第23回マスターコース修了論文

外国人労働者法政策の課題と労働組合の役割
―「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律案」の可決を受けて―

張 丹(UAゼンセン)

<概要>

 近年、人手不足を背景に日本で働く外国人労働者は増加の一途をたどっている。一方、技能実習制度の構造的欠陥に起因すると考えられる人権侵害事件は後を絶たず、国内外から「現代の奴隷制度」等と厳しく批判されている。こうした状況を受けて、政府は技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とした新たな制度を創設することを決定し、2024年3月15日に技能実習法改正案を国会に提出し、同年6月14日の参議院本会議で可決・成立した。
 本論文では、育成就労制度の創設によって技能実習制度の問題が解決されるのか、解決される場合または解決されない場合の原因は何か、さらにこれらの問題の解決に向けて労働組合に求められる役割は何かという問題意識から、技能実習法改正案を検討する。
 まず第1節で問題の所在を明らかにし、第2節で、技能実習制度の形成から今回の法改正までの経緯を整理し、第3節で現行制度の特徴と問題点を確認した。そのうえ、第4節~第6節で、有識者会議における議論の分析を通じて、技能実習制度の問題が解決されるかを検証し、第7節で、法改正による問題解決が期待されない場合は、外国人労働者の人権保障を視座に据えて、労働組合の外国人に関する取り組みの現状と課題、そして発揮すべき機能について考察し、提案を試みた。

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