ものがたり戦後労働運動史3

残された謎?「ニワトリからアヒルへ」の意味

 この言葉はふつうGHQが親米的なニワトリだと思って育てた総評が、孵化してみると、反米的・反占領軍的なアヒルになっていた、という意味で使われる。この場合のアヒルは、GHQの労働課員が、松岡駒吉を侮蔑して「レイム・ダック(役にたたないアヒル)」といったものを、高野実が転用したものとされる(以上については、『戦後史大事典』三省堂、上井喜彦稿)。
しかし、なぜ総評の転換がニワトリとアヒルを例にしたかという点については、「(総評の)第2回年次大会は、ニワトリからアヒルになる第一歩をふんでいた」(『日本の労働運動』)と書いた高野自身もなんの説明もしていない。これにかかわって、1951(昭・26)年11月の新産別第3回定期大会で、落合英一書記長は「アヒル組合」という用語を使い、「平和4原則をガナリたてる組合のこと」としている(『資料労働運動史』昭和26年版)。落合のニュアンスでは、総評が平和4原則を主張する点で転換は転換だが、なお、口さきだけのこと、といったニュアンスがこめられている。いずれにせよ、「ニワトリからアヒルへ」はムードとして総評路線の転換を示す言葉として有名になったが、この2羽の鳥たちそれぞれがもつほんとうの意味あいは不明である。


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