同志社大学「連合寄付講座」

2007年度“働くということ―現代の労働組合”講義要録

第7回(6/1)

過重労働とメンタルヘルス
~いま働く者の「こころ」に何が起こっているのか~

ゲストスピーカー: 矢田 稚子 松下電器労連 中央執行委員

 昨今、労働現場におけるメンタルヘルスの問題が話題になっていますが、労働組合はこの問題に対してどのように考え、どのような取り組みを行っているのでしょうか。今日は、私から、松下電器グループにおけるメンタルヘルスに関する取り組みについてご紹介したいと思います。

1.松下電器産業組合連合会の概要

 まずはじめに、これからお話しする松下電器グループにおけるメンタルヘルスの取り組みについて、よりご理解いただくためにも、そうした取り組みの根底に流れる私たち松下電器グループの労使関係に関する基本的な考え方等について申し上げておきたいと思います。

(1)組織概要・労使関係

 松下電器労連は、2006年10月現在、74の企業別労働組合、約8万7千人の組合員から構成されています。この連合会自体は昨年結成されたばかりですが、今日の松下電器労連の労働運動や労使関係の基盤となる精神は、前身である松下電器労働組合の時代から引き継がれているものです。

 松下電器グループの労使関係は、「信頼と対等」と「対立と調和」という2つの考え方を基本に据えています。そして、今なおこの考え方に大きな影響を与えているのが、創業者である松下幸之助氏の理念です。

 まず、「信頼と対等」について、幸之助氏は松下電器労組の結成大会で次のように述べています。

 「労働組合は、労働者の地位向上、福祉増進にきわめて必要であり、会社も組合の妥当な要望、正しい要求なら大いに受け入れ共に進んでゆきたい」

 「労使は、その立場は異なっても、社会、生活の向上に努める点では一致しており、同じ目標に向かって互いに協力し合ってゆくのが本来の姿でなくてはならない」

 また、「対立と調和」については、次のように述べています。

 「先ずは、お得意先の発展、お客様第一を通じ経営の発展ありきを責任とする立場と、先ずは労働者の代表として労働条件の向上ありきを責任とする立場とでは、時として見解に相違が生ずることもあります。

 大切なことは・・・組合の妥当な要望や正しい要求は大いに受け入れるにしても、問題は“何が妥当か”“何が正しいか”であります。」

 「対立あるところにものが生まれる。しかし、対立しっぱなしでは生まれたものも消えてしまう。そこに調和があって、はじめて育ってゆく。・・・『対立と調和』は、健全なる労使関係の源泉である」

 当時のわが国の労使関係においては、まだまだ組合側と会社側との対立が激しかったことを考えると、創業者・松下幸之助氏のこうした考え方は非常に先進的であったと思いますが、この「信頼と対等」「対立と調和」という精神を、健全な労使関係を築く基本に据えるという考え方は、松下電器創業から今日に至るまで、松下電器グループ労使の共通認識として存在しているのです。

(2)労働運動の質的転換と労働組合を取り巻く環境の認識

 次に、私たち労働組合を取り巻く情勢も大きく変化してきていると言うことも申し上げておきたいと思います。そもそも戦後の労働運動の取り組みの中心は企業に対する「抵抗」運動であったと思います。それが高度経済成長時代を迎え、賃金や労働条件の向上を「要求」する運動へと変化し、現在では、企業がグローバル大競争を勝ち抜くために顧客志向型の経営を進めていく中で、労使はお互い良きパートナーであるという、いわゆる経営参加型の運動にシフトしてきていると言え、労使双方が切磋琢磨し合いながらカウンターパートとしての力量を高めることが求められる時代になっています。

 一方、戦後1949(昭和29)年には最大で55.8%にのぼっていた労働組合の推定組織率は、その後一時期、若干の持ち直しが見られたものの低下傾向にあり、最新のデータで18.2%にまで低下しています。また、労働組合員数も戦後最高を記録した1994年(組合員数1,270万人、推定組織率24.1%)以降、低下し続け、いわゆる未組織労働者が増加しています。こうした中、世間からは労働組合に対して、内部のメンバーのことだけではなく、広く社会に目を向けた運動を展開することが喫緊のテーマとして期待されています。さらに、時代の変化や個々人の価値観の多様化にともない、労働者一人ひとりが「働く」上で求めるものが、賃金や一時金といった、いわば「外的報酬」的なものから、働きがいや人間関係など「内的報酬」的なものにプライオリティが移行してきています。このように、労働組合に対しても、賃金改定や一時金交渉だけでなく、社会を構成するステークホルダーの一つとしての機能を果たして欲しいという声が高まっているのです。

2.松下電器グループに働く人たちの「こころ」に何が起こっているのか?

 次に、松下電器労連では、「人を活かす」上で個々人の心身の健康をどのように位置づけ、その中で、メンタルヘルスというものを、どのように考えているのかについて申し上げます。

(1)働きがいと人材の活用に対する松下電器の考え方

 私たちが働きがいを感じる要因は、賃金や仕事のやりがい、職務特性など様々であり、特定要因に絞り込むことは難しいと思いますが、先ほども申し上げたように、今後の課題として「内的報酬」をいかに高めていくかが大きなポイントになると考えられます。

 ところで、松下電器グループ労使には「人間第一の精神」というものが存在します。これも創業者・松下幸之助氏の理念を表した言葉の一つなのですが、彼は、「人間には無限の可能性があり、人間として生まれた意義とその責任を果たす必要がある」という人間観を持っており、松下電器を「社会の公器であり、人間大事の経営をする会社」と位置づけていました。また、働く者一人ひとりが「独立した経営者である」という気概を持って仕事に取り組まなければ偉大な力は発揮できないという考え方(自己責任経営・衆知を集める全員経営)を「働き方」の根本に置いていました。こうした精神が現在まで継承され、労使問わず松下電器グループにおける「働き方」の根幹的な考え方になっているのです。

 私たち松下電器労連では、この「人間第一の精神」に則り、2007年春闘(松下電器グループでは、年間を通じて労使協議を行っていますので、一般的な「春闘」という呼称ではなく、「総合労働条件改善闘争」と位置づけています)において、「人の力を最大限に引き出すこと」をコンセプトとして、人材を最大限に活用するための要素を分析し、様々な仕組みを創って連動させることの必要性を訴えました。具体的には、市場競争力のある給与や成果に基づく報酬によって評価の納得性を高めることや、育児休業制度の充実など安心して働き続けるための制度整備、人材育成施策の強化等を求めました。またあわせて、「人を最大限に活用する」ためには、それを可能とする職場環境が不可欠であり、その大前提として、働く者一人ひとりの心身の健康づくりを促進することの重要性を提起したのです。

(2)メンタルヘルスの考え方と現状

 次に、松下電器グループの職場では心の健康(メンタルヘルス)をどのように考えているのかお話ししたいと思います。

 メンタルヘルスという言葉からは、しばしばうつ病などの精神的な病気といったネガティブなイメージが連想されがちですが、私たちの職場ではそのようなイメージで捉えるのではなく、誰でも罹る可能性のある「心の風邪」であると認識し対応しています。また、この「心の風邪」に罹る原因となるものは、何も質的・量的な過重労働だけでなく、急激な仕事の変化や個人の仕事への耐性、やりがい、職場環境の快適性など、様々な要因が関与していると分析しています。

 また、組合独自に職場で実施したアンケート調査の結果では、半数以上の人が職場で何らかのストレスを感じており、その背景について見てみると、一人ひとりの仕事の負担感やコントロール度などとともに、職場における人間関係などもストレスの要因の一つになっていることがうかがえます。また、何らかの形で悩みを抱えている若年層組合員が増えつつあることにも問題意識を持っています。いずれも、松下電器グループに限らず、他産業・他企業の職場でも生じている現象であり、わが国の労働現場全体が抱えている大きな課題であると思いますが、松下電器労連としても、こうした状況を真摯に受け止め、「人間第一の精神」のもと、様々な取り組みを展開しているところです。

3.松下電器健康保険組合の取り組みと組合としての参画

 次に、松下電器健康保険組合(以下、松下健保)の取り組みと、松下電器労連がこの松下健保を通じて、松下電器グループで働く方々の健康づくりにどのように参画しているのかについてお話ししたいと思います。

 松下健保は、1937(昭和12)年に、創業者・松下幸之助氏が従業員と家族の健康福祉を高めることを願い設立されました。松下健保は、グループで働く人たちと家族の健康づくりはもとより、松下記念病院など医療を通じて広く地域社会にも貢献していくことを使命としています。松下健保の議決機関は「組合会」であり、「組合会」で定められた運営方針に基づき実際に事業を執行する機関が「理事会」です。「組合会」は、労使双方の代表者である議員で構成され、健保組合員の意思が松下健保の運営に反映される仕組みとなっています。そして、この「組合会」「理事会」のもとに、「松下健保本部」「健康松下21推進室」「松下健康管理センター」「松下記念病院」「松下介護老人保健施設はーとぴあ」「松下産業衛生科学センター」「松下看護専門学校」といった組織・施設が整備されています。このような仕組みの中で、松下電器労連としては、松下健保の組合会議員や理事、「健康松下21推進室」の推進委員、「松下産業衛生科学センター」の運営委員として参画しています。このように松下健保は、他の企業でも設立されている健保組合と同様に、労使の代表がその組織運営に参画することによって自主的かつ効率的に運営され、被保険者とご家族の実情にあわせたきめ細かいサービスを提供することを目指しています。

(1)組合活動における「健康松下21」の位置づけと役割

 ここで、松下グループ全体の健康づくり運動である「健康松下21」についてご紹介したいと思います。

 近年、急速な高齢化の進展や生活習慣の変化により、疾病構造も変化し、疾病全体に占めるガン、虚血性心疾患、脳血管疾患、糖尿病等のいわゆる「生活習慣病」の割合が増加しており、国民医療費の3割を「生活習慣病」に係る医療費が占めるまでになっています。こうした状況に対応し、すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするために、「生活習慣病」やその原因となる生活習慣の改善等に関する課題について目標を設定し、国民全体が主体的に取り組むことができる新たな国民健康づくり運動として「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」が2000年に策定されました。「健康日本21」は、2010年までを運動期間としており、去る2002年には、「健康日本21」を中心とする健康づくり施策を推進する法的基盤として「健康増進法」も制定されています。このような中、松下電器グループでは、国の「健康日本21」に呼応して、会社・労働組合・健保組合が三位一体となって2001年度(平成13年度)からの10年計画で進めるグループ全体の健康づくり運動として「健康松下21」をスタートさせました。

 「健康松下21」では、「一次予防活動の積極的導入」「会社、労働組合、健保組合の三位一体の活動」「健康情報の共有化」を基本方針に据え、グループで働く一人ひとりが健康を維持・増進することによって21世紀において健全で活力ある企業活動を展開することを目指しています。具体的には、「生活習慣病」「喫煙」「メンタルヘルス」の3対策について、全体目標を設定し、各事業場活動のベクトルを合わせて進めているところであり、私たち松下電器労連としても、この「健康松下21」に代表者を輩出し、三位一体の取り組みを労働組合の立場から支えているところです(図1参照)。

(2)組合での具体活動

 このように、三位一体となって松下電器グループで働く人たちの健康づくりを推進する上で松下電器労連に求められる役割は、会社や松下健保では必ずしも十分に把握できない実際の現場の声を吸い上げ「健康松下21」の取り組みに反映させることです。

具体的な松下電器労連としての活動内容は以下の4点です。

  1. 現状の把握
     現場の声を届けるために、アンケート調査や現場活動のウォッチングを通して現状を把握することです。労働組合では、全組合員に対して年に1回「総合意識実態調査」というアンケート調査を実施しており、そのデータを分析することで、従業員の健康状態や意識等を把握しています。同時に、より詳細な状況を把握するために、支部単位で職場リーダーを通じた職場点検活動を展開するとともに、「健康松下21」の具体的な諸施策が実際に現場で機能しているかどうかもチェックしています。
  2. 本人への気づきの提供
     働く者一人ひとりが仕事を通じた悩みを抱えている場合に、「それをどう克服していけばよいのか」「どう自分自身を客観的に分析しケアすればよいのか」「誰に相談したらよいのか」「労働組合にはどのようなサポート体制が整っているのか」などについて、各種広報活動を行うことによって、一人ひとりに対して気づきの場を提供しています。
  3. 次なる施策への意見提起
     理事会だけでなく各事業所の安全衛生委員会の場において、各職場における課題について提起する仕組みを整備しています。
  4. 相談体制の整備
     組合員が日常的に気軽に相談を行える機関(ユニオン相談室)を労働組合独自で整備しています。例えば、法律相談をはじめ、職場の人間関係等に関する心の相談窓口、セクシャルハラスメントや男女雇用機会均等に関する相談窓口等を設けています。

4.メンタルヘルス対策強化への取り組み

 次に、松下電器グループにおけるメンタルヘルス対策の具体的な取り組みをご紹介したいと思います。

(1)第Ⅰ期活動

 松下電器グループで働く者にも心の悩みを抱えている方が増加しているのではないかとの認識のもと、2000年春闘において当時の松下電器労組は、「メンタルヘルスを含めた安全衛生の取り組みの強化」を要求項目に掲げ交渉を展開しました。具体的には、高齢者や女性も安心して働き続けられる快適な職場づくりとともに、いきいきとした会社・家庭生活を営めるように、メンタルヘルスに関する外部相談窓口の設置やメンタルヘルス教育体系の確立、職場コミュニケーションの充実など「ポジティブ・メンタルヘルス」の取り組みの強化を会社側に求めました。2か月間にわたる交渉を経て、労使間で「メンタルヘルス対策の推進にあたっては、まずは従業員ならびに職場の管理監督者に対する教育・啓発活動が必要不可欠である」との合意がなされ、メンタルヘルス対策に関する具体的活動を推進するために、「労使メンタルヘルス研究会」が発足することとなりました。

 この研究会では、従業員の心の健康づくりのためには、「働く者自身が自らのストレスに気づき、これに対処すること(セルフケア)」が重要であるとの考えから、まずは、「従業員一人ひとりが心の健康に関する正しい知識を持つこと」をメンタルヘルス対策の出発点に定めました。その上で、心の悩みを過剰に捉えるのではなく、誰でも罹る「心の風邪」であると捉え、その対策の主眼に「早期予防の促進」を置きました。

 また、「早期予防の促進」とあわせて重要視したのは、職場の管理監督者に対する啓発活動です。職場におけるメンタルヘルスケア推進のためには、職場の管理監督者自身がメンタルヘルスに関する正しい知識を備えた上で、部下の仕事ぶりやメンタルな部分を見つめることが大きな意味を持つと考えたのです。

 このような認識のもと、心の問題に関する正しい理解を促すため、メンタルヘルスに関する基礎知識やケアに関する考え方、対策等をまとめた「メンタルヘルス職場マニュアル」を作成し、2001年11月に職場の管理監督者全員に配布しました。また、各事業所の人事担当部門が実施している既存の教育体系にメンタルヘルス教育を組み込み、これを継続的・効果的に実施するための「メンタルヘルス教育指針」を2002年6月に策定しました。厚生労働省の指針をもとに策定されたこの教育指針では、メンタルヘルスケアに対する管理レベルを3段階(発症管理・兆候管理・健康づくり)に分け、各事業所単位で責任を持ってメンタルヘルスに関する正しい理解を醸成することを通じて、発症管理から兆候管理、健康づくりへと段階的に発展させていくことに重点を置いています。その上で、この指針をもとに、例えば新入社員研修や新任管理監督者研修等のカリキュラムにメンタルヘルス研修を組み込み実施しています。研修の主体はあくまで各事業所ですが、松下健保や会社の人事担当部門によるサポート体制もあわせて整備されているところです。

(2)第Ⅱ期活動

 第Ⅰ期活動を通じて、メンタルヘルス対策を推進するための仕組みもある程度整備され、メンタルヘルスに関する正しい理解も徐々に職場に浸透するなど、相応の成果が見られましたが、一方では、心の悩みという問題の性格上、なかなか直ちには解決しえない様々な課題も浮かび上がってきました。

 特に、松下電器労連として大きな課題として注目したのは、メンタルヘルスに関する相談窓口が、内部機関である健康管理室が中心であったという点です。心の悩みを抱える方々にとって、より相談しやすい環境整備に向けた改善が必要ではないとか考えたのです。

 そこで、松下電器労連としては、松下健保の理事会等の場で、メンタルヘルスに関する相談の受け皿として外部の専門的機関を導入することの必要性を訴えました。その後、「健康松下21推進委員会」の中に専門検討部会を設け議論を積み重ねた結果、新たな相談機関として、外部専門機関(外部EAP(Employee Assistance Program)と呼ばれる)の導入が決定され、2006年7月に具体的活動をスタートさせることができました。外部EAPの特徴は、松下外部の専門家と、電話やEメール、面接等を通じてメンタルヘルスに関する相談を行うことができる点です。

(3)第Ⅲ期活動

 ところで、これまで申し上げてきた第Ⅰ期・第Ⅱ期活動の評価・分析を踏まえ、現在、第Ⅲ期活動の具体的内容の検討を進めているところです。今後、組織内合意に向けて議論が進められることとなりますが、第Ⅲ期活動の検討に向けた私個人の考えを最後に申し上げ、本日の講義を締め括らせていただきたいと思います。

 まず何より、今後ともメンタルヘルス対策を推進するにあたっては、松下電器グループ労使間の根底に流れる「人間第一の精神」という原点を常に忘れてはならないことは言うまでもありません。その上で、今後、検討を進めるべき項目としては、「職場コミュニケーションや相談体制の更なる充実」「早期対応・早期回復支援のための環境整備」等があげられると考えています。

 働く者が抱える様々な心の悩みが解消されるかどうかは、やはり職場において良好なコミュニケーションが確立されているかどうかにかかっていますし、職場の良好なコミュニケーションは第一の予防策でもあります。職場におけるコミュニケーションの強化のためには、メンタルヘルス研修を粘り強く継続的に実施し続けるとともに、職場環境の改善に向けた不断の努力を積み重ねていく必要があります。具体的には、管理監督者によるメンタルヘルス研修受講率の更なる向上に向けて取り組みを強化するとともに、研修で学んだ知識を実際に職場で行動に反映させるための取り組み(行動アセスメント)も極めて重要です。また、職場環境の改善に向けて、健康管理室の専門医や専門看護師が中心となって実施している職場状況把握や個別対応の取り組みも強化していかなければなりません。

 次に、第二あるいは第三の予防策としては、過重労働対策の強化や不幸にもメンタルヘルスの不調により休職される方々へのケアの更なる充実等があげられます。具体的には、まず、未だ相談窓口に相談を持ちかけていないまでも何らかの心の悩みを抱えておられる方に対する上司・同僚からの働きかけや過重労働面談の確実な実施、実際に相談をもちかけられた方々への専門機関の紹介や治療状況の把握等が対策としてあげられるでしょう。さらに、休職された方々に対しては、復職までのスケジュール説明や主治医との連絡も含めた無事復職していただくための準備活動、復職を果たされた方々に対しては、安全衛生面に配慮した復職プランの提案や症状再発の防止策、復職者向けの勤務形態の構築など様々な対策が考えられます。

 さらに、メンタルヘルスに関する悩みを抱えている方々に対しては、職場の上司や人事部門が個別に対応するだけでなく、チームとしてサポートすることも効果的な対策として考えられるでしょう。そもそも心の悩みといった問題は、それを抱える本人のみならず、職場の上司や人事担当者にとっても対応が難しいケースがしばしば見受けられます。そうした意味で、悩みを抱える本人に加え、上司や人事担当者に対するケアも含め、上司・人事担当部門に加えて健康管理室や外部機関等が協同してサポートしていくためのチームづくりにつきましても、現在検討を進めようとしているところです。

 以上、労働組合のメンタルヘルス対策の取り組みとして、私たち松下電器労連の事例についてお話してまいりました。繰り返しになりますが、私たちとしても、労働組合を取り巻く環境や働く仲間の雇用環境が今後とも大きく変化していこうとする中で、引き続き「人間第一の精神」を大切にしながら取り組んでいきたいと考えています。本日は長時間にわたりご清聴ありがとうございました。
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