、過重な債務を負うなどの被害を受けることになります。そういうことを改めさせるために私たち連合、あるいは連合東京が、多くの署名を集めて国会に持って行き、支払能力を超えたクレジット販売をした場合、クレジット会社の罪になるという法律に、割賦販売法を改正させました。
  第四に、雇用と就労・自立支援カンパ活動の全国展開も行っています。年越し派遣村に象徴されるように、「明日から来なくていい、寮も出て行きなさい」と、まさに人間が否定されるような扱いをされている人たちが、いっぱい出てきているわけです。このような人たちはどのようにして生きていけばよいのでしょうか。このような人たちを救済するために、今、国に対していろいろな制度の創設を要請しています。しかし、国にやれやれというだけで本当にいいのかとの思いがあります。そこで、我われは、いろんな形で頑張って活動している資金のないNPOやさまざまな団体や個人に対して、カンパ活動を通じて支援を行っています。現在、おそらく数億円規模にのぼっていると思います。

6.連合東京のボランティア活動

 それから「⑥ボランティア活動」もしています。
  労働組合がボランティアをやっていると思っていた人はいますか。結構いますね。欧米ではボランティアや寄附についての考え方がステイタスにもなっていますが、日本ではボランティアについて、制度面でも運動面でも、非常に遅れていると思います。
  三宅島の噴火の時に、三宅島や小笠原などの島嶼部も連合東京の担当エリアになりますので、私達は何百人もボランティアを派遣しました。彼らは、普段働いている普通の組合員です。組合幹部ではありません。ボランティアで行きたい、助けに行きたい、という老若男女が大勢いるのです。そのような人たちを三宅島に連れて行きました。火山灰が雨と混じってドロドロになり、使い物にならなくなった建物の解体など、いろんなことをやってきました。
  私たちのボランティアチームは、三宅島から避難してきた人たちのために電話帳も作りました。避難してきた島民の皆さんは、当初、それぞれが都内のどこに散らばっているのかわからなかったのです。そこで私たちボランティアは、「この人は○○都営団地の○号室、電話番号は○○○・・・」というのを全て調べて、手作りの電話帳を作って皆さんに配りました。一人ぼっちで、「これから先どうなるんだ」と不安なときに、「あの人はあそこにいるんだ、電話してみよう」と、泣いて喜ばれました。
  また、三田の芝浦小学校のグラウンドと校舎を借りて、避難してきた人たちの島民集会も年間4~5回開き、久しぶりの交流をはかっていただきました。これについても、「このふれあいがあったから生きてこられた」というように仰っていただいています。今、皆さんは島に帰りましたが、その帰島の引越支援もしました。帰島後もメンタル面のケアなどのサポートシステム作りを行っているところです。
  このようなボランティア活動は、阪神・淡路大地震の時から始めました。このとき、私は労働組合の組合員も捨てたものじゃないと思い、ボランティアに専門的に力を入れる大きなきっかけになりました。当時、私は連合東京の事務局長でしたが、加盟組合の情報労連、電機連合、自動車総連などに、みんな人を出して助けに行こうじゃないか、と声をかけました。しかし、「遠藤さん、あんな危ないところにうちの組合員を連れて行けません」と断られてしまったのです。しかし、私はあきらめずに、「ボランティアに行きたい人は連合東京へ連絡してください」というB4判の簡単な呼び掛け文を書き、全組合の掲示板に貼ってくれるようにお願いしました。ボランティア期間は1週間ですから、職場も休まなければなりません。当然、東京-神戸の往復交通費など、費用は自己負担です。このとき、連合東京のそれぞれの職場にいる組合員が、何人応募してきたと思いますか。正確に言うと420人来ました。私はびっくりしました。こんなすばらしい人たちがいるのか、と涙が出ました。これが連合東京でボランティアを積極的に運動として作っていく基本になりました。その結果、今私たちのところには、三宅島の噴火や新潟地震、あちこちの水害にも赴く専門的な知識を持ったボランティアが500人います。緊急医療から炊き出しなど、1年かけていろんなことを勉強して身につけた人たちです。その人たちが率先して、勤務の都合をつけて出向く、というシステムでやっています。
  また、私たちは「連合愛のカンパ」活動も20年間続けていますし、行政が行う地域の祭り、東京で言えば葛飾さくら祭りとか、地域の清掃活動とかにも「なんかやることある?手伝いますよ」と、地域に溶け込んでいくため、地域の人たちと連携をとり、顔をつなげる活動しています。

7.連合東京の政策・制度要求

 7番目は「政治活動の展開」です。資料の目次を見て下さい。ここに書いてあることは、労働組合がやりそうな課題でしょうか。
  1つ目の「雇用・労働政策」はいいですね。
  2番目の「男女平等政策」、これもいいですね。女性の皆さん、日本は、政府が男女共同参画社会という方針を決めて取り組んではいますが、職場には男女差別があります。今皆さんは聞かないかもしれないですが、「女、子どもは下がっていなさい」「女の出る幕じゃない」という言い方が、戦前の日本の封建制度のなかで、また戦後まもなくの頃は、日常用語でもありました。このような名残が、今もまだ残っています。賃金も昇格もさまざまな面での女性差別が、まだいっぱいあるのです。
  しかし、男女の格差はあってはいけません。私は旧電電公社の出身で、大手町に約28年勤務していましたが、その大手町に全国一の電話局があって、そこに6千人ぐらいの電話交換手がいました。私より遙かに年上の女性たちもいましたし、17~18歳の交換手もいました。女性は、例えば、「組合の職場委員をやってくれ」と頼むと泣いて断ります。でも立候補の締め切りギリギリになると、最後は先輩の女性に説得されて、「わかりました」と引き受けます。しかし、一度引き受けたからには、その後、女性は本当に真面目に仕事をします。反面、男は駄目です。上司から言われたら、適当に「はい、わかりました」と引き受けます。ところが、引き受けた後はさぼります。そういう男女の特性を私はよく知っていますので、女性の意見をさまざまな所に取り入れています。そうした方が、社会が良くなっていくという考え方を、昔から持っています。しかし、実際には、職場にはまだまだいろいろな差別の問題がありますので、そういった問題についても、取り組んでいかなくてはなりません。
  3番目の「ものづくり・中小企業政策」。この辺まで来ると、なんで労働組合がこんな政策を出すのかと思うでしょう。
  次に、「まちづくり政策」です。例えば、国立のまちをどうしようか、というようなことです。国立では、変なマンションが建ちそうだとか、そういう問題に対して、まちはこんなふうにあるべきだ、働く人、そこに住んでいる人が、こういうものを建てたい、こうしたほうがいい、というようなまちづくりの活動に関する政策を出しています。
  あるいは5番目、「環境・エネルギー政策」も行っています。いまエコがいろいろな問題になっていますね。
  続いて、「消費生活政策」、「福祉・社会保障政策」、「行財政政策」、「教育政策」なども行っています。いまの東京にはどのような課題があるかについて調べ、これはこうすべきだ、このことはこうすべきだということを、石原都知事に提言します。
  それから、経営者。経営者団体というと、皆さんはどういうものを思い浮かべますか。日本経団連、日本商工会議所、経済同友会、中小企業中央会、工業団体連合会などが、主要な経営者団体です。例えば日本経団連の東京の組織は、東京経営者協会です。先日、東京経協の総会に呼ばれて挨拶しました。東京経協の会長は私と同じNTTの出身で、いまはNTTの持ち株会社の社長でした。このように、同じ会社の出身が労使で責任者をやっている、ということもたまにあります。
  日本商工会議所の東京組織は、東京商工会議所です。東京商工会議所、東京経協、中小企業中央会とは定期的に会合を行っています。中小企業中央会は、「連合の政策には、うちがやって欲しいことがみんな書いてあります」と言います。しかし、それが国や東京都で実現できていないということも、覚えておいて頂くといいと思います。
  政治の話を少ししましょう。私の責任で、連合東京の関係者をさまざまな審議会に委員として出しています。先ほども述べましたが、「審議会なんて意味がないから行かない」と言ったら、ますますおかしくなるわけですから、「舞台があるなら行ってこよう」という位の気持ちで私はやっています。ちなみに、私自身は、特別職の報酬等審議会に出ています。そこでは、都知事や都議会の議長、都議会議員、東京都の収入役などの報酬を決めています。
  審議会のシステムというのは、例えば、行政は「審議会の答申はいただきました」ということで、条例案を出したり、国でいえば法律を出したりして決めていますが、そういう決め方で本当にいいのかどうか、私自身は疑問を持っている、ということは、再度申し上げておきたいと思います。

8.最後に

 これまで述べて参りましたように、労働組合は様々な活動を行っています。労働組合といえば、ストライキか賃上げ交渉、だいたいそういうイメージをお持ちでしょう。しかし、労働組合は、今日お話ししたように、全国のそれぞれの地域でいろんなことをやっているのだということを理解していただければありがたいと思います。今日、皆さんにお配りしたさまざまな新聞記事も、後でご覧になって頂ければと思います。
  最後に二つ、皆さんにお伝えしておきたいと思います。
  一つには、皆さんは大学を巣立ったらいろんな所に行くでしょう。最初から管理職になるという人はあまりいないだろうと思いますが、あるいは事業を起こす人はいるかもしれません。でも、この世の中をいい方向に進めていくためには、労働組合というものが不可欠だということを理解して欲しいと思います。できれば皆さんに労働組合の責任者になって欲しい、ということです。
  二つ目は簡単なことです。競争社会の中で、この社会から投げ捨てられた人が大勢います。そのような人に対して、「あいつは努力が足りなかった」「自己責任だ」などという言葉には、同調しないでください。自分だって、いつそういうことになるか分からないのですから。そういうところまで落とされた人の痛みを、しっかり捉えられる人間になって頂きたいと思います。私自身、そんな偉そうなことをいえる人間ではありませんが、人が困っていることを自分が困っていることとして受け止められるような人間に私もなりたい、と思っています。皆さんにも「なれ」とは言いません。私はそんなえらい先生ではありませんから。しかし、日本にはそういう心もちがなくなってきてしまったから、みんなでそれをもう一度つくっていこうではありませんか。
  皆さんがこの国を背負うのです。皆さんがこの国の社会のグランドデザインをさまざまな角度から検討して、労働組合も必要だな、企業に入ったら自分の企業の組合はきちんとやっているのかな、という気持ちを持って頂けますように、と申し上げて私の話を終わらせて頂きたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

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