一橋大学「連合寄付講座」

2008年度“現代労働組合論II”講義録

II 非正規雇用と労働組合

第5回(11/7)

非正規労働者の組織化と労働条件改善の取り組み(2)

澁谷 稔(日本サービス・流通労働組合連合政策局長)
市村 臣一(西友労働組合中央書記長)          

1.日本サービス・流通労働組合連合の取り組み
  澁谷 稔(日本サービス・流通労働組合連合政策局長)

2.西友労働組合における非正規労働者の組織化と労働条件改善
  市村 臣一(西友労働組合中央書記長)

1.日本サービス・流通労働組合連合の取り組み

澁谷 稔(日本サービス・流通労働組合連合政策局長)

はじめに
 みなさんこんにちは。日本サービス・流通労働組合連合(JSD)の澁谷です。私は現在、百貨店の高島屋労働組合からJSDに出向しています。 
 JSDは流通産業の産業別労働組合です。百貨店やチェーンストア、ホテルなどの労働組合が入っている組織です。JSDは2001年7月に、3つの組織が合同して結成されました。現在、136の企業別組合が参加しています。組合員数は2008年10月1日現在で21万2000名です。1年前と比べると、特にパートタイマー組合員の組織化が進み、昨年の7万1000名から8万3000名へ1万名以上増加しています。

(1)有期雇用労働者の働き方の実態
 バブル崩壊以後、1995年ぐらいから10年以上にわたってかなり正規労働者が減って、非正規労働者が増加してきました。いま全労働者の約33%が非正規労働者です。全雇用労働者が5100万名ぐらいで、約1700万名が非正規労働者です。パートや派遣、契約などいろいろな働き方がありますが、その中でパートやアルバイトなど短時間で働いている方は1200万名ぐらいだと言われています。いま、ワーキングプアが社会問題化しています。去年の調査で、200万円以下の収入で働いている方が21年振りに1000万名を超えています。   
一方、1000万円以上の収入の方も若干増加していますので、かなり二極化が日本において進んできています。非正規労働者を活用することによって、不条理な働き方の温床になり、まっとうな働き方がどんどんくずれ、いま大きな課題になっています。正規労働者と非正規労働者の間にかなりの賃金格差があります。男性正社員を100として、女性の非正規労働者は45というデータがあります。賃金が上がらない、有給休暇がとれない、いわれのない差別を受けるといったかなり深刻な問題が広がっています。

(2)JSDの取り組み~労働組合への組織化
 こういった問題に対して、どのような取り組みが必要なのか。ひとつは企業内労使関係の中での取り組みです。労働組合への「組織化」と「均等均衡待遇」の実現が課題です。もうひとつは、法律によってルールを規定する、セーフティネットを整備していく国としての取り組みです。連合を中心に法改正について意見要望しています。企業内の取り組みと国の仕組みを変えること、この両面の取り組みを進めていく必要があります。
 この間のJSDの取り組みですが、先ほど申し上げた組合への「組織化」と「均等均衡待遇」を両輪として取り組みを進めてきています。
 パートタイマーの組織化状況は、2001年の結成当時、組合員総数の18.5%、3万3000名でしたが、2007年は35.7%、7万1000名、2008年は39%、8万3000名まで増えています。しかし、日本全体でみますと、労働組合組織率は18.1%、パートタイマーの組織率は4.8%です。まだ、パート労働者の95%が未組織です。
 従業員にとっての組織化のメリットはなにか。これは当然、雇用が維持されるとか、労働条件の改善につながるということがあります。労働組合にとっては数のメリットがありますので、組織力や交渉力が向上したり、職場の声を経営に反映することができます。いまスーパーマーケットでは、8割ぐらいの方がパートタイマーですので、正社員だけの組合は成り立たなくなっています。当然既存の組合員にとっても、職場全体の一体感の醸成や、コミュニケーションの活性化にもつながります。
 最後に経営にとっては、労使関係の安定への寄与や組合を通じて現場の状況を把握できることです。会社はトップダウンの組織ですが、労働組合は現場の声を集めるボトムアップの組織です。現場の声を拾うことは会社の人事機能だけでは無理だと思います。組合を活用して現場情報を把握することができます。経営の方も組合を通じて経営の考え方を現場に落とすことができます。そういった機能を組合は担っています。組合の機能として、労働条件の向上、いわゆる旗を振って賃金上げろというのがたぶん皆さんのイメージなのかなと思います。賃上げなどの労働条件改善に向けた交渉は当然しっかり行っていますが、経営のチェック機能や経営対策など、企業と一体になって、企業の価値を向上させていく機能もあります。そういった意味では、企業の健全な成長・発展に向けて、組合自身がしっかりしなくてはいけないところもあります。

(3)JSDの均等・均衡待遇の考え方とパート労働法

JSDの均等・均衡待遇の考え方とパート労働法

 JSDの均等・均衡待遇の考え方についてお話しします。上図のセーフティネットの下に法律があります。最低賃金法は2008年7月に40年振りに改正されました。いまの日本の最低賃金は先進国の中で非常に低く、全国平均で703円です。東京と神奈川が766円で、いちばん低いところは宮崎や鹿児島、沖縄で627円です。これを下回ると法律違反になります。ただ実際、時給766円で年間2000時間働いても150万円程度であり、生活できる年収ではないです。ですから生活できる賃金を担保していこうというのが法改正の狙いです。また、東京や神奈川など大都市圏を中心に、最賃で働いてもらえる金額よりも、働かないで生活保護を申請してもらっている金額の方が高い、働いた方がお金をもらえないという逆転現象がみられます。それを解消していくこともこの法改正の狙いです。
 セーフティネットの上は私たちの企業レベルの取り組みです。賃金などの基礎的労働条件は、職務や成果、企業からの拘束度合などを働き方の違いの判断要素として、違いがないのであれば均等とし、違いがあるのであれば均衡、納得性が担保された上でバランスを取っていこうとしています。企業からの拘束度合は、自由度があるかないか、労働時間が、決められた時間だけ働けばいいのか、それともシフトに組み込まれて今日は早番、明日は遅番、または深夜まで残業するなど、さらには、転勤や職場異動の頻度が判断基準になります。総合職の正社員は、広域の配転義務を負っていますので、今日東京で働いていて、人事異動で明日から大阪へ行けということがあります。パートタイマーの場合は一般的に家から通える範囲で働いています。企業からの拘束度合はかなり違います。
 ワークルールや福祉条件は、働く者や生活者という視点から、正社員だろうが、パートタイムだろうが一緒にすべきものについては当然均等にしていくべきだと考えています。通勤費や慶弔休暇、福利厚生施設の利用なども基本的に一緒にしていきましょうというのが、JSDの考え方の根本です。
 パートタイム労働法が2008年4月に改正になりました。労働組合として、賃金の均等、または均等ができないのであれば均衡を義務化していこうというのがひとつの焦点でした。結局法律で担保されたのは、差別的取り扱いの禁止です。先ほど均衡なり均等を見るときの判断要素として、職務や成果、拘束度合をあげました。法律は3つの視点で見るといっています。ひとつは職務です。成果をあわせた職務。ふたつ目は人材活用の仕組みです。これは先ほどいった拘束度合に近いです。転勤とか配置の変更があるとかないとかいうことです。3点目が契約期間です。有期なのか、無期なのか。ただほとんどパートタイマーの方は有期雇用で1年契約の方が多いと思います。しかし、結果的に反復雇用を何年も繰り返しているのであれば、それは契約期間がないというふうに判断していいというのが法律の解釈です。この3つとも仮に正社員と同じであれば、それは均等待遇にしてくださいというのが、差別的取り扱いの禁止です。働き方が一緒ですから、当たり前のことだと思います。パートタイマーの方でそういった働き方をしているのは3~4%ぐらいではないかといわれています。職務は同じだけれども、転勤がありませんというような形で働いている方も多いと思います。そういった方の処遇をどう改善していくのかということを次のパートタイム労働法の改正でしっかり盛り込んでいく必要があります。いまは努力義務ですので、やってもやらなくても何も企業は罰せられないというレベルです。

(4)具体的取り組みの進め方
 ステップ1では、均等・均衡待遇をしていくことの重要性を労使で確認して取り組んでいこうということです。パートは補助的業務ではなくて、企業の重要な戦力になっていますし、そういったパートタイマーの方の生産性をいかに高めるかが企業の持続的な発展にも関わっています。ステップ2では、賃金や休日・休暇制度、教育訓練、その他の福祉制度等に対して、例えば正社員の就業規則とパートタイマーの就業規則を見比べて、どこに違いがあるのか実態把握を行い明確にします。ステップの3では、職務や人材活用の仕組みを照らし合わせ、均等・均衡待遇に向けた判断基準の整理を行い、ステップ4で合理的な理由があるのか、ないのかを判断基準に照らし合わせ課題を抽出していきます。
 パートタイマーもいろんな働き方をしている人がいます。社員とほとんど同じ働き方をしている人もいれば、販売しかしませんとか、品出ししかしませんという方もいます。これまではパートタイマー全部をとらえて同じと見られていましたが、今後は働き方に応じて労働条件などを区別していかなければなりません。それに則って、制度の見直しなり、協定化をしていくということがステップの5です。
 JSDとして、通年の労使協議で取り組む課題についてのミニマム項目を定めています。1点目は均等・均衡待遇に向けた概念・基準の整理と各種制度の協定化、2点目は育児短時間勤務制度の拡充です。育児介護休業法による努力義務が小学校就学前までということなので、努力義務をしっかり果たしていくことに取り組んでいます。JSDに加盟している組合の状況を見ると、小学校3年生修了までがかなり増加してきていますし、中学校に入るまで延ばしたという事例も出てきています。パートタイマーで1週間30時間以上働いている方もたくさんいますので、長時間働くパートの方にも同じ制度を導入していこうという取り組みをしています。3点目は企業内最低賃金の協定化です。生活保障の観点から基準を定めるよう取り組みを進めています。4点目は、長時間労働を改善し、健康と生活に配慮した労働時間に関する各種協定化を進めていこうということです。

(5)人事制度の改善

人事制度の改善

 次に人事制度の改善についてお話しします。昔は入り口で異なってしまうと雇用形態を変更できませんでした。パートで入った人はどんなにがんばってもパートタイマーでした。しかし、ここ数年、本人の希望とやる気があれば雇用形態を変更できるという制度に変わってきました。雇用形態別に管理をしていますが、しっかり雇用形態の間にブリッジが架かっている制度です。上の図はある百貨店の制度を図式化したものです。パートから社員になれる仕組みがあります。また、子育てや介護のためにフルタイムで働けないという方で、働く能力の高い方については、短い時間で社員と同じように働いてもらう「パートマイスター」という制度を作りました。時間給は通常のパートよりも高い水準に設定しています。また、この後説明がある西友さんのように、正社員とパートの雇用管理を一体的に捉えた制度を導入している組織も増加しています。

(6)パートタイマーに対する意識調査
 JSDでは、2年に1度、意識調査を実施しています。パートタイマーだけを対象にした設問についても約1万名から回答を得ています。「職場生活で不安や不満に感じていることは何ですか」という質問項目に対して、「賃金が安いこと」が断トツです。それから「有給休暇がとりにくいこと」「教育機会がないこと」も多く回答されています。パートタイマーの方にはこのように認識されています。
 パートタイマーで働く理由も聞いています。「ある程度働く時間や働く日が選べるから」というのがかなり高く、「生活の維持や家計のゆとりを持たせたい」という回答も多いです。「正社員として就職できなかった」という項目は10%弱でそれほど多くありません。しかし、フルタイムの契約社員にアンケートをとると、この項目が断トツに高いです。正社員として採用されなかったので契約社員で働いているという方が多いです。有期雇用の方の中でも、パートや契約などの働き方によって働く理由や不満が違うということもあります。
 今後、制度化してほしいものは、毎年賃金が上がる制度や一時金、退職金が多いです。とりわけ、退職金がパートの処遇改善のなかでいちばん大きな問題です。パートから正社員に転換されれば、そこから当然退職金制度が適用されますが、パートタイマーのままで退職金を出すところは、ほとんどないというのが現状です。
 「組合に加入してよかったと思うメリットは何ですか」という質問に対しては、賃金が上がったとか、職場環境が改善されたという回答を多数いただいています。しかし、恥ずかしいことですが、「メリットを感じたことはない」というのがいちばん多い回答になっています。私たち労働組合として、しっかり襟を正し、組織化するときばかりいいこと言って入ってもらって、後はまったくフォローしないということがないように、組合費を払っていただく以上のメリットをパートタイマーの組合員の方が享受できるよう取り組みが必要だと考えています。
 以上、パート労働者に関してJSDでの取り組みの概要をお話してきました。私たちは多様性(ダイバーシティ)の推進と均等・均衡待遇の実現、ワークライフバランスの実現を一体的に推進していく必要があると考え、方針の柱として引き続き取り組みを進めていきます。ご清聴ありがとうございました。

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2.西友労働組合における非正規労働者の組織化と
労働条件改善

市村 臣一(西友労働組合中央書記長)

はじめに
  みなさんこんにちは。西友労働組合の市村です。私は1984年に「関西西友」に入社しました。当時は地域ごとに別会社となっていました。入社して、京都の店に配属され、食料品を販売するのが最初の仕事でした。お店にいる頃から労働組合との関わりがありました。店毎に組合の最小単位の分会がありますが、その役員をやっていて、今から22年ぐらい前に労働組合主催のアメリカ商業セミナーに参加し、当時の最先端のお店を見学しました。
  その後、1991年に西友労働組合の専従中央執行委員となりました。企業籍はそのまま残し、もっぱら労働組合の仕事を18年やってきました。九州や関西の担当をやり、労働組合の仕事で関西から東京に転勤をして11年になります。もともと小売業をやろうと志し、たまたま労働組合の仕事もやってきましたが、どちらもやりがいを感じながらやっています。
  今日は、西友と西友労働組合の概要についてと、パートタイマーの組織化、均等・均衡待遇に向けた取り組みについてお話をします。

(1)株式会社西友と西友労働組合
  西友はチェーンストアをやり、1963年に創立し、2002年にアメリカのウォルマートと提携後、2007年末に100%子会社となりました。2008年7月に北海道から九州まで分割運営していた小売6社が合併しました。店舗数392店舗、従業員は3万2000名です。
  以前の西友のキャッチフレーズは、「あなたのまちの西友」でしたが、今は「KYでいこう」です。店にはポスターが貼ってあり、よく見ると小さい文字で「価格安でいこう」と書いてあります。「空気読めない」ではありません。今働いているメンバーは、新しいキャッチフレーズで、ウォルマートの方針に従い努力をしています。
  労務構成は、本社員が16%、83%がメイト社員、残りの1%が嘱託社員や短期アルバイト社員です。メイト社員は西友でのパート社員のことで、かなりパート比率が高くなっています。その中で、パートタイマー全体の15%が組合に加入しています。
  続いて、西友労働組合は1968年に結成しましたので、41年目になります。会社と同様に、労働組合も4つに分かれていました。会社の合併とあわせて、2008年の10月末の大会でひとつの労働組合となりました。2008年8月現在の組合員数は4514名、うちパートタイマーは1512名。6つエリアに支部をおき、396の事業所ごとに分会があります。

(2)パート労働者組織化の取り組み
  西友労働組合の組合員数は15年ぐらい前まではだいたい1万名弱でしたが、その後どんどん減少しています。以前は本社員だけが組合員でしたので、本社員の減少に伴い、組合員数も減少してきましたが、2006年にメイト社員の一部を組合員化したので増加しました。メイト社員を組合員化していない2006年5月時点で、組合員比率は全従業員の8%、非組合員は店長等の管理職本社員が5%、86%はメイト社員、1%が嘱託社員等でした。組合員化後、2008年5月時点で、全従業員の15%が組合員になりました。10%が本社員、5%がメイト社員です。従業員の過半数代表にまだ届きませんが、徐々に比率を上げています。
  これを西友だけでなく、イオン等のチェーンストア業界でみた場合、パート社員数の違いはありますが、パート比率は80%前後です。この業界ではパート社員が基幹労働力になっていて、極端な話、本社員がストライキをやっても、残りの方がいれば店は運営できます。
  私が入社した当時、右も左もわからない中で、商品陳列、注文方法、賞味期限の見方等色々な事を、上司から教わりましたが、一番教えてもらったのは、同じ売り場にいた母親のようなメイト社員の方々でした。西友だけをみてもパート比率は上昇し、1997年は60%くらいでしたが、今は80%ぐらいになりました。一方で、組合員比率は下がってきました。
  西友労働組合は、1979年にパート組織化方針を確認し、取り組んできましたが、2006年にようやく実現しました。この間、労働条件交渉、機関誌発行、意識調査等をやってきましたが、27年かかりました。私も長く組合の仕事をしていますが、すでに組織化をしている組合から、「西友はいつになったらやるのか」と言われ、肩身の狭い思いをしました。
  2003年に1万2000名のメイト社員に労働条件、仕事と職場の状況、働き方、労働組合について意識調査を行い、約半数の方から回答を頂きました。半数は組合の必要性を感じているという答えでしたが、「わからない」という回答もたくさんありました。
  次にメイト社員集会をやりました。事業所毎に約8000名のメイト社員の方と色々な話ができました。2005年には、メイト社員懇談会を北海道から九州まで拠点毎に30回程度開催し、職場からみた労働組合活動と営業の課題について話をしました。
  さらに、加入していただくにあたり、労働組合は何をやっているのか認知して頂くため、1年間のお試し期間を設けました。例えば、共済制度ですが、結婚、出産、家族の死亡や病気という時に、支援するものです。従来の考え方ですと、入社、結婚、出産、お子さんの入学といったパターンですが、多くのメイト社員の方は該当項目が無いので、項目を変更しました。また、組合主催のウォルマートのハワイ店舗の見学、リーダーシップセミナー、野球観戦ツアー等に参加していただきました。これらは組合員になる前に組合員と同じ条件で対応しました。さらに、広報には気を遣いました。情報を伝えるために色々なツールを使わなければなりません。組合の機関誌をまとめて店に送っても、なかなか手元には届きません。そこで、一人ひとりのお名前をつけて送付しました。
  本来、組織化は組合の自主的な活動ですので、会社と話し合わなくてもできることですが、加入後の労働協約の改訂等、会社との間で協議してきました。そして、加入同意書の回収です。2006年の4月から2カ月をかけて900名弱の方一人ひとりに説明させていただき、加入同意書に印をもらいました。スタート段階でどうなるかと心配しましたが、90%強の方に快く加入頂きました。いろんな理由があって加入しない方もいましたが、会社と協定締結後に再度説明をして加入頂き、2008年8月段階で1500名まで増えています。一人ひとりから組合費を集めて回るのは困難なので、給料天引きでお預かりするというチェックオフ協定を会社との間で結びました。さらに、ユニオンショップ協定という組合員の対象範囲になれば組合員とするという協定も締結しました。
  実際にメイト社員の方から寄せられた声には、「入ってメリットがあるのか」「負荷が増えるのではないか」「組合費が高い」「組合費をどういうことに使っているのか」「組合役員になったら仕事以外の活動をするから大事な時間がなくなるのではないか」等、様々なものがありました。そういうことに一つひとつお答えをしていきました。そして労働条件の改善に関しては、均等・均衡待遇を含めて労働組合として取り組んでいます。
  組合では、店を分会、さらにその分会が集まって地域ごとに支部と呼んでいます。実際に支部や分会の役員として活躍されているメイト社員の方もおられます。またメイト組合員の集会を開く等、いろんなコミュニケーションの機会をもうけています。

(3)均等・均衡処遇に向けた取り組み
  西友労働組合の考え方について、個人の都合と仕事、賃金を基準に図表化してみました。図の左の上が本社員、下がメイト社員です。以前は、完全に分離していましたが現在はひとつにし、個人のニーズと賃金の関係をひとつのベクトルとする考え方で進めています。
  次に、差があって然るべきものと、差があってはいけないものについての考え方を整理しました。合理的理由として考えられるものは、差があってもよいということです。例えば、マネージャーのように、仕事のグレードが違う方はそれに合わせた賃金格差があってもよい、あるいは評価による違い、勤務範囲の違いもあります。西友は全国にありますから、転勤するときに場合によっては転居が発生します。以前は、パートタイマーの方は転勤がないということで違いをもうけていたのですが、2008年春に本社員の制度を変更し、本社員の勤務地限定制度がなくなりました。どこでも行くというのではなく逆に、転居をしなければならない転勤は本人の同意がないとできないという逆の縛りをもうけました。その意味で、メイト社員との差がなくなりました。あとは、時間帯や職種の違いです。逆に合理的な理由にならないのは、性別、学歴、年齢、勤務年数、労働時間の長い短い、これで差を付けるのはおかしいということです。

均等・均衡待遇に向けた取り組み

 均等・均衡待遇は今盛んにいわれていますが、西友労働組合は、時代環境の変化や法律の変更などにあわせて、色々な取り組みを行ってきました。2008年から施行された改正パート労働法では差別的な待遇をしてはいけないとか、福利厚生を同じような条件にしなさいといわれています。遡れば1993年に慶弔休暇制度を改定しました。親が亡くなった場合に特別有給休暇がありますが、1993年以前は本社員とメイト社員で日数が違っていました。一日の労働時間や一週間の契約日数が短くても悲しみは同じですから、同一にしました。
  2004年には本社員への登用制度を導入しました。育児休業や時間短縮の制度は、本社員とメイト社員同様です。一時期時間短縮して保育園の送迎等をする制度ですが、パート社員の場合契約時間を変更すれば可能という事もありますが、労働時間が短くなると、社会保険非適用等もあるので、同様にし、小学校3年生の夏休み終了まで期間を延長しました。
  メイト社員の連続休暇は半期で9連休という制度を導入しています。また、一般的に土日が休みの会社だと土日以外に休む場合、有給休暇になりますが、小売業では交代で休むので、AさんとBさんで調整して私はその日に休むので代わってくださいということが安易にでき、なかなか有給休暇の取得が進まないという実態がありました。これも計画年次有給休暇(2日)をきちんと取るという取り組みを進めています。

(4)西友の人事制度
  ウォルマートとの提携をきっかけに、仕事のやり方を見直すのに伴い、効率的にやっていこうということがありました。2004年10月に人事処遇制度を改訂しました。成果主義を更に進め、家族数や居住地にかかわらず仕事に対する賃金とするために、家族手当や地域手当をやめて、全部本給に組み込みました。そして本社員とメイト社員制度の一本化をやりました。人材教育・能力開発の体系化や評価制度も変え、本社員もメイト社員も同じグレード、同じ仕事をしている方であればまったく同じ評価表を使うようにしました。同一グレードの中にメイト社員も本社員も入り交じった状況でやっています。時間給と月例給の違いがあっても後は基本的に同じという仕組みです。
 同じグレードで働いている人たちの教育・能力開発は同じカリキュラムで進めていきます。パソコンを使った基本業務の教育や、ある一定の習熟度合いを認定する仕組み、これは各事業所でパソコンを使ってやります。マネージャー等が実際の売り場を使って研修する仕組みもあります。全国6カ所の施設、実際のお店で行います。それ以外の専門の技術を学ぶ研修もしています。
  以前は、このような体系的な教育の仕組みはありませんでした。私が入社した頃はOJT(オンザジョブトレーニング)といわれ、実際に仕事をやりながら上司や先輩から仕事を教わって覚えていくということですその頃は確かにOJTとは呼んでいましたが、300の店があれば300通りの教え方があり、その上司の考え方でやっていて、まったく統一性がありませんでした。転勤したら通用しないということもありました。今は体系的な教育・研修をすることで標準化をしています。

人事制度の概要

 キャリアパスについては、左がメイト社員で右が本社員です。新入社員で入って、次のグレードに上がって担当者、その次に昇進のプロセスを経てそれぞれの道に分かれていきます。メイト社員は勤務時間数の基準ありますが、同じ評価で基準を達成すれば上にあがれる、まったく同じ登用プロセスをへて、「係マネージャー」になれば、ここの段階で本社員に随時変更ができるという制度に変更しました。「リーダーメイト」になり、基準を達して昇進プロセスを通れば「メイト係マネージャー」になり、ここで本人の選択で本社員になれます。2006年11名、2007年8名、2008年は半期だけで18名の方が転換しています。

(5)今後の課題
  まだまだやらなければならないことがたくさん残っています。メイト組合員の方からもっとこうしてほしいという声があります。賃金や休暇制度、特に有給休暇の取得、福利厚生もまだこれから整備が必要です。本社員への区分変更のポイントの増設や、研修機会の拡大など、それぞれのメイト社員の声を直接聞きながら、優先順位をつけて対応していきたいと思います。そこで働いている皆でなんとか業績を上げて自分たち、あるいはお客様に対してきちんと返していこうという気持ちで仕事をしております。
どうもご清聴ありがとうございました。

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