第17回マスターコース修了論文集

私鉄産業における正規化施策の進展と課題

猪瀬 功(日本私鉄労働組合総連合会)

<概要>

 日本の雇用を取り巻く環境は大きく変化している。IT化などによって業務効率化が進み、様々な形態の非正規雇用が増加し、雇用の多様化が進展している。正規労働者に比べ低い水準にある非正規労働者は、年々増加傾向にあり、現在では3人に1人以上が非正規雇用労働者という状態にある。
 一方、非正規労働者を正社員に転換する動きが、流通、サービス、小売業を中心に広がっている。この背景には、企業が要員を確保できず、事業に支障が出ることへの懸念が強まっていることにある。
 本来、パート、派遣、嘱託、契約社員など雇用形態の相違にかかわらず、同じ業務に従事しているならば、労働組合として格差是正に向け取り組むのは当然である。私鉄産業は、率先して正社員採用、正社員転換を労使一体となって、産業全体として取り組みを行ってきた。しかし、鉄軌・バス・ハイタクの職場では要員不足が産業全体の課題となっている。私鉄産業は、要員不足が路線維持問題にも繋がり、特に地方の公共交通網の維持に大きな影響を及ぼしており、減便などの影響が広がっている。
 本稿では、非正規労働者の完全正社員化を行った私鉄中国・広電支部の事例や正社員登用制度はあるものの、要員不足解消に至らない私鉄総連加盟組合について着目し、私鉄産業における正規化施策の進展と課題を考察していきたい。

総目次に戻る