松野 奈津子(日本労働組合総連合会)
連合に入局したばかりの若かりし頃、初めて「がんばろう三唱」を見た時、衝撃を受けた。当時の上司に「抵抗がある」と言うと、「そのうち気持ちよくなるよ」と言われ、再び衝撃を受けた。あれから20年、今は気持ちよく「がんばろう三唱」をしている自分がいる。しかし、今回ユニオン・アイデンティティ運動を調べた際、1980年代の労働組合ですら「がんばろう三唱」は「古臭い」と若者に評判が悪かったことを知った。そして2年前、組合役員の若者が「同期が『がんばろう三唱』を見て、『組合は無理』と去っていった」と話していたことを思い出した。
私の知る限り、「がんばろう三唱」は政界か労働界ぐらいしかやっているのを見たことがない。もはや貴重な無形文化財として保護しなければいけないレベルかもしれない。しかし、労働組合組織率は年々減少し、2023年は16.3%と過去最低となっている。組合役員からは、若者が組合活動に参加しないなど、「若者の組合離れ」を嘆く声がよく聞かれる。もし労働運動の本質ではないところで、若者が去ってしまっているのなら、もったいないことではないだろうか。
若者はなぜ労働運動には参加しないのか。本論文では、労働運動の見せ方、伝え方に課題があるのではないかという推測のもと、若者を対象に調査やヒアリングを行い、若者へのPR強化としてブランディングに取り組んでいる海外の労働組合の事例と比較しながら、「若者に労働運動の魅力を伝える―ブランディング戦略のすすめ―」として、具体的な対応策を考察する。
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