第18回マスターコース修了論文集

「雇用によらない働き方」と労働者保護
―働き方の多様化の中で「労働者」とは何かを考える―

蓮見 牧子(全日本自治団体労働組合)

<概要>

 経済の変動や国際化、IT化の進展、少子高齢化など様々な要因を背景に、従来型の正社員が減少し、パート・アルバイト・派遣等の非正規化が進んでいることは周知のとおりである。働き方が多様化する中で、今、「雇用によらない働き方」が増えつつある。
 コロナ禍でフードデリバリーの配達員を見かけることが増えたが、彼ら彼女らは企業に雇用されない「個人事業主」であり、労働者ではない位置づけとされている。そのため、業務中の事故に労災は適用されず、最低賃金の保障もない。一方、デリバリーの仕事を仲介する組織は配達員の賃金や業務中の事故の責任を負わない上に、配達員の報酬を一方的に改悪したり、場合によっては登録抹消を行ったりすることもあるという。交渉も対等性もないままに、個人事業主という名のもとに、働く者としての権利が守られていない実態がある。
 本論文では、今後ますます拡大することが予想される「雇用によらない働き方」について実態や問題点を検証し、労働者とは何か、働く者に必要な保護や社会はどのようなものであるか、そして労働組合として何ができるのか・すべきであるのかを考察していく。

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