労働諸条件の維持・向上に向けた取り組み-賃金決定における取り組みを中心に-
1.はじめに
みなさん、こんにちは。ただいまご紹介頂きました、不二サッシユニオンの林典子です。最初に自己紹介をさせていただきますが、この字で林典子(はやしふみこ)と読みます。なかなかこの漢字で「ふみこ」と呼ばれることが少なく、今でいうキラキラネームの走りかな、と自分では思っているのですが、辞典の「典」は文章や手紙という意味があるらしく、父曰く、あながち読めない字ではないんだよと聞いています。現職はご紹介いただきましたように、不二サッシという会社の労働組合の中央執行委員長という役割を担っています。労働組合の中の代表者ということです。よく新入社員の方々に労働講座で話す時に、中央執行委員長というのは学生のみなさんで言えば、生徒会長と一緒で、選挙で選ばれる、みなさんの代表という意味なんですよ、とお話させて頂いています。私は1982年、不二サッシに入社しました。企画部コンピュータ室(現:情報システム部)に配属になります。それから何年か経ちまして、2002年に初めて労働組合に入ります。2008年には専従役員として、会社と協定し、一日中、労働組合の仕事だけを担当することになります。以来ずっと、労働組合の専従をやっておりまして、2010年からは上部団体のJAMという所の役割を担って、今日に至るという事です。今日はこういう立場で、不二サッシの賃金制度を中心にお話をさせて頂ければ、と考えております。
2.不二サッシ株式会社について
続いて、不二サッシはどんな会社かということなのですが、窓を作っている会社です。
特に窓枠を作っており、「窓から夢をひろげていきます」というのが会社の経営理念です。「私たちはお客様との絆を大切にします」「私たちは心をこめた商品を世に出します」「私たちは活力あふれる気風づくりに努めます」を日々心に持ちながら、企業の中で働いているということです。本社は神奈川県川崎市にあります。創業が昭和5年、設立が昭和44年です。全国に支店が6つあり、営業所が15あります。京都の駅前にも、京都営業所があります。国内の工場は、自社工場としては千葉工場だけになります。社員数が902名、連結という形をとっていますので、グループとしては約3,000名です。事業内容といたしましては、現在では、アルミサッシがあたりまえですが、もともとは木製の窓枠であり、日本で初めてアルミサッシを作ったのは弊社です。同業他社は沢山ありますが、アルミサッシのパイオニアと見て頂ければと思います。セグメントでは、色んな事業に携わっていますが、やはり建材に関わる事業が60%を占めており、それ以外の外販・環境・物流もありますが、サッシづくりがメインの会社です。商品としてはビル建材事業・住宅建材事業・光建材などがあります。ビルと住宅は同じ窓のように見えまして、実は住宅は標準品が多いのですが、ビルとなると、最初にビルを建てる時から一緒に設計に携わっていきます。不二サッシグループは全部で27社あり、全部まとめて連結決算という形を取っております。そして今、赤い文字が入っている企業に、それぞれに労働組合があり、それぞれ独立して活動している状況です。
私は、労働組合の産業別組織:JAMに携わっておりますが、本部のある会館の窓は弊社のものになります。大阪近郊で、皆さんが知っているようなビルを確認したところ、星野リゾートも弊社です。それから、神戸・三宮の阪急ビルも全面弊社でやらせて頂きました。後、横浜にあるランドマークタワーも弊社が担当しました。今、光建材という所にも力を入れていて、光建材を利用したスタンドやライトを使いながら、ビルの壁面にも意匠を凝らしたものを作成しております。
私がいる不二サッシユニオンという労働組合の設立は、戦後すぐです。
昭和21年から、前身の労働組合が始まって、今に至るということで、労働組合の中でも非常に歴史が古い労働組合の位置付けです。少し変わった形をとっていまして、親会社の不二サッシ株式会社、その下のグループ会社を全部あわせて、一つの労働組合、不二サッシユニオンとなり、それを3つの支部に分けて活動しております。全部で労働組合員は1,400人ほどで、男女比としては、女性比率21.64%で、これは製造業の中ではかなり高い状況です。本社支部とはモノづくり現場ではなく、営業・スタッフ部門なので、約40%弱の高い女性比率となっておりますが、千葉と九州は現場で、特に九州は夜勤等もあるので、若干、女性の比率が低い状況にあります。
不二サッシユニオンの正式名称は「日本労働組合総連合会、ジェイ・エイ・エム、不二サッシユニオン」です。これは、「連合の中の産業別労働組合JAMに加盟している不二サッシユニオン」ということで、このような正式名称となっております。連合は全国で700万人いる組織です。その中でJAMは5番目に大きな組織で、全部で39万人の仲間がいます。ただ1万人を超える大きな組織から、10人以下の小さな組合まで、約1,800の組合が加盟しているのが特徴です。今、テレビで連合会長のお顔を時々お見掛けすることがあるかもしれませんが、連合のトップに初めて女性が就任しまして、JAMの加盟組織の執行委員長です。この方もJUKIという会社の労働組合としては決して大きくはない組合から出た代表という意味でも、芳野さんの誕生は大きな節目なのではないか、と思います。
3.賃金について
ここから「賃金とは」についてお話させて頂きます。「賃金とは」ということですけれども、使用者が労働者に対して労働に対する報酬として支払う対価のことです。労働基準法の中に賃金とは何かがうたわれており、「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払う全てのものをいう」ときちんと定義されております。労働者の労働の対価ですが、賃金体系は各社によって大幅に異なっているということを併せてご確認頂ければ幸いです。労働基準法第3章にもう少し細かく賃金について定義されております。賃金とは通貨で、直接労働者に全額を支払われなければならない、要するに分割払いの禁止が定義づけられております。ただ、その後ろに但し書きがあって、労使協定で定める所があれば、その部分に対しては、必ずしも、その限りではないと示されています。毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないと決まっております。
また、労働者が出産や病気、災害など、その他の厚生労働省令で定める非常の場合の費用の請求は、支払期日前であっても支払われなければならないという定めがあり、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合において、使用者は休業期間中、当該労働者にその平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないという決まりがあります。例えばコロナにおける一時帰休や自宅待機を要請した時にも、賃金を保障しなければならないルールで、これはコロナ禍において、多くの企業で、適用された制度です。出来高払いに関しても、使用者は労働時間に対して一定の賃金を保障しなければならないです。また各都道府県別に最低賃金も定められているので、どんな人でも最低の額を保障しなければならないというルールが決まっています。賃金に当てはまらないものとしては、結婚祝い金、病気見舞金、弔慰金、退職金等は賃金とは言いません。また使用者が福利厚生として使用する利益または費用やレクリエーション施設、住宅貸与等は給料とは言いません。そして企業の設備、作業服や作業用品、出張旅費は給料として扱いませんという定めになっています。但し予め賃金規定として定めてあれば、これを賃金とすることができます。
法律なので、色々と難しい文言が出てきていますが、これから、弊社の賃金制度についてお話させて頂きながら、少し具体的に話をしていきます。
4.不二サッシの賃金制度について
4-1 最低賃金について
まずは最低賃金という言葉です。これは既にご存知かと思いますが、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた制度で、毎年改定されます。都道府県毎に定められた地域別最賃と特定の産業別に定められた特定最賃があります。最低賃金は賃金の実態調査や結果を参考に、最低賃金審議会で決定されています。公・労・使の三者で構成されて、毎年、最低賃金は改定されています。地域別最低賃金は全国47都道府県別に最低賃金が決定されています。一番高いのは東京の1,041円、神奈川県は1,040円、一番低いのは沖縄県と高知県の820円です。これは時給です。弊社ですと、月の労働時間が158時間になっているので、月給で言えば2万円から3万円違ってくることになります。なので、アルバイトの方も県境に住んでいる方は、隣の県に行った方が、最低賃金が高くなるかもしれません。
4-2 不二サッシ株式会社の賃金制度
こういった社会的な情勢を見た上で、より具体的に、弊社の賃金制度について、少しお話させて頂きます。まず不二サッシの賃金制度は基準内賃金と基準外賃金という2つの柱に分かれています。基準内賃金とは「一賃金支払い期間の所定労働時間(月158時間)を勤務した場合に支払われる固定的な賃金、基本給、毎月固定的に支払われる諸手当」です。対して、基準外賃金とは「所定外労働(158時間を超えて働いた分)に対して支給される割増賃金など、毎月固定的な支給が確定していない、変動的部分の賃金」です。弊社の場合は、基準内賃金には基準給があって、これが賃金の根幹をなすところです。基準給は年齢給と職能給の合計で決まります。この固定的に支払われる手当の中には、役割手当・家族手当・住宅手当・職務手当・営業所手当・交替手当・出向手当があります。例えば役割手当では、その人がグループ長や課長であれば支給される手当です。家族手当も、その人に家族がいるならば支給、住宅手当も固定的に支払われます。対して、基準外賃金は沢山ありまして、別居手当・寒冷地手当・時間外手当・夜勤手当・時間外運転手当・走行手当・職務手当(付加手当)・公的資格手当・施工管理現場手当です。例えば、別居手当は転勤されている方に対して、基準外という形でお支払いします。また時間外手当は残業に対して支払います。このほか、属人的手当というものがあります。これは回りを囲ってある住宅手当・家族手当・寒冷地手当を指します。この手当は、その人の働き方に直接関係がない手当ということです。例えば、同期で入ったAさんとBさんが同じように働いているのに、家族が多いAさんの方が、賃金が高いということです。やはり日本企業は社員が生活していく事も賃金計算の中に盛り込んでいるので、その人の働き方とは直接関係がない事由で支給されている手当もあるのです。これは、年々無くしてきている会社が多いのが労働組合としては残念ですが、基準内賃金の中に組み入れている会社も増えています。
今の不二サッシの賃金制度になったのは2001年で、20年も同じ制度を使用している企業は珍しいです。その時に会社が提起したのは、年功部分を極力排除し、業務連動型の人事制度を作りたいということでした。そして、成果を上げることに貢献した人がその度合いに応じて適正に評価を受ける。それから、一時的に昇格や昇給が遅れても、追いつくこと、追い抜くことが出来る制度にしよう。評価に応じて抜擢昇格や昇給を行い、評価が悪ければ降格する事もあるというのが今の制度です。
先程、年功序列型を極力廃止といいましたが、年功序列型というのは、勤続年数が長ければ長いほど賃金水準が上がっていくという非常にシンプルな制度で、高度経済成長期を支えてきた、日本の伝統的な賃金制度です。
ただ今は、成果主義やジョブ型雇用がよく聞かれるようになってきました。年功序列型もメリット・デメリットはあります。まずメリットは、社員の評価基準が明確になります。それとコミュニケーションの機会も多くなるので、一体感が高まり、企業独自のノウハウの継承と人材育成にも繋がるところが、メリットと言われています。デメリットとしては、社員の高齢化が進めば、人件費が高くなるということです。また、そういう制度にしてしまうと、若手社員が不満に感じるようになるということです。自分の方が頑張っているのに、先輩を抜けないとやる気が無くなり、マンネリ感が上がってしまいます。今は年功序列型から成果主義型に移行する企業が増えていますが、不二サッシも含めて、やはりバランスを図って移行する企業が一般的です。
不二サッシはどうしたのか、というところですが、まず会社に入れば、等級に割り当てられるんですね。それが1等級(高卒者)からずっと上がっていって、6級から次は管理職に上がります。昔は10等級あった社員等級を6等級、管理職も6等級から4等級にして、等級の幅を狭めました。等級を何等級に設定するかは様々な考え方がありますが、やはり等級が3つしかなければ、なかなか等級が上がるチャンスが来ないですよね。より細かくした方が、等級が上がるタイミングが多いので、モチベーションが上がりやすいと言われています。会社に入れば班長や係長、チーム長という言い方があり、該当等級の方がなれますよということです。3等級の人が全員班長になる訳ではなく、3等級から班長になる資格が生まれるということです。だから6等級になっても班長になれない人もいます。この幅で資格が生まれるのが役職です。
もう一つが、部長や副部長、次長、課長というものです。弊社の場合は管理職1級になれば、課長という呼称がつきます。社員4等級からは主任という肩書がつきます。主任という肩書がついていることと班長であることは別物だと理解してください。また、年功序列型を極力排除するとお伝えしていたのですが、今までは年齢給と勤続給、職能給、昇給評価給の4つの合算で決めていたものを年齢給と職能給だけのシンプルな形にしました。年齢給と職能給の合算で決まるということです。
年齢給は年齢別に決まっていて、35歳までは毎年上がります。一方、職能給は等級別・号棒別の賃金テーブルによって定められており、評価によって昇給(同じ等級の中で号棒が上がること)、昇格(等級が上がること)が決まります。
5.賃金プロットの持つ意味
こうやって決まった賃金ですが、特に産別労働組合の中でもJAMが力を入れており、各労働組合にデータ提出をお願いし、作成しているのが、縦が賃金で横が年齢になるこうしたプロット図と呼ばれる図表です。例えば30歳の賃金をプロットするんですね。そうすれば、その人の会社の賃金全体の分布が分かるということです。さっき言った年功序列型の会社だと、これがほぼ一直線になりますが、弊社の場合は年功序列と職能を併用させているので、ややこういった広がりを見せています。これを見て、何を考えるかということですが、例えば、こういう所にいる方(:全体分布から大きく離れた位置にプロットされた対象者のこと)は何故ここにいるのかなということです。何万人もいる会社だと難しいのですが、社員数が比較的少ない企業なら、比較的こういう所に目が当てやすいと思います。理由はいろいろとあります。やはり働き方をもうちょっと努力しなくてはならない方はここにいるかもしれません。後は中途採用の方にとっては、あまり恵まれていない制度になっている事も多いです。これを労働組合は検証します。それから、もう一つは上がり方ですね。この角度で良いのかな。このままでいけば、60歳になっても、40歳になっても、しかるべき賃金に到達できないのではないかということを検証します。
さっきお話した年功序列型はこうなりますよね、一直線に。弊社もそうですが、年功序列型と成果型を組みあわせれば、ラッパ型になる。この一番右側の成果型は、相当極端な例で、日本にはあまりないと思います。どうなったらこうなるのかということですが、年齢給を入れなければ、こうなる可能性があります。同期で入社したAさんとBさんがいますが、Aさんがずっと一定の評価しか取らなければ、賃金は1円も上がりません。
でも、Bさんは優秀で次の等級に上がれば、賃金がポンと上がることになります。
6.賃金格差について
賃金格差にも、ちょっと触れたいと思います。「男女間賃金格差」「正規、非正規間賃金格差」「企業間、企業規模間賃金格差」という言葉があります。まず男女間の賃金格差は、どこかでもうお聞きになったことがあるかもしれませんが、日本の男性と女性の令和2年度の賃金構造基本統計調査における賃金格差はこうなっています。日本の女性の賃金は男性のだいたい70%ぐらいだと言われていますが、もっと大きな特徴で言えば、男性は年齢が上がるに従って賃金が上がりますが、女性は年齢が上がっても賃金がほとんど上がらない状態です。この傾向は、やっぱり改善されていないのが現状です。
なので、法律も変わって、同じように賃金を支払わなければならないと言っているにも関わらず、まだまだ実態としては、このような事が出てきているのが実情です。
そして、かなり古いのですが、JAMが2005年に分析した賃金の結果です。様々なパターンがありますが、「男女がほとんど完全に分離しているパターン」「男性だけー男女混在―女性のみパターン」「男性だけー男女混在パターン」に区分されました。ちなみに、弊社ではどうなっているかというと、やっぱり男性女性ともに、一緒に上がっていっているので、若い世代は、ほとんど差が無いです。ただ、ある一定以上の年齢の方は、割と男性が上に行き、女性が下回っているのが実情です。
それからもう一つは、非正規雇用と正規雇用です。これも良く言われている事ですが、いわゆる正社員の方とパートや派遣、有期契約の方との賃金格差も、まだまだ大きくあり、これは連合も非常に力を入れて取り組んでいる課題です。
もう一つ、これはJAMでも課題となっていますが、会社の規模間によって賃金が違う。コマーシャルをしていたり、日本中で誰もが知っている大手企業もあれば、中小企業もあり、賃金格差がこれだけ出ているということです。但し、これも女性においてはあまり差が出ていないのが見て取れ、低い水準に女性がはり付いているのが現状です。
7.春闘とは
こういったこともありながら、私達は春に賃金引上げを企業に要求して、交渉を行います。これを一般的に「春季生活闘争」、春闘と呼んでいます。
春闘以外にも、秋にも様々な課題について労使交渉が行われます。また冬の一時金を別に交渉している労働組合もあります。春闘で主にどんなことを要求するのかということですが、大きく分けて3つあります。ひとつは賃金です。それから一時金です。もう一つが、諸制度の改善です。これらの項目を会社に要求して、決定しています。ベースアップをいくら要求するのか、その根拠は何かについて少しお話します。
まず要求する内容を要求書という形にします。そこに賃金や一時金をいくら要求しようかを決めますが、一つは社会情勢、例えば物価がいくら上がったのかなということを検証します。それから連合やJAMの方針を聴きます。それから、組合員が今どの生活水準にいるのかを考えます。そして、これはあまり労働組合として考える必要はないと言われますが、最後の最後に企業の支払い能力も若干考慮します。
先程、組合員の生活水準というお話をしたのですが、あるべき賃金水準を労働組合で考えていこうよ、という方向性がJAMでは強くなっています。
要求方針の変遷というお話ですが、過年度物価上昇という言葉があって、昔は年々物価が上がっていったんですね。
それに併せて、私たちも生活が出来ないから、物価上昇分の賃金をください、という話でした。それが、年々物価が上がらなくなって、さあ、どうしようかとなった時に、逆に私達の賃金を上げることで、経済を回していきましょう、人に投資をしましょうということを労働組合の主張にしました。組合の主張は少しずつ変わってきています。今、中心となって考えているのは、やはりあるべき賃金水準に到達しましょうという考えで、要求の根拠にしています。
経済の好循環とは何か、ですが、これは卵が先か鶏が先かということです。先程言いましたように、物価が上がったから生活が苦しいではなく、やはり私たちの賃金を上げて、消費を回していきましょう、経済を活性化させていきましょうという考え方です。
そして右側にあるのが、付加価値の適正配分です。価値を認め合う社会をJAMはずっと言い続けています。先程言ったように、JAMは中小企業が多いので、サプライヤーと言ってメーカーに部品を供給する会社が多いんですね。例えば、ある製品を10万円で売る場合、作る為の原材料費をメーカーは叩いていきたい訳です。10万円のものを作るのに部品が10万円だと儲けが0なので、各部品メーカーにこの部品を5万円で作ってくれないか、と言います。その部品メーカーはお仕事が欲しいから、多少赤字でも、その仕事を受けてしまったりする訳です。それではやっぱり日本の経済って回らないんじゃないか、そもそも商品も10万円で良いのか、もしその商品が12万円の価値があるなら、12万円で売っていこうと、JAMは労働組合として話しています。それが賃金改善に繋がっていく考え方です。過年度物価上昇というのは分かりやすくて、物価が2%上がったんだから、私たちの賃金も上げて下さいという交渉です。これは、JAMでは30歳の平均賃金が30万円なので、その2%分である6,000円を要求していこうと言っています。
何で率じゃなくで、額で要求するのかというと、A社30万円、B社20万円の賃金があった時にその差って10万円ですよね。2%で要求した時に、A社は6,000円の要求、B社は4,000円の要求になってしまう訳です。これが満額回答であっても、差が開いてしまう訳です。A社とB社の格差は縮まらない。これが額で6,000円とすれば、差も10万円のままですよね。差が広がらない。なのでJAMは6,000円でいこうと考えていました。
でも、差は広がらないけれど、縮まらないですよね。そこで出てきたのが、あるべき賃金水準を求めるということです。あるべき賃金水準をどうやって決めるのか、ということですが、私達JAMはデータを沢山持っていますので、そのデータを基に指標を出します。それから都道府県も水準を出していたり、企業によっては同業他社のあの会社に追いつこうという目標もあります。JAMは毎年39万人の組合員全員に賃金のデータを出してほしいとお願いしています。出せないという組合もあるので、大体22万件のデータが平均的に集まり、それを基に中位数や第一四分位をデータとして取ります。18歳から50歳までのポイント毎に、ここをめざそうという指標を毎年JAMは出します。
具体的に、弊社の労働組合では、どうやって要求書を作っているかということですが、12月から準備にかかります。三役が粗々の案を作って、それを基に中央執行委員会という機関で要求案を作成して、支部別に職場委員を集めて研修会をして、それを職場に落とします。これで良いんだろうかと職場の意見集約を行い、最終的に中央執行委員会で要求案を見直します。中央委員会という決議機関を開いて、要求案を承認して、初めて2月に会社に要求書を提出します。そこから3月に交渉が始まります。第1回交渉が終われば、必ず職場委員会を開催して、職場委員に説明して、職場の意見集約をします。その結果を踏まえて、もう一度交渉します。これを何回か繰り返します。だいたいうちは3-4回やります。ある程度煮詰まってくれば、中央委員会で決議を取ります。不二サッシユニオンの場合は、中央委員会というのは30人ぐらいの代議員を集めて実施します。
色々単組によってやり方は違うとは思いますと思いますけれども、意見集約から労働協約の締結まで、すべてに労働組合が関わっていますし、労働組合執行部が責任を持って、組合員に提案し、説明するという流れを担っています。
8.まとめ
まとめになりますが、賃金制度に正解はないですが、私の考える理想の賃金制度は、誰もが働きがいを持って働き続けられる制度であってほしいですし、コツコツと努力した人が報われ、生活ができる制度であってほしいと思います。例えば、大谷翔平選手とコツコツとバントをしたり、犠牲フライを打ち上げている人が同じ賃金にはならないと思いますが、少なくとも犠牲フライを打ったり、コツコツとバントをしている人が、やりがいを持って働くことができる賃金制度であってほしいと思います。以上で、私の講義とさせて頂きます。本日はご清聴頂き、誠にありがとうございました。
以 上
▲ページトップへ |