日本でキャリアの問題が強く意識され始めたのは、1990年代、バブルがはじけた後で、それまではキャリアガイダンスという進路指導の観点から取り組んでいる人はいたが、その数は限られ視野も非常に狭かった。
日本青少年研究所が1994年に行った、高校生と家族に関する調査の中にある米国と日本の父子の会話内容の比較をみると、日本ではテレビやスポーツの話はアメリカよりしているが、人生をどう生きるべきか、将来の職業などに関してはあまり話していない。このような親と子の会話が学校教育におけるキャリア教育の欠如と並んで子供たちに職業キャリアを遠いものにさせているのではないか。
将来、どんな仕事につきたいのかを高校2年生の男女に聞いたリクルートの調査では、男子は1位国家公務員、2位地方公務員、3位アナウンサー/リポーター、女子は、女優、心理カウンセラー、歌手、モデルという結果だった。ひどく限られた情報の中で、安定した職業、または、社会的にかっこいい職業に就こうと考えている。
総理府(現・総務省)が行った世論調査の1999年版の中にある、生涯学習について具体的に何をしたかという質問では、趣味的なものや健康・スポーツが多く、職業上必要な知識、技能を勉強した人は全体の約4%に過ぎない。個人的なキャリア戦略を持って、そのための勉強を自主的にしないのは大人も同様であり、子供の勉強離れも、自らのキャリアが見えず何をやっていいかわからないという側面があるからだろう。
厚生労働省が三和総合研究所に委託して行った調査で、個人主体のキャリア設計をやるべきかどうか尋ねたところ、個々の従業員より企業のほうが意欲的だった。大人も子供も自分の職業キャリアを自らデザインしていこうとするより、寄りかかれる大樹の陰に入ることを考える。将来を自分自身でどうにかしようという考えは弱い。 |