同志社大学「連合寄付講座」

2006年度“働くということ-現代の労働組合”講義要録



第7講(6/2)

ワーク・ライフ・バランス

~仕事と生活の調和~

ゲストスピーカー  弥富洋子  フード連合中央執行委員

はじめに

 みなさんこんにちは。私はフード連合の弥富と申します。本日はワーク・ライフ・バランスについてお話をさせていただきます。まずは私の自己紹介から始めさせていただきたいと思います。1985年九州大学の農学部を卒業しまして、サントリー株式会社に入社しました。入社後は研究職で、最初は清涼飲料の新製品開発をしていました。職場は山崎の工場の近くの研究所で5年間、そのあと川崎の研究所に6年間いました。研究職であったんいたのですけれども、このままではキャリアアップが図れないなと感じスキルアップするために希望した新製品企画に異動することができました。その時から組合活動をやるようになり、今は組合の専従ということで労働組合の仕事をしております。

1.ワーク・ライフ・バランスとは?

(1)ワーク・ライフ・バランスとは?

 まず、「ワーク・ライフ・バランスとは?」ということです。言葉の定義は、「やりがいのある仕事と充実した私生活のバランスをとりながら個々人が持っている能力を最大限発揮して、イキイキと生活をすること」です。社会という視点から見れば、男女が共に社会人としての責任が担えるような社会、そういった社会になるためにはワーク・ライフ・バランスというものが必要だろうと考えています。一人ひとり誰でも社会人としての責任を担えるような形にしていかなければなりません。公的責任として納税・社会保障の負担がありますし、私的な責任として育児・介護、また食事の用意、掃除、洗濯などの家事という労働力の再生産に必要なことが挙げられます。こういうことを一人ひとりが担えるような社会にしていくことが必要だろうと考えています。

(2)ワーク・ライフ・バランスの起源

 それではワーク・ライフ・バランスはいつごろから出てきたのでしょうか。これはアメリカで80年代後半から取り組みが始まっています。背景としては、この時期アメリカは非常に景気が悪く、大量リストラが行なわれました。その結果、会社で働いている人間が減ります。そうすると残された人間にかかる負荷、仕事量は非常に大きくなり、大量の仕事が一人の責任に負わされているという状況でした。さらには悪い労働習慣の典型である長時間労働を賞賛するような時代でした。このような状況のなか、生産性が上がらない・効率が悪いということで、生産性を上げていくためには仕事の習慣や仕組みを根本的に変える必要があるということで始まりました。加えて、80年代前半ぐらいから母親の社会進出が非常に進んできました。そのサポートとして企業はワーク・ファミリーという仕事と子育ての両立のための施策をやってきましたが、母親だけにそういうことをするのは不公平だと、他の従業員から不満の声が出てきましたので、他の従業員も働きやすい環境を整える施策、全従業員のニーズを満たすワーク・ライフという施策に変わってきました。

(3)ワーク・ライフ・バランスのメリット

ワーク・ライフ・バランスとは?

 ここで、ワーク・ライフ・バランスのメリットを、1つに取りまとめてみました。ワーク・ライフ・バランスから得られるメリットを、個人・企業・社会という視点から見るとこういうことが考えられると思います。つまり、ワーク・ライフ・バランスの実現は、個人・企業・社会共にWIN-WINの関係であるということが言えると思います。どんなライフ・ステージでも、この3つが常にバランスをとれて、大きさはどうであれどれかがゼロになることはない、というのがワーク・ライフ・バランスではないかと考えています。

2.現在の日本の状況

 では、実際の日本の状況というのはどうなっているのかということを次に説明していきます。まず、現在の日本の状況ですが、社会背景を3つの点からデータも含めて説明したいと思います。2番目に働いている現場の状況と課題、これもデータも含めて説明したいと思います。3番目に私の経験を少しお話させていただければと思っています。

 

(1)現在の日本:社会背景・働き方など

 現在の日本の社会背景としては、大量消費社会から持続可能な社会へ変わってきているということです。次に少子高齢化・人口減少時代ということで、とうとう合計特殊出生率は1.25になってしまいました。人口自然減の時代が来てしまったということになります。一方で、日本人の平均寿命は非常にアップしてきている。これは生活のレベルが上がったということと、医療技術が上がったということで、まさしく少子高齢化時代がやってきたんだと考えています。さらには、女性の未婚化・晩婚化が進んできたということや、出産可能な女性の人口が第2次ベビーブーム世代をピークに減少するという事実があります。 そういった問題と合わせて、今問題になっているのは若年層の雇用の不安定化です。さらにはライフスタイルや働き方の多様化、つまり色々な働き方もライフスタイルも抵抗なくできるようになった。あとは結婚に対する価値観・社会通念が変化したことがあります。それこそ20年前は24までは売れるけど、25を過ぎると値段を下げないと売れなくなる「クリスマスケーキ」と女性は言われていました。今はそういうことを言う人はほとんどいなくなりました。そういう意味では非常に変わってきたなと思っています。

世帯の変化

 次に家族観についてですが、家族というユニットから個人、一人ユニットになってきていると思います。世帯の変化をみると、現在、年金等のモデルでは標準世帯というのが「夫婦と子供2人」、それも専業主婦ということになっていますが、現実的には夫婦と子供という括りにしても今は上のグラフにありますように3割しかいません。つまり「夫婦と子供2人」を標準とは言えない時代になってきているというのがこのグラフです。

共働き等世帯数の推移

 次に共働きか片働きかをみてみますと、、現在共働きの方が多くなっています。ピンク(■)が共働きで、青(◆)が専業主婦の世帯ですけれども、昭和は男性片働きの世帯が多かったのですが、平成4年に一旦逆転をし、一旦戻った後平成8年には完璧に逆転をしており、共働きの方が多くなっているというのが今の状況になっています。このように、データを含め色々と社会背景を見てきましたが、一括りに出来ない多様な時代になってきているということがわかっていただけたかと思います。こういう時代だからこそワーク・ライフ・バランスが必要ではないかなと思っています。

(2)日本の状況:働いている現場の現状と課題

 次に働いている現場の状況を見てみましょう。これだけ共働きが増えている状況で会社のシステムはまだまだ「男性片方働き型のシステム」です。少しずつ変わってきてはいますが、長時間労働がまだまだ賞賛されるというか、長時間働いている人が仕事をいっぱいしているという価値観が残っている。長時間労働するためには家庭責任は負えませんから、家庭責任を負わないでいい男の人や独身者の評価が高い傾向にあると感じています。さらには男女間賃金格差があります。男女雇用機会均等法が86年に施行されて、本当なら男性と女性同じ賃金のはずなのに、まだ格差があります。また、働き方による賃金格差があります。パート・契約・派遣という働き方を選ぶことによって、時間単位の賃金が非常に低いことになっています。更には性別役割分業があります。男女平等といわれながら家庭で家事をしているのは女の人、さらには会社でも庶務や来客へのお茶等「これは女の仕事だよねー」という風潮が残っているところがまだあると感じています。各種手当についても、扶養家族手当とか住宅手当というものがある会社で、世帯主を条件にしているところがあります。世帯主というのは別に男性でも女性でも夫婦どちらでもいいのですが、今までの日本の慣習的なもので、ほとんどが男性となっています。ようするに世帯主要件を付けることによって男性に手当てが支払われる。これによっても男女間の賃金に格差が生じているという実態があります。最後に税制ですが、配偶者控除や年金の第3号適用があります。こうした制度は、女性の働く意欲を阻害する一因なのではないでしょうか。

【データで見る日本の状況】

フルタイム労働者に占める週60時間以上働く人の割合

 フルタイム労働者がいかに長時間労働かを見てみましょう。これは週60時間以上働く人の割合をグラフに表わしています。95年からのグラフですが、男性の方が圧倒的に高い位置にあります。今非常に問題なのは子育て期にある30代の男性、この方達が非常に長時間労働を強いられている。確かに30代は会社でも能力が発揮できる年齢だと思いますが、この人達に一番負荷がかかっているということがあります。女性も一定程度ありますが、男性の方が長時間ですし、少し右上がりなのが非常に気になります。

男女間・働き方による賃金格差

 男女間や働き方による賃金格差があります。女性の一般職とパートの方、さらには男性の一般職とパートで比較したところ、どちらの働き方も女性の方が賃金が低いです。さらには、女性の約5割はパート・派遣・契約という不安定な雇用の労働者なのに対し、男性の8割は、安定している一般職です。したがって賃金格差トータルで見ると男性100に対して女性は66.8という低い賃金となっています。このデータをみると男女賃金格差が大きく、女の人が働くのが損のように感じますが、時代が少し変わってきているということが次のグラフから分かります。

労働者の1時間当たり平均所定内給与格差の推移

 グラフには労働者の一時間当たりの所定内給与の格差の推移を、男性一般労働者を100として示しました。一番上が女性の一般労働者で、徐々に上がってきています。ということは一般労働者の中では、男性と女性の差が縮まってきており、男性に女性が近づいてきています。一方で、男性のパートタイム労働者の給与はどんどん下ってきており、女性パートタイム労働者に近づいています。このデータを見る限り一般労働者とパート労働者っていう二極化は明らかだと考えています。本来であればパートという働き方をしても、一般労働者という働き方をしても、同じ仕事をするのであれば時間単位の賃金は同じであるべきですが、実態はそうはなってないというのが現状です。

子育て優先度の希望と現実

 では実際にどうしたいと思っているのかを見たのがこのグラフです。子育ての優先度の希望と現実というグラフです。母親の希望は、「どちらかというと家事・育児を優先・専念したい」が25%くらい。「仕事等と家事・育児を同時に重視」が一番多くて6割くらいあります。しかし現実的には「家事・育児が優先・専念」が8割強になっています。仕事と育児のバランスをとろうと思っても、なかなか出来ないというのが現状です。一方で父親の希望は、「仕事等と家事・育児を同時に重視」が51.6%、「仕事が優先・専念」が約3割、「育児・家事を優先・専念」が16.3%います。ここで現実をみると「仕事等自分の活動に専念・優先」が65%で、個人的には「育児をやりたい」と思っていても、男の人はなかなか育児に携われない、女の人は「仕事もバランスよくやりたい」と思っていても現実的には育児・家事を優先せざるをえないという現状が見てとれると思います。

(3)私の経験

 次に私の経験ということで少しお話をさせていただきたいと思います。私の入社年度は男女雇用機会均等法の施行の一年前の85年でしたので、均等法前の状況から話したいと思います。均等法前の状況というのは、男女で処遇・賃金に明らかに差がありましたし、女性は男性と比較して責任の軽い業務を任される、期待されない存在でした。「仕事はそこそこでいいから職場の花でいいよ」というような時代です。職場の人のマグカップとコーヒーの味の好みも覚えさせられてお茶汲みをしたり、コピーをとるとか、字の上手な人は清書をさせられたりということがありました。腰掛待遇と書きましたけれども、「女の子は若くてかわいくてニコニコしてればいいよ」という感じでした。さらには結婚退職祝い金という、結婚を理由にやめると退職金に割り増し金があったり、出産退職祝い金という、出産を理由に退職をすると退職金にプラスされるという制度がありました。こういう制度があれば女性は長く勤めることがマイナスになります。お局さんと言われて、「なんであなたはまだいるの?」ということを言われて、一定程度の年齢になったら辞めざるを得ないような環境になっていたというのが均等法の前です。入社時研修も男性は長く勤めるからと色々なスキルアップのための教育がありましたが、女性は短期間の研修で「電話とりのマナーを覚えましょう」とか「挨拶の仕方を覚えましょう」と言ったビジネスマナーの教育が主であり、キャリアアップからは非常に遠い存在でした。

 先ほどお話したように、私が入社したのは均等法施行前でしたので、男性と女性は賃金が違っていました。大学では男性女性ということで成績等に差をつけることはなかったのに、会社に入ったとたん、女性の賃金が低いのはかなりショックだった記憶があります。ただ、これは私の入ったサントリーだけではなく世の中全体がそうだったので、ショックながらも受け入れざるをえない現実でした。私は研究職で入りましたが、清涼飲料水の中味レシピをつくることが主な仕事であり外に出ることがあまりありませんでした。またそのような業務をする人には名刺は不要であろうということで名刺がありませんでした。大卒のプライドもあり、上司と交渉して名刺をつくってもらったということが記憶にあります。また、研究職の仕事には、中味レシピを設計した後、工場で同じような中味が出来るかどうかを確認するスケールアップという仕事があるのですが、これは男性が主にやっていました。自分が研究所で設計した中味が工場でどういう風に出来上がるのかを自分で確かめたいと思い、上司に相談しました。大卒で働くのであるから「自分に責任のある仕事をしたい」と思っていましたし、私だけでなく職場の仲間も工場にも行かせて欲しいと言い出して、工場にも出していただくようになりました。入社してこのように男女に異なる扱いがあることに非常にびっくりしましたが、交渉することによって変えることができた。この点については「頑張ったかな」と思っています。それまでは、女の仕事は研究所で中味設計レシピをつくること、男の仕事は工場に行ってスケールアップをすることと大まかではあるものの分かれていましたが、徐々に男性も女性も両方やるようなになりました。これが大きく変わってきたことの1つです。

 こうして少しずつは変わってきていますが、今問題になっているのは仕事の与えられ方が男女で違うんじゃないかということです。均等法前の入社ということもあり、入社すぐは私もどちらかというと評価されない仕事が多かったように感じています。ただし今は、正社員として採用するからには性別に関わらず会社としては、「その人材を活用したい」「その人の持つ能力を最大限発揮して欲しい」と変わってきているので、今の時代はそういうことはないと思います。90年代以降は賃金格差も縮まってきていますし、昇格昇進についても差が小さくなってきています。少しずつですが世の中変わってきたかなと思っています。

【データで見る日本の職場】

 現場の実態は変わったかということで、口頭では少しずつですが変わってきていると言いましたけれども、データとしても少し見てみたいと思います。

性・雇用形態別平均金属年数と平均年齢の推移

 グラフは性別・雇用形態別の平均勤続年数と平均年齢の推移です。男性・一般の平均勤続年数は確実に上がってきています。女性・一般の平均勤続年数も上がってきていますし、男性・一般の平均勤続年数の伸びよりは大きくなってきています。さらにはパートも伸びてきているということで、女性が働き続けてきているということが分かると思います。それに合わせて、当然ですけれども、平均年齢も上がってきているということが分かると思います。

男女の年齢階級別労働力率と女性の潜在的労働力率

 グラフは女性の労働力率です。平成7年の時には明らかに大きなM字でしたが、底の部分が上がってきています。確実に潜在的な労働力率に近づいてきています。これも国際比較をしてみました。M字型になっているのは日本と韓国です。スウェーデン・ドイツ・アメリカの3ヶ国には全くM字は見られないということで、子育て・結婚等による就業の中断は3ヶ国では見られないということが分かるかと思います。 日本ではM字型が問題になりますが、この奥に潜んだL字型と言われているものがあります。高学歴の女性ほど一旦仕事を辞めると仕事をしない、それがL字型といわれています。一旦就職をしますが、結婚・出産で退職をすると労働市場に戻ってこないということが問題になっています。これは、高学歴の女性はわりと高収入の男性と結婚する割合が多いとか、自分に見合った能力をいかせる仕事じゃないとなかなか働かないとか、そういう理由があって、このM字型に潜んだL字型があり、非常に問題だと思います。

3.ワーク・ライフ・バランスへの取り組み

(1)なぜワーク・ライフ・バランスなのか?

 では、ワーク・ライフ・バランスの取り組みをしなければならないのかということですけれども、「なぜ労働組合がワーク・ライフ・バランスに取り組むの?」ということを説明したいと思います。70年代の高度成長期は、夫は外で働き(有償労働)、妻は内で支える(無償労働)という形が一般的でした。女性は長く勤められないし、働く所がなかったという環境ですから、組合は家計をサポートしなければいけなかったわけです。まずはきっちり賃上げをする。妻と子供も養いながら生活できる賃金を確保しようということをやってきました。さらには各種手当をとると。 賃金や給料だけではなかなか生活できないとか、家族のいる方へのサポートということで、扶養家族手当・住宅手当・社宅の充実などに取り組みました。夫の片働きでも生活が出来るということを、労働組合としてもサポートをしてきました。 今はどうかということですけれども、共働きが非常に増えてきたということなので、男女が協力をしながら働き、生活と両立させていく。こういう生活の仕方をサポートしていくことが必要だということで、働き方や処遇のサポートをする、つまりはワーク・ライフ・バランスが出てきたと考えています。

(2)連合の取り組みと目標

 労働組合はワーク・ライフ・バランスの取り組みで具体的に何をやってるんだろうということですが、労働時間問題・長時間労働の見直しや育児・介護などの家庭的責任を担った方が働きやすい環境を作っていこうということに取り組んでいます。では、連合が目指す社会はどういうものか。まずは「安心・安定・公正を基本として労働を中心とした福祉型社会」をつくっていこうということです。働ける人はしっかり労働をする。セーフティネットとして病気や怪我などで働くことができない人にはサポートができるような社会にしていこうということを掲げています。さらに加えて、「男女平等参画社会にしていこう」とか「『勝ち組・負け組という格差社会』ではなくて普通の人が普通に生活できる社会にしていこう」というのが連合の目指す社会です。「労働を中心とした福祉型社会」とは、仕事をしたい人には安心して生活できる賃金・処遇の労働が与えられるという機会の提供や、仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスがとれた働き方のできる社会の実現が大事だと考えています。さらには、安心と信頼の社会保障制度の確立、。つまり真面目に働いている人がきちんと生活できるような社会にしていこうということです。
  具体的な取り組みとしては、仕事と生活が両立できる職場・社会を作ろうということですが、まずは働き方のスタンダードを変えようと。今はまだまだ男性片働きのシステムで、正社員雇用で長時間労働をすることによって高い賃金を得るのがスタンダードです。そうではなくて、それぞれが能力を発揮したらそれに見合う賃金を貰える、同じ仕事をすれば時間当たりの賃金を同じにするということを実現しようとしています。また今は、正社員の仕事が非常にハードですし、身体を壊される方も増えています。そういう意味では仕事と生活のバランスがとれた長時間労働ではない働き方をスタンダードに、働き方と労働時間を見直していこうということをすすめています。次は、パート・派遣・契約労働者の均等待遇法制化を実現しようということです。正社員は非常に長い時間働き、家庭的な責任などで長時間労働が難しい方は非典型労働で働く。こうなると超長時間労働は時間給も高いということで高い賃金に、逆に言えば非典型と言われるパート・契約・派遣では同じ仕事をしていても低い時間給になってしまう、こういう二極化がおきています。これのどちらかを選べということではありません。労働市場から一旦出てまた労働市場に戻ってきた時に、前と同じように能力がいかせる仕事ができるように、また雇用形態が変わっても、それまでと同じ働き方をしていれば同じ時間当たりの賃金が貰えるような仕組みにしていきたいと考えています。

4.最後に

 最後に、ワーク・ライフ・バランスの実現によって現在の日本の状況を変えようということで提案をさせていただきます。
  夫が外で働き、妻は家庭を守るという従来からの性別役割意識を改め、男女ともに協力しながら働き、生活も充実できる社会に出来たらいいなと思っています。男性片働き型のシステムを是正し女性が働きやすい社会にへしていこうと。未だに育児や介護は女性の負荷が多い、データ的にもそうなっていることを私は問題だと思っています。これをすぐにリセットし是正することは難しいですが、家庭的な責任を負った人も働けるようなシステムにしていくことで、男性も働きやすくなると思うのです。今は男性が逆に家庭的な責任を負えないほど長時間労働に追い込まれている。おそらく男性も好きで長時間働いているのではないと思います。男性も自分の時間はしっかりほしいと思いながら、会社のシステムにいると、どうしても長時間労働にならざるをえない。こういったシステムを家庭責任があっても働けるような働き方・システムにしていかなければならないと思っています。次に一人一人が持っている能力を発揮できる社会ということで、正社員だから高い賃金ではなくて、一人一人が持っているスキルは短時間でも十分に発揮できるのだから、スキルに見合う賃金を貰えるようにする。さらに、ジェンダー平等ということで、男だから女だからということではなくて、双方が役割を担いながら仕事が出来たらと思います。育児や介護などの責任を負わなければならない時になっても、能力が発揮できる、仕事も出来るようになればいいなと思っています。ワーク・ライフ・バランスをとることによる男女平等社会の実現によって、今挙げたようなことが出来ると思います。
 また男女という性別だけではなく、人種、年齢、既婚・未婚、障がいの有無や宗教、そういった属人的なものにとらわれない社会になることが必要ではないかと思います。多様性を認めあい、一人一人の個性・能力が活かされる社会が実現できたらと思っています。山に例えますと杉だけを植林した山は雨に非常に弱いです。それは背の高い一種類の木しかなく、その下に下草や低潅木が生えていないので水をためることが出来ないからです。これでは大雨が降ると崩れてしまいます。それが自然な林であると、大木もあれば下草もあるし、中くらいの木、低潅木もあったりする。いろんな木が雑然と共生しているということで、そういう山は多少の雨が降っても水をしっかり保つことが出来て、崩れないと言われており、また山の土自体も豊かです。会社という組織も同様です。従来の男性の猛烈社員のような人だけではなくて、女性、高齢者、若者、外国人など色んな人が働いていることによって、会社という組織も強くなると思っています。皆さんも社会人になられたら是非個々人の個性を活かして働いていただければと思います。さらには、労働組合にも是非関心を持っていただき、自ら自分達の働きやすい環境を作っていただければ嬉しいなと思っています。
以上で私の講義はこれで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 

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