鈴木 伸司(UAゼンセン)
米国では、1990年頃から「社会運動ユニオニズム」と呼ばれる新しい労働組合運動が展開されている。社会運動ユニオニズムは、組合専従者による労働条件の維持改善や苦情処理など、既存の組合員へのサービス提供に活動領域を絞り込む、従来の内向きな「ビジネス・ユニオニズム」を批判し、社会的正義や経済的公正を求めて、活動の領域を積極的に外へ広げ、地域コミュニティや社会運動団体等との連携や社会運動の手法の活用などにより、低賃金労働者の組織化を進めるなど、労働者を取り巻く社会問題の解決に取り組む労働組合運動である。
日本と同様、米国でも労働組合組織率は長期的な低下傾向が続いているが、社会運動ユニオニズムによって社会的な影響力を発揮する米国の労働組合は世界が見習うべき組合再生のモデルとみなされており、シアトルやロサンゼルスで最低賃金15ドルを実現した運動もその一つである。
本稿では、米国の社会運動ユニオニズムが生まれた背景、特徴と成果、課題について文献から考察する。その上で、連合を構成する産別組織として得られる教訓を検討し、日本の労働組合運動が内向き指向から脱却し、社会的影響力を高めるために何をすべきか、提言を行う。
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