|
寸評東京大学 社会科学研究所教授 中村 圭介 「提言」を受けとめるのは,あなたですよ.いま,この文章を読んでいる,そうあなた.あなたが真しに受けとめようとしてくれなければ,「提言」する方だってやる気が出ない.あなたの仲間が仕事,職場,そして労働組合について日頃,考えていることを普通の言葉でつづっているのだ.こういう問題があるのだけれど,このように解決できないだろうか,こうした思いをぶつけているのだ.一つでもいい,頭の片隅でもいい,忘れないでおいて,折に触れて「提言」を素材に組合のあり方,将来について考え,そして語って欲しい. 寸評日本女子大学 人間社会学部教授 大沢 真知子 今回応募された18編の論文を今回も興味深く読ませていただいた。そして、時代の変化を感じた。年々、体験をもとにした提言が多くなっている。こうあるべきといった大上段に構えた論調ではなく、自分自身の体験がもとになって自分の生活や職場をもう一度見直し、具体的にこうしたらいいのではないかと提案する論文が多くなってきている。それらの提案は一般化できるほどのものではない。しかし、だからこそ実現可能で、確実に自分たちの状況をよくすることができるものでもある。きっと何かが変化するときはそんな風に変化してゆき、あとで振り返ってみると、あれが時代の転換点だったとおもう。いまわたしたちはそんな時代の変わり目に生きているのだと思う。 今回選ばれた論文の多くは決して大所高所からみた美しい理想や理念が描かれているものでもなければ高邁な理論が展開されているわけでもない。ひとつひとつは個別であり、しかも多様である。そのこと自体がいまの時代の労働問題の特徴を表しているようにおもう。 21世紀は個人の組織からの自立が大きなテーマになっていくだろう。しかし、個人は弱い。その個人の自立のために、労働者に自身の権利を教え、ともに闘い、支えあう。それが労働組合運動のひとつの大きな柱になっていくのではないだろうか。今回18編の論文を読みながら、そんなことを考えた。 寸評志縁塾 代表 大谷 由里子 今年は、運営委員の皆さんが「これだ!」という論文が残念ながらありませんでした。運営委員会でも、まず、「優秀賞を出すのか、出さないのか」という議論になりました。 そして、「現場の人たち、もっと、頑張ってよ!」と、思わず言いたくなりました。 「今回は、優秀賞を無しにしてもいいのではないか」「いや、今回の優秀賞は、今回の優秀賞だ」と運営委員の間でも、かなり激しい議論が長時間続き、揉めに揉めた選考となりました。 |