第22回マスターコース修了論文

学校の長時間労働是正にどうむきあうか
-現場実態と原因の提示、そして組織拡大にむけて-

近藤 有理子(日本教職員組合)

<概要>

 教職員の労働環境は過酷である。一人あたりが抱える業務量は多岐にわたり、病気休職者は高止まりしており、80時間の過労死ラインを超える働き方が常態化している。
 この間、各都道府県の単位組合(以下、単組)も自治体と長時間労働是正について交渉しているが、全国平均では結果が見えてこない。そこで単組組織率と都道府県の長時間労働実態を比較し、単組は長時間労働是正に効力を発揮してきたか検証を行ったが、組織率の高い単組でも長時間労働は変わりなく発生していた。本当に組合は長時間労働是正に効力を発揮してこなかったのか。
 文科省「教員勤務実態調査」において経年比較(2022年、2016年、2006年)を行うと、学校単位でできる業務削減は確実に行われたが、減らした分を上回るほど授業時数の増加等が発生していた。
 そのような状況下では授業時数等の根本的削減や教職員の定数改善等、踏み込んだ業務削減が必要である。その「踏み込んだ業務削減」と考えられ、現在文科省が推進する「部活動の地域移行」について、「実効的」な長時間労働是正となりうるか、インタビューから現場の実感を探った。
 結果、長時間労働の是正を阻む要因は、心理面、制度面の両方に存在し、その状況の中で、日教組は全国の教職員の長時間労働是正へどうむきあえるのか、組織拡大の観点をふまえ考えをまとめた。

総目次に戻る