第13回マスターコース修了論文集

労働金庫の余資運用の新たな可能性について

木内 崇文(労働金庫連合会)

<論文の概要>

 2013年3月末における労働金庫の預金は17.7兆円に達しているが、貸出金は11.6兆円に留まっており、貸出金として利用されていない約6兆円は「余裕資金」として有価証券などで運用されている。
 はたらく仲間が結集した資金は、貸出金のみならず、余裕資金の運用においても労働者の生活向上など社会的役割を発揮することが必要である。
 余裕資金の運用にあたっては、連合が掲げる「ワーカーズキャピタル責任投資」の考え方を参考にしつつ、ISO26000や「くるみん」取得など投資先の選定に際し、労働金庫独自の投資基準を策定し、雇用環境や労働条件に配慮ある企業への投資を積極的に行うことや、障害者雇用対策・奨学金滞納問題への支援・融資も検討していくことを期待したい。
 余裕資金の運用で社会的役割を発揮することが出来れば、労働金庫に預金を結集する意義をより強固にし、銀行との差別化、預金金利競争からの脱却を図ることも可能である。労働金庫に預けて良かったと満足してもらえる好循環を生み出すためには、余裕資金の運用で社会的役割を発揮することだけでなく、その成果を検証し、労働金庫に期待して預金した労働者に対して説明責任を果たすことも必要である。
 また、労働金庫職員の意識改革も必要だ。労働金庫に結集された資金は、貸出金に限らず全額が労働者の生活向上に貢献することが求められている。つまり、労働金庫に余裕資金(余ったお金)など無いことを職員自身が認識しなければならない。

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