同志社大学「連合寄付講座」

2017年度前期「働くということ-現代の労働組合」

第14回(7/14

働くことを軸とする安心社会の実現に向けて

ゲストスピーカー:神津 里季生 日本労働組合総連合会 会長

はじめに

 皆さん、こんにちは。本日は、修了講義として「働くことを軸とする安心社会の実現に向けて」をテーマに話をします。これまでの講義を聴いていると、もしかしたら目新しい内容ではないかもしれません。ただ、私が労働組合の専従役員になって、30年以上も労働組合の仕事に関わった経験から、皆さんにお伝えしたいことがたくさんあります。同じ物事でも様々な角度から見ることが大切で、一方だけの見方で勉強や研究を続け、もしもその見方が誤っていたとすると、その誤りは深いものになってしまいます。これまでの講義と重複するかも知れませんが、本日は私なりの言葉で表現し、様々な話をさせていただきたいと思います。
 本日講義させていただく内容は、「1.連合とは」「2.社会インフラとしての集団的労使関係」「3.今の社会が抱える課題」「4.連合が果たすべき役割」「5.連合結成28年目にあたり、二つの問題意識」の5点です。順序を変えて、最後の「連合結成28年にあたり、二つの問題意識」からお話ししたいと思います。また、講義の中で、学生の皆さんから事前にいただいた3つの質問についても答えていきます。

1.連合結成28年目にあたり、二つの問題意識

 二つの問題意識は、「社会への発信力の強化」と「本当の意味で民主主義は育っているのか」です。
 この二つは、皆さんの世代に、特に考えて欲しいテーマです。日本は戦後72年が経ち、世界でも稀にみる平和を享受している国といえます。しかし、これから先どうなるかは分かりません。第二次世界大戦後、7年間のアメリカ軍を中心とした連合国軍の統治を経て、日本は民主主義の独立国となりました。しかし、現在において、その民主主義が本物であるかどうか、このままで皆さんの将来は大丈夫なのか、私は非常に強い危機感を持っています。
 この二つの問題意識は、言い換えると、日本のマスコミと政治に対する問題意識です。私は立場上、マスコミの方と接する機会が非常に多く、たくさんの記者と接して取材も受けますが、新聞の紙面になると、記事はまともであっても、見出しが誤解を招くような表現になっていることがよくあります。そのような表現になるのは、そうした記事を書いた方が売れて、買う人も喜ぶからです。
 マスコミも政治も私たち国民の鏡です。日本は民主主義国家で、有権者が投票し、政治家を選んでいます。投票率が低いのは国民の責任で、政治の姿は、国民の資質を表していると言われます。政治に対して悪く言うということは、自分たちを悪く言っていることと同じです。
 こうした状況だからこそ、連合は発信力を強化しなければなりません。せっかく良いことをやっていても、知ってもらえなければ意味を成しません。世の中には情報が溢れていて、様々なことをネットで検索したり、調べたりすることができます。便利に情報が得られることは活用しても良いと思います。ただ、どの情報が本物であるかということは、目を凝らして見極める必要があると思います。
 人間は言葉を用いて情報を交わしています。言葉の場合、話の中のある部分だけを取り出して加工し、新聞やテレビで報道されてしまいます。そうすると、受け手は、偏った情報を受け取り、それが誤解に繋がるのです。
 次は、民主主義は育っているのか、についてです。2016年より、日本の選挙権年齢が18歳に引き下げられました。日本では新しいことのように報道されていますが、イギリスやアメリカ等の先進国では、随分前から実施されています。発展途上国においても、実施されている国は非常に多いです。

図表1 主要先進国における選挙権年齢

資料出所;講義資料より。以下、同様。

 たった2歳の引き下げではないかと思われるかも知れませんが、これは象徴的な事例で、日本は、一人ひとりが政治と向き合うための仕組みや土壌づくりが遅れていると感じています。18歳選挙権がスタートするのに伴い、高校では模擬選挙なども行われました。戦後70年以上が経ち、ようやくそうした取り組みがスタートしたのです。若い人たちは投票に行かないとよく言われます。私もそれは良くないと思っていますが、若い人たちが投票に行かない風土をつくったのは、私も含めて戦後に生きてきた人たちです。20代、30代の国政選挙の投票率は30~40%台で、約3分の2は投票していないことになります。皆さん同士で政治の話をしても、投票した人は少数派ということになるでしょう。このままでは、いつか日本は破綻してしまうのではないでしょうか。
 若い人たちが投票に行かない風土をつくっている要因は他にもあります。例えば大学へ通う場合、地元の学生であれば住んでいる場所に住民票がありますが、遠くから下宿などして通っている学生であれば住民票が地元のままで、不在者投票をする必要があります。それには手間もかかります。日本の公職選挙法には規制が多く、SNSなどのウェブサイトを用いた選挙運動はできるようになりましたが、電子メールは制限されています。変えるべきことがたくさんあると私は感じていますが、そうしたことを変えていくためには、選挙へ行くことが大切です。このことは、皆さんの胸にとどめていただきたいと思います。

2.連合とは

 続いて、連合について話をしたいと思います。企業固有の労働条件や経営課題を解決するのは企業別労組の役割で、産業の課題を解決するのは産業別労組の役割です。そして、連合は、日本全体(オールジャパン)の課題を解決することと、働く者一人ひとりの悩みや想いに向き合うことという、極めて大きいことと小さいことの両方に取り組んでいます。

2-1.5つの安心の橋と働き方改革
 日本全体(オールジャパン)の取り組みは力と政策です。ここで、学生の皆さんからいただいた1つ目の質問に答えたいと思います。
 「連合は『働くことを軸とする安心社会』を掲げて、5つの安心の橋をかける運動を展開されていますが、現在、政府が進めている働き方改革とはどのように違うのでしょうか。また、重複する部分もあるのでしょうか」というご質問です。
 連合は、企業別労組や産業別労組では解決できない社会全体の課題解決をはかるために、政策パッケージを策定して取り組みを進めています。この政策パッケージでは、まず、「働く」ということに最大の価値を置いています。特に日本人は、「働く」ということに価値を置きますが、働かないと社会は成り立ちません。この「働く」ということと、「教育」「家庭」「失業(失業から就業へつなぐ)」「退職(生涯現役社会をつくる)」「雇用(働くかたちを変える)」という5つの概念を、「安心の橋」で結ぼうというものです。
 政治や政策は、無関心であっても無関係ではいられません。何を実現するのか、どういう社会をつくっていくのかということを分かりやすく示し、私たち国民が応えていくことが重要だと考えています。

図表2 5つの安心の橋

 そして、働き方改革について、最近、報道でご覧になった方も多いと思いますが、2016年9月から2017年3月までの半年間、「働き方改革実現会議」が開催されました。私も労働界の代表として議論に参加し、連合の政策パッケージについて会議の中で説明を行っています。そして、「働き方改革実行計画」として、記載の12項目が政府によって取りまとめられました (図表3、4)。
 中身を見ていくと、「賃金引上げ」はもちろん重要な取り組みです。連合は、「誰もが時給1,000円」という最低賃金の目標を定め、毎年議論を行っています。
 そして、現在の日本の状況を見て、特に全力で取り組まなければならないと感じているのが「同一労働同一賃金の実現」と「長時間労働の是正」です。これは連合の長年の主張で、「働き方改革実行計画」にも盛り込まれています。

図表3 「働き方改革実行計画」に対する連合の評価

 それでは、5つの橋と働き方改革との関係についてですが、「同一労働同一賃金の実現」は、「雇用(働くかたちを変える)」の橋と大きく関わっています。パートタイムや契約社員、有期雇用等、正社員とは異なる雇用形態の労働者は非正規労働者と呼ばれています。非正規労働者の賃金は正社員よりも低い状況にあります。
 パートや派遣で働きたいという人がいることは当然だと思っています。特に派遣については悪いイメージが定着していますが、技術を身に付け、プロジェクト等に派遣されて能力発揮し、お金を稼ぐのが本来の派遣の姿です。今でもそうして働く派遣労働者がたくさんいます。個々のニーズにマッチした多様な働き方ができて、そして、処遇の水準もしっかり担保されていることが重要です。残念ながら、福利厚生や通勤手当等で差が生じているケースも多くあります。また、こうした格差は、雇用形態だけでなく、性別や企業規模によっても生じています。仕事の違いが認められる合理的な差でなければ、経営者や使用者は、その差が理にかなったものであることを説明できなければなりません。
 続いて、「長時間労働の是正」は、「家庭」の橋と大きく関わっています。「働き方改革実行計画」には、時間外労働の上限規制の創設が組み込まれ、これは大きな前進といえます。現行の労働基準法では、労働時間が1日8時間、週40時間までとなっています。しかし、労働基準法第36条に基づいて労使で協定を締結すると残業できるようになり、それが36協定と呼ばれるものです。さらに、特別条項を付けると、何時間でも残業できるようになり、上限はありません。
 1947年に日本で労働基準法が成立した際、最初は残業時間の上限を設けようといった議論もなされたそうです。しかし、戦後は、働いて賃金をもらわないと生活ができない人が多く、また、日本が焼け野原になり、国土を復興するため、みんなで働かなければならないという状況がありました。最終的には上限が設けられず、そのまま現在に至っています。
 それから70年が経ち、時代も大きく変わりました。最近では、過労死や過労自殺という言葉がマスコミにもよく取りあげられています。厚生労働省の発表によると、2016年度は過労死が107件、過労自殺が84件認定されています。過労死と過労自殺を合わせると191件に及びます。これは、日本のどこかで2日に1人以上、働きすぎが原因で亡くなっている人がいるということです。欧米ではこうした事例がほとんどなく、英語の辞典にも「過労死」が、日本発の世界共通言語として、”karoshi”と掲載されています。こんな不名誉なことはありません。
 今回の働き方改革では、「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」を締結しました。
 時間外労働の原則的上限はあくまでも月45時間で、報道された月100時間は忙しい時に限った上限です。月100時間というのは、過労死の認定ラインと同じ水準で、100時間に到達した場合は、他の月で調整しなければなりません。

図表4 時間外労働の上限規制②

 昭和30年代から40年代の日本の高度経済成長期、男性正社員は長時間労働が基本でした。毎年10%以上の経済成長を遂げていた時代です。その頃働いていた世代は、そうした時代の記憶からなかなか抜け出すことはできません。もちろん、一生懸命働くことは大事ですが、一生懸命働くことを、夜中まで残業することと同じように捉えてしまう日本人の考え方は変えていく必要があります。夜中まで仕事をしていたら、家庭のことは全くできません。
 「長時間労働の是正」は、過労死や過労自殺の撲滅とともに、社会の悪しき常識を変えていく上でも重要な取り組みだと考えています。残念ながら日本の社会は、育児や介護について、女性に頼りきっているのが現状です。男性だけが働く社会を見直し、女性も男性も、望んだ仕事に就いて、能力を発揮できる社会をめざしていく必要があります。
 さらに、「働き方改革実現会議」では、テレワーク・兼業・副業についても議論しました。例えば、2か所で働いている場合、どちらが残業代を支払うのか、ルールを決めて、労働時間を管理していくことが不可欠です。
 その他にも、教育環境の整備は、「教育」の橋と大きく関わっています。2017年3月に、返還不要の給付型奨学金がスタートしました。また、就学前教育の完全無償化は連合の主張でもあります。そして、高齢者の就業支援は、「退職(生涯現役社会)」の橋と大きく関わっています。このように、5つの橋は、働き方改革と非常に大きく関わっているのです。

2-2.時間外労働の上限規制等に関する労使合意
 時間外労働の上限規制について、もう少し補足しておきます。
 「長時間労働の是正」については、新聞の見出しに、「単月で100時間残業」と掲載されました。私が異議を申し上げ、労使で話し合うことになり、経団連の榊原会長と会話し、「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」を締結しました。
 その中で、原則的上限の45時間に近づける努力が重要であること、そして、個別企業労使に時間外労働の削減に向けた不断の努力を求めることを約束しました。月100時間の上限についても、私たちはもっと下げたいという思いがあり、法律施行5年経過時に労働時間法制のあり方全般について検討を行うことが検討規定として盛り込まれました。
 さらに、これは政府が想定していなかったことですが、努力規定として、仕事が終わってから次の仕事を始めるまで、一定の時間を置く「勤務間インターバル制度」を法律に盛り込むことに合意しました。EUでは、勤務間インターバルが11時間と定められています。仕事が遅く終わり、次の朝早くから出勤するとなると、寝る時間がありません。勤務間インターバル制度については、春闘で要求し、回答を引き出したというケースも多く、過労死や過労自殺の撲滅に大きな効果があると認識しています。
 過労死や過労自殺を撲滅させるためには、労働時間の問題だけでなく、パワハラ対策も重要です。今回の「働き方改革実行計画」には、企業に対するパワハラ対策の義務化を検討することも盛り込まれています。皆さんも社会に出て、様々な職場で働くことになると思います。上司と部下の関係は、どこにでもあると言えます。上司も人間で、完全な人間などいません。上司と部下はめぐり合わせで、そのために思い悩み過ぎないよう、皆さんも気をつけて欲しいと思います。
 時間外労働の上限規制は大きな前進として捉える一方、労働基準法をめぐっては、「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入なども同時に議論されています。これに対しては、連合は強く反対しているところです。

2-3.地域運動の深化
 続いて、地域運動について話をします。地域運動の深化というのは、一人ひとりの働く者の思いに向き合うということです。近年は、アルバイトを辞めたくても辞められないことがあると聞きます。連合は、そうした時に駆け込める場所として、「連合相談ダイヤル」を実施しています。
 連合の組合員でない人でも、「0120-154-052(行こうよ、連合に)」へ電話すると、その地域の地方連合会や地域協議会に転送されます。連合全体で年間約1万6,000件の相談を受け付けて、相談内容によっては、経営者との団体交渉や、労働組合結成の支援を行うケースもあります。労働相談を通じて、労働組合のない中小企業の労働者の悩みや想いに向き合うこともあります。
 ここで、学生の皆さんからいただいた2つ目の質問に答えたいと思います。
 「これまでの講義を通して労働組合の意義について理解することができました。しかし、中小企業の組織率は極めて低い状況にあり、また、直ちに組織化することも困難だと思います。この現状で、連合は中小企業の労働者に対してどのような対策を考えられているのでしょうか」というご質問です。
 労働組合の組織率は、雇用労働者数を分母、労働組合の組合員を分子として算出できますが、日本全体では17.3%、1,000人以上の企業では45.3%となっています。ところが、100人未満の企業では1.0%と非常に低くなります。
 春闘の歴史で見ていくと、1955年に春闘が始まり、物価とともに賃金も上昇しました。この頃は、中小企業も労働組合のない企業も含めてみんなの賃金が上昇しました。

図表5 物価上昇率と賃上率の推移

 33%まで上昇した賃上率はオイルショック時に大きく低下し、さらに90年代にはバブルが弾けました。バブルが弾けて数年は物価が上昇したため、しばらくは中小企業や労働組合がない企業の賃金も上がっていました。しかし、デフレで物価が上がらなくなると、企業の規模によって毎年の賃上率に差が生じるようになりました。これが積み重なり、賃金に大きな開きが出てしまいました。
 20年前の30歳の賃金水準を見ると、1,000人以上の大企業と100人未満の中小企業でほとんど差はありません (図表7)。しかし、その後の20年で2万円をはるかに超える差が生じてしまいました。連合はこうした格差を是正すべく、2016年から、「底上げ」を特に意識した取り組みをスタートしました。

図表6 平均賃金方式での賃上げ状況の推移

図表7 全体が低下する中で広がる賃金格差

 春闘の方針も、中小企業が大企業を上回ることをめざしています。日本では、大企業の方が中小企業よりも偉いという悪しき考え方があるようですが、例えば、ドイツでは、中小企業は自分たちが生み出したものを活かして、当然のように大企業と対等な取引を行っています。日本のこの悪しきヒエラルキーは、変えていく必要があると感じています。
 また、労働組合をつくることは一朝一夕にできることではありませんが、労働組合がない中小企業も、賃金制度をつくることが重要です。連合は中小企業家同友会や全国中小企業団体中央会等の中小企業の団体とも意見交換を行っており、そうした場でも訴えかけています。

2-4.法律改正以外の連合の取り組み
 学生の皆さんからいただいた最後の質問に答えたいと思います。
 「同一労働同一賃金の実現や過度な長時間労働の改善に向けて、労働法をどのように改正すべきかが検討されています。これらの目標を達成するために、法律の改正以外の方法として、労働組合が現在、あるいは今後、取り組もうとされている施策があれば教えて下さい」というご質問です。
 私は、やはり世論喚起が重要だと考えています。法律をつくるということは非常に重要ですが、それで万事解決ということにはなりません。例えば、36協定について、残業が発生する場合、その企業に労働組合があれば、労働組合が企業側と協定を締結しますが、労働組合がなくても、当該事業場の労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出し、協定を締結する必要があります。しかし、社会の44.8%の企業で36協定が締結されていません (図表8)。過半数代表者についても、本来は民主的なルールに基づいて選出されなければなりませんが、社員会等の代表者や総務課長が担っているケースも多く、形骸化しています。こうしたことから、連合は現在、36協定に関するキャンペーンを大々的に行っているところです。

図表8 数字で見る36協定

3.社会インフラとしての集団的労使関係

 日本の労働組合の特徴は、企業ごとの労使が、労働協約を軸として賃金等の労働条件を決めていることです。徹底的に話し合って物事を決めていくことは非常に重要で、その積み重ねが社会を支えていると私は感じています。労使関係はその1つの代表例だと思います。会社が永続的に発展するためには、労使で嘘は付けません。労使がお互い誠実に情報を開示し、言葉を切り取ることなく話し合うことが大切です。
 一方、欧州では、産業別に労働協約を締結します。労働組合の組織率と労働協約のカバー率(図表9)を見ると、日本の組織率は17.3%で、労働協約のカバー率も近い水準です。ところが、欧州では、組織率は様々ですが、労働協約のカバー率が非常に高い国が多いです。特にフランスの場合、組織率は日本よりも低く約7%ですが、その労働組合が決めた賃金や労働時間などの労働協約が100%近くの人に適用されます。先ほど、労働組合がある大企業と労働組合がない中小企業で、賃金に大きな差が生じているという話をしました。フランスのような仕組みがあると、こうしたことは起こりにくくなるでしょう。

図表9 先進諸国の労働組合組織率と労働協約カバー率

4.今の社会が抱える課題

 今後の社会について、少し話をしたいと思います。
 少子高齢化が進み、人口減少社会が到来しています。公的年金は積立ではなく、現役世代の保険料から支払われています。かつては、10人で1人の高齢者を支えていましたが、それが騎馬戦型から肩車型となり、支え手がどんどん減少している状況です。
 そして、皆さんの将来に大きな影響を与えるのが日本の財政状況で、国の借金はどんどん増えています。日本は家計の貯蓄率が高く、日本の国債も国内で買い支えているので大丈夫だという意見もありますが、果たしてそうでしょうか。アベノミクスの異次元金融緩和は、一時的に効果があったものの、その後は頭打ちになり、予算で立てた税収が不足する状況が続いています。
 非正規労働者の処遇や、大手企業と中小企業の賃金に大きな差があることなどを考えると、みんなが貯金して、税金や保険料を多く支払える社会ではありません。そうすると、税収が増える見込みも立ちません。

図表10

 小泉元総理は、自分が在職中は消費増税を行わないとおっしゃっていました。安倍総理も、日本の経済状況を理由に、消費増税を先送りしました。このことについて、皆さんはどう考えるでしょう。とりあえず良かったと思っているとしたら、それは違います。なぜなら、その分は、皆さんの将来にのしかかっていくからです。その政治家が主張している政策が本物かどうかを見極める上で、私は「将来世代のことを考えているか」ということを判断基準としています。高齢の世代の人たちからすると、消費増税の先送りは嬉しいことかも知れません。しかし、皆さんの世代にとってはどうでしょう。しっかり政治と向き合い、考えて欲しいと思います。

おわりに

 政治とどう向き合うかということとも関わりますが、日本人は物事が決まっていくことについて、他人事のように考えてしまうところがあります。皆さんも、世間のことを、自分たちとは違うことのように考えてしまっているのではないでしょうか。皆さんには、そうした日本人の考え方から早く脱して欲しいと願っています。一人ひとりは社会の中で生きていて、社会を良くしていくのはその一人ひとりです。
 ご清聴ありがとうございました。

以 上

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