同志社大学「連合寄付講座」

2012年度「働くということ-現代の労働組合」

第3回(4/27

労働組合とは何か~単組、産別、ナショナルセンター、地域組織の役割と活動

ゲストスピーカー:細田 一三 連合京都 会長

はじめに:働くということとは
 連合京都の細田です。本日は、労働組合とは何か、ということについてお話をさせていただきます。その前に、まず、働くということとはどういうことか、について簡単にお話しておきたいと思います。働くということ、すなわち労働者とは、事業主との間で労働力を対価として賃金契約を結んだ人のことを言います。

2.労働組合とは
 労働運動は、「人間尊重」や「自由・平等・公平」の精神を持ち、お互いが助け合い、協力し合い、みんなの幸福な暮らしを生み出すために、助け合いの精神・人間愛・ヒューマニズムの考え方から生まれてきました。つまり、労働組合は一人ひとりがお互いを尊重し、弱いところは助け合いながら、働く者の豊かな素晴らしい人生を創造するためにつくられました。民主的な労働組合は、自由と民主主義、そして人間の尊重を何よりも大切にしています。その目的は、企業の健全な発展と働く人たちの経済的・社会的地位の向上です。これらを実現するために、労働組合は4つの民主主義を基調の考えとしています。
 その1つ目は組合民主主義です。民主主義の基本は意見の多様化を認め合うことです。物事をどういう形で進めていくかということを、メンバー全員で自由に討論し、決めていきます。これが組合民主主義の基本的な考え方です。2つ目は産業民主主義です。働く人の豊かな暮らしを実現するためには、企業の安定や発展が一番大切です。経営のチェックをしながら、企業の健全な発展につとめていくことが、労働組合としての社会的責任を果たすために大切なことです。ですから、労働組合も生産性の向上等に積極的に取り組んでいます。3つ目は政治的民主主義です。現在、議論になっている税金や社会保障制度等については、企業や私たち自身ではどうすることも出来ない問題ですので、暮らしやすい豊かな社会をつくっていくためには、労働組合が政治的な活動をしていかざるを得ません。4つ目は国際的民主主義です。諸外国との関係をどうしていくか、また、他国で働く人たちの失業や貧困問題に対し、どう取り組んでいくかということは、私たち日本人としても真剣に考え、取り組んでいく必要があります。これら4つの民主主義を基調として、労働組合は物事を進めていきます。

3.労働組合(労働者)に関わる法律
 労働組合には、憲法第28条によって、団結権・団体交渉権・団体行動権の労働三権が保障されています。
 団結権とは、弱い立場の労働者が、雇用主に対して賃金やその他の労働条件について、労働組合を結成して対等の立場で交渉することを保障する権利です。団体交渉権とは、団結権によって結成が保障された労働組合が、使用者あるいは使用者の団体と賃金や労働条件に関して交渉する権利のことです。具体的には、団体交渉権を行使して春季生活闘争で1年間の賃金や一時金を決めたりします。次に団体行動権です。これは、会社との交渉の中で折り合いのつかない部分について、労働組合が団結して争議行為を行うことができる権利です。みなさんの中でも、ストライキという言葉を聞いたことのある方がいると思いますが、ストライキは争議行為の代表的な行為の一つです。なお、ストライキを実施するためには、組合員の直接無記名投票で過半数を得てスト権を確立し、事前に会社に対してスト実施を通告する必要があります。
 さらに、労働者にかかわる法律として、労働組合法・労働基準法・労働関係調整法の労働三法が定められています。
 労働組合法は労使対等の関係づくりを推進して、労働者の地位を向上させること、労働組合を組織して団結すること、団体交渉を通じて労働協約を締結することなどを保障する法律です。労働基準法は、働く人たちが人間らしい生活をすることを保障するという視点から、勤労の条件について法律で定めることを宣言することから生まれました。労働基準法では、労働者と使用者が対等の立場で決定する基本的な労働条件が定められています。
 次に、労働関係調整法ですが、これは、労働三権の公平な調整はかって労働争議を予防し、争議が発生した場合には、労使双方が話し合いで解決することを前提としつつ、解決できない場合には労働委員会に斡旋・調停、仲裁を求める事ができる法律です。例えば、みなさんがアルバイトをしていて自分の労働条件がおかしいと思い、納得できなかった場合には、労働委員会に申し入れれば、調整のための働きかけを行ってくれます。
 労働三権と労働三法については、これから働いていく上で、頭の中にしっかりと入れておいて頂きたいと思います。

4.労働組合への加入
 次に、労働組合への加入方法です。労働組合には、オープンショップ制・ユニオンショップ制・クローズドショップ制の3種類の加入方法があります。
 オープンショップ制とは、使用者が雇用する労働者に対して労働組合員であることを雇用条件とせず、労働者が労働組合に加入するかどうかは個人の意向で決める事ができるというものです。なお、公務員の労働組合については、国家公務員法等によりオープンショップ制でなければならないとされており、京都府の職員の中には、労働組合に未加入の方々が多数おられるようです。
 次に、ユニオンショップ制です。これは、採用された労働者に労働組合への加入が義務付けられるものです。もし、みなさん方が将来入社する会社がユニオンショップ制を敷いている場合には、一定期間の研修を終えた後、必ず労働組合に加入しなくてはならないということになります。民間企業については、ほとんどがユニオンショップ制ではないかと思います。自動車関連の会社や電機関連の会社は、すべてユニオンショップ制です。仮に、ユニオンショップ制の下で労働組合から脱退することになれば、原則として会社を辞めなければならないということになります。
 次に、クローズドショップ制です。これは、使用者が雇用する労働者は労働組合員でなければならないとする制度で、労働組合が労働力の供給を独占する形で労働力の維持・強化をはかる趣旨のものです。ただし、日本のように多くの労働組合が企業別に組織されている場合にはほとんど見られない制度で、産業別労働組合が中心であるヨーロッパ諸国においてはよく見られる制度です。

5.労働組合の種類と役割
 労働組合の種類としては、企業別労働組合(単組)、産業別労働組合(産別)、ナショナルセンターがあります。私の所属しているパナソニックを例に挙げますと、単組がパナソニック労組、産別が電機連合、そして、ナショナルセンターである連合に加盟しているという構図になります。(下図参照)

 単組の基本的な役割は、企業に属する労働者の雇用や労働条件の維持・向上を求めて、会社と交渉することです。
 産別の主な役割は、産業全体の中で働く人たちの基本的労働条件の改善や向上に向けて、統一的な取り組みを行うことです。例えば、電機連合では、新卒新入社員の最低賃金を産業内で同額にする、また、春季生活闘争の中で一時金を決める際に、全ての単組が最低何カ月分の一時金を確保する、ということを決めて、取り組んでいます。
 そして連合の役割です。産業別労働組合や企業別労働組合がさらに大きくまとまり、産業や企業の枠を超えて結集した組織(連合)が労働条件の大筋の方向、政治・経済・社会に対して運動をしていくことが、ナショナルセンターに課せられた役割と思います。具体的には政府や自治体などの協議諮問機関に参加する、労働運動の本部としてあらゆる情報を加盟組合・産別や組織に提案する、労働問題の調査や研究、加盟組合の統一要求をしていきます。また、一方で労働組合の国際的交流活動の窓口も連合でさせていただいています。それから、連合は47都道府県に地域別組織を設けており、私のいる連合京都は連合が京都において設けた地域別の組織です。

6.労働組合の組織図
 次に、組合の運営と組合費についてお話します。連合の調査によりますと、年間5,107円を組合費としていただいています。これはみなさんが単組の組合員になった場合に大体5,000円位の組合費を引かれるということです。上部団体への関係費として産別に納めるお金が12.9%、人件費が25.1%、活動費が19.6%、交付金が25.3%、その他が7.3%となっています。産業別労働組合の場合は企業別労働組合から上部団体関係費として組合費の12.9%を、金額にすると1人平均510円をいただいて、産業政策実現のための活動を行います。単組から1人当たり510円のうち、22.7%の85円を上部関係費として連合に納めています。そして連合レベルでみると、1人あたり平均85円の組合費をいただき、「安心」「安定」「安全」の社会づくりのために取り組みをしています。それから、私が所属している連合京都も、地域連合会への交付金として連合から1人あたり平均85円いただいているうちの26.4%をいただき活動をさせていただいています。
 単組、産別、連合の人件費がちょっと高いんじゃないか言われることもありますが、皆さん方の色々な悩みや労働条件を会社と交渉するためには従業員ではなく組合の専従の方々が色々なことをお世話することになりますので、大体30%強の人件費をいただいています。これが今の組合費をどう使っているかというところです。

7.日本の労働組合の現状
 日本の労働組合の現状についてです。主要団体組織図を見ると、今の組合の組織率は18%から19%程度です。決して高くないのが現実です。大体、現在日本では約5,600万人が働いており、そのうち約4,500万人強は労働組合に加入をされていないのが現状です。この未加入者の大半はパート、派遣労働者、契約社員、中小企業・地場で働いている方がほとんどです。その為、如何にその人たちに労働組合に入っていただくかを今取り組んでいるところです。

 新聞や新聞でワーキングプアという言葉が流行りました。要は年収200万未満の働く人たちの人数が非常に今多くなっているということです。これは正直言って大きな社会問題で、我々労働組合も最低賃金の引き上げやパートや有期労働者の均等待遇などといったものを求めて取り組んでいる最中です。最低賃金について、例えば、現在の京都の最低賃金は751円です。750円以下で働いている方は訴えれば賃金はそこまで上がります。最低賃金以下で働いている方が居られればすぐに交渉させていただきたいと思います。
 ここまで、労働組合の基本的なところをお話しさせていただいて、皆さんの中には労働組合に入らないといけないんじゃないかというような疑問等あると思います。労働者1人では企業側に負けてしまうため、集団で団結して交渉するための企業内労働組合であったり、その他の色々な労働組合があると思っていただきたいです。1人で悩むのではなくて、皆さんで団結して取り組みをしていただければありがたいと思います。

8.連合京都の取り組み
 連合京都の取り組みのお話を少しさせていただきます。連合京都は連合の47の地域組織の1つです。この京都中で9万人近い労働者の方々が加入されています。
 1つ目の取り組みは、雇用のセーフティーネットです。京都では京都府京都市労働局や経営団体、連合京都が京都テレサの中で京都ジョブパークという就職支援を行っています。京都ジョブパークでは、就職支援としてカウンセラーとの面談を通し就職まで面倒を見てもらえます。約3年間で1万人の就職のお世話をさせていただき、うち85%の方が正規社員で就職されました。また、現在は生活保護や就職支援等の多くの課題に取り組んでおり、4月からハローワークの仕事もジョブパークでするようになりました。それから、京都で働きたい人を全国から集め、約半年間に大学で勉強をし、給料をもらいながら企業で研修してもらうという事業もしています。これも100人受け入れた中で86人が京都で就職しました。2つ目は地域に根差した顔の見える運動です。これは、京都は非常に地域が広いので、それぞれの地域に連合の組織を持っていきそれぞれ活動し、地域の方々と一体となった取り組みをしていきたいということです。3つ目は社会の安心・安定のための労働組合の存在感を高めるということです。京都では19.6%位の組織率ですが、もっと組織率を上げて全員の生活を安定させていくために非正規の方々の組織化をしていきながら、それぞれの働く人たちの生活の向上に向けて取り組んでいます。4つ目は政策制度の実現に向けた政治活動です。年金や医療という問題に取り組んでいます。また今日、連合は日本のスローガンとして東日本の大震災の復旧・復興を実現するために取り組みをしていきながら、働くことを軸とし、これから安心の社会を築いていこうということを挙げています。つまり、働くことによって社会参加をし、そして自立をしていくことが一番大切だということです。

おわりに:自己紹介
 私は18歳で島根県の高校を卒業し、42年前に松下電器に就職しました。42年間会社に勤め、32年間労働組合をし、22年間専従をさせていただいています。組合に入ったきっかけは、10年近く技術をし、そろそろ次の職場に変わりたいと思った際に上司から異動を断られたため、組合員になり職場を変わろうと思いました。その後、組合の役員に立候補し、職場を変わり、現在では連合京都の会長にならせていただきました。
 これから皆さん方は就職活動をされ、いろいろな悩みがあると思います。もし何かありましたら、連合京都でも色々なことについて悩みを聞きアドバイスできると思います。また、就職後に労働組合に加入され、多くの方と語り合いながら民主的な労働組合でそれぞれの生活を安定させていっていただければありがたいと思います。

以 上

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