JILPT「労使関係の現状と展望に関する研究」(60)


『日本の不平等』~格差社会の幻想と未来~


大竹文雄
大阪大学社会経済研究所教授
A4判/38頁 2006年1月 (社)教育文化協会発行 無料配布


 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、前身の日本労働研究機構(JIL)が1994年1月に設置した「労働組合の現状と展望に関する研究会」(略称はビジョン研)を継承・発展させ、「労使関係の現状と展望に関する研究会」(略称はビジョン研で同一)をスタートしました。
(社)教育文化協会は、このたび、独立行政法人労働政策研究・研修機構のご厚意により、引き続き、ビジョン研の研究成果を当協会の会員各位に頒布させていただくことになりました。ご尽力を賜りました皆様方には、この場をお借りいたしまして厚く御礼申し上げます。
本書には、ビジョン研の2005年9月16日報告(2006年1月刊行)を収録しました。なお、番号は、前回からの通し番号としました。どうぞ、ご活用ください。


概要

 近年、人々の不平等意識の高まりを背景に、「格差拡大」の議論が盛んです。日本の所得格差が1980年代以降に拡大したことは、「家計調査」をはじめとする様々な統計から裏付けられています。しかし、社会全体の所得格差は拡大しているものの、学歴間賃金格差など労働者グループ間では、それほど大きく差が開いていません。この原因として、グループ間のシェアに変化が生じたことがあげられます。年功制が色濃く残る日本では、同期入社でも「ヒラ」で終わる人と、「役員」までのぼりつめる人など、年齢があがるに従い賃金格差が拡大します。格差が拡大した高齢者層の人口全体に占める割合が高まると、社会全体の所得格差を押し上げます。こうした「高齢化」要因以外にも、単身世帯増加など世帯構成の変化が、所得格差を拡大させています。
格差拡大は「見せかけ」であるにもかかわらず、多くの人は格差拡大を「実感」しています。これは、「現在」の所得格差を認識する人より、「将来」の格差拡大を予測する人のほうが多いためです。将来の格差拡大を予想する人が多いことが、「実態」以上に、人々が不平等を感じる要因のひとつです。



目 次

講師略歴

概要

報告
  1. 所得格差の拡大
  2. 「高齢化」
  3. 単身世帯の増加
  4. 誰が所得格差を感じているのか
  5. 所得再分配政策について
  6. 「格差」は必要悪か
討議概要

研究会レジュメ

労使関係の現状と展望に関する研究会(ビジョン研)について


戻る