第23回マスターコース修了論文

中小製造業における世代間格差の検証と考察
~是正と抑制のために労組は何をすべきか~

今野 泉(JAM・JAM北東北)

<概要>

 バブル崩壊を経て1990年代半ばより、景気の悪化とバブル期の大量採用による雇用調整の為、就職氷河期と呼ばれる世代が誕生した。資産バブルのインフレから一転してデフレ状態となり、企業は安価な海外製品とのコスト競争に明け暮れた結果、生産性の向上に見合った労働者への配分も行われず、賃金水準は停滞し続けた。その後2010年代半ばには、少子高齢化を背景とした人手不足感が顕著となり、人材獲得競争が激化して初任給の引き上げや若年層の待遇引き上げが主流となっている。筆者は就職氷河期世代と呼ばれる2000年に新卒で、出身地の中小製造業に入社し、約21年の在籍中にITバブルの崩壊、リーマンショック、チャイナショック、コロナショックなどにともなう希望退職、時限的な基本給カット、昇給の見送り、賞与不支給といった事柄を経験し、バブル世代と呼ばれる世代との様々な処遇の格差を感じるようになった。
 そこで本稿では、筆者が所属する産業別労働組合JAMの中小規模の賃金実態を分析し、景気動向や雇用状況、産別としての取り組みを調査した上で、世代間の格差実態を明らかにする。その上で、この格差の問題の解決に取り組み、一定の成果を上げている労組の活動実績を紹介し、今後労組がこのような問題をどう解決し、どう抑制すべきか、を提言する。

総目次に戻る