妹背 匡哉(全労済)
本稿は、企業による顧客満足の取り組みが労働組合を翻弄することを紹介するとともに、その原因と、顧客満足がもたらす労働強化から労働者を守るための対策を提示したものである。
昨今、企業による顧客満足の取り組みを多く目にするが、顧客満足は1990年以降の規制緩和とバブルの崩壊による需要不足が生み出した厳しい顧客獲得競争下での企業側の対応策である(Ⅰ章)。そして、[1]企業は大量の広告宣伝をおこない顧客行動をコントロールすることに努めていることや、[2]企業の売上拡大を重視する社会的風潮の中で顧客満足が売上拡大策として打ち出されたこと、[3]さらに企業別労働組合としての性格が強い日本の労働組合は、産業全体の発展よりも自社の売上拡大を優先しがちであることの3つの要因が重なり、労働強化につながる顧客満足の取り組みであっても、労働組合は顧客満足に翻弄されるに至るのである(Ⅱ章)。
このような顧客満足から労働者を守るためには、[1]労働時間の上限を規制すること、[2]労働組合の経営監視機能を強化すること、[3]消費者がホンモノを体験する機会を増やすこと、[4]労働者の所得不安を解消すること、[5]労働組合の組織拡大と産別機能の強化をすすめることの5点の対策を実施することが必要である(Ⅲ章)。
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