1. |
組合としての課題認識 |
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第1に、要員ミックスが進展しており、組合もこれを前提に考えなければならない時代になってきている。バブルの崩壊と共に93年以降は会社は急速に正社員の採用を抑制しており、一方で年間二百数十名が退職するため、正社員の人数は徐々に減っている。これを補う形でパートタイマーが確実に増えており、担い手が変わってきている。
第2に、収益構造の改善のためには、人件費のあり方を意識しなければならない。構造的に膨らんでいく人件費をどうコントロールしていくのかが労使の共通の課題である。
第3に就労意識が変化し、企業との関わり方が変わってくる中で雇用形態が多様化している。組合としてもその』人一人に視点をあてて取り組みをしていかなければいけない。 |
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2. |
サムタイマー社員の現状 |
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サムタイマーは(実人員数として)G1 930人、GII l,500人、L 100人の計2,530人であり、従業員比率は36%、支店によっては社員数を上回っているところもある。一つの事業所でとらえれば、労働組合が果たして働く者の代表といえるのかという、根本的なところにも関わってきており、組合としてはサムタイマー社員との関わり方に取り組んでいかなけれぱいけないという問題意識があった。ただし、社員に近い形で働いている方もいれば、扶養家族という位置づけの中で働いている方もいるため、様々な価値観があることも認識しなければならない。 |
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3. |
組織化に至った経緯 |
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サムタイマー制度は1988年に発足し、初年度には350名ほどが入社した。組合としては翌89年の春闘時に、社会保険に加入しているサムタイマー社員を組織化したいという要求を挙げたが、会社としては時期尚早と判断し、取り組むことができなかった。
1996年に執行部内に組織化担当を設け、その後は関連企業の組織化にも取り組んできた。1998年にはメイト社員制度が発足したが、これは労使で部会で研究をして、新たな制度として作り上げてきた経緯もあって、制度導入時より組織化を実現した。
サムタイマー社員の組織化については、1998年に労使で組織化プロジェクトをつくる合意形成ができ、次の事項について労使で協定をしながら取り組みを進めてきた。
(1) |
最終的には全サムタイマー社員を組織化するが、優先的に社会保険加入者を組織化すること。 |
(2) |
初回の再契約時から組合員とする「ユニオンショップ制」の労使協定を結ぶこと。再契約時からとしたのは、初年度でやめていく方も多いため、人事からの助言を受け入れた。 |
(3) |
学生のサムタイマー社員は非組合員の扱いにすること。 |
(4) |
組合員化と同時に労使で行っている共済会員にも取り入れていくこと。 |
(5) |
組合規約上の権利と義務(選挙権・非選挙権、組合費の設定)は社員の組合員と同一とすること。ただし、初年度については経過措置として、組合費は社員が本給の1.8%であるのに対し、サムタイマー社員は1.6%と格差を設けた。 |
上記の内容を労使プロジェクトの中で基本的事項として協議決定した上で慎重に組織化を進めてきた。1999年にはサムタイマー社員全員を対象とした意識調査を実施し、それをふまえて1999年10月には組織化の基本曲考え方を本部定期大会で提示している。さらに2000年には懇談会を2回開催し、同年の本部定期大会で正式に組織化を決定、同年の10月11日に再契約を結ぶ社会保険加入者の方(1,500名)から組合・共済加入を実現した。 |
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4. |
組織化の目的と取り組み姿勢 |
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組織化の目的は、(1)同じ職場で働く仲間の総合労働福祉の向上、社会的な地位の向上、(2)多様な雇用形態を前提とした、社内の一体感の醸成と、それによる職場の活性化、労働生産性の向上、(3)サムタイマー社員の比率増大の中での組織防衛、の大きく3つが挙げられる。
基本的な取り組み姿勢としては、(1)組合の主体的活動として取り組むこと、(2)健全な労使関係を前提として組織化を推進すること、(3)多様な雇用形態で働くメンバー一人一人を尊重すること、(4)メンバーの声を公平、公正に反映できる、民主的な組織運営をめざすこと、(5)労働条件の取り組みを行っていくこと、の5点が挙げられる。 |
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5. |
組織化に取り組んだ上での感想・結論 |
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組織化の意義、重要性を執行部内で十分に議論し、理解を深め、意志を統一することの必要性が痛感された。また、組織化は組合の主体的活動ではあるものの、健全な労使関係を前提に進めるべきであり、会社側の皆さんにも組織化の意義を理解してもらうことの必要性を痛感した。さらに、組織化の準備には多くの議論と労働力が必要であり、そのためには交渉力や組織力が重要であることを改めて認識した。
組織化はあくまで方法論であり、「何のために組織化するのか」という目的を見失わないようにしなけれぱいけない。組織化の評価は、組織化後の組合活動の実践にあると考えている。
組織化は単に組織を拡大するだけではなく、組合のあり方を根本的に見直す好機である。今後の労働組合は、雇用の流動化を背景にする中で、限られた雇用形態だけの範囲に留まる活動ばかりに固執していると、組合自体の存在意義や組織の衰退を招かざるを得ないという強い危機意識が不可欠である。サムタイマー社員の組織化は、これまで正規の社員のみ取り組んでくれば良かった組合の存在意義そのものも見直す好機になった。 |
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6. |
初めての春闘を終えて |
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改めて、多様な価値観、就労意識を持った人たちが、様々な働き方のもとで伊勢丹で貢献してくれており、それにより当社が成り立っていることを実感した。それ故に、一律的な賃金の引き上げに取り組むことばかりが必ずしもメンバーのロイヤリティーやモチュベーションを高めることにつながるとは言えない。103万円の枠の問題など、単組だけでは取り組めない内容であり、難易度が従来の取り組み以上に高いと認識している。
制度導入から十数年の歳月を経て、この間制度改定もあり、現状としては名店ごとでかなり処遇の格差が出てきている。したがって、まずはこの働き方の現状をふまえながら、今後労使通年の交渉の場において、労働環境の整備に取り組んでいくことが急務である。整備していく上では、要員ミックスの視点(社員、メイト社員、サムタイマー社員の各々が、なにを担うのか)を意識しながら、その中でサムタイマー社員の働き方(担う職務と契約時間、適切な賃金等)を検討していくことが必要である。合わせて現場における制度の正しい理解とお互いの立場を尊重し合う風土の醸成、そして何よりも正しいマネジメント、労務管理の徹底が肝要であり、今後労使を挙げて取り組んでいきたい。
サムタイマー社員が組織化されたことによって、組合教育や春闘時の職場会議など、組合役員の労力は倍になったが、サムタイマー社員の生の声をきけるようになった。労使を挙げてこの人たちがやりがいを見いたせるような制度にしていきたいと感じている。 |