第11回マスターコース修了論文集


経済のグローバル化と日本の中間層
―鉄鋼業の就業構造変動から読み解く―

秋山 和義(基幹労連)

<論文の概要>

 現政権は「分厚い中間層の復活」を政策目標に掲げているが、日本をはじめとした先進各国において、中間層は減少傾向にある。その原因としては、情報通信分野をはじめとした技術革新や、国際資本移動の活発化による「経済のグローバル化」の影響が考えられる。
本論文では、鉄鋼労連が実施してきた調査をもとに、鉄鋼業の就業構造の推移を観察し、日本の経済社会が直面する産業構造の転換および就業構造の変化について述べる。その結果から得られる示唆は、経済のグローバル化が進む中で、高度化及び高付加価値化は日本の産業全体共通の課題となっている、ということである。
日本の分厚い中間層を維持するためには、多くの労働者が、高度で専門的な知識や技術を備え、それらのスキルを活用して高付加価値の財・サービスの生産に携わる、という経済社会を構築していくことがきわめて重要である。また、日本特有の長期雇用を前提としたシステムの強みは、グローバル化が進行する現在においても通用するものであり、その上で日本の企業別労働組合が果たす役割は大きなものとなる。

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