ものがたり戦後労働運動史・

石川達三(いしかわ・たつぞう)

 1905年~1985年。秋田県出身。27年、早稲田大学英文科中退。30年、移民船でブラジルに渡り、1年間滞在。その体験をもとにした『蒼亡民』で35年第1回芥川賞を受賞。以後、一貫して社会批判をテーマにした題材を執筆しつづけた。ダムの湖底に沈む村をえがいた『日陰の村』(37年)、日中戦争を書いて発禁処分となり起訴された『生きてゐる兵隊』(38年)、『武漢作戦』『母系家族』などの戦前の作品、戦後は、元軍人を主人公に社会批判をこめた『望みなきに非ず』(47年)、戦時下の言論人の苦境をえがいた『風にそよぐ葦』(50・51年)、勤評問題をテーマにした『人間の壁』(58・59年)、資本家批判の『傷だらけの山河』(64年)、『金環食』(66年)、『四十八歳の抵抗』(56年)などの作品がある。それぞれの作品は、新しい社会風俗や社会状況を先取りし、問題意識も際立っており、大きな話題をよんだ。これらの系列とはべつに『結婚の生態』(38年)、『泥にまみれて』(49年)、『自分の穴の中で』(55年)など、男女関係、愛情関係など個人の問題を描く作品もある。アジア・アフリカ作家会議のメンバーや日本ペンクラブの役員も歴任した。