第18回マスターコース修了論文集

with/afterコロナにおける組合活動
―労働組合の役割発揮に向けて―

石神 賢一郎(情報労連 NTT労働組合)

<概要>

 2019年末以降、世界各地で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、日本でも感染拡大が急激に加速した。政府は、様々な支援策を展開しているものの、最も「公助」が必要とされる中で「自助」を強調し、未だに新規感染者は減少とリバウンドを繰り返し、医療機関の逼迫など、国民の命と暮らしが脅かされている。また、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、女性の非正規労働者を中心に、深刻な失業問題が発生するなど、セーフティネットが脆弱な層ほど深刻な影響を受けた。この現状を直視し、労働者の雇用と命を守る労働組合の立場から、社会的セーフティネットの拡充に積極的に関わっていく必要がある。
 一方、職場では、感染防止を目的にリモートワーク(場所にとらわれない柔軟な働き方)が急速に展開され、働き方の見直しに伴う労働時間の長時間化等の課題が明らかになるとともに、新しいワークルールづくりや職場環境改善に向け、これまで以上に労働組合の役割が高まっている状況にある。
 本稿では、新型コロナウイルス感染拡大により発生した問題を明らかにした上で、社会全体および企業経営の側面から政策上の論点を整理する。次に、労働組合の役割発揮に向けた取り組みについて、組合員へのヒアリングや実態調査(アンケート)をふまえ、課題と対処策について考察していく。その上で、with/afterコロナにおける働き方の変化を見据え、新しいワークルールづくりに向けた労使対応について提言するとともに、社会的課題に対し、労働組合として取り組む政策上の論点を明らかにする。

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