第9回私の提言
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寸評橋元秀一 昨年に引き続き、「論文」募集という表現をさけ、「働くことを軸とする安心社会」の実現につながる「私の提言」の募集が行われた。今回は、残念ながら昨年より応募が少なかった。それでも、労働組合の抱える問題点への意見や労働運動への期待を込めた作品が寄せられた。しかし、羅列的に提言を提示し論拠や具体性が弱い傾向のもの、評論的な内容やエッセー風の叙述のものもあり、提言としては評価しにくいものもあった。「提言」としての募集ではあっても、提言内容を明確に提示すること、その論拠を明示すること、提言の実現によって予想される成果などについて、きちんと書き込むことが必要であろう。 |
寸評東海大学 廣瀬真理子 今回のテーマは、「働くことを軸とする安心社会の実現につながる具体的な提言」でしたが、応募者のさまざまな視点からのこのテーマに対するアプローチは大変興味深いものでした。12編の提言の全体をとおして得た印象は、皆様がそれぞれに労働に関する問題を真剣に受け止めて、個々の生活や組織、また社会を改善していくために積極的な主張や提言を行っていることでした。 |
寸評志縁塾 代表 大谷 由里子 優秀賞には、東京学芸大学教育学部4年生の塙万里奈さんが選ばれました。提言としては、弱いところもありましたが、わたしも彼女の提言を推していました。というよりも、「労働教育」の必要性として、わたしだけでなく、多くの人が言って欲しいことがこの提言には盛り込まれています。 |
寸評参議院議員 吉川 沙織 「私の提言」連合論文の運営委員として、第7回以降、選考に携わる機会を頂いており、今回が3度目となる。毎年、興味深く提言内容を拝読しているが、今回、特筆すべきは優秀賞として選に入った提言が学生の提言になったことであろう。もちろん、テーマが「働くことを軸とする安心社会」であることから、社会人経験のない学生の提言を優秀賞に選出することについて、運営委員間で議論になったものの、運営委員のほぼ全てが塙氏の提言を何らかの形で評価していたことから当然の結果ではなかったかと考える。 第7回までは「論文」として、第8回からは「提言」として作品を募った形になるが、今回、優秀賞に選ばれた塙万里奈氏の提言は、労働教育の必要性について説いたものであり、問題意識等を明確にした上で、現状の課題も的確に指摘し、提言を行っている点が評価されたものと考える。労働教育や社会保障教育の必要性については、評者自身も国会の質疑で何度か取り上げたことがあり、問題意識としては通じるものがある。 例えば、生徒・学生が社会に出て仕事に就くようになり、仮に問題に直面した際、労働法や労働者の権利に関する知識と実践方法を知っていれば、働く上で不当な扱いや解雇を回避できることにも繋がる。また、社会保障制度のどの分野に不安を感じている方が多いかといえば、年金制度が群を抜いて高いという統計が存在するが、不安の背景には理解不足もあるとの指摘がある。若年層の国民年金納付率の低下問題についても、正しい知識と理解があれば、改善される可能性はあると言えるだろう。学習指導要領の改訂で教科書が分厚くなり、教える時間の確保は難しいことは理解しているが、教育段階から社会保障・労働分野について体系的に学び、少しでも実践的な知識を得ることで、働くことを軸とする安心社会を実現する一助となるのではないかと考えている。 佳作賞に選出された玉川氏、岩本氏の提言については、東日本大震災や職場の現状等、現実を直視した提言の強さ、実体験に基づいた問題発見の視点からそれぞれ選出されている。 次回は第10回目となる節目でもあり、多くの方から提言して頂けるような環境を整えることも必要であると考える。また、これまでの提言の中で、運動方針に取り入れたもの等を明らかにすることで、運動全体の活性化にも繋げて欲しいと心から願うところである。 |