第17回マスターコース修了論文集

「底上げ」を軸にした企業の共存共栄に向けて
―企業間の賃金格差を是正し好循環の道筋をつける取り組み―

山崎 英伸(自動車総連 全国マツダ労連)

<概要>

 日本は、将来への先行き不安が蔓延している。人々は日々の生活の中で消費を控え、企業は多くの内部留保を抱えたままである。賃金が上昇し、社会保障制度の整備がなされることで、人々の不安が払拭され消費が伸びる。その結果として企業業績が上がっていく「経済の好循環」が流れ出し、その流れを止めないこと。すなわち日本経済の自律的成長が明確にならない限りは、人々の心に巣食った先行き不安の恐怖心を拭い去り、デフレ脱却の抜本的解決に導くことはできない。
 日本では中小企業は全企業数の99.7%を占め、中小企業で働く労働者は全労働者の約7割に達しており、中小企業およびその労働者は日本経済を支えるいわば「屋台骨」である。筆者は、企業規模間の格差を是正し、中小企業の底上げを図ることこそが、日本経済の自律的成長を実現に導く鍵であると考えている。とはいえ、すべての労働者の賃金の底上げを実現するにはいくつもの障壁があり、困難を極めるであろう。しかし、それらの壁を打ち崩し、好循環への道筋をつけるキッカケをつくることができるのは、労働組合をおいて他にないと信じている。

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