緒方 甫哉(労働金庫連合会)
労働金庫の経営は問題が山積しているといわれるようになって久しい。収益の柱である住宅ローン市場は競争が激化し、国内の資金需要が発掘しにくいなか、今や「ゴーイング・コンサーンが危ぶまれる」という言葉が公然と聞かれるようになっている。労働金庫内でも経営改革が叫ばれているものの、市場のパイが限られている以上、抜本的な解決策を見出しにくい状況にある。翻って、経済のグローバル化に伴い国際的な労働運動の連帯の機運は盛り上がってきている。国内労働組合においても現地法人労働組合の設立や、国際労働組合総連合の活動等を通じて、他国労働組合とのコネクションは、強まってきている。
労働金庫もまた、労働組合運動のグローバル化に呼応し、労働金庫運動をグローバルに展開することによって、ノウハウや資金力を海外の労働者の健全で豊かな生活・労働組合の発展のために活用することができるのではないだろうか。これが筆者の仮説である。
特に開発途上国では、平均年齢も相対的に低く、中産階級が爆発的に増えることが予想されており、今後の更なる金融市場の発展が見込まれている。その一方で、労働者福祉の観点からみた際、開発途上国では労働者の立場が十全に守られているとは言いがたい。これは、消費者金融に関しても同様で、比較的安価でリスクの高くない金融商品を利用できるチャンスは、労働者にとってまだ十分でないといえる。
こうした状況を踏まえ、労働金庫に対する需要が開発途上国内には存在し、労働金庫のノウハウや資金力を活かす余地があるのではないだろうかと筆者は考える。本稿では、試験的に対象国としてベトナムを選び現実的な課題について考察を深めた。
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