アメリカのノンレイオフ企業が破綻したことを1つの契機として、組織内キャリア自律の概念が生まれました。これは、従来の転職を通じたキャリア形成とは異なり、1つの会社内で自律的にキャリア形成することを意味します。
かつては「雇用」が大事でしたが、今では「キャリア」の方が重要です。1つの会社で雇用が守られたとしても、キャリアが充実しなければ幸せにはなれません。幸せなキャリアを形成するためには、入社して早い段階から、[1]自主的ジョブデザイン、[2]ネットワーキング行動、[3]スキル開発行動を実践し、自らキャリアを継続的に切り開く行動・思考特性(キャリアコンピタシー)を身につけることが重要です。
会社も新たな人事戦略を再構築する必要ががでてきました。これまで全ての人が上昇志向であるという前提で、高い目標数値を設定する人事管理制度を構築してきました。しかし、仕事をする動機は人それぞれ。最近は上昇志向の人より、プロセス・対人関係を動機として仕事に取り組む人が増えています。彼らの中には、「スローキャリア」と呼べる、出世・地位・お金よりも自分らしい仕事やキャリアを求める人が増えています。「日本型人事システム」と呼ばれる従来の画一的な人事管理制度では彼らをマネジメントできません。
これらの会社は、「スローキャリア」を中心とする優秀な人材が、長期にわたって組織に貢献できるような「我が社型」の人事戦略を構築することが必要となります。その際、社員が組織内で自律的にキャリア形成できるような人事政策が重要となってきます。 |