第14回マスターコース修了論文集

年次有給休暇取得の実態と
取得率向上に向けた労働組合の役割

日下部 雅淑(UAゼンセン)

<論文の概要>

 「年次有給休暇」。私が以前勤めていた会社では、年次有給休暇(以下、「年休」と表記)は極力消化していたし、年初に5日間の計画年休を設定していた。職場の中でも交代で取得できるようになっていた。しかし、産別職員として仕事をするようになり、製造業と流通・サービス業の取得実態の違いを知る事になった。
 UAゼンセンが実施する組合員研修では、「年休を直前になって急に断られた。その時、労働組合はどのように対応するのか」というテーマのグループワークを行っている。発表後、研修生に「この1年間、年休を100%取得した方は?」と尋ねると100%取得した人はほとんどいなく、取得率20%~50%に多く手が挙がる。さらに、「この1年間一度も取得していない」研修生が1~2割を占め、なかには堂々と自信をもって手を挙げる人もいる。何故、堂々と手を挙げるのか?とても疑問に思った。
 年休の取得が労働者の「権利」であることを認知していない組合員が多く、こうした実態が年休取得の低迷に結びついている。
 本稿では、UAゼンセンが実施した調査等をもとに、年休の取得率と、取得しない(取得できない)理由の把握を行い、とりわけ、年休所得率が低い流通・サービス業に焦点を当てて、分析を行いたい。そのうえで、今後、労働組合は、年休取得率を向上させるためにはどのような取り組みが必要かについて、検討する。

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