第11回マスターコース修了論文集


産業別労働組合の存在と役割の変化
―企業別組合と組合員の関係の変化から―

笹川 尚美(JAM東京千葉)

<論文の概要>

 ストライキという言葉が聞かれなくなって久しい昨今では、労働組合活動に参加することを迷惑と感じる組合員も多くなっていると聞く。ITの発達によってビジネススタイルは劇的に変化し、成果主義的管理などによって多くの負担が労働者に押し寄せている今、組合活動に従事することは余計な仕事と思うのであろう。
そんな中、景気の後退・低迷を背景とした雇用不安、実質賃金のマイナス上昇率など目に見える結果が出せない企業別労働組合は、近年、様々な意味でその存在価値が大きく問われている。欧米にはない日本独特の「春季生活闘争」と呼ばれる賃金交渉において、以前なら産業別労働組合がリードし、その賃上げ水準を中小企業や労働組合のない企業にまで波及させるほどの影響力を持っていたが、最近ではその様相は大きく変化した。
このように、変化しつつある労働組合運動の中で、企業別組合と組合員の関係や企業別組合から見た産業別労働組合の存在感が希薄化していることを示す。それを踏まえ、JAMのアンケート結果を利用しながら産業別組合の果たす役割、効果に関する傾向について把握するとともに、産業別労働組合のこれからの可能性や課題について考察した。

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