はじめに ~「労働組合」はどのように見られているのか?~
労働組合は、労働基準法や労働組合法などの法律を根拠に権利を主張しますので、経営側から見ると、労働組合というのは「めんどくさい」、あるいは労働組合が賃金を要求することが経営にとって「コスト高」につながるのではないかということで、厄介な存在としてみられているのではないかと思います。
労働組合がなかったところに労働組合ができた場合も、経営者は非常に緊張するか萎縮するかのどちらかです。私の経験からいっても、労働組合結成通知書を経営側に出したときは、もう晴天の霹靂か、事前にこうした労働組合ができると知った場合でも強圧的になったりしました。これはお互いに不幸なことでありまして、本来、労働組合は会社の健全な発展を可能にする存在だと思います。労働組合があることによって、企業不祥事などに対する内部のチェック機能が働くという面もあるからです。
政府、自民党からは「政治的に対立する勢力」と見られています。労働組合は野党と連携しながら運動を進めてきました。現在、連合は民主党、それから社民党と支持協力関係を結んでいます。衆議院選挙、参議院選挙など選挙戦に入りますと、私たちは民主党、社民党などの野党を応援します。組合員には組合で推薦決定した候補者に投票をお願いしています。
さまざまな政府の審議会の労働者代表を連合から出しています。それに対して、最近の労働組合組織率は18.1%しかないので、「勤労者、労働者を代表する勢力ではないのではないか」「労働者代表は必要ないのではないか」という意見も出ています。政府の中には、労働組合は政治的対抗勢力であるので、できれば排除したいという見方もあります。
一般の方はどうでしょうか。勤労者あるいは市民は、ほとんど「分からない」「知らない」、あるいは労働組合というイメージ、言葉自体が「暗い」。色にたとえると灰色だとの意識調査でも出てきています。
いま18.1%の人がいずれかの労働組合に所属しています。そういう方々の考えはどうかというと、「組合費が高い」「実際に役に立っていないのではないか」という声も多々聞こえてきます。組合費が高いとありますが、一般に1人の組合員が組合費としてお支払いいただいている金額は平均すると基本給の1.5%ぐらいです。基本給が平均で30万円としますと、月額4500円が組合費です。
私の出身の自治労は1.5%から2%の組合費をいただいています。賃金が上がらない中で、月々4000円から6000円もとられると、組合に払うよりは貯金したらどうか、年に7万2000円にもなりますから、それで旅行に行けるのではないか、という組合員も多くいます。以上、様々な立場の人々が労働組合に対してはマイナスイメージを持っていることを紹介しました。
1.労働組合の置かれている位置
(1)労働組合の組織状況
次に、労働組合が客観的にどのような位置に置かれているかを見ていきます。
まず、パート労働者の組織化状況というタイトルの表をご覧ください。これは2000年から2007年までの厚生労働省の労働組合基礎調査(毎年6月30日に実施)の結果を簡単にまとめたものです。雇用労働者数は、ここ数年増加しています。2006年は5517万人で、前年度に比べて101万人増えました。そして昨年も前年度に比べて48万人増えています。2006年に増えた101万人の内訳は、フルタイム労働者が87万人、パート労働者が14万人です。私たちの実感はないのですが、現在いざなぎ景気を超えた好景気が続いていると言われます。皆さんの大学でも、就職の状況がこの5年間でかなり様変わりしたと思います。それがここ数年の数字に出ています。2007年は対前年48万人増ですが、そのうちフルタイムで増えたのが17万人、パート労働者が31万人です。パート労働者がこの間非常に増大していると言えます。
次に労働組合の組織状況を見ます。雇用労働者数の次の段に、組織労働者数という項目があります。2007年調査で1008万人と、13年ぶりに対前年度プラスに転じたところです。しかしそれとて1008万人です。組織率は、雇用労働者数を分母として、組織労働者数を分子にして100を掛けたものです。2007年の組織率が18.1%。要するに100人のうち18人しか労働組合に入っていないというのがわが国の現状です。この間一貫して下がっています。
その次に連合組織人員があります。2000年からずっと減り続け、そしてやっと昨年2007年に10万1000人の純増となっています。この10万1000人のうち7万3000人がパート労働者の組織化です。パート部門での組織化が増えているという傾向にあります。
フルタイム労働者数は、2000年に34万人増えましたが、2001年から2002年にはなんと123万人も減っています。他方、パート労働者などの非正規雇用の労働者が増えているのが最近の傾向です。
企業規模別で組織率を見ますと、1000人以上の企業、大企業では47.5%です。つまり大企業では半分に近い労働者が労働組合に入っています。他方、99人以下では組織率1.1%です。中小零細企業にはほとんど労働組合がない、労働組合に入っていないということです。99人以下の企業規模の雇用労働者数は2573万人です。全体の雇用労働者数が5565万人ですから、約半数近い労働者が100人未満の企業で働いており、そのうち労働組合に入っているのは100人のうち1人だけです。これが今日の日本の労働組合の組織実態です。私はこれを業としていますので、お客様が減ったら大変だということになります。
(2)社会的労働力の低下と労働者代表制の危機
次に、社会的な意味で考えた場合、今どういうことが起こっているかを考えてみたいと思います。
かつて一番労働組合員数が多かったのが1994年です。このときから労働組合の組織人員が減り、社会的影響力も下がっています。冒頭述べましたように、労働組合は、勤労者、市民の方々からほとんど見えていません。さまざまな面での影響力が低下しています。今政府の中では「労働ビックバン」として、これまでの労働関係法令、労働基準法、労働契約法、労働組合法などの法律の改正を進めようとしています。今までは経団連とか商工会議所などから使用者代表、公益代表、そして労働者代表として連合の代表が審議会に参加をし、どのように法律を変えていくのかを協議してきました。最近になって、この18.1%という数字をもって、労働組合がもはや勤労者を代表する組織ではないので、政府の審議会に労働組合代表を入れなくてもよいのではないかという意見が一部の方々から出ています。仮にそういうことになれば、今以上に労働組合の意見を法律に反映させにくくなり、労働組合の影響力はさらに大きく低下してしまうでしょう。
使用者は「三六協定」という時間外労働を規制する(協定に定める範囲で残業を可能とする)協定を、事業所の過半数を組織する労働組合か、労働組合がない場合は事業所の過半数を代表する者と結べます。これは労働基準法36条に基づくので「サブロクキョウテイ」と言います。大企業ではほぼ職場の労働者の半分以上が労働組合に組織されていましたので、使用者は労働組合と三六協定を結んできました。
現在、正社員が減る一方、パートや有期契約(雇用期間を定めた労働者)、派遣労働者などが増加しています。こういう労働者も一緒に分母になりますから、こういう方々が労働組合に入っていないと、労働組合が過半数を組織していない場合が出てきます。そうすると三六協定が労働組合として結べなくなります。労働組合が、職場の労働者の過半数を代表できないという状況が今日生まれてきています。
(3)組織率低下の原因
組織率低下の原因は様々な理由があります。経済事情やそれぞれの時代の労働者の意識構造もありますが、第一の理由として、雇用構造の大きな変化があげられます。日本の労働組合の大多数は大企業の労働組合や公務員の組合です。こういった労働者の組織率はまだ50%ほどあります。一方で、パート、派遣、有期契約などの非正規雇用が増大しており、こういう労働者に対して、私たち労働組合は組織化戦略を含めた対応ができていません。
それから、二つ目の理由は、それぞれの企業の賃金体系、あるいは労務管理体系といったものが昔と変わったということがあげられます。昔は年功序列といって、年齢が上がればそれなりの給料が払われました。例えば22歳で就職して、30歳前で結婚して子ども1人ができて、標準世帯で子ども二人でだいたい36歳ぐらいになります。このへんから生計費がだんだんかかっていくなという理屈の中で、賃金体系が決められていました。年功序列型賃金です。これがどんどん変わってきました。今言われているのは成果給、評価主義です。個々の労働者が評価されて賃金が決定されますから、年齢が関係なくなってきました。自分はよく働いたのだからこれだけの賃金は当然であるという方もいます。自分はあの人と同じだけ働いているのにどうして賃金やボーナスは低いのか、ということで賃金の個別化が進んでいます。賃金制度を問題にする場合には労働組合も正面から取り組めますが、AさんがよくてBさんがだめだという場合には、労働組合としてなかなか解決できません。したがって、なにか困ったことがあれば労働基準監督署に自分から駆け込めばいいという意識が出てきます。課題が個別化しています。そうしたなかで、労働組合が頼りにならないという意見があることも事実です。昔、1950年代、皆さんの父親以上の方が生まれたころの時代は、みんなで団結して賃金を上げる、食える賃金をよこせという時代でしたから、その点は様変わりです。
もう一つは新自由主義の展開です。それは、アダム・スミスの神の見えざる手ではありませんが、市場は政府が規制をしないで資本が自由に行き交うようにすればさらに発展するという考え方です。この象徴的な例が郵政民営化です。膨大な郵便貯金をどうして市場に流さないのか。市場に流せば、信託に行ったり、株式に行ったり、さまざまな資本の増殖過程のなかでこれが回っていくと新自由主義は考えます。この展開が地球規模で起こったのがグローバリズムです。国境を越えて、資本がそれぞれ増殖していく。そのために例えば電力会社、農産物なども自由化し、市場化していきます。これを推進するために、さまざまな規制緩和、規制改革が行われました。自由という言葉がよく使われました。
労働者だって働き方を自分で選んでよいのではないか、何もあくせく8時間労働しなくても、自分は6時間労働、4時間労働で生活してもよいのではないか、こういう風潮がありました。このことがじつは大きな格差を生みました。格差社会といわれるような雇用形態における格差を生んでいます。自由という名の幻想がそこにあるわけです。6時間働いた賃金で生活できるかというと、できないわけです。
これは自由とは呼べません。カギ括弧つきの「自己責任」「自由」のなかで現在の経済が動いているわけです。そのことによってまさに勝ち組と負け組が生まれていますし、国際的なレベルでいうと、資本の蓄積、ストックが多い勝ち組の国家と、よりいっそう貧しくなる最貧国との国家間格差を生み出しています。こうしたなかで私たちの労働と賃金体系、あるいはわれわれの日常の世界、政治、といったものがじつは動いているのではないかと思うわけです。
2.労働組合の組織構造と役割
(1)単組・産別・ナショナルセンターの組織と役割
連合の組織図をご覧になってください。まず、「単組」というのが「単位組合」です。単組の多くは「企業別組合」です。それぞれ企業に労働組合をつくります。例えば、第二回目にここで話をされた連合の古賀事務局長は松下電器の社員でした。したがって、松下電器の労働組合がまず基本単位になります。それぞれ企業別に組合があるのが日本の大きな特徴です。この企業別の組合が何をするかというと、直接の使用者であるそれぞれの経営側に、賃金、労働条件の引き上げ、あるいは改善を求めて交渉し、合意したものを労働協約という形で結んでいきます。ただ、これ以外に個人でも入れる「地域ユニオン」というのがあります。これは会社ではなくて、個々人が地域の労働組合に加入します。
こうした単組はそれぞれの労働条件や福利厚生制度について交渉します。たとえば、製造業や建設業ではいろいろな危険な職場があります。そこでは、どうしたら事故が起こらないかを交渉し、確認していくことも行っています。
次に単組が同じ産業ごとに集まったものが「産業別労働組合」(「産別」)です。例えば、松下電器、NEC、日立、東芝といった電機メーカーにそれぞれ単位組合があります。これらの組合がまとまって、電機連合という産業別労働組合をつくっています。現在、連合には52の産業別労働組合があります。私の出身は自治労ですから、○○市役所労働組合、○○県庁職員組合などの単組があります。これが全部結集して自治労という産業別労働組合をつくっているわけです。
では産業別労働組合は何をしているのか。一つには、同じ産業でまとまりますので、同じ産業の政策があります。かつて日米の経済摩擦というのがありました。1980年代初頭です。当時のアメリカでは、日本の電化製品や車が大量にアメリカに輸入されるとアメリカの産業界がつぶれてしまうと、いっとき日本製品をぶちこわすデモンストレーションなどがありました。こうした問題に対して、同じ産業としてどう対応していくのかという課題があります。また、同じ産業として、国の政治、政策に対して改善すべき課題について一緒に働きかけるといった機能が産業別労働組合にはあるわけです。
もっと組合員に照らして考えてみれば、松下電器と三洋電機、あるいはNEC、みんな競争しているではないか、売り上げを伸ばすためにそれぞれが競争しているのに、なぜ同じ産業別労働組合で一緒にやるのだという疑問があろうかと思います。これは逆な意味で、同じ産業で働く労働者が、過当競争の中で賃金のダンピング競争をさせないために、産業別労働組合を形成するという機能もあるわけです。例えばかつて私鉄総連という産業別労働組合は、春闘時の賃金交渉で、阪急電鉄と阪急の社長、名鉄と名鉄の社長とは交渉はしませんでした。集団労使交渉と言って、主要大手私鉄の労働組合の委員長が私鉄総連としてまとまって、経営側と交渉を行い、同じような賃上げを獲得していました。IMF-JC(全日本金属産業労働組合協議会)という金属産業の労働組合の協議体があります。新日本製鐵や日本鋼管などの鉄鋼組合が中心ですが、こうした組合の春闘における賃金の引き上げ額はほぼ同じとなっています。労働者の安売りをさせないという機能を産業別労働組合は果たしているわけです。こうした産業別労働組合がさらに集まったものが「ナショナルセンター」です。
(2)労使交渉の具体例
単組では各職場の労働条件について交渉します。例えば、育児休業法という法律があります。ただ実際に育児休業をどのように取るかというと、それぞれの職場で違うわけです。それぞれの企業、職場で取得条件を労働組合は出します。例えば、保育士の方、看護師の方、職種によって取り方が違う、あるいはローテーションが違いますから、そのローテーションをどう組んでいくのかという点を労使で交渉していきます。それによって制度が活用できるようになります。
労使交渉はおそらく100の組合があれば100通りあるわけですが、一般的には、賃金改善についてはほぼ一年に一回要求書を出して、交渉していきます。だいたいこれは春闘の時期です。それ以外の労働条件の場合、例えば私の出身の自治労では、年間を通した300項目以上の要求をまず一斉に出します。春の段階で決着できる課題をそれぞれ労使で、こことここはいつまでに、こことここはいつまでと確認をして、それぞれ分けてやっていきます。
交渉といってもいろんなパターンがあります。交渉に入る前に必ず双方、経営側と労働組合側の事前折衝が行われます。事前折衝で、概ね合意に達する場合もあります。自治労の場合、県庁の場合は、だいたい最後に副知事クラスが出てきます。民間の場合も企業によって誰が出てくるかいろいろあります。賃金引き下げなどの逆提案もあります。公務員の場合は、年度末の3月31日までと4月1日からでは予算が違いますので、徹夜交渉や時間切れもあります。そういう中で、大衆団交と呼んでいるのですが、多いときは300人ぐらいで経営側と交渉するところもあります。昔はだいたい組合側に不都合な場合には大勢で押しかけて団体交渉を徹夜でやって、助役などを寝かせない交渉をやって、最後は眠たくてうんと言ったら、うんと言ったなといって確認書をとるとか、そういう時代もありました。いまはもう近代化されています。
現在は、民間の場合はだいたい交渉委員という方が例えば5名とか10名とか選出されて、そこで経営側と話し合う。だいたい、時間切れという場合には、その時点での到達点でなんとか妥協していくというのが一般的です。解決できない場合は、課題別に先送りしてもう1回、3ヵ月後までにこれを出しましょうと、こういう形でやります。
私が自治労に入ったころは、恫喝と言いますか、ヤジ、怒号が飛ぶ交渉もありました。民間の場合はストライキ権があります。今年はありませんでしたが、昨年では私鉄で交渉が決裂しストライキに入ったところもありました。皆さんには迷惑かもしれませんが、私鉄の場合は電車が止まります。その間に経営側が、なんとか別な回答を持ってくる、あるいは組合が疲れて一定時間で断念する、こうしたくり返しを毎年の賃金交渉ではやっています。組合の仕事は非常に多岐にわたっていますので、交渉でも様々な局面があります。
(3)労働組合加入のメリット
組合員から見て組合費が高いと言われるのは、この8年ほどの間賃金がほとんど上がっていないことが大きく影響していると思います。したがって、組合費を払っていてもメリットがないのではないかと考える人が増えているのだと思います。組合が役に立っていないという人が少なくないのは、労働組合がきちんと労働組合のやっていることを組合員に伝えていないことにも原因があります。労働組合があってよかったと強く感じるのは、困ったときに助けてもらった場合でしょう。
先ほどの例で言いますと、企業によっては、経営側と労働組合の話し合いによって、育児休業制度が法律よりもより改善され、なおかつ休んでいる期間でも賃金が保障される、という制度がつくられているところがあります。こういう場合は直接のメリットが見えますから、組合は役に立っていると見られます。ただこうした制度ができてしばらくすると、この制度をつくったときの経緯の説明や、他の企業と比べてこの制度がどれだけいいのかという比較を労働組合がしていかないと、こうした制度は当然のものとして受け止められてしまいます。そうすると、労働組合のメリットが見えにくくなってしまいます。
労働組合のメリット、デメリットは、労働組合がある職場とない職場を比較すれば明らかになります。労働組合のある職場は自由にものが言えます。あるいは経営側に文句を言えます。普通の組合員がしゃべれるというのは、バックに労働組合があるからです。発言によって不利益な処遇をされるというのは、不当労働行為に当たりますし、労働組合はその組合員を支援するという機能を持っています。ここが決定的に違います。
労働相談で、労働組合がないところから電話で苦情がかかってきます。「何で皆さん文句を言わないのですか」と私が言うと、「クビになっちゃう」「文句を言ったら不利益を受ける」と言います。「それでは組合をつくりましょう」と話します。そうすると、「私だけ組合つくると白い眼で見られる」「私が労働組合に入ったことを隠して交渉してくれませんか」と言われることも労働相談でよくあります。職場でものを言えるかどうか、労働組合の基本的な権利、これをもって経営側に当たれるかどうかが、労働組合があるかないかで違うわけです。現在、こうした労働相談が非常に多く来ております。電話でも、電子メールでも来ます。本人からの相談はだいたい半分くらいで、家族の方から、私の主人、私の娘、息子はこんなに働いていてほんとに大丈夫でしょうかという相談が残りの半分を占めています。
もう一つ組合のメリットを言います。最近ある眼鏡店の労働組合を組織しました。全国展開で約2000人の社員がいるところです。なぜ組合をつくりたいかと聞いたら、眼鏡が売れないと自分の給料からその眼鏡を無理矢理買わされる、それによって売り上げを伸ばす、売り上げが伸びないと店の営業時間を延ばさなければならない、労働時間が長くなる、こんな理不尽なことはないという訴えがあり、労働組合をつくりました。これは連合をあげてやりましたけれども、この3ヵ月で2000人いる社員のうち75%の社員の方々を組織して、経営側にそうしたことをやめさせることができました。このように労働組合が本当に必要であるところに、労働組合がないというのが実は問題ではないかと思います。連合というナショナルセンターの役割として、労働組合が本当に困った人に役に立つ存在であるということを示していきたいと考えています。
グローバリズムが進む中で、国際的な連帯も進めています。日本の企業も多国籍企業化しています。マクドナルドユニオンも私たち連合で組織をした組合です。労使交渉をしていますが、ほとんど箸にも棒にもかかりません。要求書を出しますと必ず2ヵ月ぐらい待ってくれと言われます。何をしているかというと、新宿に本社があるのですが、新宿からアメリカのシカゴに要求書を英訳して送って、アメリカのマクドナルド・ホールディングから回答が来るのを待っているのです。非常に反組合的な企業です。フランスでもマクドナルドの組合はつぶされました。世界でまだわずかしかマクドナルド関係では組合がありません。そういう中でいま国際的な連携を進めて、マクドナルドの経営側に迫っているところです。
さいごに
さまざまな課題がありますが、何よりも労働組合とは、労働者が人間らしく働ける環境づくりを目指しているところです。そのためには国際連帯もしますし、また国内では法制度などの改正も求めています。連合には、下部組織として、47都道府県の地方連合会、さらにはより地域に密着した380ほどの地域協議会(地協)があります。今連合は、約300の地協に専従の役員、職員をおいて、地域のニーズに応える役割を担わせようとしています。そこでは単に労働相談、生活相談にとどまらず、就職支援、あるいは介護などの支援をNPOと連携してやっていこうとしています。多目的機能を果たそうといま考えて運動しているところです。
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